ベストプレイス   作:自由人❀

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前回後半の楓奏視点です。それではどぞ。


1月2日

 おはようございます。私の良き友達、美笹と夏鈴の2人に千葉駅にあるデパートでやっているバーゲンセールに駆り出されてます。

 もっと言えば、この話を妹の京楓に話したら受験勉強の息抜きに行きたいと言い出し、私も行くことになりました。

 どうして女の子ってセールとか行きたがるのかしら。あ、私も女の子でした。

 そりゃ確かに普段より安く買えるのは魅力的だと思う。でも私は人多いからそこまで行きたいと思わない。

 それにだいたいは服やらパンツやらがバラ売りで安く売られてるわけだがら買ったところで手持ちのと合わせづらい、なんてこともありそうなのであまり好きではない。

 あと女の子な服装ってあんまり私に似合わないと思うんだよね……。

 現に今着てるのは灰色でタートルネックのインナーに黒のマフラー。

 アウターは中綿入りのジャケット。これも黒色。

 下は少し馴染んでいる紺色のGパン。靴は特に変わり映えのないスニーカーである。

 うん。機能性重視だね。なんなら男の子の服装に近いかもしれない。

 ……話は変わるけどとにかく人が多い。狙いはやっぱりバーゲンセールなのかな。

 あとは純粋に遊びに出かける人か、それとも初詣をした帰りの人たちだろうか。

 スマホもろくに取り出すことが出来ない車内で、ぼんやりと車窓を見てゆらゆらと揺られながら京楓と千葉へ向かう。

 終点に着いたら京楓と手を繋いで少し人波にもまれながらなんとか集合場所にに着いた。

 そこには主催者にあたる2人が待っていた。

「ごめん!待った?」

「おーす。昨日ぶりだね。京楓ちゃんおはよー」

「おはよー。時間はまだ平気だよ」

「はい。えっと、お久しぶりです。妹の京楓です」

 一応京楓はこの2人とは面識は何度かはある。たまにこの2人がうちに遊びに来る時に京楓も混ざってゲームで遊ぶような感じで何回か会っている。

「久しぶりだねー。落ち着いたらまた遊ぼうよ!」

「はい!今日はよろしくお願いします!」

「前も言ってるけどタメで全然いいのに。知らない顔ってわけじゃないし」

「でもやっぱり年上ですし……」

「とりあえずデパート向かう?」

 一旦話を切り上げるべく、ここいる御一行はデパートへ向かう。

 駅からさほど遠くないので直ぐに着いたが、既に結構な人数並んでいる。

 まだ開店前の時間なので恐らくかなり早い段階で現地入りしたのだろう。

 その情熱は凄いと思う、と既に並んでいる名も無き戦士にそっと心で伝えた。

 いや、名はあるか。と同時にセルフツッコミをした。

「で、私は手伝う感じでいいの?」

「え?まあそりゃ助かるけど自分の分は?」

「いや私は特にはって感じなんだけど……」

 なんか驚かれてるけど、私はそのつもりで来たのだが……。

「せっかくだしいくつか買ってけば?ほら安いし」

 美笹そう言って今回行くバーゲンセールのチラシを見せる。

「うーん。正直ファッションとか疎いしサポートでいいかな……。普段着るものも見ての通りだし」

「うーん。やっぱ何となく男子寄りな感じだよな」

「私もお姉ちゃんがもう少し着こなしすれば可愛いと思うんですよね……」

「自転車もいいけど少しはオシャレしないともったいないよ?華の女子高生なんだし」

 ぐぬぬ……。結構言うじゃねぇか……。

 でも確かにだいたいお父さんの影響で自転車を始めたあたりから服買わなくなったなぁ。

 かれこれ1年以上は買ってないと思う。それに平日は制服、休日はサイクルウェアだし滅多にこうして私服を着ることがない。

 私服を着るとしてもせいぜい近所を歩きで買い物に行くぐらいかな。

「そうだ!」

 美笹が何かを思いついたのか、パン!と手のひらを叩き合わせる。

 というか割とびっくりした……。

「楓奏をより可愛くしてみよう!」

「お、それいいな」

「いいですね!やってみましょうよ!」

 むむっ?何が始まるんです?第三次世界大戦?いや始まってたまるか。ラブアンドピース。じゃなくて……

「可愛くしようって……?」

「楓奏に似合うコーデを探そう!」

「いや、その」

「お金は?」

「まあボチボチ……」

「よし。GO」

 夏鈴がゴーサインを出した。え、なに私魔改造されるのん? 

