よく分からない会議に初めて参加したときから2週間近く経った。
結論から言おう。何の成果も!!得られませんでした!!某団長さんの気持ち分かった気がする。
2週間近く経って何も決まってないって逆にすごいと思うんだよね……。例えば学校行事は遅くともLHR使って3、4日でだいたいの方針を固めて、あとは2日ぐらいまでには係とか決まるじゃない?そしてあとは行事に向けて準備をするでしょ。
つまり何が言いたいかと言うと、2週間近く経って何も決まらないここの会議は学校行事の準備などよりひどい。時間の無駄を極めてりって感じ。
なーんてくだらないことを考えながら私は生徒会のみなさんと書類を処理している。てか海浜総合。手空いてんならちと手伝えやゴルァ、とリトル楓奏は言っております。私は決して口にしていない。私は悪くない。社会が悪い。いやあいつらが悪い。
「これで大丈夫かな?」
副会長に確認を貰うために彼の席の方へ移動した。
「うん。ありがとう……というか手伝ってもらって本当に助かるよ」
「ううん。帰宅部だし暇してるぐらいならって感じで来たから気にしなくていいよ」
そんなときに周りが少しがやがやし始める。と思っていたらランドセル背負っている子供たちが来た。というか本当に近隣の小学校まで呼んだんだ……。人手が足りたとしても何も決まってないから大した仕事の与えようもないと思うんだけど。
お、来たかといった感じで席から立ち上がって玉縄は小学生の方へ歩いて行った。
まあ、さすがにどういった作業をお願いするか説明ぐらいはするだろうと私は特に気にせず自分の作業をしていた。そう、数十秒前まではね。
「君たち一人一人のマンパワーに注目している。これから一緒に決めていこう。積極的にいろいろ言って欲しい」
「「「よろしくお願いしまーす」」」
…………ん?要するに一人一人の出来ることに注目している、これからやることを決めよう。そのためには積極的にいろいろ言って欲しいと。うん、それで?
いやなに成し遂げたぜ……みたいな感じで席に戻ってんの?!あなたのご所望で近隣の小学校の小学生たちを呼んだんでしょうよ?!百歩譲ってこれからやることを決めるにしても呼ぶだけ呼んどいて放置って何?!ほら小学生たち困惑してんじゃん?!なんなら会議室の入り口で帰ってきた比企谷くんと一色さんも困惑してるよ?!
「お、おかえりー……」
「お、おう。あの子達は近隣の小学生だよな?」
「うん。ついさっき向こうの生徒会長が挨拶?説明?してた……?」
「なんで疑問系なんだよ……。つかアレ呼ぶだけ呼んで放置かよ」
同じ考えでよかったぁ……私だけかと思ってたよ。と心の中で少しホッとしていたら1人の小学生が私の方に来た。え?私?
「何をやったらいいんですか?」
「えっと……どうしようか?」
「小学生の指示出しどうする?」
「えっと、何も決まってないんですよねぇ……あっちに確認した方がいいんですかね」
「対応はこっちで受けちまった以上、こっちで対応するしかないだろ」
「そうですよねー……」
「そっか……。ならとりあえず邪魔にはならない、でも必要なものだね。飾り作りとかならそういうの出来るんじゃない?」
「そうですね……。じゃそうします」
ひとまずはこれでいいんだけど、肝心な中身を決めて行かないとこの先どうにもならない。
☆
比企谷くんが向こうの会長と話してたら今から会議始めることにしたみたい。
「グラウンドデザインをみんなと共有出来たところで、今日はもっとクリエイティビティな部分をディスカッションして行こう。クリスマスらしく、なおかつ僕たちらしいことだね」
「クラシックなクリスマスコンサートなんかは地域のイベントのスタンダードって感じがするよね」
あぁ、こりゃ平行線のまま話し進まないなこりゃ。カタカナ語だけは相変わらずペラペラ飛び交うけどね。
「ジャズの方がクリスマスらしいんじゃない」
「でも若いマインドも加味した方がいいんじゃないかな。バントとか」
「それならいっそのこと聖歌隊とかパイプオルガンとか借りて」
聖歌隊ならまだしもパイプオルガンどうやって持ってくるの?バカなの?仮に何かすごい力働いて持ってきたとしてもどこに置くんだよ。会場は教会じゃなくてここ市のコミュニティセンターだよ?
