なんか思てたんと違う   作:似非地球人

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タイトルの関西弁要素は特に関係ないです。


1.人は誰でもひとつの太陽

//開始

 轟轟と大地が揺れている。

 かつては敷き詰められ、綺麗に整地されていたコンクリートロードは無残にも罅割れ、所々が陥没していた。

 

 揺れの震源地──否、()()()は、どんどん、どんどん僕のいる場所へと近づいてくる。東。違う、もう目の前に。

 

 ドバァッ、という激しい破裂音。水を入れすぎた風船のように、簡単に。

 目と鼻の先の地面が、爆ぜた。

 

 土砂を纏ったまま、ギュルギュルと気色の悪い音を立てて這い出てきた震源体(そいつ)

 螺旋状に体を捻って上昇し、最頂点に達したところで、その頭をこちらに向けた。

 

 まず目を引くのは、爛と光る赤。八つ。左右に四つずつの──目。複眼。

 竜を思わせるヒゲのような、長く、長く伸びた触覚。

 ギチギチと音をかき鳴らし、膨大な数を規則的に波打たせる歩脚。

 一見柔らかそうな腹。だが、岩石の一つだって意に介さぬ耐久性を持っている。

 土砂から微かに覗く陽光に照らされ、ヌラリと光る外骨格が異彩を放つ。

 

 大百足(ワーム)

 それが、今僕の目の前にいる存在だった。

 

 

 

 人類の敵──。

 

 いつからそれが現れたのかは、実は定かではない。

 というのも、そういった歴史を記録していた施設が真っ先に襲撃され、壊滅してしまったからだ。

 だからソイツラの発生起源は全く分からない。

 だけど確実なことが一つ。

 

 それは、人類を()()としている、という事だ。

 

 恐ろしいことに、奴らは人間を食べる。人間を好む。人間を栄養としている。

 奴らとの戦いによって、人類は凄まじい数の犠牲を背負ってきた。

 我が物顔で手当たり次第に縄張りを増やす人間の姿などどこにもなく、日々を生存競争の弱者とならないよう慎重に生きている。

 

 この街はいい例だ。

 かつては人間の縄張り──だが、今は目の前の大百足(ワーム)の縄張り。

 この街にいた人間は負けた、という事。

 

 そして僕は──僕らは、そんな大百足(ワーム)から人類の縄張りを取り戻すための尖兵である、ということ。

 

「狼狽えるな!」

 

 周囲、後退りを見せた者へ喝を入れる。

 

「我ら第04小隊に勝てぬ闘いは無い! 倒せぬ敵は無い!」

 

 各々がその言葉に奮い立たされ、武器を構える。

 

「速やかにコイツを倒して──全員、生きて帰るぞ!」

 

 号令。皆が闘声(ウォークライ)を上げ、大百足(ワーム)に突き進む。

 よし、怯えは消えたな。じゃあ僕も──、

 

 

 

「そしてお前はとっとと下がれ! 男が戦場に出てくるな、莫迦者が!!」

 

 ぐい、と……首根をひっつかまれて、軽々後ろに放り棄てられた。

 抗議の声など上げる暇もなく、戦域から強制離脱させられる。

 一瞬で見えなくなる隊長の背。大百足(ワーム)。みんな。

 

 なんとか受身を取って着地し──直後、大音量の通信が鼓膜を突き抜けた。

 

(はやて)ェ!! 隊の中で一番の貧弱モンが、なにしとるかァ!! はよ帰ってこい!!』

 

 一瞬でキーンとなった脳内に顔を顰めつつ、通信機の音量を最小にまで下げる。

 

「いや、隊長含めてフルメンバーだから大丈夫で」

 

『手前は男じゃろがい! 良いからお前は黙ってアイツラの帰りを待っとれ! お前が前線で戦うより、励みになるのはそっちじゃ、アホ!』

 

「いや、女の子ばっかりに任せてられないっていうか」

 

『意味わからん事言うてないではよ帰ってこい! 敵が大百足(ワーム)だけとは限らんじゃろが!』

 

 ……へーい。

 

 確かに、今の僕では……僕一人では、大百足(ワーム)はおろか鬼火(ウィスプ)の一体だって倒せやしない。大百足(ワーム)鬼火(ウィスプ)は相性が悪いので共棲はしていないだろうが、そこは物のたとえ。

 

 先ほど檄を飛ばした隊長や、真っ先に大百足(ワーム)に突っ込んでいった皆とは違って……僕は弱いのである。

 男だから。

 