 あ、でも改造人間って1ミリだけかっこいいなとか思っている。

 なんて少し楽観に捉えてた。しかし思いのほか過酷な未来が待ち受けていた。

 

 

 ☆

 

 

「はあ……疲れた。何あれ?戦場なの?」

 デパートが開店した直後、目星ついてるお店へ走っては私以外の3人が狙っている物を片っ端から取りまくる。言わばサポート役だ。

 当然その間も他の人が詰め寄ってくるわけだからとてつもなく過酷だった。

 時間にしてわずか1時間足らずでこの疲弊っぷりである。

 今は近くのベンチで座ってインターバルを取っている。

「狙い目のものはほとんど行けたな。ありがとな楓奏」

「はい。いつもの」

 そう言って美笹はマッ缶をくれる。ありがてぇ……。

「全力尽くしたわよ……はぁうめぇ……」

 バーゲンセールたるもの行ったことないから思いのほか体力奪われた。

 頂いたマッ缶はほとんど一気飲みに近い感じで飲み干すぐらいは疲れた。

「さーて。皆の衆、行くわよ」

 美笹は何かを始めると言わんばかりのセリフを言う。え、ちょインターバル……

「一通り歩いたら揃いそうだよな。よし楓奏行くぞー」

 夏鈴は私の右腕をグイグイ引っ張る。もうバーゲンはいやだよ……。

「せっかくだし行こうよお姉ちゃん」

 京楓も左腕グイグイと引っ張る。……お姉ちゃんはもう疲れたわよ行っておいて。

「もしかして忘れてた?楓奏改造計画」

 あっ。列に並んでたときに言ってたやつか。でもさっきとなにか違う気がするのは気のせいだろうか。

「いつも休みの日は自転車乗ってんだしこれぐらいしか機会がないから行くよ!年末年始だから安く済むだろうし」

 そうだけどさ……。着こなし以前に女の子な服装合わない気がするんだよね。

「そんなことないよ!だって女の子だもの」

 どうやら思わず口にしてたらしい。しかし女の子だものって……、思いのほか暴論で笑いそうになった。

 美笹がそこまで言うなら行きますか。と私は缶を捨てに立ち上がる。

「じゃ、おまかせしようかな。よくわかんないし」

 諦めてこの3人にコーディネートをお願いすることにした。

 それより1つ驚いていることがある。

 京楓は普段はどちらかというと人見知りで大人しい子なのに、意外と乗り気であることだ。

 美笹と夏鈴がここがいいよ!というお店へ案内してもらってる中、隣に歩く京楓に聞いてみた。

「ねぇ京楓」

「なに?」

「なんかお姉ちゃん改造計画に対して乗り気だなーって思ってさ」

「おしゃれに着こなししたお姉ちゃん見てみたいからかなー」

「なにそれ」

 そんな理由だと知り私は少し苦笑いしてお店まで歩く。

 まずUやGから始まる大手のアパレルショップから始め、少し大人寄りな(エッチなやつじゃない)服が揃えているお店をあらかた回り終わった。

 もちろんその間着せ替え人形と化していた。

 着替えるだけでいいじゃんと思ったけど結構大変なのよこれ。

 時にはもうこれでいいよー……とか言い出しそうなぐらい疲れる。

 もうこれで何度目の着替えなのか分からないぐらい作業と化しているなか私は着替えている。

「はいよ」

「お、おぉ……」

「かわいい……1番いいかも」

「いいよ……お姉ちゃん」

 どうやらこの服装が3人が感嘆の声を上げるほどらしい。ちょっと照れるな……。

 試着しているのは、黒の薄手なコートと淡い朱色ワンピース。下はホットタイツ、靴はビットローファーを履いている。

「でもこれ寒いんじゃ……」

「そう言うと思ってな。これもあるぞ。ほい」

 夏鈴がスっと私に渡したのは黒の1色のシンプルなロングコート。

「寒い時はこれを着て、秋と春はロングコート着なくても行ける。楓奏はある程度身長あるから似合うだろうし、さらにはこの中の上下あまり気にしなくてもだいたい行ける優れものだ」

 コートを片手に持ちサムズアップする。どうせめんどくさがりそうということを予想してこれを渡してきたのかな。なんか複雑。

 しかしいざ着て見ると悪くない。ちゃんと左右にポケットもあるし中の上下もそこまで考えなくても様になる。しかも暖かい。

 性能と汎用性の高さに驚いてしまった。

「こいつぁ気に入ったぜェ……」

 そう呟いて今着ているものを脱いでレジで会計をする。

 やっぱり年末年始だからか、これだけあるのに合計で1万円と少しお釣りが返ってきたぐらいのお値段だった……ってマジ?安くね? 

 これで福澤さん未満ぐらいなの?最近のアパレルすっげぇなぁ……。

「さっそく着て行かれますか?」

「あ、大丈夫「はい、お願いします!」

「…分かりました。ではタグを切らしていただきますね」

 ニッコリと店員さんはそう対応した。

「って夏鈴!」

「てへっ」

 くっ……。後でデコピン食らわしてやる……! 

