ベストプレイス   作:自由人❀

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お待たせしました。続きです。それではとぞ。


12月24日

 12月24日。今日はクリスマスイベントの当日であり、同時に冬休みに入った日でもある。そして忌まわしき世界共通の行事、クリスマスのイブである。しかも今日は24日だからむしろ明日が本番の人も多いだろう。まあこの2日間で本当に辛いのはサービス業の仕事をやっているお兄さんたちだろう。いくら接客しても9割以上カップルなので本当に心中お察しします。南無三。

 じゃああと1割ほどはなんなのかって?俺だよ。このあと1人でサイゼ行く予定だから充分1割だろ。違うか?違うな。

 本来は例年通り小町と過ごす予定だったが、そろそろ受験ということで友達の家に泊まり、思いっきり遊ぶらしい。遊びすぎて勉強が頭から無くなってしまわないかそれだけが心配だ。まあきっと大丈夫だろう。自慢の妹だからな。

 イベント開始まであと1時間ほどで今現在、最終確認と準備を行っている。俺の仕事はイベント中の指示出しがメインなので今はまだ暇な部類なのである。時々呼ばれたら手伝う程度だ。

 しかし今日までマジでしんどかった。よく1週間弱でここまで漕ぎ着けたと思う。演劇のセットの作りから始まり、演劇に出る子供たちの衣装作りにこれからケーキやクッキーも作られる。

 とりあえずすごいのが助っ人として来た雪ノ下と川崎である。雪ノ下はケーキ作りなどの調理の総監督にあたり、川崎は衣装作りの総監督にあたる。どちらもこの道10年のプロにしか見えないほどの仕事の早さである。

 ……こいつらならこの道10年ってギリ有り得るかもしれない。

 由比ヶ浜はクッキーの袋詰めをしていた。もちろんケーキなど食品には1ミリは触れさせてない。なにかやらせたら冗談抜きで人命に関わる救急車案件になりかねん。なんせクッキーをダークマターにしてしまう恐ろし子なのだから。

 そして若宮もすごい。彼女は料理が得意ではあるがお菓子は作ったことないらしい。それで何がすごいかって初見で雪ノ下からもらったレシピをほぼその通りに作り上げたのがすごいと思う。そんな彼女はクッキーを作りつつ、雪ノ下のサポートをしていた。

 ちなみに俺は主に演劇のセットや作りをやっていた。男だし体力仕事がメインだった。

 それで皆それぞれの得意な分野で奮闘した結果、今に至る。土日出勤なしでここまで来たので実質的に1週間きっかりで出来上がったのである。

 助っ人の能力(ステータス)がチートすぎて俺いらないんじゃない? とかいうラノベが出来そうな勢いである。略してスケステ。多分売れない。あ、絵師は出来ればカントクさんでお願いします。

 今日までのことを思い出していたら声掛けられた。そろそろ開始か、と思ったら若宮だった。

「やっほー。なんかぼうっとしているけど大丈夫?」

「あーいや、よくまぁ1週間でここまで漕ぎ着けたなってふと思ってな」

「ほんとね……私と雪ノ下さんはまだこれからだけど既に疲れたよ」

「とか言いつつ生地? をかき混ぜてるじゃねーか。てかクッキー作るの初めてなんだろ?よく作れるもんだわ」

 料理に慣れてる若宮からすると簡単かもしれんが、俺にはできる気がしない。しかも初見ノーミスクリアというのが素直にすごいと思う。雪ノ下という監督の元で。

「凝ったお菓子は無理かもだけど、単純なチョコチップクッキーとバタークッキーだしね。クッキーも料理と同じでレシピ通りにやれば案外出来るもんだよ」

「そういうもんなのか? まぁ普通にすげぇと思うが」

「えへへ。ありがと。多めに作るからよかったら食べてね?」

「お、おう」

 守りたいこの笑顔。そしてどっかの誰かさんに言い聞かせてやりたい。どうしてあの子はクッキーをダークマターとして生成していまうのか。ああ見えて闇属性なのか? 

