「っはぁ・・・・・・危なかった」
現在、何とかはやての魔の手から逃げ出したラプターは、海鳴臨界公園の中央に居た。他に人が居ないため、いきなり人が出現した、風に見えた者が居ないのが今唯一の救いだったといえる。
「・・・・・・帰省しよう」
今考えれば、両親には一ヵ月近く会っていない事になる。連絡も無しに長期に渡って不在していた為流石に心配―――しているかどうかは置いておくとして、生存報告くらいはしておいた方が良いだろう。そう考えての帰省だ。
「っと、そうだ。八神家の前に置いてきたトランク、回収しに行くか」
『え、流石にさっきのスピードはやめてよ!? 振り落とされて車に轢かれてミンチになるかと思ったんだから!』
「分かった分かった」
苦笑してから、ラプターは徒歩十分の道のりをゆったりとしたペースで歩き、そして到着。家の前にやはりトランクは放置されたままで、それを回収する。
「オーディン。今から打ちこむ住所の座標を調べてくれ。その後、ナハト、お前の力で次元移動を頼む」
『(了解)』
『オッケー任せて! っと、相変わらず仕事が早いなぁオーディンは。それじゃ、転移いっくよ~!』
流石腐っても高性能デバイス。打ちこんだ瞬間に座標が出てきたのか、ナハトはすぐに次元移動を開始し、そして目の前がホワイトアウトする。
「・・・・・・っと、帰ってきましたよっと」
ナハトもだいぶ次元移動に慣れてきたのか、転送時間が度々に速くなっている気がする。良い事だと一人で頷きながら、ポケットの中に入れているスペアキーを取出し、門を開け、そして扉に鍵を差し込んで鍵を開け、中へと入る。
「ただいま~」
「お、生きていたか。おかえり」
「あらあら、やっと帰って来たわね。自分から面倒事抱え込む必要は無いのに、困った子ねぇ・・・・・・」
と、奥の部屋から髭を綺麗に剃ったイケメンの男―――つまりラプターの父親と、まだ二十代と自称しても人は全く疑わないであろう美人の女性―――ラプターの母が、それぞれにラプターに向けて言葉を掛ける。
「それにしても、貴方が〝こっち〟の名前じゃなくて、〝あっち〟の名前を名乗るなんて、珍しい事もあったものね」
「・・・・・・は?」
一瞬、訳がわからない、といった表情を作るラプターに、彼の母親はリビングを指して言った。
「貴方のガールフレンド二人が家に来たのよ。まったく、いつの間にそんなに女の子にモテるようになったのかしら・・・・・・母さん、正直びっくりしたわ」
「ラプターって名前教えてなかったら、多分信じずに追い出していたぞ」
「・・・・・・彼女? 待て待て、何の話をしているんだよ?」
父と母の話についていけないラプターが疑問を口にすると、「まぁリビングに上がりなさい」と母から言われ、渋々とトランクを抱えて懐かしの家のリビングへ入ると―――
「お、やっと到着やな」
「やけに早かったな。次元移動でも使ったのか?」
「・・・・・・人違いです」
再び家を出て行こうとしたところを、母に肩をガシッ、と掴まれて拘束される。不味い、逃げ場を失ってしまった、と考えている内にラプターは猫持ちされてしまう。
「全く、うちの天才馬鹿息子に、まさかこんな可愛い彼女が二人も出来るとはなぁ・・・・・・顔も似ているし、もしかして双子だったりするのか?」
「うーん・・・・・・ちょっと違うけど、大体そんな感じです」
「まぁ、説明すると少々長くなるからのぅ」
馬鹿父は遠慮も何も無く質問をしている。一方、ラプターは母に強制入場させられ、更に椅子にも座らせられて、椅子の背とラプターの体にかけてバインドでガッチリと固定されてしまう。
「ちょっ!? 母さん、グレイプニールはマジで洒落にならん!! せめて普通のバインドにしてくれ!」
「ダメよ。そんなことしたら、繋がれぬ拳―――アンチェイン・ナックルで逃げるじゃない。逃げようとした罰よ」
