ベストプレイス   作:自由人❀

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前回の続きです。それではどぞ。


修学旅行 最終日

 伏見稲荷神社。圧巻のずらりと並ぶたくさんの鳥居。興味あってもなくても是非とも行ってほしい場所。

 ここが有名な千本鳥居のある伏見稲荷神社だ。また伏見稲荷神社は、あの誰もがよく知る『お稲荷さん』の総本山ともいわれている。ネットで少し調べたがこんなところだ。

 千本鳥居と言うだけのこともあって階段も歩く距離もそれなりにある。上まで行くにはそこそこ体力が必要だ。我が奉仕部の部長は大変お疲れの模様です。ほんと体力ないんだなこいつ……ちなみにあとから登り始めた葉山グループも来た。

「ヒキタニくん、相談忘れてないよね?」

「んあ? おう」

「どうどう? メンズたちの仲は睦まじい?」

「仲はいいんじゃないか? 夜とかトランプしてるし」

「それじゃあ私が見れないし美味しくないし、もっと私がいるところで男子が固まってるところを見れるのが一番だなぁ〜!」

「まぁ俺たちも嵐山行くしその時……ん?」

「よろしくね……」

 

 

 

 ☆

 

 

 

「~~♪」

「夕食、入らなくなるわよ?」

 こいついろいろ買いすぎだろ……どんだけ食べるんだ。少なくとも大きめな紙袋2つぐらいあるぞ。

「へ? あぁ……じゃあヒッキーにあげる」

 いらねぇつーの……なんで中途半端に口つけちゃうのこの子は。せめて半分こなら食べたんですけど……

「これどうしよゆきのん……」

「はぁ……少しだけね」

「いいの? じゃはい!」

「……」

「……あなたも手伝いなさい」

「まぁ食べられるけど」

 由比ヶ浜が手に持っていた肉まんを半分にして渡してきた。ほう、美味いなこれ。と思っていたらまた1個取り出して半分こしてきた。なんだか餌付けされてる気分だ。悪くないな。働かずに食べるご飯ちょー美味い。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「すごいねーここ!」

「えぇ。それに足元に灯篭が……」

 天龍寺の竹林。今みたいな日中は緑々とした竹林の隙間に日光が差し込み、夜になれば灯篭がライトアップされ幻想的な雰囲気を醸し出す。ちなみに天龍寺も世界遺産に登録されている。

「ここがいいよ! ここ!」

「何が?」

「告られるなら……」

 なぜ受動態なんですかねぇ……由比ヶ浜さん。

「ロケーションとしてはいいんじゃないかしら」

「だよね!」

「戸部が勝負するならここか」

 

 

 

 ☆

 

 

 

 修学旅行3日目にして思ったことは、秋の京都いいなってところだ。夕日が差し込み、落ち葉は地に落ち、すぐそこで架かっている木造の橋がなんとも言えない美しさを醸し出している。そして清らかに流れる川に合わせて落ち葉が流れて行く。それを見ながら川沿いを歩いていた。だがこれは散歩ではない。ある男に会うためだ。