『まだ頭ァ打った後遺症が残っとるようじゃから再三言うがなぁ! 化生(Ghrowhst)は人間を食う! 特に、()()()()()なァ! お前は、奴らにとっちゃ最高の餌だという事じゃ!』

 

 男だから──狙われる。

 狙われるし、対抗手段はない。あったら、人類はもう少し戦えていた。

 男は化生(グロウスト)にとって最高の餌であると同時に、ほぼ無抵抗のまま食える"楽"な獲物なのだ。

 

 どういうわけか、男は化生に弱い。攻撃が通らないわけではないのだが、()()()()()()()()()()()()()()()。化生を前にした男は据え膳が如く及び腰になり、むざむざと食われるのを待つだけの、文字通り餌になってしまうのだ。

 

 女は違う。むしろ、特攻といえる程、化生への攻撃力が上がる。闘争心高く、持てる全力を持って十二全の力を発揮できる。無論、今回の大百足(ワーム)のような大物ともなれば多少の怯えを見せることもあるが、それは生物としての本能だ。

 まるで男を取り合うかのように、化生と対立する。

 どちらにとっても餌だから──などと考えてしまうのは、完全なる邪推だろう。

 

 だが、実際そうなのだ。

 女は男を守るもの。男は女に守られるもの。戦士は女で、生活は男。

 それが、常識。

 そして男を食うのは、女である。

 化生は食欲で、女は性欲で。

 

 それが、この星に生きるものの当たり前の常識なのだ。

 

「……僕以外は、ってね」

 

 そう、僕以外は。

 三週間前──僕は頭を思いっきり打った。

 その怪我自体はどうということはなかっ(思いっきり心配され)たのだが、そこから僕の常識が変わった。

 女の子は男が守るものだし、戦士と言われて思いつくのは男だし、性欲の代名詞は男である、と。

 

 当然その認識は周囲に一笑されたけど、今現在、その認識は治っていない。

 

 変わったのは性認識だけでなく、化生に対する体質も含まれる。

 僕は怯えない。弱いとはいえ、化生を攻撃できるし、無抵抗にもならない。

 そのことを何度説明してもわかってはもらえないのだけど、僕は、僕だけは唯一、化生に対抗できる男なのである。

 

『隼ェ!』

 

「今帰投してますから待ってくださいって」

 

 と、いうのが表向きの話。

 正確には周囲に認識されている話。

 

 僕の認識は変わっていない。

 変わったのは世界の方だ。

 

 貞操観念逆転世界──とでもいえばいいのか。

 脅威が現れたことで、力の関係性が変わった。それがこの世界。

 僕以外の男は化生に対して何の対抗手段も持たない、守られるがままの世界である。

 男の絶対数はとても少なく、また、誰もかれもが消極的。内に閉じこもることが当たり前になっている。正直前の世界の女性の方がよっぽどアクティブでかっこよくてクリエイティブだったので"逆転"なんて言葉を使うのは失礼な気がするけれど、他にいい言葉が見当たらなかったので勘弁してほしい。

 

 変わった直後は、うん、正直喜んだ。

 だってこれ、どう考えてもハーレムルート。

 実際第04小隊含む隊の中には僕ともう一人以外男がいなかったし、そのもう一人もそれなりに高齢だ。

 

 告白され放題だな、って思ったね。

 むしろ襲われ放題だな、って思ったよね。

 好き物にされるんだな、って期待したよね。

 

『ッ!? 隼ェ! そこから逃げェ、熱源体急速接近──』

 

 通信より、羽音の方が早かった。

 視認より先に武器──背に背負っていた槍を引き抜いて、思いっきり眼前に叩きつける。

 

 鋼鉄を殴ったかのような衝撃が槍を伝う。穂先は地面でなく、右斜め上空で完全に静止していた。

 

鍼燕(ピロメラー)! なんでこないなとこにおるんじゃ!』

 

 鍼燕。その名の通り、見た目は燕だ。ハリネズミのようにトゲトゲしているわけではないが、全体的に硬質な印象を抱かせる色味と、2mを超える体長が特徴。

 ちなみに羽毛の根元が鍼状になっていて、飛翔時には根元から落ちる羽毛が周囲の生物・環境を串刺しにする凶悪なヤツ。

 

「ヒュウ。これマズくない?」

 

 ちなみに速い。硬い。僕じゃ勝てない。

 

『だから逃げろと言ったんじゃ!』

 

 円らな瞳(直径5cm)がぎょろりと僕の方を向く。

 怒り心頭だろう。無抵抗に食えると思った餌が、反抗してきたのだから。

 