「コンチクショウがぁぁぁ!!」
ラプターが断末魔を上げるのを完全に無視して、父母とはやてとディアーチェは再び話を再開する。
「それで、はやてちゃんとディアーチェちゃんは、うちの子とどれくらい進展があったのかしら?」
実に楽しそうに、笑顔で母は二人に質問する。
「ぬぅ・・・・・・どこまでと言われても・・・・・・」
「せやなぁ。王様がラプターにファーストキスあげたのに対して、ウチはキスしようとして次元移動されて逃げられてもうたからなぁ・・・・・・」
「ファーストキス・・・・・・!?」
「何と・・・・・・その歳で、もうそこまでの進展が・・・・・・!」
母、父が驚いた表情でラプターを見る。ラプターは忌々しげに父母を睨むが、二人はそれを完全に無視して話を進めた。
「でも、困ったわねぇ・・・・・・この子、婚約者がいるのよ」
「「ッ!?」」
「この馬鹿親・・・・・・! 人の個人情報勝手にばら撒いてんじゃねぇ!」
「良いじゃない。―――で、どうするの? 一応親が勝手に決めた、とかじゃないからね。貴方達二人は、どうしたい?」
ばらしておいて、この質問はかなり意地が悪い。つまり、叶わぬ恋の可能性が高い、と言いたいのだ。この母親は。そして―――
「そんなら、ライバルはウチ以外に二人やな」
「その様な事ごときで、我は諦めたりせんわ」
「あら、つまり奪い取ってやる、って事ね。良いじゃない、素敵だわ」
母の理論―――女なら、好きな相手を奪い取ってでもモノにしてみせよ、の精神があるかどうか。本気で好きかどうかの、確認だ。
「なら、父として言うことは何も無いな」
「私も、何も言うことはないわ。でも―――堅仁(けんじ)も大変ねぇ。冥王様が婚約者にも関わらず、こんな美少女二人に好かれるなんて」
「こ、のやろう! そこまでばらす必要性無いだろ!? いい加減その軽い口閉じやがれ! てか、あのミニ暴君と俺は主従関係があるだけだ! 婚約者なんて言った覚えは一言も無いぞ!?」
「あら、種明かししたらつまらないじゃない。まぁ、そうよねぇ。本当は、ゼーゲブレヒトの―――」
「オーディン! この馬鹿一度半殺しにするぞ! ナハトも手伝え!」
『え~、折角面白い話が聞けると思ったのに~』
『(主人の話には興味があるのですが・・・・・・)』
「て・め・え・らぁぁぁ! ちょっと黙―――」
「黙るのはお前だ馬鹿息子が」
ゴォン! と、大砲でも発射したような鈍い音が鳴り響くと同時に、ラプターの頭に鉄拳制裁が加えられ、轟沈する。
「すご・・・・・・ラプターを一撃で仕留めたで」
「伊達にコイツの親はやっていないからな」
轟沈したラプターを指差して苦笑すると、ディアーチェが腑に落ちないという顔で口を開く。
「むぅ・・・・・・こう聞くのは失礼かもしれぬが、そなたらは本当にこの星の人間か?」
「んなわけないっての」
「これでも、過去には管理局のエースだったのよ」
「え、ほんまに!?」
「なんとぉ!?」
あっさりと質問に答えた事より、その質問の答えに二人は驚愕する。
「ただ、私は子どもが出来たから管理局を辞めたけどね。ちなみに、元は条件付きでSSSの空戦魔導師よ」
「俺は地上本部の出自だな。まぁ、今じゃ辞めちまって遺跡発掘の方に再就職したけどな。ちなみに、元は条件付きでSS+の陸戦魔導師だ」
「と、SSSに・・・・・・」
「SS+・・・・・・とな」
なるほど。ラプターが何故打たれ強いのかとか、何となくわかった気がする。つまり、この父母にボコボコに鍛えられたのだろう。
「ただ、一部に置いてはまだ十歳のこの子に抜かされたわ。特に私の特別製バインド、グレイプニールとか」
「あぁ、確かストラグルバインドを限界まで強固にして、拘束されれば魔法を使えず、魔力を吸収され尽くし、拘束された者に掛けられた魔法が全て強制解除される、という奴だったな」
