こんばんは。大切に育まれた百合の花を見てしまったどうも楓奏です。
あれから美笹は反射的にやってしまったという感じで起き上がった。そして体育座りの体勢でうずくまってしまった。
そりゃ恥ずかしいもんねぇ……。いや待てよ?反射的ということはつまり……。
バタン、テーブルに顔を埋める。はー……。冷たくて気持ちいい。なんなら冷水のシャワー浴びれるまである。いや、さすがに凍死するか。
とこまで想像したかは詳細に話せないけど、この一連の流れを見て顔が暑くなった。
「マジでそういうじゃないんだ勘違いしないでくれ……。いつものじゃれ合いみたいなもの……だ」
夏鈴は顔を真っ赤にしてそう言う。あまり身長高くない小さめな女の子にそう言われたもう……。
「てぇてぇよぉ……」
あまりの尊さに語彙力すら失い、机にグリグリと頭を左右に揺らす。もうマジで今すぐ病院が来てくれ、急患です。
でも多分医者は黙って首を横に振るだろうなぁ……。
「あの……、正直に言うと幼馴染同士のじゃれ合いだろうなとは思ってたけど、その……。いろいろ可愛すぎて……」
思いっきり率直な感想を述べてしまった。いやだってさ、身長差カップリングとか可愛すぎません?
美笹が少し甘い声で「だーいすき♪」と言って、夏鈴は照れながらも対応する。これが逆の場合でも充分尊いのに、今回はそれぞれの立場が逆転しているから尊さが上限突破した。仰げば尊し。
どんぐらい越えたかと言うと朝の
おっとこれ以上言ったら小論文出来ちゃうかもしれない。
ってあれ?上限越えたからもう先立ってしまったのか。成仏してくれ私。
「お願い……忘れて……」
美笹だんだん正気に戻ってきたのかようやく言葉を発した。忘れようと努力はするけどもしかしたらフラッシュバックするかもしれない。そのときはごめん。
☆
百合の花が咲いてから30分ほどか経ち、23時半を差しかかろうとしている。
一旦3人とも目を合わせる。そしてなかったことにしようということで平和的解決を望んだ。
ダメだ。忘れられん……。
それから気を紛らわすように人生ゲームやジェンガー、トランプにUNOで遊び尽くした。
「はい上がり」
「あー負けちった」
お菓子をつまんでは遊んでいたら随分いい時間となった。
「って1時過ぎてんじゃん」
「ふぁ……」
「そろそろ寝る?」
「そうだなー。布団持ってくるのめんどくさいからこのままでいいよね」
「去年もそうしなかったっけ?」
そう。去年も今座ってUNOしているこのダブルベッドで寝た。3人、いや正確には2.7人に近い。確かけっこう狭かったような?
「けっこう狭かった気がするけど?」
美笹は私が思ったことを代弁した。まず3人それぞれの寝る体勢違う。
仮に左か右に一定の方向に揃えて寝れば多少のゆとりあるけど、それはそれではたから見たらシュール過ぎて怖い。
「去年寝れたからへーきへーき」
夏鈴はにこやかな顔でそう言う。まあいいっか、と思い各々寝る支度をする。
こうして、去年同様上から見て右は私、真ん中に夏鈴、左に美笹の並びで寝ることに。
私は右半身を下にして寝るから窓際、夏鈴はどちらかというと仰向けに、美笹は左半身を下にして寝るからといった感じて位置を決めたのである。
「やっぱ狭いや」
「でも心做しか暖かくね?」
「むしろメリットはそれぐらいしかないかもね」
部屋の電気は消され、月明かりのみで照らされてる部屋で声が響く。
「中学までは美笹と2人で、高校で楓奏と知り合ってから3人で泊まってくるようになったよな」
「いつの間にかいつも3人でいること多くなったよねー」
「馴れ初めはたしかさ……」
─1年前の4月頃─
入学してから2週間ほど経ったある日、学校の設備や教室の配置もある程度覚え、高校生活はこんな感じなんだなと知り始める頃、実は私誰かと話したりとかしていない。
なぜなら過去の知り合いに合わないように離れた学校を選んだからだ。
中学生のとき、正確には中二あたりからろくなことがなかった。だから全てをリセットするように、忘れるようにと地元からある程度離れたこの学校を受けた。
