切歌と調に狙われながら、マリアの姉御を愛でていたい   作:ゴマ醤油

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よくある一日 午後

「んで、ちょっくら時間潰しに来たってわけか?」

「ええ、まあ」

 

 すっごくめんどくさそうな目を向けてくる目の前の人に私は頷く。

 銀の髪と大きい胸の特徴的なクリー先輩こと雪音クリス。その人の部屋に休憩しに訪れていた。

 

「しっかしまあ、あの二人はどうしてお前にべちゃついてんだァ? マリアのやつにはそんなにがっつかねえだろうに」

「何ででしょうね。まあ、姉御にゴーするのは私だけで充分ですがね」

 

 出してもらったコーヒーを一口飲む。何も入っていないので苦いのだが、一緒に出してもらったクッキーがとても合う。うまうま。

 

「……はあっ。私の周りにはなんでピンク脳な奴が多いんだ?」

「クリー先輩もあんま人のこと言えないですよ。(ウイング)先輩やビッキーといる時なんか特に」

「あア!?」

 

 私の一言で顔を赤くさせながらでも強めに反論してくる。

 (ウイング)先輩がこの人をからかいたくなるのがわかる微笑ましさだ。マリアという至高の女神には絶対に届くことはないが、まあ少しグッとくる。

 

「とにかく、それ飲んだらもう帰れよ。あたしも飯食うんだよ」

「お布団込みで泊まらせてくれたら作りますよ」

「お断りだ。あの後輩どもに睨まれるのはかったりぃんだよ」

「残念」

 

 割と本気で言ってみたのだが、帰れと言わんばかりの表情と手振りで答えを示してくる。

 別に薄情だとは思わない。先の事件の際、私を欠いたあの二人がどれだけ情緒不安定になったかを見た一人だからだ。

 

 窓からは落ち始めた夕日が見える。思えば三時間ぐらいお邪魔していた気がする。……これ飲んだら帰ろっ。

 残り半分くらいの黒い液体を再び飲もうとした時、聞き慣れた音楽が部屋中に流れる。

 一応何処からか探してみると、クリーが手に持っている携帯からその音は鳴っていた。

 

「……げっ」

「どうしました?」

「噂をしたらだ。……喋んなよ」

 

 クリー先輩が電話に出ている間、次に食べるクッキーを選ぶ。どれも美味しそうだけど、やっぱりチョコの混ざったこれかな──。

 

「おい」

「……ええっ?」

「出てくれ。ネタは割れてるらしいぜ」

 

 疲れたような顔でこちらに電話を渡してくるクリー先輩。

 恐る恐るそれを受け取り耳元に当てる。

 

「……もしも──」

『帰ってきて。早く』

 

 調はそれだけ言って通話は切った。有無を言わさぬその早技に思わずクリー先輩と目を合わせてしまう。

 

 ……はあっ。…………はあーっ。

 

「……………………帰ります」

「お、おう」

 

 コップ内の苦いコーヒーの残りをグッと呷り、クリー先輩の心から同情した視線を背中に感じつつ家を出る。

 我が家で私を待っているだろうきりーとしらーを考えると、帰り道の足はとても重かった。

 

 こんな対応をしているのでよく誤解されがちなのだが、別にあの二人を嫌ってなどいない。時々暴走をする二人だが、それが決して悪意からではないことは分かっている。

 ただ、なんていうか疲れるのだ。マリアニウムが欠如しているこの現状で相手をするのは骨が折れる。

 それでも放置しないのを考えると、他の知り合いよりはまあ気に入ってはいるのだろう。

 

(……姉御の写真、破かれてないかなぁ)

 

 部屋の惨状を想像し、つい不安がよぎる。

 基本私の矢印が姉御一直線なのをあいつらは知っている。きりーしらーも姉御のことは大好きだが、時々起こす癇癪に巻き込まれる可能性がないとも言い切れない。

 

 ……それを考えると足が軽くなった。

 そうだ、姉御グッズ。

 買い物は済ませたしとっとと帰ろう。一度考えた悪い予想というのは消えることはないのだ。

 

 神聖なる姉御グッズのために軽くなった足を動かし先を急ぐ。 ……大丈夫かな? 

 

 

 

「ほら、切ちゃんが悪いんだから謝って」

「……ごめんなさい、デス」

 

 部屋の玄関を開けると、案の定二人が待ち構えていた。

 申し訳なさそうに謝ってくるきりーの様子から察するに、頭は冷えたようだ。

 

「良いよ別に。それよりご飯作ろ? 今日も食べてくでしょ?」

「いいんデスか! やったーデス!」

 

 あんまり納得いってなさそうなしらーも一緒に部屋に押し込み扉を閉める。入り口でごたごたやられるのは大変だし、隣の人にも悪いし。

 

 買ってきた材料でぱっぱと料理を作り、ちょっと大きいテーブルに並べる。一人部屋なのに、三人分の量が置けるテーブルなんていらないのだが気付けばあった。多分きりーかしらーが持ってきたのだろう。

 

「いただきます」

 

 箸を使い夕食を食べ進める。

 適当に焼いたとはいえ美味しい。スーパーで買った生姜焼きの元で作ったのだが、中々に悪くない。

 きりーもしらーも箸が止まらないのを見るに喜んでもらえたらしい。

 

「きりー、しらー。美味しい?」

「うまうまデス! やっぱり雷華の料理は最高デース!」

「とっても美味しいよ。雷ちゃんの料理はいつも最高」

 

 うん。機嫌も直ったようだ。

 良かった良かった。これで今日は帰ってもらえる。最近不足したマリアニウム確保のため、今日は寝ずに手作りマリア(ガングニールver)を愛でなくてはいけないのだ。

 

「ところで、どうしてクリス先輩のところに行ってたの?」

 

 食事も佳境を迎えた時、しらーが今日特大の爆弾を放り込んできた。

 慌てて二人を見ると、質問してきたしらーもそれを聞いてたきりーも目のハイライトをなくしながらこっちを覗いていた。

 数年で養った予感が訴えてくる。ここで間違えると、数日間二人が磁石のように離れないだろう。

 ところで、いつも私を中に挟むと仲がよろしくなくなるのに、息ぴったり行動そっくりなのは何でだろうか。

 

 ……ふむ。まあ正直に答えるか。

 

「……暇を潰せる場所だったから。思い付いたのがそこだったんだ」

「つまり、クリス先輩が一番に思い付いたんデスか?」

「……そうなるね」

 

 私の返答に、二人の雰囲気が変わるのを感じる。

 ……間違えたくさい。これはもうフォローのしようがない。どうしよっ。

 

「今日は泊まるデス」

「今日は泊まるね」

 

 同時に同じ言葉を吐くきりーとしらー。こうなった時はもう諦めるしかない。運を天に任せ、ただ合わせてやることが平和に終わる一つの正解だ。

 

「……わかったよ」

「じゃあお風呂はいるデス。今すぐ」

「うん。早く入らなきゃ」

 

 皿を水につけ、二人に引きずられ風呂に連れてかれる。

 この後はいつもと同じ、寝るまでずっと引っ付かれるのだ。つまり、マリアグッズはお預けということだ。

 

(姉御ぉ。会いたいよぉ)

 

 異なる国で頑張ってるだろう姉御に想いを馳せる。けれども現実は変わることはなく、未だ目が怖い二人と一緒に一日が終了するのだった。




はやくマリアを出したいです。
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