 普通に持って帰るつもりだったんだけど、店員さんにそう伝えてしまった以上着るしかない。

 こうしてさっき買ったものをふたたび着直す。

「やっぱシンプルな感じが楓奏らしいな」

「うんうん♪大人びた雰囲気がするよね~」

「めっちゃ似合ってるよ、お姉ちゃん」

 3人それぞれのコメントを貰う。ちょっぴり恥ずかしいけど嬉しさもある。

「というか持って帰るつもりだったんだけど。夏鈴」

 私はスっと左手でデコピンの構えをする。

「まぁでもそれぐらいしないと着なさそうじゃん?」

 うむ確かに。私の性格をよくわかってらっしゃる。

 これで納得しちゃうのもなんか悲しい。

 でもせっかく選んでもらったから着た方がいいっか。そう思い左手をポケットにしまう。

「いい時間だし昼たべる?」

 ちょうど左ポケットにあったスマホを取り出して時間を見る。

「そうだな」

「んじゃ行きますか。私たちのサンクチュアリー」

「サイゼリヤ」

「え、何この一体感……」

 ちょっと引いた京楓にツッコミをもらう始末である。

 安くて美味しい。完璧じゃなイカ。ってなんか神奈川在住の侵略者になちゃったよ。久しぶりにイカの墨入りスパゲティ食べようかしらん。

 まあ何を言いたいかというと、身体が自由に動かせる間はサイゼ行きたいねってことだよ。うん、ちょっと何言っているのか分からないね。

 そうと決まったらサイゼ向かうべく、デパートの中をてくてくと歩く4人。

 が、前からカップルらしき2人がこちらに向かって来ている。

 邪魔にならないように片方に寄ろうとしたが、その前にそのカップルらしき2人は知っている人たちだと気づき思わず立ち止まってしまった。

 

 

 ☆

 

 

「あれ?」

「お、おう? 奇遇だな」

「かなかなじゃん!やっはろー!すっごい偶然だね。バーゲン狙い?」

「まあ、その後ろにいる3人がね。私はサポートみたいな感じだったけど……」

「へぇー。後ろの人たち多分はじめましてだからちょっと挨拶するね?」

「おう」

 そう言って由比ヶ浜さんは美笹たちに挨拶しに行った。コミュ力どうなってるのこの子……。

「まぁ、なんだ。昨日ぶりだな」

「そうだね。その……もしかして由比ヶ浜さんとデート中?」

「言うと思ったけどちげぇよ。雪ノ下のプレゼント選びをしていただけだ。あいつ誕生日近いらしいからな」

「そうなんだ…」

 なぜかホッとした気持ちになった。…ん?今なんで安心したんだろう……? 

「そう言えば昨日と雰囲気違うな。服が違うのか」

 比企谷くんも昨日との違いを気づいたみたい。服装でこんなに印象が変わるんだと今気づいた。

「まあ、お前らしくて似合うと思うぞ」

 彼は少し目を逸らしてそう言う。恥ずかしいのかな? 

「ふふ♪ありがと」

 かくいう私も恥ずかしかったりする。頬に熱が伝わる感じもする。

 きっと褒められて嬉しいんだ、私。

 私ってこんなにちょろかったかな……?ううん。これは気のせいだ。

 いやでもまさか……。

ふとあの日、サイゼで美笹が私に聞いてきたことを思い出していた。

「ごめーんお待たせー」

 由比ヶ浜さんが戻ってきたことによって思考の海に沈み込む前になんとか引き上げられた。

「おう。物は買えたし帰るか」

「うん!」

「んじゃまた学校でな。お連れさんもまたな」

「……うん!またね!」

「今年もよろしくねー」

 こうして比企谷くんと由比ヶ浜さんは私たちと反対方向へ去って行った。

 私はそっと胸に手を当てた。さっきまで少し脈が早くなった感触がある。

 いや。さすがにこれだけじゃ断言出来るわけがない。

 きっとあんまり褒め慣れてないから少し恥ずかしかっただけだと、私は何とも言えないこの気持ちを心の中に抑え込んだ。

「おーい、行くぞー」

「え?あ、うん!」

 1回このことを忘れようと、私は歩き出した。

 ……なぜあの時「安心」をしたのかという疑問は拭えないままサイゼに向かって歩く。

 

 

 ☆

 

 

 美笹と夏鈴は荷物もあるからということで、サイゼで昼ごはん食べたあと千葉駅で別れた。

「んじゃ帰ろっか」

「うん!」

 人が多いのではぐれないように手を繋いで私たちはホームへ向かう。

 止まっている電車を乗り込み、やがて時間になったら電車はゆっくりと目的地へ向かって走り出す。

「お姉ちゃん?」

「うん?」

「サイゼに行く前からずっとなんか心ここにあらずって感じがするけど大丈夫?」

「……大丈夫だよ、ちょっと考えてたことがあっただけ。そういえば欲しいの買えた?」

「あ、うん。これだけあって結構安かったよー」

「お年玉って意外とすぐに無くなるから気をつけなよー。妹君よ」

 電車に揺られながら京楓と喋っては笑って、私たちはゆっくりと家に近づいていく。




あけましておめでとうございます。今年もぼちぼち書いて行きますのでよろしくお願いします。
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