その上進学校というのもありそこそこ偏差値高いから今のところ知っている人は居ない。
それに2週間も経ち、仲良くなった人同士でグループが出来始めてる頃合だろう。そんな中どこのグループにも属さない窓際に座っている私は窓の外をぼうっと眺めてた。
小学生のときは小学生らしくみんなと楽し過ごし、中学生のときはいじめ?に遭ってからはだんだん1人になっていき、そした今は完全に1人。
「ま、1人は1人で気が楽だね」
ぼそっと呟いて帰る支度をする。
仲良くなったグループが楽しそうに話しているのを横目に教室を出る。が、タイミング悪かったのか教室入ろうとした男子生徒とぶつかってしまった。
「あ、ごめん。大丈夫?」
「いや、そちらこそ大丈夫かい?」
ぶつかってしまった相手はこ同じクラスで、学校のアイドルになりつつある葉山隼人くん。ファッション誌にでも乗ってそうなルックス、どっかで聞いた話ではサッカー部所属らしい。
まあ言わばイケメンという言葉をそのままそっくり表したような人である。
「大丈夫。ごめんね邪魔しちゃって」
まあ別にときめくわけでもなく当たり障りのない言葉を言ってその場を去る。
この日はとくに何もなく、普通に帰宅した。
次の日。春の陽気に当てられ、桜の花びらがひらひらと舞い落ちるの見ながら通学路を歩く。
とくに変わり映えはなく、いつも通りといった感じ。
教室に着いたら授業が始まる時間までスマホでまとめサイトでも見る。
そして時間になったら授業を受ける。休み時間は読書でもして時間を潰す、そんな感じの学校生活をしている。
午前の授業が終わり、お昼休みの時間になった。
活気づいて騒がしくなっている中、自分で作った弁当を机の上に広げた。
さて食べますかと箸を持とうとしている時に私の前に座っている子がこっち向いて話掛けてきた。
「えっと、若宮さんだっけ?」
「え?」
いきなりのことでびっくりしてフリーズしてしまった。ここ最近話掛けられると言ったらせいぜい家族ぐらいだ。
クラスメイトに話掛けられたのは本当に久しぶりである。
「あれ?違ったっけ?」
「いや、若宮で合ってるけど……どうかしたの?」
「あーいやいつも1人で弁当食べてんなぁって……あ、私は蕨 夏鈴ね」
この学校には友達という友達がいないから仕方なく1人で食べてるんだよ。
「ちょっと言い方……ごめんね。私は戸田 美笹でこの子とは幼馴染なの。良かったら一緒にご飯食べない?」
まあ、断る理由はないので了承はした。ただし話題提供だけお願いします。
「そのお弁当美味しそうだね。お母さんに作って貰ったの?」
「ううん。いつも自分で作ってる」
「マジで?普通にすごくね?……これ食べてみてもいい?」
「と、どうぞ」
彼女は卵焼きを手に取りひと口で食べる。
「ちょ、素手は行儀悪いわよ」
「もぐもぐ……。え、これめっちゃ美味しい!」
彼女は笑顔でそう言ってくる。褒められた……のかな?どのみち久しぶりの感覚で恥ずかしくなり目をそらす。
「ど、どうも」
「料理好きなの?」
「う、うん。うちは共働きで、遅くなることが多いからよくご飯作るよ。妹もいるし」
「へぇー! 妹さんいくつなの?」
「二個下で中2だよ」
それから私は転入生かよ、と思ってしまうぐらい質問攻めにあう。
この感覚が久しぶりで、それと同時に少し嬉しかったりとか思ったりした。
これを機にお昼休みはこの3人でお昼ご飯食べたり、放課後も駅まで3人で帰ることも多くなった。
そんな日々が過ぎていき、梅雨も明け日々気温上がり始めてるそんなある日の放課後、駅から少し外れたビルの中にあるサイゼに行く。
涼しい店内に入り、席に着いたらドリンクバーと何かつまめる物を各々注文をする。
そろそろ夏休みなんだけどっか行かない?とか、宿題やりたくないよーとか女子高生らしく談笑していた。
ひとしきり笑ったりした。
そして各々飲み物を口にして一拍。
そんな時に蕨さんは真面目な顔で私に質問をしてきた。