「よし、一度検討しよう」
「この中から選んだ方が早いんじゃないの?」
私は思わず口にしていた。実際選んだ方が早いと思うし、何より中身いい加減決めないと進めようが無いし時間も限りある。
「直ぐに意見を否定するより、みんなの案を取り入れて全員が納得できるもの作るべきだよ」
「いやでもねぇ……」
私はいつの間にか少しイラつき始めた。結果はさておき多少の遠回りなチャレンジに対して私は否定しない。なぜなら悪いことでは無いと思うしそこから学べることだってあると思うからだ。でも今こうして明らかにやって無意味なことは嫌い。何より時間を無駄にするのは1番嫌い。
「系統的に近いものもあるし、一緒にやる余地はあると思うんだ」
「音楽系はまとめて、色んなジャンルのコンサートというのはどうかな」
「まとめるという観点で見ると音楽とミュージカルは親和性高いよね」
「いっそ全部やって映画にするのは」
「じゃミュージカル映画とかは」
平行線で一向に進まない会議が続いていたら外はすっかり暗くなり、今日の会議は終わりを告げた。見ての通り結局何も決まらなかった。
エントランスにある自販機でブラックコーヒーを買い、外の空気吸いながら休憩を取った。
「うー寒っ……」
思わず声にしてしまうほど冷え込んでいた。しかも割と東京湾に近いから時折海側から風が強く吹くときもある。でも……
「暑いよりマシかな。寒空の下暖かい缶コーヒー飲むと疲れた身体に染み渡る感じが好きなんだよね」
誰に説明にしてるのかわからないけど思わずボソッと口にしていた。
「なにボソボソ言ってんだ?」
「ん? え、あ比企谷くん!? びっくりしたぁ……」
「そら悪うござんしたな……なんか残りの書類整理とかは生徒会で済ますから帰っていいってよ」
「ほんと?じゃあ鞄取ってくる」
「おう」
私は鞄を取って再び入口に戻ってきた。そうしたら比企谷くんは私の方に手を差し伸べてきた。
「ん。ありがとね」
駅まで歩く時、私の鞄は比企谷くんの自転車のカゴに入れてもらってる。近いし別にいいんだけどなんか比企谷くんは反射的に手を差し伸べちゃうみたい。
そしていつも通り駅の大通りを歩き、決まって彼は車道側を歩く。
ほんと何気に紳士だよね……そういうところ結構好きだよ。
「そういえば比企谷くんはいきなりじゃあなとか言って帰らなくなったよね」
「ん?あぁ、どうせお前から帰ろうとか言い出すだろうから諦めた」
「諦めた?!……もしかして嫌だったりする?」
「いや……まぁ本気で嫌だったら無視して帰るけどな。そのなんだ、別に嫌ではない」
「ほんと捻くれてるなぁ……。ま、私はこの時間結構好きだけどね♪」
「……さいですか」
それからくだらない話から始め、クリスマスイベント会議についてお互い愚痴をこぼしていたらいつの間にか駅に着いた。
「鞄ありがとね。じゃまた明日!」
「おう。じゃ、気いつけてな」
「うん。バイバーイ」
ちょうど電車が来そうだったので少し足早にホームへ駆け上がって東京行きの電車を乗り込んだ。
ドア脇に寄っかけて夜の真っ暗な東京湾を眺めてた。見えるのは車内の光で反射して映る私と時々見える港の明かりぐらいだった。
「夕方だったらもっと綺麗なのに」なんて自分らしくないことも思ったりしていた。あの時クリスマスイベントの手伝いを誘われて参加したけど、私はちゃんと役立っているかな。何より会議があんなに酷く進まなくて苛立ちを覚える私がいる。普通ならイベントに向けて私たちも準備を始める頃合なのに、未だに何も決まっていない。
多分だけど海浜総合の人たちは……いや、あの生徒会長は決断するのにビビっているんだ。ビジョンを求めてるとか大層なことを言っているけど本当は決定するというのが怖くて、もし失敗したらと考えいつまでも決を取らない。そして責任問題を分散させようとズルズル引きずり込もうとする。
さらに一色さんは1年生であっちの生徒会長は2年生。同じ生徒会長でも年下の一色さんは完全に向こうに対して遠慮を持ち、とことんイエスマンと化している。あくまでも総武高校側の総合的な決定権を持っているのは生徒会長の一色さん。