ディアーチェの言葉に、ラプターの母は頷く。
「でも、元はそこまで性質の悪いものじゃなかったのよ? せいぜいストラグルバインドを強固にして拘束された者に掛けられた全ての魔法を強制解除して、魔力を少量ずつだけど吸収するくらいの効果よ。今私がこの子に使っているバインドも、それよ」
でも―――と彼女は続ける。
「この子は私のバインドを僅か六歳で覚えただけじゃなく、覚えてすぐに改良しちゃったのよ。主に、魔力吸収量と、追加効果で魔法が使えない、っていう風にね。本当に、応用力が恐ろしいったらありゃしないわ」
「な、そんな幼い年齢で、アレを覚えたというのか!?」
「えぇ。バインドだけなら、もう私は完全に顔負けよ。局でも最強のバインドだったのよ? 私のグレイプニール」
恐ろしい事実だった。たった六歳で、そこまでの成果を見せるなど、確かにラプターの父が言った通り、まさしく天才に当たる部類だ。
「んで、俺が教えたのは体術だ。主に古代ベルカの方のやつだけどな。ま、その時は俺はコイツとライラ、コイツは俺に痛い目見せられた。俺が加減誤って手首から先の骨を粉砕しちまってな。その後すぐに応急処置をして・・・・・・そして、俺は妻に砲撃と弾幕で地獄の百本勝負をさせられた。惨敗だったよ」
ははは、と笑っているが、それは明らかに笑い話の度を越えていると思う。子どもの手首から先の骨を粉砕するなど、もう虐待のレベルを超えている。もちろん、虐待をしているつもりはないのだろうが。
「ライラ、とは?」
「あぁ、それは私の名前よ。本名をライラ・エルフィーヌっていうの」
「ちなみに、俺はブルーノ・エルフィーヌだ」
ここで初めて、二人の本名が明らかにされた。
「で、この後が驚きよ。ライラは治療魔法でもS+判定を貰っていてな、手首から先の骨粉砕については約1か月程度で治ったんだ。んで、俺がまた体術を教えようと模擬戦をした時なんだけどな・・・・・・今度は、俺の右腕全部の骨が粉砕された。うん、あの時は男だとか大人だとか関係なく、痛みでマジ泣きした」
ラプターなら仕返し程度にやりかねないなぁ、などと呑気に考え・・・・・・すぐにハッと我に返り、そしてその話に対して戦慄した。
「いやぁ・・・・・・もう俺からは、エレミアの技は教えんと心に誓ったわ。ガイスト・クヴァールとか教えるんじゃなかった。もう俺からは何も教えんとマジで思った。アレはもはやスポンジの域を超えて何に形容していいか分かんねぇくらいに飲み込みが早くて応用力が凄まじい」
「まぁその結果、私が封印術を施したんだけどね。ブルーノが異常な技教えたから、せめて保険にと思って、デバイスを持っていなくても攻撃が非殺傷設定になるようにして、それと人や動物に対して簡単に負傷負わせられないようにちょっとした術式も施したわ」
「まぁつっても、あれって無限連環機構なしには強さ発揮出来ねえからな。あの時は確か・・・・・・外部64個の魔法陣全てが、〝威力増強機構〟とかいう奴だったな。あれで疑似的にイレイザーの威力を再現しているだけだったから・・・・・・ま、本人のスペックはそこまで大したこたぁねぇさ」
いや、SS+の陸戦魔導師から見て大したことないと言われても、全然安心出来るものじゃない。
「まぁ、そう強そうに言っても、コイツ弱点ありまくりだぞ? 特に無限連環機構なんてものは、あの中央のどっちか一つの魔法陣を破壊すりゃ根本から破綻するからな。しかも、魔力弾一発でぶっ壊れるほど脆い。ちなみに、中央の魔法陣が複数ある場合は一つになるまで壊せば破綻する」
「えっと・・・・・・そもそも、無限連環機構って何なんや?」
はやてが質問すると、ディアーチェも「うむ」と頷いた。ブルーノは「おっと」と相手が話を理解出来ていない事に気付いたのか、補足する。
「コイツの主力で、コイツ独自で編み出した永久機関。こいつの背中に、魔法陣が浮かんでいる所見たことあるだろ?」
