深淵卿に憑依しました   作:這いよる深淵より.闇の主人

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見てくださってありがとうございます!


昨日に引き続き投稿できて良かったです。はやくミレディの所に行きたい……いや、八重樫と会わせたい!その前に先生達とティオか………

それではどうぞ~


失敗は成長の元

 シアが一族(家族)のあまりにもな豹変ぶりに落ち込んでから数分……俺たちを必死に(それはもう命懸けで)止め、カム達が駆けて行った場所へと向かう

 

 

 

 

 さて、今頃彼らはどうなっているのか……

 

 ハウリア族達は俺と南雲による地獄のような特訓よって、身体能力向上は勿論のこと、敵を傷つけたり殺したりすることに戸惑いが無くなっている。元々優れていた気配の強弱の調整も俺の手によって何段階も成長させた

 更に一族全体を家族と称する程の絆を持ち合わせた連携が合わされば……勇者倒せるかな? まだ無理か

 

 

 そこに、俺の頼みで改造(強化)された南雲お手製の武器も色々あるのだ。……あれ? オーバーキルじゃないこれ……まぁ、大丈夫か

 

 

 そんな彼等が、たかが亜人最強(笑)の熊人族と戦ったとしたらどうなるか……

 

 

 

 そんなの目の前の戦闘光景を見ればわかるだろう……いや、戦闘光景じゃねぇなこりゃあ、一方的な蹂躙だわ。

 

 

「ほらほらほら! 気合入れろや! 刻んじまうぞぉ!」

 

「アハハハハハ、豚のように悲鳴を上げなさい!」

 

「汚物は消毒だぁ! ヒャハハハハッハ!」

 

 

 ハウリア族の哄笑が響き渡り、複数の斬撃が急所へと的確に振るわれる。容赦なく命を刈り取ってくる一撃と"ピッー"を連呼している兎人族らしからぬ言動に動揺を見せてしまった熊人族は、情け容赦なく斬り伏せられている。

 

 熊人族の一人が頭に矢の狙撃を喰らって倒れると、聞き覚えのある声がした

 

 

 

 

 

 

「一撃必倒! 次もド頭吹き飛ばしてやりまさぁ! (Load)から頂いた〝必滅〟の名にかけて!」

 

 

 あんなに幼く可愛らしかった男の子のパル……必滅のバルトフェルド君だ。彼はヒゃははー! と、一人、また一人……と熊人族()を仕留めていっている

 

 

 因みに彼の最近の口癖になってしまった「一撃必倒」であるが、最初は「狙い撃つぜ!」が口癖だったのだ。それを、南雲に止められてしまい、忘れ去られた花への愛着が戻ってしまいそうになるほどに落ち込んでいた。

 

 そんなパル君化しかけていた彼を助言しに(パル君へと戻りかけていた少年の心を)現れたのが浩介であり〝必滅〟の名付け親も(厨二への闇沼へと陥れたのが浩介だ)浩介だ。

 

 

 この状況をみたシアは頭を抱えて「もう私の知っている一族(家族)はいないんですぅ」とぶつぶつ呪文のように唱え出してしまった。彼女に申し訳ない気持ちで同情しつつもスルーして、相手さん(熊人族)の出方を観察する……どうやらパニック状態に陥っているようだ

 

 

「レギン殿! このままではっ!」

 

「一度撤退を!」

 

殿(しんがり)は私が務めっグボォッ!?」

 

「トントォ!?」

 

 

 

 一時撤退を進言している部下に、族長を再起不能にされたばかりか部下まで殺られ、怒りと驚きで判断に迷い、指揮を執れていないレギン(部隊長(仮))。その判断の遅さを逃すほどハウリアのスナイパーは甘くはない。殿を申し出て再度撤退を進言しようとしたトントと呼ばれた部下のこめかみを矢が貫いた。

 

 

