元旦。去年の12月31日という日付が一気に1年の中で1番最初の1月1日にリセットされる。そして世間だはめでたい日とされる
カレンダーも1月にリセットされたわけだし、俺も気を引き締まって自宅警備の仕事を全うする……
……したかったんだよ?でも出動要請されましてね。小町に。
おっかしいなぁ。自宅警備員なのに外も管轄に入るの?と、数分前に小町に叩き起されてからこの神ギ問が生まれた。
まず、事の顛末はこうだ。カウントダウン?知らんと言わんばかりに俺はすやすや寝ている最中、バタン!と部屋のドアが開く。
そんでいきなり起こされた。ここで目が覚めて小町だと気づいた。
「お兄ちゃん!電話だよ!スマホがリビングに放置したまんまだったよ?」
誰だか知らないけどとりあえず電話かかってるなら一応出ておく。場合によっちゃあガチャ切りすればいい。
とりあえずスマホを受け取り耳に当てる。
「やっはろー!その様子じゃ寝てたみたいだけど大丈b」
ガチャッ。あ、手が滑ったじゃあ仕方ないわねおやすみー。
prrrr。再び鳴り響く着信音。相手は由比ヶ浜というのは分かっているからどうせ大した用は無い。あってもせいぜいただのあけおめ電話だろう。
でも出ないとずっと掛けてきそうだよなぁ……諦めてもういっぺん出るか。
「もしm 」
『ちょっと!なんで切るんだし!』
ちょ……耳元で大声出すのやめてもらえません?鼓膜破れるかと思ったぞ。
「いや、ちと手が悴んでてな。手が滑った」
どうやら左手だけ掛け布団からはみ出た状態で寝たものだからキンキンに冷やされて悴んでいる。
それにスマホの裏面がすべすべなものだから持ってたスマホがズれて通話を切ってしまった。だから嘘は言っていない。
『そうなの?てかメール送ったんだけど読んだ?』
メール?うちのりんごちゃんに届くメールはせいぜい密林ぐらいだと思うんだが。
というか昨日の23時ぐらいには寝落ちしたし、うちのりんごちゃんは暖房が切られたリビングに居たし気づきようがない。りんごたんごめんよー。寒いところに置きっぱで。
「多分見てないな。なんかの用事だったか?」
『むーっ。まあそんで奉仕部メンバーで初詣とかどうかなーと思って電話したんだけどさ。どう?』
どうって言われてもなぁ……。今の時間はそろそろ10時ってところでまだまだ混んでいる頃だろう。
何故寒い日にわざわざ人混みがすごいところ行かねばならんのだ。
やめとくわ、と言おうとしたらスっとスマホが小町に奪われた。
「変わりましたー小町でーす!少し準備したら兄と向かうんで待っててくださーい!」
『小町ちゃん?りょーかい!待ってるねー』
ほい、と俺のりんごたんか返された。いやそんなナチュラルに返品してもねぇ。
「ちょっと小町ちゃん。何しやがるでございます?」
「こんぐらいしないとお兄ちゃん動かないじゃん?それに女の子に誘われたら断らないのがマナーだぞ?」
え、何その恐怖のマナー。基本的に社交辞令なんだからそういうのやんわりと断るもんじゃないの?
「いや、でもなぁ」
「いいからお兄ちゃんはさっさと朝ごはん食べたら着替えるの!ご飯は出来てるからGO!」
「えぇ……」
こうして自宅が管轄区域なのに外へ出動要請されたのである。まったく理不尽極まりない。アットホームな職場(大嘘)だったのか……。
衝撃な事実を知ってしまい、絶望に暮れては朝食を食べる。
それから着替えて、電車を乗って神社へ向かう。
それで今小町と電車で揺られてる。
そういえばメール送ってきたらしいなと思い出して今になって開封。
『あけおめー。今日ゆきのんと初詣行くんだけどどうかな?』
タイトルに「あけおめ!」とこの本文が送られていた。
ふむ。由比ヶ浜のことだから日付け越えたのに明日~~って打ち込みそうだがちゃんと今日と打ち込まれている。感心感心。
……本当に明日ならばどれほど楽だったのでしょうか。
そういえば0時になって、日付け越えた間際って「今日」と言った方がいいのか、「明日」と言った方がいいのか微妙ならところあるよな。
夜が明けた後あとが明日、明ける前は今日、つまり0時回っても日付け越えた感覚はあまりないと俺は感じる。皆さんはどうかしらん。
総武線と並走するこの私鉄の電車に数分揺られ、電車は降りる駅に止まる。
降りた駅からちょっと歩けば待ち合わせ場所に着く。
「あ、やっはろー!あけおめー!」
向こうが気づいたのか大きい声で呼ばれる。恥ずかしいからやめなさい。
というかそんなぶんぶん手を振るな、母なる大地が揺れて注目集めてるからね。
「おう。あけおめ」「あけましておめでとうごさいまーす!」
とりあえず返事だけはしておいた。
「あけましておめでとう。今年もよろしく」
ペコっと丁寧な一礼をしてそう言ったのは雪ノ下である。
「あぁ、よろしくな」 「よろしくお願いしまーす!」
兄妹仲良く挨拶出来たところで帰りますか……あ、すみません何でもないです。
小町に思考読まれたのかめっちゃニッコリとしてこっちを見る。可愛いけど怖いわよ?