「そろそろ入場を始めますので皆さん位置についていてくださーい」

 一色の指示によりいよいよ本番である。さて働きますか。働きたくないけど(矛盾)

「じゃ最後まで頑張ろうね」

「おう」

 無線に応答し、そうして俺は舞台裏へ向かった。

 

 

 ◇

 

 

 私は小学生たちが演劇の途中に、サプライズとして小学生たちがお客さんに配膳するケーキを作る雪ノ下のサポートをしたり、ちょっとしたお土産のクッキーを作るのが私の仕事である。

 割と朝早くから作業を始めてるので正直に言うと少し疲れた。雪ノ下さんはほんとよくまだ作業続けられるよね……。集中力すごいや。

「?どうしたのかしら」

「え、あぁ、朝からずっとケーキ作ってるのによく集中力切れないなぁって……」

「与えられた仕事をこなしているだけよ。クッキーの数もいい具合になってきたしそれを焼いてる間休憩しててもいいわ」

「じゃあお言葉に甘えます~……」

「かなりお疲れね……」

 実はあまり時間なかったので昼食べそびれている。空腹感もあってか私は集中力切れ始めていた。

 エプロンを脱ぎ、センターの向かいにあるコンビニへ向かった。それでセンターの外に出たけど昼間とはいえ寒い。しかもアウター着るの忘れてた。ちくせう。ちょっと我慢すればいいっかと思い少し駆け足でコンビニ向かった。

 コンビニに着いて適当な菓子パンを3つほど取り会計を済ませて、足早にセンターの方に戻った。12月末の気候で上がワイシャツ1枚じゃやっぱダメだ。せめてブレザーぐらい着ないとキツい。

 センターのエントランスにある自販機でブラックコーヒーを買って隣にあるベンチ座り、少し遅めのランチである。

 2つめの菓子パンをモグモグ食べてるころ、遅れてしまったのか2人ほどお客さんが来た。その2人のお客さんは最近会ってないよく見知った顔だった。

「ん?」

「あら?」

「およ?」

 向こうも気づいたのか小さい声出ていた。

「美笹も夏鈴も久しぶりー。最近忙しくて全然会ってなかったね」

「うん。久しぶりだね」

「ほんと久しぶりだよなー。1ヶ月ぐらいかな?」

「見た感じ上手く行ったみたいだね」

「なんとか成功したかな?」

 本当に「なんとかなった」という表現が1番しっくりくる。それぐらい大変だ(現在進行形)

