切歌と調に狙われながら、マリアの姉御を愛でていたい   作:ゴマ醤油

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よくある一日 午前

 縄とは偉大な物だ。それ一つで人を殺すことも救うことも出来る万能の器具。長く頑丈で頼りになるとってもすっごい物であると断定できる。

 まあ、そこまで便利な道具をおおよそ一般的な使用法で用いるとすれば。

 

「──はあーっ」

 

 今の私みたいに手足を縛り拘束するために使われることだろう。

 解けないかと手を少し動かしてみたのだが、まったくもって緩む気がしない。

 この自体を切り抜けられるギアは今は手元にない。あってもこんな状況で使うなんて馬鹿らしくてやってられないが。

 思えば何故、私は手を縛られている最中にまでぐっすり寝ていられたのか。普通は起きると思うが。

 

 さて、くだらない考えは置いておくとして。この騒動の加害者にはとっくに目星がついている。

 

「あ、起きてるデスか?」

 

 開いた扉から呑気に入ってくる一人の少女。お気楽常識系少女を自称しているが、割とずれている部分がなくもない金髪少女。

 サババの片割れこと暁切歌が私を見下ろす。

 

「……ねぇきりー。外してくれると嬉しいな」

「やデス。だって外したら雷華はすぐ逃げるデス」

 

 こんな非常識感漂う状態なのにふつうのしょうじょらしくプイッと拗ねるきりー。

 御察しの通りこいつが犯人。別に驚きはしないけど、まさかこいつもやるとは思わなかったから意外だ。

 

「逃げないって。ところで私はなんで紐グルされたんだ?」

「それはデスね! ──昨日の午後見ちゃったからデス」

 

 怖っ。急にトーン下げるのやめてほしい。

 さて、昨日何してたっけ? 確か午前はこんな感じで部屋にいて、午後は……。あっ。

 

「昨日クリス先輩とデートしてた、デスね?」

 

 誤解である。

 確かに、偶然クリー先輩にあったので買い物には付き合ってもらった。だが、あれは本当に偶然の出来事。それをデートだなんて言われちゃうと色々と困ってしょうがない。

 まあきりーなら軽く説明するだけでこの騒動は終わるだろう。

 

「偶然だよ。会ったのがきりーならきりーと買い物行ってたよ。……これ言うの二日連続だわ」

「そうデスか。それは良かったデス! ……ちなみに二日連続とは?」

 

 やばっ。つい口から漏れた。

 縄を解こうとしていたきりーがこちらに顔をぐいっと近づけ覗き込んでくる。態度からして、話さなければ終わらないやつだこれ。

 

「……」

「……話すデス」

「…………一昨日ほどに、しらーに縛られこんな感じで……」

「──はっ?」

 

 怖っ、ガチトーン怖っ。絶唱クラスに怖いんだけど。

 割と余裕のある理由はいたって簡単。二日前、もう一人のザババである黒髪の少女──月読調にも手を縛られ、この部屋に捕まっていたのだから。まあそもそも私の部屋だが。

 

「──調デスか。また調デスか。いつもいつも調を優先するのデスね雷華は」

 

 スイッチが入ったように質問をぶん投げてくるきりー。いつもは仲が良い二人なのに、時々こうやって地雷が爆発するのは何故か。

 

「いや、監禁に先も後もないよ。それに、一番は姉御だ」

「言い訳無用デス。お仕置きデス」

 

 指を動かしながらこちらに迫るきりー。

 まずい、なんか貞操の危機な気がする。なんでってこれもしらーがやってきたまんまだし──。

 

「覚悟デスっ!」

「しない!」

 

 微妙に解けていた縄から強引に手を抜き、飛び込んできたきりーを避ける。

 避けた後ろで若干鈍い音がしたけど、突っ込んできたきりーが悪いので気にしない。

 

「な、なんデス……と」

「ちょっと頭冷やしなよー」

 

 すぐさま鍵と携帯がポケットにあるのを確認し、そのまま部屋を出る。まあ冷静に戻ったら戸締りはしてくれるだろう。

 しっかしなんできりーもしらーも部屋の鍵持ってるんだろう。いくら寮とはいえ複製なんて難しいと思うのだが。

 

 はあっ、姉御成分が欲しい。姉御の勇姿をこの目に焼き付けたい。

 なんで日本でのライブじゃないんだ。なんでこの島国でやらないんだ。

 滅入る気持ちを抑える為、適当に街でもぶらついてようと思っていたらポケットが急に揺れる。携帯の着信音だ。

 

「もしもし」

『雷ちゃん。今どこ? 部屋に行ったら切ちゃんが倒れてるけど』

 

 電話から聞こえるのはしらーの声。どうやらまた私の部屋に押し入ろうとしたらしい。多くない? 

 なんかもう面倒くさいのでそのまま電話を切り、電源を落とす。

 

「姉御ぉ。こっちは大変ですよー」

 

 海外にいる私の希望に想いを馳せる。

 早く生きた姉御が見たい。テレビでも良いから輝いてる姉御が見たい。

 

「私のいない間は調と切歌のこと頼んだわよ、雷華」

 

 唐突に姉御の言葉が脳をよぎる。

 これはあれか。姉御成分が足りない私に、脳が贈り物をしてくれたのか。さすが私の脳みそ、姉御の言葉はいつ振り返っても完璧に覚えている。

 

「……帰るかね」

 

 姉御のお言葉を思い出し、しょうがないので我が部屋に戻る決意をする。

 とりあえず、晩御飯のおかずを買うために一旦近場のスーパーに向かう。……戻った時には二人とも、落ち着いていないかなぁ。




切ちゃん可愛いよ切ちゃん。というわけで適当に書きます。
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