 ギギギギッ! と、遠目に見たら可愛らしいと言えなくもない見た目からは想像もつかない金切り声を上げる鍼燕。ぐ、ぐぐ、と槍が押され始める。

 ここで力を込め返すのは悪手だ。僕が力で勝てないことは双方わかりきっているので、力んだ瞬間を隙とついてコイツは僕の背後へ回り、たちまちその身を劈くだろう。

 だから押されるままに、慎重に力の加減を行いつつ後退していく。

 

 慎重に。そう、慎重に。

 慎重にぐりっ。

 

Wow(キツネザル)

 

 瓦礫を踏んで、足首を挫く。

 あまりにもお粗末。表情のないはずの鍼燕がニタリと笑った──そんな気がして。

 

 

 

かわいい

 

 

 

 空白。

 一瞬の間。

 

 言葉が出ない。時間が止まっているかのような、静寂。

 

 尻もちをつくはずの体は──鍼燕に八つ裂きにされるはずの体は、しなやかであり柔らかいものに抱き留められた。

 

 一拍。一呼吸おいて、ギン! という音が響き渡る。

 鋼鉄の切り裂かれる音。そして、風に吹かれて散っていく金属質の粉。

 

「怪我」

 

「え」

 

「怪我、してないか」

 

 声のした方。

 抱き留められた、真上。僕の頭がクッションにしているそこの、うえ。

 

 さかさまに僕を覗き込む、埒外の美人さんがそこにいた。

 

「わ、わ!」

 

 美人さんである。

 こちらに来てから沢山の美女美少女に囲まれた僕をして言おう。美人さんである。

 

 かわいい系じゃなく、綺麗系。

 そんな美人さんの胸に抱き留められているのである。ぼく。まる。

 

「あっ、だいじょ、大丈夫です! というかすみませんッ! 離れます、ヅッ」

 

 女の子の胸に頭をうずめるというラッキースケベの代名詞みたいなことをやらかしてしまった。いや、そういう目的があったのは事実だけど、実際にやると罪悪感がすごい。失礼さ加減がやばい。

 即座に離れ、ようとしたのだが、足を挫いていた事を体が思い出してしまった。想定外の痛みに声が出る。

 

「大丈夫じゃないな。よし」

 

 何が"よし"なのでしょうか──なんて問いかける暇もなく、体があおむけに倒された。

 今度はえ、と言う事すらできない早業。

 膝の下、背中へと手が回される。

 

「確かお前は、第04小隊所属だったな?」

 

「……」

 

「どうした? 眠いのか?」

 

 あまりにもナチュラルな姫抱き。僕でなきゃ見逃しちゃうね。やられているのは僕だけど。

 美人さんは、僕の槍を僕に抱かせた状態で、お姫様抱っこをしてきたのである。右腕におっぱいが当たるぜ!

 

「あ、えと、あ、はい! 第04小隊所属稲穂(いなほ)(はやて)であります!」

 

「うん。では、お前を04の区画に連れて行こう」

 

 直感的に悟る。

 この人、多分上官だ。もしくは、他部隊の隊長クラス。

 

 僕らは元の世界とは全く違うとはいえ、一応軍隊である。

 階級制度は、結構厳しい。割と守っていない身から言うのはなんだけど。

 

 僕のどうでもいい名字が割れたけど、いやほんとどうでもいい。

 というか鍼燕はどこへ。いやさ予想するなら、この人が細切れにした、って所なんだろうけど。

 

「   お尻柔らかすぎないか」

「なぜ、男がこんな所にいるんだ? 隊の他の者はどうした」

 

「あ、いえ、その……ほかの隊員は現在交戦中で、僕もその中にいたんですけど、足手纏いなので帰れ、と……」

 

「……連れてきておいて帰らせたのか? 男を一人で。……護衛もつけないとは、04の者はそんなにも人手不足なのか」

 

「い、いや、ついてきたのは僕の勝手な判断で……」

 

「だが、ついてくることを許したのは04の隊長だろう。作戦行動に参加した時点で、前線に立つことを見逃した時点で、隊長に全責任がある。ましてや戦えない男を戦場で一人にするなど言語道断だ」

 

 あー、まずい。厳格な人だった……。

 僕、割とフランクに生きてきたからそういう規則みたいな事に弱いんだよな……。

 第04小隊のみんなも僕に感化されてなぁなぁになってきていたし……。これ、みんなが怒られる流れだよなぁ。マズいなぁ。

 

「僕は普通の男とは違いまして、一応戦えるんですよ! 槍裁きに関しては隊のみんなも認めてくれていますし!」

 

「鍼燕の一匹も満足に倒せないのに、か? 一週間訓練した程度の新兵でも倒せるアレを」

 

 マージデ。

 もしかしてあれ? 僕を傷つけないようにおだててくれてただけ?

