切歌と調に狙われながら、マリアの姉御を愛でていたい 作:ゴマ醤油
あの二人には先に帰るように伝え、私とびっきーとクリー先輩の三人でヘリに乗り現場に向かう。
『響君と雷華君は救助活動。クリス君は被害状況の確認に当たってくれ』
「雪音先輩だけで足ります? 放火なら複数犯の可能性も」
『人命救助が優先だ。更に情報が分かり次第連絡する』
「こっちの心配とかしてんじゃねぇぞ後輩三号。バカと一緒に人助けに勤しみな」
一応クリー先輩を心配するも笑いながら返される。
まるで猫みたいに素直じゃない態度だが、まあ心配すんなとこっちに気遣ってくれているのだろう。多分。
ヘリが所定のポイントに到着し、びっきーが扉を開く。
「任せたぞ」
「任された!」
頼もしい返事をクリー先輩にしてそのまま飛び降りる。
風が強い。……はあっ。行かなきゃダメかぁ。
『regrais raize myolnir tron』
ギアを握りながらヘリを飛び降り、胸の内から浮かぶ意味も分からない言葉を唱える。
全身に装着されるその神秘。歌に共鳴し力を私に与える異端。
色は青。あの
それが私のシンフォギア。名はミョルニル。
物心ついた時から持っていたそれは、ただ壊すだけの力。
私が施設に連れて行かれるまで前から持っていた唯一の物。
「──ふうっ」
先にびっきーが穴を開けた地点に着地する。
黒煙と赤い炎によって惨劇と化した病院。この分だと生き残りは少なさそうだが。
『誘導を開始します。響ちゃんとは違う経路ですがお願いします』
通信に沿って走り始める。
聞こえる歌声を考えるにどうやらびっきーは一階の大多数。私は上の取り残しらしい。
階段を登り上に残っている人を回収して一階に下ろしていく。面倒臭いので上の床をぶち破って上がりたいのだが、もしもを考えるとやりにくい。
『その階層の生体反応、ラストワン。逆側の階段付近です』
最後の一人の報告を聞き速度を上げ向かう。
到着した先には少女が一人倒れていた。意識を失っているのかぐったりとして動かない。もう死んでいるかもしれない。
とりあえずその少女を抱え下に行く手段を考える。階段は炎で使えない。下の様子がわからない以上床を崩すのはまずい。
──なら横か。ここは最上階。人助けだし壊したって何ら問題はない。どうせ燃えてるし。
「────っ」
全力で壁をぶち抜く。
こういうのはびっきーの方が確実に向いているなとぼんやり考えながらうまく外に飛ぶ。
割と高かったが特に問題はない。持っている少女に衝撃が行かないように上手く着地し近場の救急車に届ける。
(私が誰かを助ける、か。似合わなさが半端ない)
視界から遠くなっていく赤白の車をぼんやりと見ながらふとそんなことを考える。
そう、似合わない。私が、鳴神雷華が誰かに手を伸ばすなど今までなら想像出来ないことだ。
先のフロンティア事変。姉御やマムは月の衝突による人類への危機をどうにかしようと企だて行動していた。
その二人に加え、意義に賛同し共に活動していたきりーとしらー。
だが私は計四人の善人とは違い決して誰かのために動いてなどいない。
姉御のことは憧れているし命をあげられるほどには好意があるが、それでもあの人のために動いていたわけではない。
きりーもしらーもどうして私に執着するのか。私を構成する要素など、あのDr.ウェルとそう変わらないだろうに。
「……早く報告して帰ろ」
まあ今考えることではない。
そう思い通信機で私の回収を依頼しようとしたその瞬間、突如としてけたたましい音が耳に響く。
一体どこからだと辺りを見回すと、すぐ近くから煙が上がっている。
「……あそこか」
念のためもう一度ギアを纏いその場に急行する。
見えてきたのは抉られた地面の中央で何かを叫んでいるびっきー。そして、ふわりと宙を降りる三角帽の少女。
「私は、戦いたくない!」
恐らく攻撃されたであろう対象に向かってなおそう言いのけるびっきー。
相変わらず理解のできない思考回路。初めて彼女を見た時と何も変わっていない。あの時だって、ノイズをばらまいた悪人である姉御達に会話から入ろうとしていた。
