やけにリアルな夢(比企谷 八幡誕生日記念)
誕生日。特定の人や動物等の生まれた日、あるいは、毎年迎える誕生の記念日、という意味をしている。8月8日、俺は12歳になる。だが夏休み真っ只中なので祝われることはない。祝われてせいぜい小町や両親ぐらいだ。まあ少し飯が豪勢になるのは少し嬉しい。ありがとうかーちゃん。
日差しの照り返しが厳しい8月上旬。俺は今近くの公園のベンチでボーッとしている。なぜ外にいるかと言うと、リビングのエアコンが壊れて今現在工事の人がせっせと直している最中だ。俺はエアコンの効いた部屋で本を読みたかったが、工事によって音が響くので集中出来ず、ふらっと家から出たのだ。クソあちぃ…
「図書館でも行くか」と、蝉に一瞬でかき消されるような独り言を呟いた。が、恐らく同い年ぐらいであろう女の子にじーっと見られてる。
「な、なんだ?」
「ううん。暑いのに何してるのかなーって」
「なんでもねーよ。つかお前誰?」
「あ、ごめんね。私若宮楓奏だよ。すぐそこの小学校の5年生」
「知らないな。何組?」
「5-3だよ」
「隣のクラスだな。俺もあそこの学校だ」
「ほんと!?」
本当も何もこの一帯の登校エリアはあの小学校しかないと思うのですが…
「あ、あのお名前聞いてもいいかな?」
「は?まぁこっちから聞いたし自己紹介した方がいいか…」
「比企谷八幡だ。ちなみに5-2」
「はちまん?変わったお名前だね」
うん。俺もそう思う。8月8日だから八幡っていう。ちなみにエイトマンにもなれるし俺はスーパーマンである(?)。何言ってんだ俺。熱中症か?てかそろそろ暑くて倒れかねんからそろそろ図書館行きたいのだか…
「あぁ、俺もそう思う。てか俺図書館行くから。じゃあな」と言って去ろうとしたら腕掴まれてた。え?なんか恨まれることした?多分初対面だよね?
「なに?どうした」
「私も付いてっていいかな?」
「は?」
なぜ付いて来ようと思ったのかと聞いたら、なんとなくだそうだ。なんでやねん。
「いや付いてっても俺は本読むし多分暇するだけだと思うぞ」
「ええと、じゃあ私読書感想文まだ書いてないんだけどさ、どんな本読めばいいのか分からなくて…いろいろ教えて欲しいなって…ダメかな?」
じゃあって…てか上目遣いやめろ。お兄ちゃんスキル発動しちゃうだろ。小町がおねだりしてるときみたいになってるから。
「ま、まぁそれなら…」
OKするんかい、俺。やっぱり熱中症かしらん…後でスポドリでも飲もう。
☆
このあと若宮は宿題持ってくると言って一旦家戻り、宿題を持ってきた。この公園から近いのか、往復で10分ほどだった。その間俺は少しのお小遣いでスポドリ買った。倒れるよりマシだからね。
それで今は図書館へ行く道中である。
「そう言えばお前、さっきの公園で何してたの?」
「宿題のドリルをある程度進めたし、暇になったからふらっと家から出ただけ。特に用事とかではないよ」
「ほーん」
「そういえばさっき、比企谷くんは本読むって言ってたけどどんな本読むの?」
「銀河鉄道の夜とか、バッテリーとか」
「難しそう…」
「そうでもねぇよ。読めない漢字そうそうないしあっても辞書で調べれるし」
「なるほどね…読書感想文できるかな…」
「まぁわかんねぇ所あったら教えてやるよ…」
「ほんと?ありがとう比企谷くん!」
なんか俺チョロくなってね?まだ水分足りないのかしらん。ま、図書館に水飲めるアレあるからあれで水分補給するか。
☆
「どんな本がおすすめなの?」
「どんなものがいいんだ?ジャンルとか大雑把でいい」
俺たちは今市立図書館に来ている。はぁ…涼しい。生き返るわぁー…
しかしどんな本か。女子だから恋愛モノ?安直すぎるか。男女共にウケがいい本の方がいいのか。ま、ジャンルぐらい分かればある程度はおすすめすることはできるが。
「んーと、面白そうな本!」
えぇ…大雑把でいいとは言ったがせめてジャンルをだな…面白そうな本ね…面白いやつまらないの感想なんてその人の主観でしか分からないからそれは難しいんだよなぁ…そうだな…
「んじゃこれは?」
「ぼくらの七日間戦争?」
「あぁ、この本は夏休みでの話だから、今ちょうど夏休みだしと思ってな」
「お前の好みのジャンルかは知らんが、俺は面白いと思った」
「なるほど…じゃあこれにする!」
「そうか。俺も本選ぶからテキトーに席についてていいぞ」
「ふむ…」
「おぉ…」
「へぇ…」
俺も本を選んで読み出してから30分ほど経った。若宮は本の世界に没頭している。ちなみに俺は「ぼくらのいたずらバトル」という本を読んでいる。若宮が今読んでいるもののシリーズみたいなものだ。これも面白いんだよなぁ…
しかしエアコンで涼しいし、本は読めるしパラダイスじゃん。
☆
「読み終わったー!」
「図書館だからちょっと静かにな」
「あ、ごめん…読書感想文書くね。」
「おう。文字通り感想書けばいいんだよ」
「…どう書けばいいんだろ?」
えぇ…もうそこで躓いちゃう?まずタイトルに「○○を読んで」みたいな感じの書いてあとは感想書けばいいんだよ。ん?わからん?テキトーすぎてわからんか。
「はぁ…まずタイトルはこんな感じにしてだな…」
書き方を教えつつ、若宮は鉛筆を走らせていた。そして…
「できたー!」
「いやだから図書館…」
「あっ…」
天然かお前。いや気持ちは分からんでもないが。と心の中でツッコミながら窓を見た。
「もう夕方か…」
「ほんとだ…そろそろ帰ろっか?」
「そうだな」
☆
「んー!…本を読んで感想文書いたら疲れたぁ…」
「ほらよ」
「え?お茶!?さすがに悪いよー…そもそも図書館ついて行くって言い出したの私だし…」
「気にすんな。ほら水分補給しっかりしねぇと熱中症で倒れるだろ」
「え?ずっと涼しいところに居たんだから大丈夫だよー…ふふっ、じゃあ頂こうかな。いただきまーす♪」
「おう…」
それからたわいのない会話をしながら家の方に戻った。
「じゃあ私こっちだから!今日はありがとね!比企谷くん!」
「おう。じゃあな」
…にぃ…ん……ちゃん!
「お兄ちゃん!」
「んあ?お?おう小町か…」
「朝ごはんだよ!なに寝ぼけてんのさ…」
「俺、振替休日なんだよ…」
「あれ?そうだっけ?ごっめーん!てへぺろ☆」
「はぁ…まぁいいや。朝飯食うわ」
「なんかごめんねー。なんだかんだでちゃんと食べに来るお兄ちゃん好きだよ。あ、今のは小町的にポイント高ーい☆」
「はいはい高い高い…」
しかしやけにリアルな夢だな…まさか本当にあったことなのか…?いやでも若宮の住所的にあの小学校の登校エリアに入ってるよな…過去に引越しとかなければの話だが…ま、いいっか。とりあえず愛する小町が作った朝食を食べて英気を養うか。
今日は比企谷くんの誕生日なので思いつきで書きました。果たしてこれは事実なのかそれともただの夢なのか…
それでは