「ちょっと、つーがかなり話変わるんだけどさ」
「ん?」
「この話はやめて欲しいならやめてって言ってくれ。その、若宮さんに対して素朴な疑問なんだけど……」
雰囲気がガラッと変わる。私に対して難しい質問でもするのだろうか。
「入学当初からさ、ほとんど1人でいるじゃん?中学の知り合いいないのかなーって」
「……私の出身中学は総武から少し離れてるから多分中学の知り合いは居ないと思うよ?まあいる可能性も0ではないけどね」
「少し離れたここを受けた理由って学力や今後の進学を考えてのことなの?」
そんな質問をしてきたのは戸田さん。しっかしずいぶん踏み入ってくるなぁ……。
まあ確かに受けた理由はそれらもある。学力に関してはけっこう無茶したフシもあるけどね。
一番の理由は……。この2人には話していいのだろうか。この理由話したらで2人に気を遣わせてしまわないだろうか。
これは話さない方がいいなとしまいこもうとした。それに過去のことはもう思い出したくはない。
でも私はふと思った。さっき戸田さんが並べた理由はもちろん間違いではない。だけど本当の理由は話さず心の奥に葬り去って、ずっとこのまま付き合いを続けるのかと。
嘘はついていないけど、何かモヤモヤがする。
嘘はついていないけど、騙しているような感覚。
それがすごく嫌だ。
思考がまとまらず、黙りになった私を見て戸田さんは微笑んで彼女の隣に座っている蕨さんにこう言った。
「ま、どんな理由があってももう友達だもんねー」
「だな。変なこと聞いてごめんな、若宮さん」
本当の理由を言わずにして、これから先もより仲良くなっていくことだって有り得るかもしれない。反対にこの付き合いはいきなり終わることだって有り得る。
だけど、ここで言っておかなければ後悔すると確信した。
それに友達なら言っちゃっていいよね、と締め付けられていた心が一気に緩んだ。
「本当の理由は……!」
「え?」
2人は驚いた顔して見てきた。そりゃそうだ。この話に対して区切りを入れたはずなんだから。
それでも私は言っておきたい。
「本当の理由は……、中学のときちょっとトラブルがあって、女子から散々嫌がらせ受けてたから。いじめられたと言えばいいのかな……?」
2人は驚いた顔が一変して真面目に聞き入れようとしている。
「それからだんだん1人になって……、それで地元の高校でまた会うぐらいなら、全て忘れようと地元から少し離れたここを選んだんだ……」
「……そうなんだ。……って泣いてるよ!?」
蕨さんが驚いて私の方に駆け寄る。
泣いてる?私が?右手の指で頬を撫でてみると確かに少し濡れた感触がある。
あぁ、過去のことをちょっと思い出して泣いちゃったんだな私。もう高校生のくせに泣いちゃったよ。
もう……。それ言わなければ気づかなかったのに、気づいちゃったからまた涙でそうじゃんかよ……。
「食べ終わってるし、会計して出よう」
「そうだな。若宮さん、行くよ」
今にもまた涙が溢れそうなところを我慢して蕨さんに引っ張られて外に出た。
それから腕引っ張られながら数分走って、駅から更に離れた少し広い公園に着いた。
子供たちはもう帰って行ったのか遊んでいる様子も見えず、その公園はより広く見える。
「ふぅ……。ここならいいだろ。ちょうど人いないし」
「別に店から出なくてもいいのに……。かえって申し訳ないよ」
「高校生がサイゼの店内で泣いたら笑われるでしょ?それに学校の最寄り駅のサイゼだし誰か顔見知りにでも見られたらハズいだろ?」
戸田さんと蕨さんは気を遣って私を外に連れ出したのだ。別に我慢すれば大丈夫だからいいのに……。
「我慢するから別にいい、なんて思ってるでしょ?」
ギグッ……。蕨さんは心読める能力者だったのか。驚愕の新事実。
そんなとき後ろから走って来る音が聞こえた。
「はぁ……、はぁ……疲れた」
「いや、そんな遠くないだろ……」
息を整えるべく、戸田さんは近くにあったベンチに掛ける。私たちも合わせて腰掛ける。