☆
二拝二拍手一拝。全国共通の一番オーソドックスな参拝である。
二拝二拍手一拝は基本的だが、どうやら神社によっては特殊なものもあるらしいから気をつけてな。
4人なので2人ずつ各々神様にお願いをする。
俺は何をお願いしたんだって?そりゃ大学に合格して、いい人と出会い、そして専業主夫になれるようにだよ言わせんな恥ずかしい。
あと本当は願い事って他人に言わない方がいいらしいぞ。言ってしまうと願い事はと叶わないんだとか。
まあぼっちだから言う相手いませんけどね。
「あ、ごめん!ちょっと優美子のところ行かないとだからここで!また学校でねー」
「ええ、では三学期で」
「うん!ごめんね」
どうやらあーしさんたちと合流するらしく、そう言って合流場所へ?走って行こうとした。
「あ、ヒッキーちょっとちょっと」
何かを思い出したようにこちらに振り向く。しかも手招きしてるからちょっと来いってことか?
「……なんだ?」
「明後日ゆきのんの誕生日なんだけどプレゼントどうする?」
えぇ……明後日なの?たぶん初知りなんですけど。そういうのはもう少し早く言えよ……。
「そういうの早く言えよ……。明日千葉とかで見繕うか」
「ごめん伝えるの忘れてた……じゃまたメールするね」
「はいよ」
由比ヶ浜が去っていくの見送り、小町と雪ノ下の元に戻る。
「何かよからぬ事でも企んでるのかしら」
やっぱり耳打ちってはたから見るといいイメージないのね。
「別にそういうんじゃねーよ。んじゃ行くぞ」
「……まあいいわ。行きましょうか小町さん」
「はいはーい」
神社を出て歩いて数分、駅に着いたってとこで隣を歩く小町は何かを思い出ししたかのようにハッとこちらに顔向けてきた。
「はっ、いっけなーい!小町ったらお守り買ってくの忘れてましたー……それに絵馬も書き忘れたのでダッシュして戻りまーす!」
「おー。お守りなら俺も買っとこうかな」
「お兄ちゃん何言ってんの!このごみぃちゃんのバカ!ボケナス!八幡!」
えぇ……そこまで言う?小町ちゃん反抗期かしら?
あと口悪いわよ小町ちゃん。しれっと言ってるけど八幡は悪口じゃないからね。
あと雪ノ下さん笑いすぎじゃないですかねぇ。そんなに面白かった?
そうして小町はまた神社へ戻り、俺と雪ノ下で電車を乗るべく改札へ入る。
乗る方面のホームは思ってたより人が疎らで、反対方面のホームの方が混んでいるようだ。
少し混んでいる反対方面のホームを見て、初詣の後だと言うのによくまあ遊びに行く気力あるもんだなと思った。
多分俺には無理だな。あれだけ人が溢れかえった神社を行った後に出かけるとかしんどすぎる。間違いなく即帰宅するね。現に帰宅を始めてますけどね。
数分後に到着した電車を乗り込んで、いくつかの駅を止まるのを繰り返していく。
ちなみにその間、雪ノ下とは特に会話とかしていない。正直話すこと特にない。話したとしてもせいぜい
「比企谷くんはまっすぐ帰るのかしら」
「おう。行くところ特にないしな」
ぐらいだ。会話を最小限に抑えるのがぼっちの習性なのかもしれん。
ぷしゅー、がこん。チャイムと共に少し間抜けな音を出してドアが開く。
「んじゃ俺はここだ。またな」
「ええ」
改札へ向かって歩き出すときに雪ノ下は何か言ったような気がするので立ち止まった。
だが上手く聞き取れず、扉は閉まり電車は時間通り目的地へ向かって発車して行った。
まあ多分また学校で、みたいなことを言ったのだろうと勝手に結論付けた。
寒いのでせっせと改札を抜け家へ向かう。
初詣というミッションをコンプリートしたのでセブンでポテチでも買って1杯やろうかしら。
あ、未成年なのでちゃんとオレンジジュース飲みます、ご安心を。
しかし奇しくも似たような考えをする人がセブンにいるとは思わなかった。
☆
セブンイレブン、いい気分。
寒い外気をシャットアウトして暖かい空間を確保している冬のコンビニは最高。
このキャッチコピーの通りいい気分である。
雑誌コーナーを始め、飲み物コーナーをぐるっと眺めるだけでワクワクさせる。
お世辞にもスーパーマーケットほど広い店舗持っている訳じゃないのに電池1つから始まり食料もあるこの品揃え。更には24。
なんてくだらないことを考えて買うものを吟味していると久しく会ってない人と偶然見かけた。
