ベストプレイス   作:自由人❀

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サブタイ通り自転車回です。読まなくてもストーリーには影響しませんので、興味ある方はどうぞ。


幕張ロードレース(非公式)

「ふぅ……」

 私は洗車をしてひと息ついたってところ。あとは注油と変速調整……

 え? 変なことしてないよ? 家帰って洗車を始めただけだよ? いかがわしいこと考えた人、先生怒らないから手を上げなさい。

 今日はいつもの自転車仲間で練習という名のトレーニングをやる。ちょっと久しぶりだからなまってるかもなー……

 今回のコースは県道15号。幕張海浜公園からスタートし卸売市場付近で折り返す。そして再び県道15号で南船橋付近へ向かい、ビバホームがある交差点でもう一度折り返し最終的には美浜大橋がゴール。

 ひたすら平坦で、信号も少なく、路肩が広いから巡行トレーニングがやりやすい。あとひたすら直線的だからある意味メンタルトレーニングもなる。

 公式のレース会場ではなくあくまでも公道なので安全最優先。だけどレース形式でトレーニングを行う(車などに迷惑かけない程度で)。私は完全に趣味でレース出る気ないけどね。

 でもトレーニングをやるのは誰もいない深夜なので案外楽しかったりする。

 しかも大好きな平坦。やるしかないでしょ。あれ?私やっぱり走り屋系女子……? 

 それに鍛えられるから損ではないしね。とりあえず洗車終わったら時間までゆっくりしよっと♪ 

 今回のメンバーは私含め6人でちょうどいいと言ったところかな。普通に6人で回せば比較的にみんなは労力少なめで走りきれる。

 だけどレース形式で殺り合うからどんな展開になるかは分からない。1人飛び出して逃げる人がいるかもしれないし、もしくは複数人で協調を取り逃げ出すかもしれない。そう、仲間であり敵なのだ。勝てばいいんじゃないのって? 簡単そうに見えて実はものすごくキツいんだよ……。

 ……最後の微調整終わったからご飯の時間までゴロゴロしてよっと。

 それからスマホで動画サイト巡ったり、漫画読んだりしてたらいつの間にかご飯の時間になった。お母さんに呼ばれたので階段を降りてリビングへ向かう。

 いるのは妹の京楓と私とお母さんの3人だ。お父さんは遅くなるみたい。

 3人で「いただきます」と口合わせ、夜ご飯を食べ始めた。

「お母さん、今夜走ってくるね」

「自転車?気をつけてね。あ……もしかして比企谷くん?」

「へ?いや違うからね!?」

「え、お姉ちゃん彼氏出来たの?」

「だから違うからね!?……友達5人と幕張で走るだけだよ」

「そう?気をつけてね」

「お姉ちゃんは自転車ばかりやってないで好かれる努力すればモテると思うけどなー」

「うるさいなー自転車楽しいからいいの。走っていればいくら食べても太らないし」

「え、マジ?」と京楓はキラキラした眼差しで私を見る。別に太ってないしむしろもっと食べても大丈夫なくらい華奢な体つきだと思うよ?てかガッツリ成長期真っ只中だからもっと食べてもいいと思うよ。

 ご飯食べ終わり、台所でプロテインを用意する。本来プロテインは運動後30分ぐらいまでが1番効果的だけど、士気を高めるために1杯のプロテインを飲んだ。

 友達のオススメで割と最近飲み始めたけど、プロテインは言わば運動で壊れた筋繊維の接着剤の役割をしているので自転車に限らず、運動の後にプロテイン飲むと飲まないで次の日のコンディションが格段に違うからぜひ飲んでいただきたい。ちなみにご飯などタンパク質と一緒に摂取するともっといいよ。コンビニのおにぎりとか。

 

 

 ☆

 

 

 食休みに漫画を読んだりこの後の支度をある程度済ませ部屋でゴロゴロしてる。さっきお母さんに「比企谷くん?」と言われて誘ってみようかなと思ったけど、自画自賛じゃないけどレベルが違いすぎて弱者いじめになっちゃう。

 だって今日のメンバーにとんでもない速い人いるんだもん。いきなりアタック仕掛けたりして集団を崩壊させるヤバい人。みんなからは「デストロイヤー」なんて言われる始末。

 何よりすごいのがレース勢ではなく私と同じ趣味としてやっているところ。普段からキツいトレーニングしてるわけではなくめちゃくちゃ速い。

「今日のメンバーはだと脚ぶっ壊れそうだなぁ……たはは」

 誰かに言ってるわけでもなく、ボソッと呟いた。

 ゴロゴロしていたら家出る時間に近づいてきたのでタイヤに空気を入れたり最終確認を行う。安全点検大事。

 サイクルウェアに着替え、ヘルメットを被り「いってきまーす」と言い残し家を出た。

 駅の大通りを経て、2つの幹線道路を跨ぎ海浜幕張駅の交差点で右へ曲がって真っ直ぐ行くと集合場所の海浜公園に着く。

 私はいつも集合時間の早めに着くようにしている。理由は……なんとなく? 

