風邪を引いたら人肌が恋しくなるよねっていう話。
はぁ…
月曜日の朝っぱらから体温が38℃大台を叩き出しているどうも若宮楓奏です。
きっとあまり慣れていない運動をして疲れて、免疫力が低下したところでどこかから風邪を貰ってしまったんだろう。
決してサボタージュじゃないよ?ちゃんと体温計で計ったんだからね?
天気予報では今日も寒い1日になると言っていたはずなのに暑い。なんというか少し火照っている感じがする。
それでいてとても怠く感じる。
これ以上悪化しそうな感じがしたら近所のクリニック行こうかな。十分キツい感じがするけど…。
手に持っているスマホから流れる動画の音声を流しながらそう思った。
復習など勉強なんて当然する気ないし、ゲームやりたいと思う気力もない。つまるところ動きたくない。怠惰に徹したい一心である。
かといってとても暇である。
普段休日はどこかに出かけていることが多く、あまり家でゴロゴロすることがない。
強いて言うなら雨が降っているときぐらいしかこの部屋にこもる機会がない。
まあ身体が多少元気ならゲームしたり、勉強したり自転車いじったり…とそれなりにやれることはある。
だけど今日ばかりは何にもしたくない。だけど何かしたいと思うぐらい暇だ。
この矛盾した考え、どうしたものかと考える。
だけど意外にもものの数分で考えついた結論が出た。そう、それは寝ることだ。
その方が治りがいい気がするし、あっという間に時間が過ぎる。
さっそく行動に移すべく、途中まで流れていた音声をぶった切るようにスマホをスリープさせて私も目を瞑ってスリープモードに移行する。
ベタに羊の数を数える?
いやいや、あれは英語で
だからもしかしたら日本人の私たちはあまり効果無いかもしれない。
じゃあ妄想をする?
シンプルにお金持ちだったらどうするとか、好きな人とイチャイチャするところとか?
好きな人…今はいないから消去法でお金持ちだったら、という妄想をしよう。
そうだなぁ…。
まず免許を取ってガレージ付の家を買うか建てる。そして小学生の頃から好きだったあの車を買って大黒へ行く。
……
終わちゃったよ。
意外と欲にまみれてないんだね私。
もうちょっと豪遊してよ私。
というか免許は年齢的にあと半年ぐらいは取れないよ。
どうも性格のせいか、せっかくの妄想をしても現実的に考えてしまうクセがある。
早くもお金持ちだったらという妄想が終わってしまったのでもうひとつの方で妄想をしてみる。
好きな人とイチャイチャする妄想。
まあ好きな人いないからこういうことしてほしいみたいな妄想にしておこうかな。
うーん。
まずは相手は…。
……。
…。真っ先に思い浮かんだのはあの目が腐っている人。全く意識せずふと出てきたのはよく関わる彼だった。
私はガバっと起き上がった。
いやいやなんで!?
いやでも確かに男子の中でよく関わっているのは彼だけども…。
きっと関わりが多かった分すぐ出てきたんだろうと私なりに結論付けた。
「熱上がってないよね…?」
少し体温上がった気がしておでこを触る。
念の為に熱さまシートを新しく貼り替えて目を瞑った。
◇
2つ隣の席に座っている人が珍しく空席にしている。
どうやら風邪をひいてしまって休んでいるらしい。
まあ普段している運動とはまた違う運動をしているから疲れが溜まって風邪ひいちまったんだろう。
あいつ夜中走り回った翌日に学校に来るぐらい頑丈だし大方そんな感じだと思う。
まあ特に気に留めたりせずいつの間にか帰りのSHRに入っていたわけなんですよ。
これ終わったらいつもの空き教室行くかーみたいな感じで話を聞いていたわけで。
で、SHRが終わった途端担任の平塚先生はひょいひょいと俺に対してこっち来いと言わんばかりの手招きをしてくる。
俺はため息しないように抑えながら教卓の前まで来た。
「はぁ…なんすか?」
「堂々とため息するんじゃないよ全く。ため息は仕事を受け取ったあとに裏でしろ。」
平塚先生はそう言うと頬を少しぷくーと膨らませていた。意外と可愛いなおい。
と、無意識にため息していたらしい。無意識って怖いね。
「で、どうしたんですか?仕事すか?」
「あぁ、君の席から2つの隣に座っている若宮がいるだろ?風邪で寝ちまったもんだからこれ届けてやって欲しいんだ。」
こうしてプリント数枚を渡してきた。
「いやそこは彼女の友達とかにお願いした方がいいのでは?俺奉仕部ありますし。」
「奉仕部は大丈夫だ。私から連絡回しておこう。なんなら配達の依頼として受けてもらうかな。」
まあ依頼なら仕方ない、と言いたいところだが奉仕部は郵便業務はやっていないはずなんだがなぁ。
千葉総武郵便局?はちまん宅急便てか?