 

「……」

 

「   しょんぼり顔かわいい」

「いや、すまない。侮辱するつもりはなかった」

 

 まぁ、事実であるのだろう。

 僕は無抵抗に毛が生えた程度で、対抗策のタの字にもなっていないのだ。

 

「む……見えてきたぞ。あれは迎えか?」

 

「ぁ……あ、はい。通信手(オペレーター)です」

 

「では、ここでいいか。あまり妄りに他の隊の区画に侵入するべきではないからな」

 

 言うが早いか、僕をゆっくりと降ろしてくれる美人さん。

 挫いてこそいるが、我慢できない痛みではない足をしっかり地面について、僕は立ち上がった。

 

「それでは、私は行く。またな」

 

「あ、はい! ありがとうございました!」

 

 名前は聞かない。

 上官は知っていて当然なのだ。僕は知らないけど。

 

 後で、後ろで鬼の形相をしている通信手に聞けばいいだろう。たっぷり怒られた後で。

 

「……もし、よかったらだが」

 

「はい?」

 

「04に不満があるなら……何かやりたいことがあるなら、ウチへ来ると言い。多少の融通は利かせよう」

 

「ストップじゃ! いくらアンタでも、引き抜きは許さへんぞ! ウチのシマで何やってくれとんじゃ!」

 

 どこか名残惜しそうに口を開いた美人さん。

 発せられた言葉は──おそらく、勧誘。

 

 だがそれは、僕の背後からズシンズシンと足音を立てて駆けつけてきた少女に阻止された。

 

「む。……まあ、いい。ではな、隼」

 

「はい。本当にありがとうございました」

 

 美人さんが去っていく。

 正確じゃないね。振り向いた瞬間、消えた。

 通信手の少女の目線を追う限りでは、建物の屋根の方へ行ったようだけれど、僕には全く見えなかった。

 

「……名前呼びじゃとォ?」

 

「出雲ちゃん、お疲れ様アイタァ!?」

 

 はたかれた。痛み的には殴られたに近い。

 

「お疲れ様、じゃないわァ! 男のくせに、ちょろちょろ戦場をうろつきよって! いつになったら大人しくできんねん! 況してや他部隊の隊長にまでメーワクかけよって!」

 

「あ、やっぱりあの人隊長だったんだ。敬語にしといてよかったー」

 

「……呆れたわ。もうええからとっととシャワー浴びてその足処置して寝ぃ。おこる気も失せたわ」

 

「いや、本当にごめんって。今日は肩揉むから、それで許して?」

 

「……ほら、背中乗りぃ。足挫いとるんやろ」

 

「それは大丈夫」

 

「乗れや」

 

「はい」

 

 出雲ちゃん。

 ちゃん付けしているし僕より身長の低い女の子ではあるが、年上。通信手とはいえ当然のように僕より身体能力が高く、化生を相手にしても問題ない。

 じゃあなんで通信手をしているのか、といえば、他の隊員が通信手に適性がなかったから、である。

 まぁ、適性とは何か、はご想像にお任せしよう。

 

「みんなは?」

 

「被害なし。あの区画は取り戻したで」

 

「そっか。よかった」

 

「まだ油断は出来んけどな。虫種(バグズ)はどっかに(コロニー)があるはずやし」

 

「……そっか」

 

 僕とて、戦場を邪魔したいワケじゃあない。

 槍こそ無力と分かったものの、他の対抗手段がないわけじゃあないのだ。

 

「次命令無視したら、ベッドに縛り付けるけぇの」

 

「なぜベッド」

 

「……それはまぁ、そういう事や」

 

 どういう事なんですかね!

 これは次も命令無視しなければいけない使命が生まれてしまった……。

 

「出雲ちゃん」

 

「ん」

 

「僕、重くない?」

 

「ちゃんと食っとるか心配になるくらい軽いぞ」

 

 ……カッコイイんだよなぁ、台詞がいちいちさ。

 イケメンの台詞じゃん、それ。

 

「何もするなとは、言わん」

 

「うん?」

 

「できることを見極めろ、と言っているんじゃ」

 

「……うーん」

 

 出来ないと思っていないのが、致命傷だよね。

 

「……お前は男なんじゃ、少しくらい女を頼れんのか」

 

「むしろ頼られたい?」

 

「はぁ」

 