 自販機があるベンチのところまでゆっくり進んで行ったら、何やら見覚えのあるある人がいた。その人は自販機の光に当たり、黒いシルエットになっている。

「……え?比企谷くん?」

「ん……?え?若宮か?」

「なんでここにいるの?」

「そっちこそなんでいるんだ?」

 私も彼も驚きを隠せず呆然とした。だって特に約束せずたまたま会ったんだよ? というか比企谷くんの私服姿初めて見たかも……

 って私の今の格好……

「わ、私は友達と待ち合わせで走る予定だからここに来たんだけど……」

「俺は単純にふらっと来ただけだ。アレなら俺はもう離れるが」

「ううん!まだ少し時間あるから大丈夫だよ」

「そうか。てかそれ……」

 私今着ているのはボディーのラインを主張するぞと言わんばかりのサイクルウェアなのだ。うぅ……恥ずかしい……

「……無言はやめてよ。恥ずかしいんだから……」

「……なんつーかエロいな」

「えっち……」

「仕方ねぇだろそれ以外言葉出てこないんだから」

 めちゃくちゃ早口で言われた。確かに男の子から見たらえっちだよね……でもちゃんとした理由あるんだよ?極限まで空気抵抗を減らすためにこんなにぴっちりしてるんだよ?別にボディライン見て欲しいとかそういうのじゃないし……

 何とは言わないけどあるとは言い難いし……

「……あと下、ぱんつ履いてないんだよ……?」

「……は?」

 ……って何言ってんの私!?サラっと言ったけど何口走ってんの私!? 確かにパンツ履いてないよ?理由は長距離走ると股ずれが起きるから履いてないの!自分から履いてない宣言するとかどんな変態だよ!

 誤解を解くように説明したらなんとか分かってくれたみたい。

「ビックリしたわマジで。いきなり爆弾発言ぶっこみやがってよ……」

「自分もいつの間にか口に出しててビックリした……」

 比企谷くんと話をしていたら時間が近づいていた。そろそろ集合場所行かなきゃ。

「そろそろ時間だから行くね」

「あぁ。またな。俺はもう少しいるわ」

「うん……また明日!」

 多分顔が赤いけどどうにか手を振りベンチがあった場所を離れ集合場所へ向かった。少し早いがメンバーは揃ってた。

「ごめん自販機行ってたー」

「おお来たね」と口にしたのはあおさん。実は友達と言っても同級生とかではなく、みんなTwitterで繋がっている。 出先で会って話したら仲良くなり、Twitterでフォローし合ったりするのがほとんどだけど、単純にTwitterで知り合って会うというパターンもある。

 ちなみにあおさんというのはバンドルネーム。彼女は社会人で翌日休みということで神奈川からわざわざ来たのだ。

 タメ口なのは向こうからタメでいいよーという感じに言われ、タメ口で話している。

 他の4人もこの辺りの高校生だったり、社会人も入り混じったような感じなメンバーである。特に社会人メンバーは関わりが多く、ときどきドライブで一緒に出かけたりする。

「今日のコースはTwitterで告知した通りここから県道15号往復するような感じで行くよ。ゴールは美浜大橋。レース形式だから周りと協調を取り逃げたり単独で逃げ出すのも自由。あまりいないけど車には迷惑かけないように」

 軽くミーティングみたいなの終わらせ、いざスタート。

 サイクリングではなくトレーニングなのでもちろんペースはかなり速い

40km/h‬を前後するぐらいのペースで先頭交代を繰り返す。今のところバラけることなく順調に交代している。この季節にしては珍しく風が弱く、スムーズに南東方向へ進む。

 ゴール地点となる美浜大橋を一気に駆け抜け、検見川の浜を通り過ぎる。そして緩やかな連続カーブを抜け再び直線となる。

 瞬く間に最初の折り返し地点、卸売市場に着いた。ここのところはまだ大丈夫。だけどこれからだよね。ビバホームの交差点までおよそ10キロの直線、誰もが仕掛けるならこことなる。

「かおりさん、もしバラけ始めたら協調しない?」

「そうだね。みんなここで仕掛けるだろうし……バラけたらよろしく!」

「うん!」

 信号が変わり、ゴールまで15キロの勝負が始まる。ここで集団から逃げ出すか逃げ出さないかで順位で大きく左右されることもある。

 が、意外にもアタック仕掛ける者はいなかった。最後の折り返し地点から5キロ手前までは……

 最後の折り返し地点から5キロ強。動きが大きく変わった。「デストロイヤー」と呼ばれるあおさんが集団から飛び出した。どうやら美浜大橋の下り坂を利用して引き離そうとしている。それからもう1人は反応したのかあおさん追いかけるよう集団から逃げ出した。