運動が苦手だけど走ってきた戸田さんがやっと息を整えて一拍。
「まあ、なんつーか、私たちは若宮さんと知り合ってから半年も経ってないし、まだお互いよくわかってない部分も多いと思う。今になって若宮さんは過去に辛いことがあったというのを知ったぐらいだしな」
「うん……」
「そんで、そのお互いに分かっていない部分があるから話しづらかったんでしょ?……でもな、そうやって話してくれたからまたひとつ若宮さんのことを知れた」
「……」
「だから代わりに、と言っちゃああれだけど、私らのことも1つ知って欲しい」
「どんなのこと……?」
「私たちは若宮さんのことを絶対に1人にしない。何があっても若宮さんの味方だ。……なんて正義の味方ぶってもあれか」
「辛いことがあって、人を信じきれないところあるかもしれないのは分かる。でも私らのことは信じて欲しい。だってどんなことあっただろうともうウチら友達だろ?……だからこれからはその記憶さえ忘れるぐらい楽しくやろーぜ!」
サムズアップする蕨さんはそう言いきった。なんかまた頬に違和感を感じたので手の甲で触れて確認してみる。
また涙出てる……。そんな泣くほどのことじゃないだろ、私。
「泣きたきゃ貸すとこも貸すぞ。どうせその様子じゃ中学であったその一件、誰にも話さず抱え込んでたんだろ?……辛いことあって泣きたいのは自然なことなんだから泣いちゃえ!」
彼女は笑ってそう言う。いや違う。過去の一件で辛かったのは確かだけど、今はどちらかというとその温かさで泣きそうになっている。
それから色んなことを思い出すようにフラッシュバックした。
わずか数秒にしてダムが決壊するように蕨さんに泣きついた。それはもう年甲斐もなく、過去にあった辛いことを全て吐き出すかのように。そして私なんかにここまで言ってくれたことが嬉しくてわんわん泣いた。
私は蕨さんを抱きつくように泣いて、戸田さんもそっと立って私の背中をさすった。蕨さんは私の後頭部をそっと撫でてた。
思いっきり泣き始めてからしばらく経ち、私はようやく落ち着いた。
「蕨さんごめん……。年甲斐もなく泣いちゃった……」
落ち着いた私は少し恥ずかしくなった。もうどれぐらい泣いたのかというともうまるで鬼ごっこでもして転んでしまった幼稚園児ぐらい。
「……もう夏鈴でいいぞ。夏に鈴、私の名前な」
「私は美笹。美しいに笹」
「夏鈴……、美笹……」
「うん」 「おう」
「……ありがとう。2人のおかげで全て吐き出せた。すごく心がスッキリした!……あ、私は名前は楓奏。楓に奏だよ」
恥ずかしいけど、この2人には感謝しかない。この2人と友達になれて良かったと心の底から思った。出会えて良かったと思った。
「楓奏、か。いい名前じゃん」
「そうかな……?」
「うん!素敵だと思う」
……たしかこうして本当の意味でこの2人の友達になった。
夏は海まで遊びに行って、秋は焼き芋でも頬張って一緒に帰り、冬は今みたいに泊まりがけで遊んだり……そしてまた春がきて……
─────
「……はっ……!」
目を開けて窓を見るとすっかり夜明け、青空が広がっていた。
目を少し擦ると少し濡れてた。寝てる時に少し泣いたのだろうか……?
というかすごく懐かしい夢をみた。というかあまりにもリアル過ぎてタイムトラベルでもしたのかと思ってしまった。
寝るまでの記憶を辿るとたしか私たちの馴れ初めみたいな話をしていた。
だけど割と序盤の方で私は寝落ちした気がする。でもこの夢のおかけで鮮明に全てを思い出した。
ちらっと横を見ると夏鈴がこっちに向いて寝ているの気づいた。
私もそっと夏鈴の方を向いた。そしてそっと髪を撫でた。
「私と仲良くしてくれてありがとう。これからもよろしくね」
起こさないように小さい声で彼女たちに向かって呟いた。
「だーいすき……」
昨日の一件をからかうように呟いて、もう一度目を瞑った。
少し短いですが、ふと思いつきで過去の話を書いてみました。いかがでしたでしょうか?
これからもぼちぼち書いて行きますので、よろしくお願いします。
それでは。