「こないだまで結構大変そうだったよね」

「結構どころがマジで大変だったよ。実際演劇の小道具やら作り始めたのは1週間前ぐらいだからね?そして今私は休憩してるけど現在進行形で奥でクッキー焼いてるよ」

「え?」

「マジ?」

「マジマジ。この後ケーキとか出るからよかったら席かけてよ。多分まだ空いてるとこあるだろうから」

「うん。よかったら後でお話しようね」

「うん!」

「じゃ、頑張ってな楓奏!」

「いぇっさー」

 そうして2人は会場の方へ入っていった。そっか。わざわざ来てくれたんだね。

 冬休み中たくさん遊ぼうね。と心の中で伝え、2つ目の菓子パン平らげた。

 コーヒーも残り少なかったので飲み干してゴミ箱へ捨てた。

 そしてあたたかーいミルクティーを買い、手持ちのビニール袋に入れて調理室へ戻る。

「ただいま戻りました~。はい雪ノ下さん」

「えぇ、おかえりなさい。……これは?」

「少しでも食べないと持たないよ?ちょっと腹持ちがいい菓子パンとミルクティー買ってきたから」

「お気遣いありがとう。お金はいくらだったかしら?」

「お金はいいよ。私が勝手に買ってきただけだから」

「それでも申し訳ないわ」

「うーん……。あ、じゃあどうしてもと言うなら今度奉仕部へお邪魔していい? 雪ノ下さんが入れる紅茶美味しいらしいと聞いて気になってたんだ」

「うちは喫茶店じゃないのだけれど……でもそれでいいならいいわ」

「じゃ商談成立。ほい、どうぞ」

「えぇ、ではいただくわ」

 クッキーを焼いている最中なのでもう少し休憩を取ることにした。雪ノ下さんもやはりお腹がすいていたのか少し勢いよく食べてた。

「言われてみればお腹がすいていたわね」

「私は空腹感で集中力切れ始めてたからさっきの小休憩は助かったよ」

「あら、ごめんなさい。昼休憩はちゃんと取った方が良かったかしら?」

「さっき補給したからへーきへーき」

 クッキーもそこそこの数焼かないといけないから正直休憩する時間があまりないから仕方ない。ま、今休憩取れてるし結果オーライだ。

「……食べ終わったことだし、あともう少し頑張りましょう。ところでそちらの進捗は?」

「あれとあと1回焼いたら少しゆとりのある数になるよ」

「ではそれを焼いたら終わりにしましょう。余ったら持って帰るなりすれば大丈夫そうね」

「だね。じゃ配膳をする指示飛んできたらそっち手伝うね」

「ええ、お願いするわ」

 さてあとひと踏ん張りだから頑張ろう。数的にはこの大きな鉄製のトレイの3分の2といったところか。でも生地を混ぜる左手が結構疲れきてたりする。お菓子作るのこれが初めてだし多分これ筋肉痛になるかも……。

 あ、プロテイン飲めばいいじゃん。(自己解決)これはトレーニングということで左の前腕屈筋群が鍛えられる。あ、でも右腕も鍛えないとバランス悪いか……。というかそもそももっと筋繊維を壊す勢いでやんないと意味ないよね。

 なかなか脳筋な思考をしていたら生地がいい感じに混ぜ終わった。この生地を冷蔵庫に入れて40分ほど寝かしてっと……。

『一色です。雪ノ下先輩、若宮先輩そろそろなのでスタンバイお願いします』

「若宮です、了解しました」

 キリのいいところで無線飛んできたので雪ノ下さんのサポートに付いて、無線を無難に返した。どうでもいいけど無線ってなんかワクワクするよね。

 冷蔵庫からケーキを取り出す。それを大きな調理台に置いていくき、雪ノ下さんがケーキを小学生たちへ渡して行く。

「ケーキお願いね」

「はーい!」

 雪ノ下さんは微笑んで小学生へケーキを渡していく。しかし絵になるなぁ……。絵画の1枚でも出来そうである。

 全てのケーキ配膳されたので自分の作業に戻る。焼き上がったクッキーをオーブンから取り出し少し冷ましている。暖かいうちに入れると袋の中で水蒸気でき、その水分で少し食感が変わってしまう、らしい。

 数分ほど放置したら小分けの袋に決まった数を入れていく。

「キリのいいところでいいわ。ずっと裏方作業だけじゃつまらないだろうし、せっかくだから会場の方へ顔出したら?」

「んー。なんか申し訳ないからこれ終わったら洗うの手伝うよ?」

「もうすぐ終わるから大丈夫よ。私もあとで行くから行ってらっしゃい」

 そう言われたので袋詰め終わったらエプロンを畳んで置いて会場の方へ向かう。そーっと扉を開けたら演劇のフィナーレに差し掛かっていた。1番手前の左側に先ほどの2人組がいた。私はそこの席に掛けた。