「わかりましたよ」
「よろしい。よろしく頼んだぞ。」
あれこれ言っても仕方ないので受け取ったプリントをカバンに仕舞い教室を出る。
階段を降りて下駄箱がある場所までの道中の角にいつも立っている女子に話しかける。
「おう、待ったか?」
「ううん。なんか先生に手招きされてたけど怒られたの?」
からかうような感じでそう言ってきた。
「いや、ちょっと依頼されてな。」
「依頼?先生が?」
「依頼ていうとちと大袈裟かもしれんが、まあ頼まれてな。」
「そっかー。でも困ったときはわたしたちにも言ってよね?」
さっきとは打って変わってムッとした表情になっていた。まるで子供を叱っているような感じの怒っていながらも少し優しさを含んだような表情だ。
「へいへい」
「うん!じゃ行こっか」
「あー多分後で平塚先生から連絡回って来ると思うが今日は奉仕部には行けん。」
「へ?なにかあったの?」
「や、さっきの先生の頼みでな、プリント届けてこいと配達を頼まれてこれから届けないといけないんだわ。どうやら近所に住んでいる生徒が俺ぐらいしか居ないらしい」
さっき渡されたプリント数枚を彼女に見せる。
「ふーん。かなかなのところ?」
かなかな、と言うのは若宮の事だ。下の名前をもじってあだ名みたいにしているけど相変わらずのネーミングセンスだ。
「ああ。まあな。つっても届けるぐらいだし仮に寝込んでいたらポストとかに突っ込んで来るわ」
「…わかった。ゆきのんにも今日は来ないってことを伝えとくね」
「あぁ。すまんな」
「そこはありがとう。とかでしょ?依頼のようなものだし仕方ないよ。じゃ、気をつけてね!」
そう言うと早く行けと言わんばかりの力で俺の背中を押してくる。
「わーったから押すな押すな…。サンキューな」
軽く手を振り返してそそくさと下駄箱の方へ行く。
駐輪場でママチャリを引っ張り出して自宅の方へ向かって走っていく。
◇
ん…。
重いまぶたを開けて近くにある目覚まし時計に目をやる。
どうやら寝ては目が覚めというのを繰り返し時計はいつの間にか16時ごろを指していた。
食欲は一応あるけどめんどくさくてお昼ご飯も食べずにずっとゴロゴロして寝ていたみたいだ。
「ふぁー…」
あくびをしながら思いっきり蹴伸びをした。うん。気持ちいいねこれ。
そこそこ寝ていたおかげか身体はだいぶ楽になっていた。
一応体温を計るべく、リビングへ足を運ぶ。たしか体温計はそこに置いておいたはず。
リビングにある体温計を手に取り脇で挟み込む。
……ピピッ。ピピッ。
体温計から出る独特の電子音が静かなリビングの中で響く。
そこには37.3℃と表示していた。
まだ微熱てところか。でも身体はだいぶ動けるようになったしもう少し安静してれば治りそうかな。
体温計を専用のケースに戻したらテレビの電源を入れる。
テレビの画面は夕方であることを示しているかのようにニュース番組が流れていた。
芸能人がどうのとか、どこかで交通事故があったとか、政治とか、今夜の天気やら明日の天気はどうとかの内容が流れていた。
あんまり面白くないな。というのが率直な感想。
でもちょっとした衝撃映像のコーナーは意外と好きだったりする。
まあでもニュースが面白いと思って観ている人はあまりいないだろうね。と、ぼそっと呟いて電源を消した。
そうすると玄関のチャイムがリビング中に響いた。
なにか荷物が来たのかな?