 元の世界では、女性も男性もカッコイイ人はかっこよかったのだ。

 カッコイイ人になりたい。下心もバリバリあるけど、下心抜きでも、頼られたい。

 

「出雲ちゃん、僕の事好き?」

 

「お前を嫌いなヤツは04にはおらんよ。知っとるじゃろ」

 

「ちぇー、そういうんじゃないのになー」

 

「うっさいわ、もう少し自分の体を大切にせぇ。襲いたくなるじゃろがボケ

 

「んー、なにー?」

 

 情けのないことに、おぶられていただけで眠くなってきた。

 いやまぁ、今朝は5時から哨戒行動の後、昼休憩に槍の訓練をしてすぐの出動命令だったから、疲れているっちゃ疲れているんだけど。

 女の子はこれくらいじゃ疲れないのになぁ。

 

「……」

 

「……全く、無防備な。わしは女として見られてないっちゅーことかね……。まぁ、それだけ信用を得られてるいうことでもあるか」

 

 薄れゆく意識の中。

 出雲ちゃんのあったかい背中で、そんな言葉が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「隼は?」

 

「疲れて眠っとる。足を挫いとったから、湿布を巻いておいた」

 

「怪我したのか!?」

 

「瓦礫に躓いてな」

 

「……なんて危なっかしい。やはり男は戦場に来るべきではないな……」

 

 未だ油断の許されない状況ではあるものの、大百足(ワーム)の討伐を成し遂げた第04小隊。

 彼女らは自らの担う区画の中心にある居酒屋で、酒を片手に肴を食べていた。

 

 基本的に商売を行うのは民間女性であり、彼女らに追随するようにしてごく少数の男が料理を作る、裁縫をするなどして働いているのが現状。04の治めるこの区画だけでなく、世界中全体を見渡しても同じ光景がみられるだろう。

 

「じゃが、あいつ鍼燕に一撃入れよったぞ。それも、急降下してくるヤツにな」

 

「ほー……やるじゃないか! うむうむ! やはり隼は強い子だ!」

 

「でも隊長、ほめちゃダメですよ。隼君、褒められたらまた戦場に来ますから」

 

「せやろなぁ。もうアイツの槍を褒めるのはナシや。隊長だけじゃなく、みんなもな」

 

「えー!」

 

「流石に可哀想だろう! あんなにも頑張っているんだぞ!」

 

「あの笑顔で「僕の槍裁き、どうだった!?」なんて聞かれたら、誰だって褒めちゃうでしょ」

 

「隼、かわいいよねぇ。ホントウチの部隊に来てくれてよかった」

 

「そのかわいい隼を傷つけたくなかったら、褒めるのはナシや。いずれ大怪我するぞ。してからじゃあ、遅いんじゃ」

 

「……まぁ、そうだな」

 

「可哀想だけど、仕方ないかぁ。隼は男の子だしねー」

 

「あれ、それで出雲、鍼燕はどうしたの? まさか隼が倒した?」

 

「……いや、ちょうど哨戒に出てたらしい01の桜隊長に助けられた。王子抱きで帰ってきたぞ」

 

「む……むぅ。またお小言をもらいそうな展開だな……」

 

「ガンバレー」

 

 心がかけらも込められていない声援が04小隊長にかけられたところで、祝会はお開きとなった。

 

 稲穂隼の知らない話である。

//終了




Tips

Ghrowhst / 化生
その国ごとの妖怪、化け物、魔物の姿をした人類の敵。
人間の肉や骨、血を主な栄養源とする。女性より男性を好んで食す。


ぐろうすと図鑑

ワーム / 大百足
全長20mはある大きな百足。拳銃程度の威力であれば腹でも弾ける。多足類のため見た目以上に動きが早く、地中に移動するため追跡が難しい。
口から土を溶かす酸を吐く。

ピロメラー / 鍼燕
根元が鋼鉄の鍼になっている羽毛に覆われた燕。見た目は鉄っぽい燕。超高速で飛び回る。羽ばたくと羽毛が地面に突き刺さる。

ウィスプ / 鬼火
めっちゃ光る玉。正体は比較的小さな虫種の集合体。小さなものから大きなものまで。ヤ〇マーディーゼル。確認されている最大級は直径200mだったらしい。


女性名鑑

出雲ちゃん
通信手。いろんな指示や現場状況を各隊員に伝える。観測手の役割も担っている。
身長135cm。体重35kg。握力270kg。寸胴ぼでー。

桜隊長
着物っぽく見える改造を施した軍服の女性。ちゅよい。
身長185cm。体重??kg。握力測定不能。スレンダーな体形に程よいおっぱい。


主人公

稲穂隼
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