「U-Dの時に見せた、アレか・・・・・・」
「そう言えばユーリと戦ってた時、そないなもん付属しとったな」
「ま、そういうこと。対処分かれば攻略が超簡単な弱点有りまくりの永久機関。発動している間はほぼ無敵だけど、破壊されればそこで終了だ。だからアレ抜きに考えると、本人のスペックはそこまで高くない。精々、奥の手見せて陸戦Sランクくらいがやっとだろうな」
この時はまだ誰も知らないが、事実、ズバリこの父の言っている事は当たっていた。
「んで、これは相手がこの馬鹿息子と戦う場合に情報が無かったらの話だ。情報があれば、恐らく良くてAA。悪くてA-程度だ。何せコイツの技、いちいち弱点が多すぎるんだよ。初見相手にゃ強いが、ぶっちゃけ対処策取られれば本当に弱い。メタに弱すぎて先にそっちをどうにかしろって言いたいくらいだ」
ボロクソに言い過ぎではないのだろうか、と思いながら二人は話を聞き続ける。
「それと、コイツには魔法の適性がほとんどない。ぶっちゃけ砲撃魔法も無理しても雑なものしか作れねえし、魔力弾なんて論外。身体能力強化程度なら普通にいけるんだが、魔力を武器の形にしたりするのは完全にNG。バインドなどの捕獲魔法の適性は驚くほど高いんだが、結界や回復魔法や幻術魔法に関しては適性ほぼ皆無。ちなみに、コイツが使っている回復魔法はほぼ全てが無限連環機構関連だな。防御に関してはそこそこの適性を持っている。努力次第だが、まぁイレイザーもギリギリいけるだろうな。むしろこっちの方が砲撃魔法より適性高ぇ。ちなみに広域攻撃魔法に関しては適性が死んでるな。それと念話がコイツ使えなかったはずだ。最近になってやっと覚えた感じだろ。補助魔法は―――無限連環機構もこの項目に入るから、適性でいえばカンストしてる。探索魔法はそれなりだけど、あんまり大きい物は無理だな。移動魔法は最近かなり上達しているように見えるが、空間移動とかの転移系の適性は死んでいる」
バランス偏り過ぎだなぁ、とはやてとディアーチェはそんな感想を抱いた。大体、砲撃魔法が出来る癖に魔力弾が使えない意味が分からない。理解出来ない。
「それと、魔力付与攻撃もそこまで得意じゃなかったな。近接戦闘型の魔導師にとって致命的なんだがなぁ・・・・・・。おかげで、こいつは今でも純粋な格闘技術を駆使して戦っていると思う。色々と適性偏って見えるけど、コイツは純粋なインファイターだよ。その証拠に、遠距離攻撃なんて多分、しているの見た事ないだろ?」
「た、確かに・・・・・・見たことないね」
「言われてみれば、その通りよな」
「つまり、コイツに近寄らなければまず勝てる。移動系魔法の適性はそれなりに高いから、近づかれないようにするってのも、なかなか難しいかもしれないがな。今度模擬戦でもやる時に、近づかれないようにしてみろ。絶対に、コイツ負けるから」
「いや、でも・・・・・・何と言いますか・・・・・・」
「我ら二人の最大威力攻撃が、その―――」
「あぁ、ダメージが通らない、ってか?」
「はい・・・・・・」
「その通りだ」
何でも分かっているんだな、この父親は。かなりボロクソに言っても、やはり親子だ。この父親は、息子のラプターのことをよく理解している。
「安心しろ。馬鹿息子がそういった行動出来るの、精々三回が限度だから。アイツの保有魔力量ってAランクだからな。かくいう俺も、実はAランクな訳だが」
この辺りは、俺の遺伝をかなり受けちまったなぁ~、と笑いながら言う。そう言われて、ようやくこの父親が何を言わんとしているか、二人は理解出来た。
「ウチらの大技防げる回数が3回なのは、保有魔力量が少ないから、やな」
「大技に大技をぶつけて、威力を相殺した・・・・・・という訳か」
「ザッツライト。まぁ、その一撃を近接で食らったらKO覚悟した方が良いな。何せ、二人同時の最大威力攻撃を相殺されたんだろう?」