このままだとこちら側がはいはいと向こうの話を頷くだけで何も出来ずどの道失敗で終わる未来か見える。
それこそ奉仕部とかにヘルプを求めるか……いや、この件は比企谷くんは個人で承っていると言っていたからやめた方がいいっか。
私にもっと何か出来ることはないだろうか。ただひたすら生徒会のみなさんと書類整理すればいいのだろうか。でも心の中ではこの現状をどうにかしたいと思っている。
でも私にそんなこと出来るのか、そんな思考がずっとぐるぐる頭の中を駆け巡っていたら家に着いた。
お母さんにどうかしたの?と聞かれたぐらいぼうっとしていたらしく、いつの間にか私はご飯食べ終わっていた。
シャワー浴びてもスッキリせず、ベットに寝転んでも思考の海に沈んでいた。
「私にできることは、これだけなのかな……」
それだけ呟いて眠りについた。
☆
次の日。昨日までの冬晴れから変わって朝から雨。ただでさえ日が当たらないと寒いのに雨である。
私は左手で傘を持ち、右手を使ってマッ缶を飲みながらコミュニティセンターに向かっている。
いい加減そろそろ説得するなりして会議を進めるべきかと考えてる時に後ろから走ってくる足音が聞こえた。邪魔になるかなと思い右の方に寄った。
「あ、比企谷くん」
「おう」
「この天気はさすがに自転車じゃないっか」
「まあ、合羽着ても濡れそうな気がするしな」
「朝は雨足強かったもんね」
コミュニティセンター着いたらエントランスにある傘ぽんに傘を差し、ガチャっと手前に引いた。そう。雨の日のショッピングモールとか飲食店にもよくあるあれだ。
傘ぽんってGoogle先生に聞いてみたらか何なのか分かるよ。というか名前通りだからさすがに分かるよね?
会議室に着いたらいつもの席に座り、借りたパソコンで作業を始める。具体的に何をするかと言うと昨日言っていた様々なアイディアの中でそれぞれ出来るか出来ないかの仕分けとおよそ予算をまとめている。
まあ始める前から大半は予算的に無理って予想はついてたけどね。というか結果は概ね予想通りでした。本当にありがとうございます。
「小学生たちの飾り作り終わりそうなんですけど、次どうすればいいんですか?」
「ツリーの組み立てとかは?本番まで1週間ぐらいだしちょうどいいだろう」
比企谷くんと一色さんの会話をチラッと聞こえたけど特に気に留めず向こうの会長さんのとこに行った。
「色々あったアイディアはこっちで精査した。出来そうなものと出来なそうなものに分けた。ま、大半は予算的に出来そうにないけどね」
「お、ありがとう。これで問題点はハッキリしたね。じゃあどう解決するかみんなで考え」
「さすがにそれは無理。1週間しかないんだよ」
私は被せ気味で少し強めに言い放った。
「うんうん。バントとかは外注で案外頼めるし、組み合わせ次第で僕らなりのイベントになると思うんだ。だからまずみんなと検討しよう」
「……次の会議でいい加減に決めないと作業的に無理だから、そこだけお願いね」
「もちろん」
本当に分かってんのかこいつ。これはもう覚悟決めて次の会議で決着つけるしかなさそうだなぁ……。
ひとまず自分の席に戻るときに比企谷くんと1人の小学生の女の子で飾り作りをしているの見えた。どっちも何となく雰囲気が似てるし親戚の子だったり?とかどうでもいいことを考えていた。
生徒会からもらった仕事を黙々とこなしながら、今度の会議どうするかずっと考えていた。まずどうやって決を取らせるか、そしてどうすれば一色さんはあの会長さんに対して遠慮を無くせるか色んな方法を考えたけどどれもパッとしない。とにかく一色さんのイエスマン状態をどうにかしないと会議は一生平行線で終わる。だからまず目標はこれに絞ろう。
そしてその日は書類整理などで終わった。勝負は明日の会議しかない。
私は帰り支度をして先に駅前のカフェへ向かった。単純にコーヒーを飲みたいというわけではなく、一色さんとサシで話したいと思ったからだ。
時間も少し遅いし、断られるかなと思ったけど案外すんなり話に乗ってくれた。
あとちょっとかなーとチョコクロをもぐもぐ食べてたらカフェラテを持った一色さんがカウンター席の隣に座ってきた。
「すみません。お待たせしちゃいました?」