最近ネットで注文とかした記憶ないので多分家族の誰かの荷物だろうと深く考えずハンコを持って玄関に向かった。
ガチャっとドア開けてご苦労さまですって言うつもりだったけどそこにはいつも2つ隣の席に座っている彼がいた。
「ひ、比企谷くん…?」
意外と驚いたりせず冷静に対応をする私がいた。
「お、おう。てっきり寝込んでたりして出てこないもんかと思ってたんだがな…」
むしろ彼の方が若干驚いていた。
訪れて来たのに人が出てくることに訪問者が驚くってそれはおかしな話で。
「ふ…、く、ははは!」
少し可笑しく面白かったのでつい笑ってしまった。今日一で面白いかもしれない。
今日は両親は仕事に出かけ、妹は学校へ行って家は私以外誰もいなかった。
そして私自身はあまり元気なくて1日すごく暇していた。この1日がすごくつまらなく感じていた。
だけど一気に楽しくなった。
小さい頃はお母さんが看病してくれたりするけど、今思うと風邪引くと人肌が恋しいと感じるのはというのは本当だったかもしれない。
「んだよ…。で、体調の方はどうなんだ?辛いならこれ受け取ったらさっさと部屋に戻って寝ろ」
彼はそう言うと少し乱雑にプリントと物が入ったビニール袋を渡してきた。
プリントは学校のだから分かるけどビニールに入っているのは…スポーツドリンクかペットボトルの水のようなものシルエットが見える。
「プリント届けてくれたんだね。ありがとう。あとこれは?」
「まあ渡せたらって感じでポカリ数本買ってきた。要らなかったか?」
「…ううん!ありがとう!」
久しぶりの風邪で頭もやられたのか、勢いで彼の胸に飛び込んでしまった。
いや、きっと人肌が恋しかったのと色々買ってきてくれたという気遣いが嬉しかったんだ。
「いやあのちょっと若宮さん?!」
分かってはいたけど比企谷くんはめちゃくちゃびっくりしている。その証拠に普段より1.5倍ぐらい声が大きい気がする。
だけど嫌がっているは感じはなくしっかりと受け止めてくれている。
じゃあ…。
「今日ずっと1人で退屈していて少し寂しく感じたんだ。だから頭なでなでして欲しいなーなんて。」
思っていることを包み隠さず言いながらちょっぴり上目遣いで彼の顔を見る。
彼は時々こちらを見ては目を逸らしている感じだ。
そして頬をポリポリとかいて少し考えた末に大きな手を私の頭に乗せてきた。
その手は左に右に往復する。
それはすごく心地がよくて満たされる感じがする。
私はいつの間にか目を瞑って堪能をしていた。
気持ちいいな…。
もしかしたらこれが「好きな人」が出来たらしてほしいことの1つだったのかもしれない。
「…これでいいのか?」
彼の声を聞いてぱっと目を開ける。心地よすぎて危うくそのまま寝ちゃいそうだった。
「…ん。ありがとう。すごく落ち着いた。でももうちょっと撫でて欲しいななんて…」
彼の顔を見るように上を向いた。
彼は何も言わずにまた撫で始めた。
自分が思っていたより寂しく感じていたんだなと再認識した。
ものの1、2年前は1人でも大丈夫。なんて思っていたけど今じゃ無理なのかもしれないと思った。
今頭撫でてくれている比企谷くんもそうだし、もし美笹や夏鈴がいなくなったらすごく悲しむと思う。
少し大袈裟だけどそれぐらい人と接するようになるとこの先ずっと1人でいることなんでもしかしたらもう無理なのかもしれない。
「…よかったら少しうち上がってく?」
すっごく気持ちよかったけど、流れを断ち切るようにぼそっと口にした。
「いや、風邪だろ?病人は寝とけ。」
「もう微熱だしほとんど元気だよ。それに寒い中プリント届けてくれたのにお茶も出さないのも…」
「そんな寒い中何させてるんですかねぇ…まあ茶だけ貰おうかな」
「うん!上がってよ」
彼の胸からそそくさと離れリビングの方へお招きをする。
☆
あ、じゃあすみません、お邪魔します。とはならないよ?