まさにその通りだと二人は頷く。しかし、何故この男はここまでの事が分かっているのだろうか・・・・・・。少し、この男の観察力が二人には異常に見えてきた。
「ま、そういうわけで俺の息子は近接ならかなり強い。だけど遠距離とか全く駄目だから、とにかくアイツのレンジに入らなければ良い。―――っと、馬鹿息子戦闘攻略方法はざっとこんな感じだ」
分析され尽くしたその情報に、はやてとディアーチェは心の中で脱帽する。ここまで詳細な情報を事細かに詳しく解析しているのが、本当に凄いと思ったのだ。いや、この観察力と解析力は誰だって評価することだろう。
「さてさて、んじゃ、ここからはフリータイムだ。何か訊きたいことはあるか?」
「うーん・・・・・・訊きたいこと、そうやなぁ~・・・・・・ラプターのタイプの女性ってどんな人なん?」
「ん? あぁ、アイツは結構ロリコンの疑惑がある。前世でもそうだったらしいからな。それ以外で言うなら・・・・・・誠実な人間だな。ただし、分を弁えた誠実な。誠実過ぎるってのも、案外扱いが難しいものだからな」
「へ~。なるほどなぁ・・・・・・」
「ならば、先ほど母親が言っておった、堅仁、というのは?」
「あぁ、俺達が付けた名前だ。本名はケンジ・R・エルフィーヌだよ。ただ、恐らく苗字も名前もあまり使いたがらないだろうな」
「え、何でや?」
「アイツ、前世の時の名前をずーっと大事にしているんだよ。俺達の事を確かに親としては認めているが、名前ばっかりはどうしても譲らなかった。だから戸籍上は俺達が付けた名前を前に出しているが、本人はミドルネームのR・・・・・・つまりラプターの方を普段はよく使う。まぁ、興味ない相手にはいつもケンジの方を使うがな。―――で、苗字を嫌うのは、他の次元世界のみでの話だ。エルフィーヌって、案外かなり知名度高いんだよ」
「なるほどのぅ」
ディアーチェが納得して頷いている内に、はやてが次の質問に移った。
「ラプターって、どんな人と婚約しとるん?」
「そうだなぁ・・・・・・聞いた話によれば、一人称が僕で、中性的な顔立ちで、格闘技が大の得意でライバル。良き友であり良き仲間で、性格は基本純粋、誠実だが、怒りには忠実で腹いせによく三対一とかさせられたとか。でも、根は善人でとても優しく、心の温かい子だとか言っていた。アイツがこれだけ良く言うってことは、多分アイツもこの子の事が好きだったんじゃないのか? 名前は確か―――ヴィルフレッド、だとかリッドだとか。何でも仕事で長期の滞在期間中にかなり仲良くなって、悪ふざけ出来るような中になって、ライバルになって、最終的には恋に発展したんだとよ。ありふれた恋愛だ。まぁ、アイツはまだ返事をしていないらしいがな」
「つまり、ラプターがリッドっちゅう子に求愛された、ってこと?」
「あぁ、そう言う訳だ。婚約者といっても、そんな感じだよ。まぁ、アイツはその後すぐにガレアに病が流行ったってことで帰省して、そこで冥王様の体内情報を凍結した後、自らケジメをつけるために暴走したマリアージュたちと総力決戦して、戦死しちまったけどな。生きていたら、多分OKを出すのは時間の問題だっただろうよ」
「ちょっと待て。ならば何故、ラプターが今此処に存在しているのだ?」
「ん? ・・・・・・あぁ、そうか。初めから説明していなかったな。分かった。説明しよう」
ブルーノはディアーチェの疑問に応えるべく、その質問に対しての説明を行う。
「まず、さっきから何度も言っている様に、ラプターは前世の記憶がある。いや、直接は言ってねえが文脈読み取ればそうなるだろ? んで、こっからが重要な話何だが―――どうやらラプターは、冥王家のその王、イクスヴェリア様に仕えていた側近の生まれ変わりらしいんだよ。その証拠に、奴は一歳の時点で、古代ベルカ語を口にした。それも当たり前のように、会話も出来た」