「楓奏おつかれー」「お疲れ様」

 そんな2人から労りの言葉をもらった。気持ちだけ少し回復した。

「ケーキ食べる?というか2人じゃホールはちょっとキツいかも」

「じゃ頂こうかな。地味にお腹空いたし」

  菓子パン食ったじゃんって?あれはちょっとだけの腹ごしらえなだけで足りるわけないでしょ。デブるよって?たくさん走るからへーきよ。

「じゃあいただきまーす」

 もぐもぐ……ん?え、なんやこれごっつう美味いやん。疲れて身体が糖分欲しがってるのもあるけど、シンプルないちごショートでめっちゃくちゃ美味しい。お店で並んでもおかしくないと思うよこれ。なんなら今お金落としてもいいレベル。

「めっちゃうめぇ……」

 頬が多分だいぶ緩くなってると思う。周りがまだ暗くて助かった。だって美味しいもの食べると笑顔になっちゃうよね。仕方ないよね。

 

 

 ☆

 

 

 少し久しぶりの談笑をしたらふたたび持ち場へ戻る。最後の分のクッキーが焼き上がり、少し冷ましたら袋詰めを始める。テーブル×満席×ひと袋(6つ)分が最低限必要な数だ。念の為多めに焼いてあるので少なからず余るはず。余った分は上手く数割ってみんなに配る予定だ。

「これでよしと」

 時間もちょうどいいのでエプロン外して、このたくさんのクッキーを配る場所まで運びそこでスタンバイする。

 しばらくすると海浜総合高校による演奏が終わってからしばらくして、お客さんがぞろぞろと帰り出す。

「本日は来ていただいてありがとうございます。こちらを差し上げますので良かったら召し上がってください」

 よし噛まずに言えた。この調子で帰って行くお客さんへどんどん渡して行く。老若男女問わず色んな年齢層の人々来ていたんだなと改めて思う。

「お、楓奏じゃん。サイゼ行こうかって話になったんだけど来る?」

 割と身長低い夏鈴は私に気づいてそう言った。最近あまり行けてないからイベント終わったら夜ご飯食べに行こうかなと思っていた。てかあまりにも機械的にクッキーを配っていたものだから夏鈴のこと一瞬中学生に見えたのはここだけの話。

「あーいいけどもうちょっと時間かかるよ?」

「おけおけ。邪魔になるだろうからそこで待ってるよ」

「うん。あれなら先に行ってていいよ。駅前のとこでしょ?」

「いや、待ってるよ」

「そっか。じゃちょっと待ってて」

 2人は自販機の横のベンチに掛けて私を待つ。なんか友達に仕事しているところ見られるのは少し照れる。

 お客さんが完全に居なくなったの確認したら調理室に戻り、後片付けと余ったクッキーを上手く数割って改めて袋詰めをした。これで私個人の仕事は終わった。その後会場の後片付けと掃除を行い、こうしてイベントは幕を閉じた。

 奉仕部の3人と一色さんは1回学校へ戻るということなので、余っていたクッキーを4人にそれぞれ渡してから帰ることにした。

「あ、待たせちゃった?」

「大丈夫ですよ。この度本当にありがとうございました。皆さんのおかげで無事成功出来ました」

「いや、一色さんが頑張ったからだよ。……ほいクッキーどうぞ。まあ最終的に余ったもので申し訳ないけど」

「わー、ありがとうございます」

「ほい、奉仕部の3人もどぞどぞ」

「ありがとー! 美味しそうだねー!」 「ありがとう」 「おう、サンキュな」

 3人それぞれの感謝の言葉をもらった。嬉しいけど少し恥ずかしい。チラッとスマホを見るとあの2人がそこそこ待っていることに気づく

「あ、ごめん。そろそろ行かないとだから先に行くね」

「はい。お疲れ様でした」

「うん。じゃみんなまたねー」

 すっかり待たせてしまったと思いそそくさとエントランスへ向かう。2人はスマホゲームで白熱した戦いをしていた。

「もうちょい左かな……えいっ!」

「あ、ジリ貧……」

「え?うそ!?」

 You Lose(ネイティブ)が流れると共に夏鈴はしょぼーんとしていた。ほんとごめんね待たせちゃって。ちなみに自前のキャラクターを弾いてモンスターを倒すゲームなんだけど、惜しくも弾く角度が少しズレてモンスターの体力ゲージがジリ貧で残って負けたみたい。