「あれ?比企谷くん?久しぶりだね。去年のクリスマスイベント以来かな」
向こうが先に気づいた模様。さっさと買って出ようと思ったが仕方ない。
「そうだな。まあなんだ、あけましておめでとう?」
「なんで疑問形なの……」
「ぼっちは挨拶に慣れてないんだよ」
「ふふっなにそれ。ま、あけおめ」
「おう」
真面目に回答したのにふふっと笑われた。むしろそこ引くところでしょ。
だいたいはこの自虐ネタ引くはずなんだがなぁ……
自分で言っといて悲しくなった。ぐすん。
各々の会計を済ませて店を出る。ちなみに俺はポテチひと袋とペットボトルのオレンジジュースを買った。
おでんにしようかなとちょっと迷ったが食べたい具材がちょうど切らしていたので諦めた。ちくせう。
その後はコンビニの前で若宮と別れて、愛おしい家に着いたらゴロゴロして一日を終えた。
☆
翌日、三が日の2日目。
俺は再び愛おしい我が家を離れた。
休日なのに平日とあまり変わらない混雑っぶりの電車に揺られて千葉へ旅立った。
11時に由比ヶ浜と待ち合わせる予定なのだが小町に叩き起されては家に出された。あの子ったらひどい。
これのんびり待ち合わせ場所行っても多分時間まで20分は余裕あるぞこれ。
寒い中駅前で待つのはいやだな……。
一応待ち合わせ場所まで行って、いなかったらどこかで時間を潰そう。
電車は順調に千葉に到着して、人波に揉まれながらも何とか出口に辿り着いた。
どこかでバーゲンセールがあるのか殺気立ってるように感じた。
物は逃げないから落ち着け。ステイステイ。
時間はかなり余裕があるのでゆっくり待ち合わせ場所へ向かう。
その場所とはバスロータリーそばにある緑色のオブジェ、ビッグツリーである。
おい、イチョウマークみたいなアレねと言ったそこの都民。許さんからな?
って強く言いたいけど確かに東京都のイチョウマークに見えるわ、色合い的にも。違うか?違うな。
まあとりあえず連絡するか、とスマホを取り出そうとしたら由比ヶ浜もちょうど着いたらしく、こっちに向かって走ってくる。
いやだから母なる大地が揺れてですね、辺りの男性から視線釘付けですよ?
言っとくけど俺は含まれないからな?ちゃんと目を逸らしたじぇんとるめーんだからな。
あ、そこのカップルの男が彼女さんに頭ひっぱたかれた。ざまあ。
「ごめーん!待った?」
はぁはぁと息を少し切らしていた。時間はあるのにそんなに急がんでもと俺は困惑した。
「いや、まぁちょうど着いたてとこだ」
「ほんと?よかったぁ……」
「別に時間には余裕があるからそんな急がんでも」
「やー、家出るときは少しギリギリだったから急いじゃった」
由比ヶ浜はそう言ってえてへへと照れた顔をする。
なんだろうな。どこかの後輩が同じことをするとあざといのに、由比ヶ浜はとにかく自然に感じる。
「で、早速だか女子高生に対してプレゼント選びなんてしたことあるわけねぇからどこで選ぶべきなのか案内してくれ」
「うん!いくつか候補あるから行こっか!」
「おう」
由比ヶ浜の案内の元、彼女に合わせててくてくと歩く。
「……なんで左後ろにいるの?」
「そりゃ案内してもらってるんだから普通だろ」
そう言うと由比ヶ浜は立ち止まり、少しむっとした顔で俺の右手をかっさらった。
「何かあってはぐれたりしたらいやじゃん?」
「ガキじゃねぇんだからはぐれねぇよ。……つかこの手何?」
「……いいの!行くよ!」
「いや、ちょっ!」
これは抵抗するだけ時間の無駄だと悟り、諦めて彼女の左手を掴んだまんま隣を歩いた。
結局右手は空くことはなく、デパートの一角にある少しオシャンな雑貨屋に着いた。
なるほど、雑貨屋か。ここなら色んな実用品あるし選びやすそうだ。
少しオシャンなのがちょっと落ち着かんが。
とりあえずサーっと見てる。ここで大事なのが店員さんに声掛けられないようにすることだ。
声掛けられたら時間のロスが避けられない上に、何か買わないといけない気持ちになる。
割とマジで買うならこっちが勝手に買うから話しかけないでほしいのがぼっちの本音だったりする。
ま、そもそもこのような店行かないけどね。
声掛けられるの避けるべく、ドロー!モンスターカード!ステルスヒッキー!