「・・・・・・本当なのか?」
「嘘吐いても仕方ねえだろ。それに家の家系とか祖先とか辿ってみれば―――実家の古い蔵の中に、びっちりと書き込まれた家系の派生を書かれた書物があってなぁ・・・・・・んで、それを確認して、判明した。エルフィーヌ家の祖先に、ラプターっていう存在が居る事がな。何かの間違いかと思ってその関連資料にも手を付けてみたが、全てヒット。正真正銘、ウチの息子は祖先ラプターの生まれ変わりだったわけよ。・・・・・・まぁ、生まれ変わりというより、記憶が何らかの形で継承された、という可能性もあるわけだが、今は置いておこう。どっちにしろ、祖先の施しに変わりはねぇわけだし」
「・・・・・・何や、ホンマにスケールのデカい話やなぁ・・・・・・」
はやてが率直に感想を言うと、ブルーノも「あぁ」とそれを肯定する。
「んで、さっきまで話していた事と繋がるわけだ。―――あと、先に忠告しておくぞ。ウチの馬鹿息子は未だにリッドのことを引き摺っている。あの時何で、返事を出来なかったんだろう、ってな。だから馬鹿息子・・・・・・ラプターを振り向かせることは、早々出来ないと覚悟しておくことだ」
「そんなん、言われんでも分かっとる」
「端から承知の上だ。心配される必要は無い」
まったく頼もしい事だ。と、ブルーノはそう思いながら、この二人になら頼んでも大丈夫だろうと、個人的な頼みを、することにした。
「お二人さん。俺からの個人的な頼み、一つ聞いてもらっちゃくれねぇか?」
そう言うと、はやてとディアーチェは何だろう、という疑問の表情を浮かべる。断られなかった為に、ブルーノはその頼みを最後まで口にする。
「過去に囚われた、トラウマに囚われたラプターを・・・・・・ウチの馬鹿息子を、どうか救っちゃくれねぇか? アイツはいつも、過去のトラウマと隣り合わせで、生きているからな。せめて、その重荷を軽くしてやって、ほしいんだ。それが出来るのは、アンタ等のような馬鹿息子に恋をしている者、だけなんだよ」
「そんなの、当然や。何せ―――」
「過去に囚われたラプターを解放しなければ、我やこの子鴉に、振り向きはしないだろからな」
「本当に、頼もしい嬢ちゃんたちだ」
ブルーノは思った。この二人になら、ラプターを託しても、きっと良い方向に、持って行ってくれるだろうと。やはりこの二人に任せて、正解だったと。
「応援してるぜ! ま、本妻のリッドの子孫とか出てきたら、俺はそっちを応援するがな!」
はっはっは! と豪快に笑いながら冗談を言うその姿。やはり、この男とラプターはとても似た者同士であり、親子だ。
「あ、それとこれは心の片隅程度にとどめてくれればいいんだが―――冥王、イクスヴェリア様を見つけたら、真っ先にラプターに連絡してやってくれ。今も昔も、アイツの王はイクスヴェリア様唯一人、だからな。本当に、一途で頭の固い、忠実で誠実で優しすぎる馬鹿息子だ」
「そこが、ラプターのえぇところです」
「それはラプターの長所だ。そのままで良かろうて」
「そうだ。これはアイツの長所だ。だから、見つけたら必ず連絡してやってくれよ?」
「了解や!」
「分かっておる!」
はやてとディアーチェが快い返事をくれる。ブルーノは、本当に良い女に好かれる馬鹿息子だ、などと思いながら、自分の役目はもう終わったな、と自覚する。
「・・・・・・あれ? 今気づいたんやけど、ラプターとライラさんは?」
「ん? あぁ・・・・・・うん、ディアーチェっていったっけ。もしラプターに危機が迫ったら、守ってやってくれ。今の歳でその行為は、まだ早いからな」
「ぬ・・・・・・? 何かは分からぬが、まぁ、我に任せておけ!」
この子、隣の子の空気に流されなければ良いなぁ、と若干不安に思いながら、心の中で自分の妻の今の行動に心の中でシャウトする。何やってくれてんだ! と。