「やけに非協力的だな」

「そうかな」

「そうだろ。むしろ邪魔されてる気がするけどな」

「そういうつもりじゃなかったんだけどな……俺は今が気に入ってるんだよ。戸部も姫菜もみんなといる時間も結構好きなんだ。だから……」

「それで壊れるくらいなら、元々その程度の物なんじゃねーの」

「そうかもしれない。けど、失ったものはもう戻らない」

「そんな上っ面な関係で楽しくやろうって方がおかしい」

「そうかな。俺は今の関係が上っ面だなんて思っていない。今の俺にとってはこの環境が全てだよ」

「いや、上っ面だろ。じゃあ戸部はどうなる」

「何度か諦めるようには言った。今の姫菜が心開くとは思えないから。それでも先のことは分からない。だから戸部には結論急いでほしくなかった」

「勝手な言い分だな。それはお前の都合でしかない 」

「なら……! 君はどうなんだ、君ならどうする……!」

「俺の話はどうでもいいだろ」

 きっと俺なら……なんて考えたところで無駄だ。俺と葉山は違う。戸部だってもちろん違う。俺の話は本当にどうでよくて、どうしようもないのだ。

 葉山は現状を変えたくない。今のままがいい。するとやはりああするしかねぇな……と軽く口角上げて立ち去った。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 天龍寺の竹林。灯篭のライトアップが始まった。ここで勝負を決めることになる。しかし戸部が海老名さんに振られるのは決定事項なのだ。だが最終確認はする。

「戸部」

「うぁ!? ヒキタニくんかーマジでっべーわーかなりキてるわー」

「なぁ、振られたらどうするんだ?」

「言う前からそれは酷くない!?」

「いいから早く答えろ。海老名さん来ちゃうだろ」

「そりゃ諦めらんないっしょ! 俺こんなテキトーな人間じゃん? けど今回はマジつーかさ」

「そうか。なら最後の最後まで頑張れよ」

「おーう! やっぱヒキタニくんいいやつじゃーん」

「ちげぇよバカ」

「ヒッキーいい事言うじゃん」

「どういう風の吹き回しかしら」

「そうじゃないんだよマジで。このままだと戸部は振られる」

 そう。これは冗談抜きで戸部は振られる。しつこいようだがこれは決定事項なのだ。やはり前々から考えたこの方法しかない。

「一応、丸く収める方法はある」

「どんな方法?」

「……」

「まぁ、あなたに任せるわ」

「うんうん!」

 海老名さんが来た。あとはタイミングを見計らって実行に移すのみ。戸部自身は告白に対してかなりの覚悟をしているだろう。

 だが他は? 彼らの関係を大事に思っているのは戸部だけではない。だから彼女はあんな依頼をしてきたのだ。だから葉山はあんなに苦悩していたのだ。無くしたくない。その手に掴んでおきたい。三者の願いはひとつだ。

「あの……さ、俺さ、その!」

「うん」

 戸部を振られないようにし、かつ彼らのグループの関係性を保ち、海老名さんと仲良いままにする。ならやっぱり方法はひとつしかねぇじゃねぇか。

「あのさ、……俺、俺……俺さ!」

「ずっと前から好きでした。付き合ってください」

「……え?」

 誰も言葉を発さない。そりゃそうか。告白を妨害したようなもんだからなこれ。しかし意外にも最初に沈黙を破いたのは海老名さんだ。

「ごめんなさい。今は誰とも付き合う気ないよ。誰に告白されても付き合う気はないよ。……話が終わりなら私はもう行くね」

「……だとよ」

「ヒキタニくんそれはないっしょー。いや振られる前に分かって良かったけどよー、いやないわーないわー……」

「まだ時期じゃないってことだな。今はこの関係を楽しむのが一番じゃないか?」

「そうねー、言うて今はって言ってたし! ……ヒキタニくん! わりぃけど俺、負けねーから!」

「……すまない。君はそういうやり方しか知らないと分かっていたのに、すまない」

「謝るんじゃねぇよ」

「はぁ……」

 奉仕部の2人がいる所に戻る。ごめんね、予想の斜め上を行くやり方で。

「あなたのやり方、嫌いだわ」

「ゆきのん……」

「上手く説明出来なくてもどかしいけれど、あなたのそのやり方、とても嫌い」

「わ、私たちも戻ろっか」

「そう、だな」

 人の気持ちを考えろ……か。それが出来るのならどれほど楽か。俺は効率を最重視し、なおかつ三者の思いを壊すこともなく終わらせたつもりだ。言われた仕事を全うしたつもりである。つまり俺は悪くない。むしろ仕事しすぎたまである。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 翌日、京都駅。あとは新幹線に乗って東京の方へ戻るだけだ。俺は海老名さんに呼び出され京都駅の屋上にいる。待っている間、この修学旅行を思い出していた。いろいろありすぎて疲れた。明らかに脳のキャパシティオーバーである。まあ家に着くまでが修学旅行っていうし、新幹線乗ったら眠りにつこう。