今何起きたんだ?予想の斜め上の出来事ばかりで記憶しきれない。
脳が頑なにデータの保存を失敗する。
一応流れとしてはチャイム鳴らして出てこなかったらポストにプリントを突っ込んで帰るか、出てきたとしたら身体に障るだろうしプリント類を渡したらすぐ帰るつもりだったんだがなぜか若宮は俺の胸の方に飛び込んで来た。
さらには頭撫でて欲しい、と要望を出してきた。
嫌、というわけではないが驚きのあまり、びっくりした。(二重表現)
前撫でたからお返しに撫でろてか?
きっとそんな感じだろ。うん。
お茶を出すって言うのでとりあえず家の中までついていった。
◇
「ど、どうぞ」
「あぁどうも」
俺は出されたお茶を飲みながら彼女の様子を見ていた。
だいたい俯いていて、たまにお茶を口にすれば目を逸らす。
特に話す感じではなさそうだったので窓の外を見た。
そこはもうすっかり太陽が落ちていて暗くなっている空が広がっていて、窓に反射で俺の顔が映っていた。
そこでぐぅ〜というなんとも気の抜けた音が聞こえた。
「ご、こめん!寝てたからお昼食べそびれていて…」
本人は比較的に元気になっているとはいうけどお茶いただいているわけだし少し看病してやるかとふと思った。さっき少し寂しかったとか言っていたし完治しているわけではないしな。
「お粥とか作ってやろうか?」
「え?ううん、冷蔵庫に作り置きあるから大丈夫だよ」
「そうか。じゃあお前は部屋に戻って横になってろ。完治してるわけではないんだろ?」
「え、ええ!?」
「飯レンチンとかして持って行ってやるから横になって待ってろ」
「う、うんわかった…」
彼女は使っていた湯のみを流しに置いて階段を上っていた。
意識はしていなかったけどそういえば初めて見るパジャマ姿だったな。
なんというかけっこう可愛かった。じゃなくてだな…。
というか何故あいつの代わりに飯を温めているのだろう。さっさと帰るつもりだったのに。
多少元気だとしても完治はしていない病人だから?
そういえば玄関にいた時「少し寂しかった」と言っていたな。
実を言うとその光景にすごく既視感を感じていた。
電子レンジがせっせと食べ物を温めているところを見ながらその既視感について考えた。
が、意外にもすぐに思い出せた。
狙ったかのように電子レンジのチン!の音とほぼ同時に思い出した。
既視感の正体は昔、小町が風邪引いた時の出来事だ。
小町が中学生になった間もないころ、今の若宮のように風邪を引いた。
中学生にもなったということで両親も「大きくなったから1人でも大丈夫だよね」みたいなスタンスで両親は仕事へ行き、俺は学校に行っていた。
それで放課後まっすぐ家帰って玄関のドア開けたところ小町が立っていた。
まだ小学生らしい幼さが残っていて、いつもよく笑っていた小町は少し涙目になりながら俺の胸に飛び込んできた。
確かその時小町も寂しかったと言っていた。
それから寂しがっていた小町の頭を少し撫でてやってはお粥を作って食べさせた。
こんな感じの出来事があって、既視感の正体はこれだと思う。
さて暖かいうちにあいつの部屋まで持っていくか。
◇
さっき部屋で横になってろと言われてめちゃくちゃドキッとしたのはここだけの話。ヘンナコトハカンガエテナイヨ。
その前に彼の胸に飛び込んだという話。
今思うとめちゃくちゃ恥ずかしいことしてんじゃん!?
たしかに久しぶりに1人で家にいて少し寂しかったのは本当だよ?