「さぁて、と。それじゃあもう今日も遅い。結構長く話しちまったからな」
そこで二人がリビングにある時計を見て「あっ」と声を上げる。時計の針は、既に午後7時を指している。これは確かに、長く話し込み過ぎたと二人は思った。
「なら、ウチら今日はこの辺で―――」
「おいおい、此処何処だと思ってんだ? 嬢ちゃんたち二人とも、海鳴市から来たんだろ?」
「え、はい。そうですけど・・・・・・」
「何か問題があるのか?」
「あ~・・・・・・なるほど。転移魔法かなんかでこっちに移動してきたはらだなそりゃ。言っておくが此処、広島だぞ?」
「え、いやウチらはリンディさんに連絡してアースラで回収して貰えればえぇんですけど・・・・・・」
「うむ。確かに、子鴉の言う通りぞ」
「いや、多分ライラが素直に帰してくれねえだろうな。此処に泊まる覚悟しておいて、とりあえず家族の方とかに連絡しとけ」
「えっ! えぇんですか!?」
「それは誠か!?」
「これこそ嘘言ってもしゃあねえよ。無駄な嘘は吐かない主義だからな。―――まぁ、御二人さんが本気で嫌がれば、アイツも無理強いはしないだろうが・・・・・・」
「泊まります! 泊まらせてください!」
「むぅ、ではレヴィやシュテルに連絡をしておかねばな。一日世話になるとな」
やっぱそうなるよなぁ、とブルーノは苦笑しながらラプターの今夜を案じた。何せ今あの馬鹿息子は、ブルーノの鉄拳で轟沈―――気絶しているのだから。普通であれば何も起きないのだが、特にこちらの茶色の髪の少女、名前を八神はやてといったか、そちらの少女が何かをやらかさないか心配だ。例えば、既成事実とか既成事実とか。
「さぁて、と。俺はアイツのトランクの中の本でも漁ってみますかねえ」
自分の息子の荷物を漁る宣言している辺り、やはりこの父親はラプターと同じく清々しい部分がある。何処までも似た者同士の親子だ、と二人は思うのだった―――。
◆
「へぇ・・・・・・古代ベルカの格闘術関係を無限書庫からパクってきたのか。今のコイツなら・・・・・・大体この辺りまで、か? 俺が教える教えない関係なく、どんどん成長してやがるな」
四人(ラプターは今も轟沈中)で食事を食べ終わり、後はマッタリとした時間がリビング内に広がる。
「えっと何々・・・・・・こっちはロストロギア関係か。なんだアイツ、俺と同じ遺跡調査でもするつもりか?」
ブルーノの方はラプターの持ってきていた本に夢中になっていた。今もパラパラとめくっては一人楽しそうに呟きながら自分の息子のことを解析している。
「それでね、あの子ったらバインドだけどんどん上達しちゃって―――」
一方、ライラの方はといえば、はやてとディアーチェに自分の息子、ラプターの話を楽しそうに続けていた。ちなみに、ライラからは食事中に此処に泊まる提案をされて、二人は快くそれを受け入れていた。
「ふむ・・・・・・無限書庫、相変わらず整理行き届いてないな。へぇ、こんなことがあったのか・・・・・・」
そうこうしている間に、時刻は午後10時を指してしまう。それを見たブルーノが、流石にこれ以上は不味いな、と思いライラに進言する。
「ライラ、もう10時回ったぞ」
「あらっ? あらあら、もうそんな時間なのね。さっ、話はこれでお終いよ。続きはまた明日にでも、ね?」
「あ、ホンマや」
「ぬ? もうその様な時間か」
思いのほか、時間とはすぐに過ぎてしまうものだと思いながら、二人はライラに言われる。
「そろそろ寝る時間ね。あ、それと二人の部屋は二階の真ん中の部屋よ」
「はい。寝るところまで用意してもらい、ホンマにありがとうございます」
「宿泊の許可と寝床の提供、感謝する」
そう言って、瓜二つの二人は部屋から出て行った。ライラがそれを見て「ごゆっくり」と言った時点でブルーノは確信した。確信犯だと。
しかし、今はそんな冗談を言っている場合でもない、か。