「お前も人助けして殺される口なのか!!」
それが、その甘ったるい言葉が相手の何かに触れたのか何やら大規模な力を感じる光を展開していく。
これは助けに行くべきか。なんでかギアを展開する気がなさそうな彼女はこのままでは死ぬだろ──。
「後ろでーす」
そう考えた瞬間に体が、この身に宿る本能が体を動かしていた。
僅かにそれは胴体を掠めていくが、どうにかそれを回避する。
「おやおやぁ? なーんで避けちゃってるんでしょーかねー」
「避けられるほどには甘々だった以外にないと思うのだけど」
すぐにその場から距離を置き相手の容姿を確認する。
青を基調としたメイド服のようなものを着ているその女。どうにも配色が私と被るのが苛だたしいそいつがこっちを本当に驚いた様子で見てくる。
「まあいいでしょう。特に殺る気もなかったですし」
くるくると周りながらどうでも良さそうにこちらに言うその女。
「随分と余裕だね。こっちはお前を挽き肉にしてやりたいんだけど」
「んー、それは無理ですね。だってほらー、あっちがもうすぐ──」
彼女が何か言い終える前に再びあちら側から巻き起こる衝撃。
先程の力の塊か。びっきーはどうなったか、死んだか。
確認に行かなきゃいけないが生憎こっちも目が離せない。
さっきの不意打ちからでもわかったがこいつは強い。今すぐにでも肉塊にしてやりたいが、びっきーに意識を向けてちゃ流石に厳しい。
びっきーが死のうと残念ながら私はそこまで何も感じないだろう。
けどマリアの姉御は悲しむだろう。その場に入れなかった自分を責めるだろう。
それは認められない。故に立花響を見捨てるわけにはいかないのだ。
「んー。装者一人ぐらいなら問題はないですかね──」
「何をやっているガリィ。仕事もしないで遊び呆けているのか」
いつのまにか近づいてきていた三角帽の少女がこの青い女に声を掛ける。
ガリィ。それがこいつの名前だとすると、やっぱり繋がった関係なのか。
「仕事はしーてますけど、ちょうど装者が一人いたもんですからー」
「なら帰るぞ。こちらも出直しだ」
何やら小瓶を地面に落とすガリィと三角帽。中に入っていた何かが光り、次の瞬間には光の中心にいた彼女二人の姿が消えていた。
気配もない。……どうやったかは知らないが退却したようだ。
「……そうだ、びっきー」
とりあえずあの敵どものことは置いといて、びっきーの無事を確認しにいく。
先ほどよりも更に深くなったそこに彼女は倒れていた。
すぐに側まで近づいて脈を測り、怪我の具合を確認する。
……うん、大丈夫。思ったより怪我もない。ただ気絶しているだけだ。
とりあえず一息付くと、本部からの通信が耳に響く。
『雷華君! 大丈夫か!? 』
「問題ないです。敵を二名確認。離脱され追跡は不可能。立花が気絶しているため、回収及び救護班をこちらに」
『もう向かわせている! すまないが、そこで少し待機だ』
「了解です」
通信が切れる。
ギアを解除し適当に座る。尻が汚れるが別に良い。
(……なんだか嫌な予感がする)
一旦脅威は去ったはずなのにどうにも胸の不安が拭えない。もしかして、姉御に何か危機が迫っているのか。
どうにもこの事件が簡単に終わるとは思えない。
ああっ、本当に心配だ。心の平穏のためにマリアグッズを作る時間を作れれば良いのだが。
こっちは息抜きがてらに書きます。
聖詠は完全に適当です。この辺りで作者のセンスが出てしまうのが辛いところです。
そろそろどっかでマリアを出したいです。
コメディ? 原作やる?
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コメディ(時系列適当、キャラ崩壊ある
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原作(GXから
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自分で決めろバーカ