「ううん。時間も割と遅いのに誘ったのは私だし、むしろそのカフェラテのお金は私が払うべきだったよ」
「いやいや、奢って貰うのは嬉しいですけどさすがに申し訳ないです」
一色さんは少し苦笑いでそう返してきた。時間もあまり取りたくないし、ちょうど周りお客さん少ないうちに本題に入るか。
「ぶっちゃけるけど、一色さんは向こうの生徒会長……玉縄だっけ。そいつに対してやっぱり少し遠慮してるとこあるよね?」
「うぇ!? えぇ……はい、そうですね」
核心突かれてびっくりしたのか第一声が少し大きかった。別に説教をしたいわけではない。どうにかして一色さんに生徒会長としての自信を持たせイエスマンをやめさせたいんだ。
「まあ一色さんは1年生だし向こうは2年生だから気持ちは分かるよ。同じ生徒会長とはいえ向こうが先輩になるわけだし」
「はい……」
「まぁ、説教をしたいわけじゃないんだ。私が言いたいのは一色さんにもっと気持ちを強く持って欲しいことなんだ。逆に考えてみて。一色さんは1年生なのに生徒会長やってるんだよ?もっと誇ってもいいと思う。なんならドヤ顔キメまくっていいまである」
「は、はぁ……」
「こちとら1年で生徒会長やってんだぞ!って意気で会長やってほしいなと私は思う。確かに1年生だから不安で分からないことも多いのも分かる。でもイベントのうちは生徒会のみんなのほかに比企谷くんや私が後ろに付いている。だから一色さんは遠慮せず会議でバンバン意見言って欲しいの。同じ生徒会長同士なんだから先輩とか後輩とかそういう考えなんてどっか捨てちゃってさ」
「……はい」
お、いい線かな? 力強い返事貰えた。とりあえず最後に明日のことも話そう。
「それと明日の会議のことも話そうと思って一色さんを誘ったんだ。分かってはいると思うけど当日まで残り1週間ぐらいしかない。明日の会議では絶対決を取らないといけない。だから一色さんにお願いしたいことがあるの」
「わたしに、ですか?」
「うん。さっき言った通り向こうの会長にはもう遠慮しないでバンバン意見を言って欲しい。そして向こうになんと言われようが折れないで欲しい」
向こうはなんかしら言ってはこちらの意見をやんわり否定して水に流そうとするの目に見えている。一色さんにはイエスマンをやめさせてなんとしてもこちら側の意見を通して貰うのが私の狙い。
「私がどうにかして会議を総武高側に主導権を握れるようにするから私に合わせて貰える?」
「でもそうしたら向こうとの関係が……」
「そんなの知ったこっちゃないよ。どうせこれっきりの付き合いなんだろうし平気だよ。多分。それに正直あいつら嫌いだし。中身のない言葉ひたすらを並べてるだけで時間の無駄だよ」
「うわぁ……ぶっちゃけましたねぇ」
「あいつらは散々私たちの貴重な時間奪って来たんだ。やり返そうぜ」
「なんかヤンキーみたいです先輩……でも、分かりました。時間ないですしね」
☆
なんとか一色さんは話分かってくれてよかった。これならなんとかやっていけそう。時間はもう遅いので飲み物飲み終わったらすぐ片付けて帰路についた。
カフェへ向かう時はポツポツ降っていたけど今はすっかり雨は上がっていた。
「一色さんも方向同じ?」
「逆ですね。千葉みなとで乗り換えます」
「そっか。時間遅いのに誘い乗ってくれてありがとね。じゃお気をつけて」
「いいえ。若宮先輩のおかけでもっとやる気と自信が湧いてきました。こちらこそありがとうございます。あ、それでは明日もよろしくお願いします!」
一色さんは私に軽くお辞儀をしたあと軽く手を振りながら向こうの階段へ足早に歩いて行った。どうやら電車がそろそろ来るみたいだ。
一色さんからは見えてるか分からないけど私も手を振り返した。
私も数分後に来た一色さんと逆方向の電車に乗り込み、定位置のドア脇に立ち外を眺める。相変わらず車内の明かりで反射して私の顔が映っている。
でも昨日思ったのと違って、今日は時々見える港の明かりが綺麗だなぁと思った私がいた。
長らくお待たせしてすみません。なかなか書く時間がなくだいぶ間開きました。次は割と早めに書けそうなので少々お待ちください。それでは。