「ごめん。お待たせー……」

「やっと来たかー……」

「気持ちは分かるけど、後でまたそのダンジョン手伝うから、ね?」

 とりあえず駅前のサイゼ向かうべく3人で歩き出す。こうして3人で歩くことがかなり久しぶりで少し楽しい。

 すっかりしょぼくれたた夏鈴に宥めるように隣りに歩く美笹。なんだか親子みたいだ。ゲームとかでギリギリで負けると落ち込むよね。気持ちはすごいわかる。なので、

「ほい、夏鈴。マッ缶」

「え?いいの?」

 しょぼくれた表情から一転して明るい顔になった。ちょうど1か月ちょっと前ぐらいだろうか、このクリスマスイベントの手伝いに参加する前にもこんなふうに3人で遊んでいたんだけど、その時に夏鈴もマッ缶にハマった。そう、こんな感じに。

「それよく飲むけど、おいしいの?」

「めっちゃ美味いよ?ちょっと飲む?」

 飲みかけだけどそのまま夏鈴に渡した。

「うん。じゃいただきます。んぐんぐ……。ぷはぁ」

「どう?」

「……なにこれめっちゃ美味しいじゃん!どこで買えるのこれ!」

 このとき、私はたしか「堕ちたな……」みたいな顔してたと思う。とりあえず気に入ってもらってよかった。

 とまぁ、こんな感じで見事にハマった模様。現在進行形でごくごく飲んでいる夏鈴がいる。

「うめぇ……」

「さすがに甘すぎて私はあまり好きになれなかったなぁ……」

 美笹はボソッと言った。彼女はコーヒー飲む時は基本的にブラックで、カフェとかでは気分によってたまにミルクや砂糖を入れるぐらい。てもエスプレッソをブラックで飲んだのはさすがに私もビビった。

 まあマッ缶ユーザーから言わすと確かにこれ(マッ缶)めっちゃ甘いわ。でもねこの暴力的な甘さ、身体に毒って感じかたまらないのよね。だけど乱用ダメ。ゼッタイ。(お財布的な意味で)

 

 

 ☆

 

 

 駅前に着き、駅のそばにあるビルの2階へ上がる。ここに大正義、サイゼリヤが佇んでる。いいかお前ら、サイゼリ「ア」じゃないぞ?サイゼリ「ヤ」だからね?ここテスト出るぞー。

 この時間にしては意外にも店内は空いていて、好きな席に座っていいとホールのお姉さんに言われたので適当なテーブル席に座った。

「3人でここに来たの割と久しぶりだよね」

「ね。前に3人でここに来たのは秋ぐらいだったと思う」

「……そう考えるともう冬どころが、あとちょっとで年末って考えると時間経つの早いなぁ」

 実に感慨深い。あまり言いたくないけどもう一年後には受験勉強真っ只中だ。受験以外に少なからず就職を選ぶ人もいるけど、どの道自分との戦いになる。はぁ……やだやだ。

 ピーンポーンを押して店員さんを呼び、みんなの注文を済ます。というか基本的に食べるもの決まっているので注文は一瞬で終わる。なんなら私1人の時は「こちらの席へどうぞ」と言われた時点で「ミラノ風ドリアとドリンクバーでお願いします」と呪文のごとく注文する。こうして店員さんを呼ぶピーンポーンを押すのもかなり久しぶりだったりする。

「ミラノ風ドリア3つとパンチェッタのピザ1つとドリンクバー3つでお願いします」

 ピザを除いて、ミラドリとドリンクバーは3人でほぼ必ず注文する。だって299円(税抜)でいい感じに腹満たされるとかコスパ良すぎるでしょ。私はたまにピザも注文するけど。