「はろはろー。お待たせしちゃった?」

「いいや」

「お礼、言っておこうと思って」

「別に言わなくていい。相談された事については解決していない」

「表向きはね。でも、理解してたでしょ?」

 男子同士は仲良くというのは、自分から男子から遠ざけてほしい、ひいては戸部の告白を未然に防いでほしいということだ。これは葉山に相談したのだろう。だから葉山は悩み、ああいう中途半端な態度を取るしかなかった。

「今回はありがとう。助かっちゃった」

「戸部は、ダメでゴミカスみたいな人間だが、良い奴だと思うぞ」

「無理無理ー……だって今の私が誰かと付き合っても上手くいきっこないもん」

「そんなことは……」

「あるよ。私、腐ってるから」

「ならしょうがないな」

「そう。しょうがない。……私、ヒキタニくんとなら上手く付き合えるかもね♪」

「冗談でもやめてくれ。あんまりテキトーなこと言われるとうっかり惚れそうになる」

 

 

 

 ☆

 

 

 

 大事だから、失いたくないから、隠して、装って、誰もが嘘をつく。けれど、1番の大嘘つきは……この俺だった。この事実を思い出したくないのだから俺は新幹線に乗ってすぐ眠りについた。それから約2時間。東京駅に着いた。

 あとは快速乗って……

「やっほー比企谷くん! ごめん! 先に行くね」

「はーい。バイバーイ」 「じゃあな!」

 若宮と話していた2人は前に言っていた別のクラスにいる友達か。髪の長い方はなんとなく雪ノ下に似てるような……

「おう」

「比企谷くんはもう帰る感じ?」

「あぁ、疲れたしな。俺は快速乗って帰る」

「じゃあ一緒に行こ?」

「あの二人はいいのか? 一緒に帰るとかそういうんじゃねーの?」

「大丈夫だよ。2人は東京駅を散策してから帰るって」

「ほーん。んじゃ乗るか」

「うん!」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 快速に乗ってから20分ほど。江戸川の橋梁を渡り、数日ぶりの千葉県である。やっぱ千葉最高。生まれ育った地は離れたくないね。

 私は予め数本持ってきたマッ缶を飲みながら車窓を眺める。しかし快速いいよね。普通の切符でさっき乗った新幹線みたいな向かい合う座席があるんだもん。ちょっと椅子硬いけど……

 比企谷くんはちょっとボーッとしてるしやっぱり疲れてるのかな? まぁ旅行を楽しんだというよりも仕事で切羽詰まってたもんね……そんな比企谷くんにご褒美です! 

「……飲む?」

「んぁ? いやいいよ」

「疲れたんでしょ? 疲れた時はマッ缶だよ! 千葉県民のソウルドリンク! それに数日ぶりの千葉県だよ? 乾杯しなきゃ!」

「……なんだそりゃ。じゃあありがたく頂くわ」

「じゃあ……修学旅行お疲れ様! はいかんぱーい♪」

「……かんぱーい」

「うめぇ……これだよこれ」

「でしょでしょ」

 

 

 

 ☆

 

 

 

 家の最寄り駅に着き、家の方に向かう。そしていつものセブン。家に着いてないのにもうただいまって感じ。洗濯もんは出してベットで惰眠を貪りたい。でも新幹線で寝たから眠くないんだよな……

「じゃあ私こっちだからまた学校でね!」

「あぁ、またな」

 こうして家に着き無事修学旅行は終わった。

 若宮から『今度の学校、比企谷くんのお弁当も作ってこようか?』というメールが来たのはまた別のお話。




ほとんど原作沿いでセリフが少し多いかなーと思いました。しばらくはそれぞれのキャラの日常回を書いて行こうと考えています。それでは。

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