「さて、久しぶりの戦闘だなぁ。腕、鈍ってないよな?」
「当たり前よ。それに、ウチの息子に化けて出るなんて、タダで帰れるとは思わない事ね」
「おぉ、怖い怖い」
二人は家の外に出て鍵を閉め、身に付けていた結婚指輪らしきものを見て、そして同時にこう言った。
「セットアップだ、トール」
「セットアップよ、ロキ」
各々のデバイスの名前を呼び、セットアップする。相手は、家の上空に居る、むやみやたらと微弱な魔力を放出している、ラプターの偽物。
「さて、いっちょ捻ってくるか。後衛と結界、頼んだぞ」
「任せて」
その後、誰にも気取られないように広域結界を張った。対象を、自分とブルーノと、偽物のラプターに絞って。
「ヤールングレイプル!」
「噛み千切りなさい、フェンリル!」
腕を魔力強化と付与によって更に強化したブルーノと、銀色の体長2m以上はあろう巨大な狼を魔力で作り出し、同時に襲い掛かる。
戦いは、一瞬のうちに幕を閉じたのだった―――
◆
「この、部屋は・・・・・・」
「な、なんと・・・・・・」
ライラの言葉通り、部屋の場所は合っていた。二階に上がったし、その三つある部屋のうちの真ん中の部屋に、二人は入った。
そして、その部屋は―――恐らくだが、ラプターの部屋だった。
床にはビッグサイズの―――丁度三人ほど寝られるフトンが敷いてある。その中心に、ラプターは今も尚意識を失って眠っていた。
「にしても、味気ない部屋やなぁ・・・・・・」
部屋の中は、勉強机と本棚、くらいしか家具が存在しない。本棚の中のタイトルは、全て格闘術や伝承などの本ばかりだ。本棚に本がビッチリと詰まっている辺り、案外、読書家なのかもしれない。
「なら、ウチは左隣もらうで。王様は右隣や」
「むぅ、まぁよかろう」
そろそろ、二人も睡魔に襲われる時間帯になってきた。それにライラは恐らく、わざとこのシチュエーションに持っていく為に色々と細工したのだろう。フトンのサイズを見れば、明らかにそれが分かるし、こうなれば恐らく何を言っても無駄である。
「我はもう寝るぞ。子鴉、ラプターに変な事をするでないぞ」
「え~・・・・・・王様のイケず」
はやてが冗談交じりに言いながらも、その声が少し残念そうに聞こえるのは―――気のせいだと思いたい。
それにしても、今日は本当に、楽しい一日だった。ラプターに再会出来て嬉しかった、ということもあるが、何よりラプターの事をよく知ることが出来て、嬉しかった。
これから、どう事態が転ぶかは分からない。
しかし、だからこそ楽しいというものだ。また一緒に、ラプターと戦う機会があるかもしれないのだから。
今日のことを思い出して、明日がどうなるかを楽しみにしていると、睡魔は自然と瞼を閉じさせる。そして、瞼が完全に閉じた瞬間―――二人は、眠りに落ちたのだった。
遂に明かされるラプターの真実! そして、ラプターの両親初登場!
いろいろぶっ壊れた性能お持ちの方々です。また、ラプターの適性関連も明らかになりましたね。つまり、ラプターは純粋すぎるインファイターだと。
また、ラプターの父親も何だかんだ言ってやっぱりラプターの父親です。性格や行動や発言がとてもよく似ています。
さてさて、次話ではいよいよ章が変わります。次章をお待ちいただきながら、ごゆっくりと、感想や批判やご指摘やコメントなどをしていただけたら二次創作者冥利に尽きるというものです。
また、評価していただいた方に対して、この場をお借りして言わせていただきます。この作品を評価していただき、誠にありがとうございます。
また、いつも感想や激励の言葉をくださる方、またお気に入り登録してくださった方、この二次創作をご愛読してくださっている方、最後になりましたが、本当にありがとうございます。これからも、ご愛読の方をよろしくお願いいたします。
それでは、また次話でお会いしましょう。