 2人飛び出してこちらは4人が残っている。普通に考えると数多い方が先頭交代の回数増やせてお互いの労力を少なくし、集団のスピードを上げ前を追いつくことはできる。だけど飛び出したあおさんはそれが通用しない。単独でも逃げ切ろうとする人なんだ。

 そして今は23時回っている。この県道沿いの信号はほとんど押しボタン式に変わっている。すなわち誰か渡ろうとしない限りずっと青信号。

 ここで信号捕まったら終わりだ。変わらないように願い、残った4人で先頭交代を繰り返した。

 が、1人落ちてくるかのように集団に吸収された。

「あいつマジバケモンだわ……さらに引きちぎっていきやがった」

 息が上がりながらそう言っていた。ほんとあおさん何もんだよ……

「とりあえず前に出ないで集団内で休憩して!少しペース上げるよ!」

「おけよ……」とキツそうである。マジであいつ何しでかした……

 4人で先頭交代しながら加速したいたらいつの間にか最後の折り返し地点に差し掛かった。

 神が味方に付いてくれたのか、たまたま信号のタイミングがよかったのか早いタイミングで折り返しが終わった。

 あとはゴールの美浜大橋まで全力で回すのみ。

「楓奏ちゃんもそのまま前に出ず脚溜めといて!」

「で、でも……!」

「ほら、離れてるけどよく見ると前にいるでしょ?最後のスプリントに備えてて!タイミングは任せるから!」

 さすがに1人でずっと逃げてきただけであって、疲れによるものなのか逃げ出した直後と比べ結構スピードダウンしている。

「それに向こうは楕円。楓奏ちゃんは真円だからまだ分があるよ!」

「あと好きなタイミングで行きなよ」

「っ……!」

 こんだけ言われたらやるしかないでしょ……。追いつくか分からないけどやるしかない……! 

 先頭がこまめに交代を繰り返したおかげでどんどんペース上がっていく。チラッとメーター見ると43‪km/h‬近くまで行ってた。

 そして幕張メッセの横を通り、緩やかな左コーナーを抜けたらもうゴールまで一直線。前のあおさんも充分射程距離内に入った。

 私は後ろから車来ていないか確認し、左コーナーの途中で飛び出した。立ち上がってもっと前傾姿勢を取った。メーターも見ずひたすら前を見た。

 左コーナー立ち上がったらもうゴールまで間もない。あおさんも追いつかれたことに気づいたのか向こうももがき始めた。

 前へ、前へと進むようにもっと前傾姿勢取り、空気抵抗を最小限に抑えもっと踏み込んだ。

 そしてあおさんと横並びに近い状態になった。

 

 

 ☆

 

 

 横並びになっていたけど、数秒後あおさんが限界を迎えたのか後ろへ下がって行った。そして私はそのまま美浜大橋のてっぺんまで踏み込んだ。てっぺんを通過したあと脚が止まった。もう踏めない。

「はぁ……はぁ……っはぁ……きっつい……」

 全く宮子さん注文が無茶過ぎるよ……手を上げる余裕もないよ……

 この一か八かの勝負、奇跡的に勝った。

 一旦歩道に上がり後続を待っていたらあおさんが話しかけてきた。

「んぐっ……んぐ……っはぁ……あーあ負けちゃったよ」

「心臓壊れそうだよ……はぁっ……はぁっ」

 私とあおさんは息が上がりきって話すのもままならない。冬に近い海沿いだというのに体が凄く暑い。

 そして後続の集団と合流したので集合場所に一旦戻った。

「宮子注文キツすぎますって……」

「でも行けたでしょ?」

「そうですけど……だからってキツすぎますよ」

「何となくだけど楓奏ちゃんって中距離スプリンターだと思ったんだよね。だから行かせたのよ」

「さいですか……もう脚終わりましたよ私」

 これ絶対プロテインくっそ美味いやつでしょ。早く帰って寝たい(切実)

「今日はいい練習になった。また機会があったらやろうね!」

 主催者の宮子さんはそう言い放ち、解散となった。てかあおさん神奈川だよね……大丈夫かな? 

「あおさん、神奈川まで頑張ってね…」

「正直キツいわ…まあ楓奏も気をつけてね」

「うん…じゃあまたね」

「ああ」

私はロードを跨り、帰路についた。チラッと聞こえた「今度こそ逃げ切ってやる」とあおさんが怖いことを言ったのはまた別のお話。

もう言うまでもなくなんとか家着いてプロテインを飲み、シャワーを浴びてベッドに入りすぐ寝た。明日起きれるかしらん…おやすみ…




思いっきり走ってる様子って書いたことないなと思い、思いつきで書きました。
こうキャラクターの日常的なものは番外編で時々書いていこうと考えています。
それでは。
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