「そう言えば私たちいつも通りミラドリ注文してるけど、サイゼで他に好きな物あるの?」

「んー。パスタもとかピザもいいけどやっぱり安定のミラドリなんだよね。安いし」

「隣に同じく」

「なるほどねぇ……あ、飲み物取ってくるよ」

「「いつもので」」

 キレイにハモる2人。この2人の言ういつものというのは美笹がアイスコーヒー、夏鈴はコーラなのである。そんな私はいつも烏龍茶を入れる。

 てかいい加減ドリンクバーにマックスコーヒー導入しようぜ。導入したらもう割とマジで私毎日来ちゃうよ?コカ・コーラの機械だし、マックスコーヒーはジョージアだからありよりのありっしょ? 

 そんなふうに私が生きているうち導入されないか、切に願う私がいた。

「ほい、コーヒーとコーラ」

「サンキュー。あ、夏鈴はお手洗い」

「把握した」

「……あの、1つ聞きたいことあるんだけどいいかな?」

「どうしたの?改まって」

 改まって質問されるようなことあっただろうか?ふと自問自答をする。うん。特に今更聞かれるようなことはないと思う。好きな物や嫌いな物なんてお互い聞かなくても分かっている。それぐらいは打ち解けてると思う。そんな美笹は割と真剣に私に質問をしてきた。

「えっと、楓奏ってよく比企谷くんといるじゃない?」

「うん、そうだね」

「その、ぶっちゃけ楓奏って……彼のことが好きなの?」

「え?……好きってその、恋愛的な意味で?」

「うん。どうなのかなーって……」

「どうなんだろ……?自分でもわかないや」

 考えたことなかったなぁ……。でも実際どうなんだろう? でも一緒にいて楽しくて、気が合うし話も合う。なんなら同じ趣味を持っている。

 恋愛感情はさておき、彼と居ていつも楽しいなと思う。

「ただいまー。……どうかしたの?」

「え?あっいやなんでもないよ?」

「そうなのか?」

 夏鈴はお手洗いから戻り、注文していたものが来たのでそれらを食べる。ん。安心と信頼のこの味。

「やっぱさ、なんとなくだけど、2人のどちらかが悩みを持ってたりする?」

 夏鈴は素朴な疑問を飛ばしてくる。普段は少しアホの子なんだけど、変なとこで鋭かったりする。まあさっき私が少し考え込む顔つきでなんでもないよなんて言ったらそりゃ違和感でしかないか。

「あー……美笹が少し難しい質問してきたからちょっと考えてただけ。悩みとかそんな大層なもんじゃないよ」

「そう?ならいいんだけどね」

 とりあえずこの話は一旦置いておく方向性になり、話は変わりクリスマスイベントまでにあったことを話したりした。まあ主に件の生徒会長の愚痴になっちゃたけどね。私どんだけ嫌ってんだよ。自分でも思わず笑っちゃうレベル。

「もうね、ひたすらカタカナ語。意味わかって使ってんのって感じだよ。時々意味が重複していたし初参加から3日目あたりから呆れてた。夏鈴がそこにいたらそりゃもうポカーンとしているレベル」

「そりゃ大変だったね……」

「ねぇ?今しれっとバカにしなかった?」

「いやもうほんとそれぐらい訳の分からないものなの。それで準備期間の3分の2ぐらい潰れたからね?結果的にはどうにかなったけど、正直私はもうあれは関わりたくないと思ってる」

「うわそこまでか」

 食後のお茶会が私の愚痴大会になってしまう勢いである。それは流石によろしくないなと思いひとまずここまでにしておく。まだなんかあんのかよ、私。

「とまあ、こんな感じだったよ。ちょっとお手洗い行ってくるね」

「おけー。……やっぱさっきしれっとバカにされたような」

 

 

 ◇

 

 