よし、これで存在感を消せる。
この存在感を消して、店内を歩く。
まずあいつは猫がだいすきフリスキーで、本をよく読む。料理も良くするぐらいしか情報がない。あ、あとパンさんか。
なら妥当なのは本をよく読むからブックカバーか。
「ヒッキーは何かいい感じのあった?」
「いや特には。猫好きだし本をよく読むから猫の模様が入っているブックカバーにしようかと」
「私はパンさん関連の何かにしようかなと思うけどどうかな?」
「それはやめとけ。多分パンさんグッズをコレクターしてそうだから既に持ってるなんてことも十分有り得る」
「あ、そっかー。好きだから集めてるとかありそう」
「だろ? まあ俺が言ってた猫関連の物も集めてそうな予感はするけどな……」
「うーん。難しいね……」
その後ほかにもいくつかの店を周り、昼時も少し過ぎてようやくプレゼントの品が決まった。
「なんとか決まってよかったねー」
「あぁ、なんとしてもダブりだけは避けたいよな」
昼食を取るべく、デパート内のイタリアンレストラン向かう。
が、意外な客がいるとは思わなかった。
「あれー?比企谷くんとガハマちゃんじゃん」
うわ、強化外骨格さんじゃなかった陽乃さんだ。
そんな雪ノ下の姉が後ろから声掛けられた。
「こんなとこで何してんすか?」
「ちょっとお茶してるとこ。ほらそこ」
そう言ってある方角へ指さした。俺も合わせて指した指の方角を見る。
そこには葉山と雪ノ下が向かい合わせで座っていた。
「雪ノ下さんのことだからもう少しお高いところ行ってそうすけどね」
ちょっと皮肉ってそう返した。
「両家のご挨拶が終わって、昼食がてらにここきたの。雪乃ちゃーん、隼人くんーんお客さんだよー」
そう言って俺と由比ヶ浜は雪ノ下と葉山が座ってる席の前に差し出された。
適当にあしらってこの店離れようとしたのに。
「ちょ、何してんすか。というかあまり大きい声出さないでくださいあとやめてください」
「やぁ、比企谷と結衣」
「お、おう」
「やっはろー……はは」
爽やかイケメンは爽やかな笑顔でそう投げかけてきて、雪ノ下は少し冷ややかである。
そしてエアーマスターの由比ヶ浜もさすがに苦笑いである。
「由比ヶ浜さんとそこの男でデートかしら」
「で!?違う違う!ちょっと買い物というか」
「別にそういうんじゃねぇよ。こいつの言う通りただの買い物だ」
「ただの買い物に2人でいる必要あるかしら。1人の方が効率がいいのに」
「こいつに呼ばれたんだよ……。まずこの俺が冬休みに千葉へ出向くわけないだろ?それにどういうことかはのちのち分かる」
「それもそうね。引きこもりくんだものね」
めっちゃいい笑顔でそう言われた。もしこいつ女じゃなかったらちょっとどついてたかもしれん。
「はいはーい言い合いは後にして、ガハマちゃんと比企谷くんはお昼食べに来たんだから座りなよ。お姉さんが奢っちゃうわよー」
「いや、3人の邪魔になりそうなんで別の店へ行きます」
「まあ、偶然会って何かの縁だろ。ここでいいんじゃないか?」
爽やかイケメンはそういう。だからリア充はなんで誰かと居たがるの?そうしないと死ぬの?
「せっかくだし、ここにしようよ。それにお腹ペコペコだよ」
由比ヶ浜もこの店がいいので仕方なく俺も着席した。
これ以上抵抗しても強化外骨格さんがうるさそうなので諦めた。
しかし諦めた先には陽乃さんがイジりまくってくる未来があるとは知る由もなかった。いや知ってたけどよ。
続きは極力年内に出すよう頑張ります。
それでは。