だからといって比企谷くんの胸のに飛び込んでいい理由にはならないでしょ!?
玄関での出来事を思い出して枕に顔を埋めて、子供が駄々をこねるかのようにジタバタしている私がいる。
バカバカばかぁ…。
今なら絶対39℃出しちゃってる気がする。
久しぶりの風邪で頭もやられちゃってるのかな。
正常な思考をしていたらそんなことは絶対しないのに。
でも待ってよ?
私はジタバタするのをやめて少し考えた。
あの玄関での出来事。
もしプリントを届けに来たのが美笹や夏鈴だったら少しおふざけで抱きつくかもしれない。
でも他の男子だったら?
ごく普通の対応をして普通に受け取って家の中に戻ると思う。
みんなのアイドルと言っても差し支えのない葉山くんだったら?
そりゃ天下の葉山くんが家までお届けに上がったらほとんどの女子はイチコロでしょうね。
でも自分はどうだろう。多分普通に受け取って家の中に戻っていたと思う。
じゃあなんで比企谷くん相手にあんなに大胆になったんだろう。
反射的にそうしてしまった、というのもあながち間違いではない思う。
でもあの時はほぼ風邪ほぼ治りかけていて正常な判断は出来ていたはず。じゃあなぜ?
と、本格的に考えた出したところで部屋のドアがノックされた。
「はーい」
「入って大丈夫か?」
「うん、いいよ」
短いやりとりした後比企谷くんはドアを開けてお盆に乗せてるお粥を持ってきた。そしてそのまま私の下腹部辺りを置いてくれた。
「ありがとう」
「おう。まあそれ食ったら下に下ろして帰るわ」
「うん。…いただきます」
お椀の左隣にあるレンゲを手に取って温められたお粥を食べよう。
でもせっかくだしこれもやってもらおうかな。とちょっとしたイタズラ心が働いた。
「ねぇねぇ、ちょっとこっちに来てよ」
カーペットの上に座ってスマホを見ている彼に声をかけた。
「んだよ」
ベットの側までに来た彼に左手に持ってるレンゲを渡した。
「?」
レンゲを受け取り、困惑している彼を見ながらこうした。
「…あーん」
彼は「は?」と言いたそうな顔をしていたけど案外すんなりとその行為を理解し、行動に移っていた。
「…ほらよ」
彼は目を逸らしながら湯気が立っているとっても暖かそうなお粥が乗っているレンゲをこっちの方に向けてきた。ぱくっ。…うん。美味しい。
あーん。…ぱくっ。…うん。なんか幸せ。
それをしばらく繰り返していくうちに。
「そろそろ自分で食え。恥ずくて死ぬわ。」
彼はそう言って半ば無理やりレンゲを渡してきた。
どうせならとことん甘えて最後までやって欲しかったけどダメだったみたい。
私だって恥ずかしいよ?でも比企谷くんだから…。
比企谷くんだから?
いやいやなんでもないなんでもない。なんでもないったらなんでもないんだから…。
やっぱり風邪引いてからおかしくなっちゃってるよ私。
残りの分のお粥をせっせと口にかっこんでお椀を空にした。
「おう、食い終わったか?」
「うん。ごちそうさま。」
「ん。じゃ下の流しに置いたら帰るわ。」
彼は私の下腹部に置いてあったお盆を持ち上げて1階にある流しまで持っていった。そんな私は上着を羽織って見送る準備をした。
☆
「今日はありがとね。色々と助かったよ」
「あぁ。気にすんな」
それから特に言葉を交わさず数秒経った。だけどそれはまるで1分経ったかのように感じた。
「そのまま身体が冷えて風邪ぶり返すのもアレだし帰るわ。お大事に。」
「うん。また学校でね。」
こうして短い言葉を交わして比企谷くんは家に向かって歩いて行った。
今日という1日の後半は濃密な時間すぎてあっという間に過ぎて行った。
でも今日という中で少なくとも1つだけ気づいたことはある。
もしかしたら心のどこかで友達以上の関係を望もうとしているのかもしれない。
久しぶりに長く書けて良かったです。
ではまた。