 やっと飯にありつけることが出来る。クリスマスイベントが終わったあと、学校に戻り残った用事を済ましていた。すっかり日は落ち、寒い中てくてくと駅前のサイゼに着いた。

 正直に言うと空腹よら寒さの方がきてるので、そそくさとビルの中へ入る。ちょちょいと2階に上がれば到着。

 席まで案内されたらそのついでに注文する。うん。実に無駄のない一連の流れ。だって食べるもの既に決まってるのにわざわざピンポン鳴らしてから注文するのめんどくさいじゃん? それにこの方が早く飯食えるし。

 ホットコーヒーとスティックシュガー×5を取って席へ戻る。砂糖をぶっ込んでかき混ぜる。切実にドリンクバーにマックスコーヒー実装はよ。

 通常のおよそ2.5倍(当社比)の砂糖入ったコーヒーを飲む。甘くてうまい。これはこれで美味いが、マッ缶には遠く及ばない。練乳あればマックスコーヒーもどきはできるが店でやると迷惑行為になりかねない。

 マックスコーヒーもどき気になる人はおうちでやってね。はちまんとの約束だよ? 

「あれ?比企谷くん?」

 なんか呼ばれたような気がするけど気のせいか。気のせいじゃなくて俺じゃん。本に向けてた顔を上げ声のする方を見た。というか苗字にくんつけで呼ぶのは1人しか心当たりない。

「おう、若宮か。用事があって帰ったとかじゃないのか?」

「ううん。そこのテーブル席で友達と居るよ。だいぶ前にイオンのサイゼで会った2人だけど覚えてる?」

「あぁ、まあ何となくな。俺はおひとり様ディナーに洒落込むから友達んとこに戻ってやれ」

「……そっか。じゃ戻るね、バイバイ」

「おう。またな」

 ……一瞬少し苦い顔していたように見えた。まあ悩みでもあれば親しい友達に相談はするだろう。

 ミラドリを食べていたら店内が少しながら混み始めた。ボックス席に1人で座ってると気が引けるので食後のお茶飲んで少しゆっくりしたら帰る支度をする。

 

 

 ☆

 

 

 19時半頃の京葉線。上り方面だからか空いていて、席に座ったり立っている人がチラホラいるぐらいだ。

 2駅しか乗らないがこのあたりは駅間が少し離れているのでけっこう飛ばす。

 スピードに乗った少し古めな電車はモーターを唸らせては駅に止まり、そして次の降りる駅へ滑り込む。デカいイオンモールやメッセの最寄り駅、海浜幕張だ。

 商業施設が多くあり、イオンで買い物を楽しむ人やそこで働く人も多くいる。今のような時間帯では帰宅する人とかで少しごった返してる。

 人が多いからなんだって? 人が多い分トラブルって起きやすいもんなんですよ、ええ。だって現に目の前でトラブってるんだもん。しかも駅のホームで。

「……お前大丈夫か?」

 ホームで転んでしまっている少女がいた。とても幼いわけでもなく見た感じでは中学生ぐらいだろうか。そんな眼鏡かけた少し幼い容姿をした少女は飛び散ってしまった荷物をせっせと拾っていた。俺の足元にも散らかっていたので拾うの手伝った。

「ほらよ」

「あ、ありがとうございます……」

「まあ足元には気をつけろ。じゃあな」

 もう会うことは無いだろうと思いその場を去り、北口にあるバス停でバスを待つ。次のバスは10分ぐらいある。ガードレールに寄っかけてスマホで適当なまとめサイトを流し読みして時間を潰していた。

「あ、あの!」

「ん?」

 ふと顔上げるとさっきの少女だった。

「先程私の荷物を拾って下さった人ですよね?その……ありがとうございました……」

「あ、あぁ。わざわざ礼を言いに来たのか?」

「いえ、私もこのバス乗るのですが、バス停にいたので……」

「そうか。まあアレはたまたま足元に散らかっていただけだ。気にすんな」

 これ以降お互いどちらも言葉発さなかった。まあ当然だ。転んで荷物を散らかしてしまった少女と偶然足元に散らかっていたのを俺がそれを拾っただけの関係だ。たったそれだけの他人同士のような関係でしかない。

「……実は駆け込んだ人にぶつけられてしまって転んじゃいました」

 えへへと少し照れくさそうな顔している。その前に1つツッコミ入れていいか?バスの座席は他にも空いているがなぜ俺の隣り座ってんの? 

 これだけは言いきれる。この子とは初対面だ。突っ込もうか葛藤したが結局聞くことにした。

「なぁ、なんで俺の隣り座ってんの?」

「乗客そこそこいますし、二人がけの座席を独り占めするのも気が引けたので……嫌でしたら立ちますよ?」

「いやまぁ別にいいが……」

 流石にじゃあ立ってろなんて言えなかった。そんなことしたら事案になってしょっぴかれる未来しか見えん。というかどこに座ろうが彼女の自由だ。

 バスはゆらゆらと走っては止まり、走っては止まりを繰り返し、終点に着く。あとは歩いて10分ほどで家に着く。

「お前もここらへんなのな」

 そう。少女もこのあたりに家があるのか、俺の後ろに付いてった。

「?はい。セブンで曲がったところですけど……。そう言えばお名前聞いてもいいですか?」

「あ?おう。比企谷だ」

「ひきがや……そのお名前聞いた事あるような気がします」

「は?」

 いやお互い初対面なはずだよ?なに前世の俺と会った感じ?能力者なの?現役厨二なの? ちなみに前世の俺何してた?ゾンビだった? 

「あ、私に2つ上の姉がいて、その姉からたまにその名前を聞きます」

 2つ上の姉貴……。同い年か。いやちょっと待てよ?眼鏡はかけてるが、それ以外は身近の誰かに似ている。特にアホ毛。

「なあ、お前の苗字って」

「私ですか?若宮です」

 あーやっぱり?俺と小町みたいにアホ毛ってやっぱり遺伝なのかね。この若宮(小)もあの若宮と同じようなアホ毛が立っている。成長度合いと同期しているのか少し短めだが。

「あーそのなんだ。お前の姉貴とは同じクラスだわ。総武高2年の」

「そうなんですか? すごい偶然ですね!」

「世間って狭いんだな」

「そうですね。あ、私は妹の京楓(きょうか)と言います」

「そうか。まぁ、今後会うか分からんがよろしく」

 

 

 ◇

 

 

 私たちは意外な繋がりがあったと知り、話が少し盛り上がった。この人が比企谷さんか……。姉ちゃんが言うには目がくさっt……特徴的と聞いたけどまさかここまでとは。

 最初目を見たときで何となくお姉ちゃんが言うあの人のことかなーと思ってはいたけど、名前を聞いたらビンゴだった。だって目があまりにも特徴的すぎて……

 何かと言動が少しひねくれてて、それでもって見た目によらず(失礼)優しい。お姉ちゃんが気に入るのも分かる気がする。

「あ、私こっちなので」

「そうか。俺はあっちだ」

「では、またの機会あったらお会いしましょう」

「おう。じゃあな」

 彼はてくてくと横断歩道を渡っていく。それを見送ったら私も家へ向かう。

「あれ?京楓?」

「お姉ちゃん?」

 ニアミスでお姉ちゃんがセブンから出てきた。惜しいなぁ。もう少し早く出てきたら彼に会えたのに。

「友達とでも会ったの?なんか手を振ってたけど」

「ううん」

「?じゃおうちへ帰ろっか」

「うん!」

 あの駅であったことをお姉ちゃんに話しながら家路につく。




少し間空きましたが、クリスマスイベント+何かの話です。つらつら書いたら長めになりました。
それではまた。
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