 それに動揺して陣形が乱れるレギン達。それを好機と見てカム達が一斉に襲いかかった。

 

 

 

 霧の中から矢が飛来し、足首という実にいやらしい場所を正確に狙い撃ってくる。それに気を取られると、首を刈り取る鋭い斬撃が振るわれ、その斬撃を放った者の後ろから絶妙なタイミングで刺突が走る。

 

 

 

 だが、それも本命ではなかく、その背後からハウリア族が現れ致命の一撃を放つ。どうやら教えた通りに連携と気配の強弱を利用してレギン(熊人族)達を翻弄できているようだ。

 

 

 

 しばらく粘ったレギン達だったが、混乱から立ち直る前に満身創痍となり武器を支えに何とか立っている状態まで追い込まれてしまった。

 

 連携と援護射撃を利用した波状攻撃に休む間もなく、全員が肩で息をしている。一箇所に固まり大木を背後にして追い込まれたレギン達をカム達が取り囲んでいる。

 

「流石だ。ここまでになるとは……成長したな」

 

 ホロリと涙を流しながら戦い(蹂躙劇)を見守る俺に南雲とユエが若干引いている。

 

「コウスケの隠れた技能は洗脳? ……それか本当に闇魔法の……」

 

「一人一人の気配の操作、攻撃の精度や戦略……元から良かった連携もここまでの域にするとはな。さすが遠藤━━」

 

 ユエの言葉に否定の言葉で返し、南雲の言葉にはカム達(教え子)と共に自分も誉められて気分を良くした……が、

 

「いやぁ……本当に俺にはできないなぁ……二つ名(厨二)も付けたりしてなぁ? 深淵卿様よぉ?」

 

「グフッ……てめぇ」

 どうやらそこにツボるようで、ニヤニヤしながら言う南雲に青筋を浮かべるて睨むが今は我慢する。手は打ってあるのでカム達の活躍を見るとしよう

 

 

「どうした〝ピッー〟野郎共! この程度か! この根性なしが!」

 

「最強種が聞いて呆れるぞ! この〝ピッー〟共が! それでも〝ピッー〟付いてるのか!」

 

「さっさと武器を構えろ! 貴様ら足腰の弱った〝ピッー〟か!」

 

 

 

 兎人族と思えない"ピッー"な罵声が浴びせられ、戦慄の表情を浮かべている熊人族達。

 

 中には全身をガタガタと震えさせ、涙目で「もうイジメないで?」と訴えて降参のポーズをとっている。当然、ヤオの手によって気絶(・・・)させられた

 

 

 

「クックックッ、何か言い残すことはあるかね? 最強種殿?」

 

 

 

 カムが悪人面で皮肉げな言葉を投げかける。跪いている熊人族を見下ろし、ニヤニヤと楽しそうに笑みを浮かべている。

 

 

 

「ぬぐぅ……」

 

 

 

 レギンは、カムの物言いに悔しげに表情を歪める。どうやらやっとで混乱からは立ち直れたようでその瞳には本来の理性が戻っているようだ。まだまだ怒りの炎は残っているものの、生き残っている部下たちだけでも存命させなければならないという責任感で正気に戻ったようだ。

 

 

「……俺はどうなってもいい。煮るなり焼くなり好きにしろ。だが、部下は俺が無理やり連れてきたのだ。見逃して欲しい」

 

「なっ、レギン殿!?」

 

「レギン殿! それはっ……」

 

 

 

 レギンの言葉に部下達がざわつき始めた。自分の命と引き換えに部下達の存命させるためだろう。動揺する部下達にレギンが一喝した。

 

 

 

「だまれっ! 俺はどうなってもいい。兎人……いや、ハウリア族の長殿よ。全ては同族を駆り立てた俺の責任だ。勝手は重々承知。だが、どうか、部下だけは見逃してくれ……頼む……」

 

 

 

 武器を手放し跪いて頭を下げるレギン。それを部下達は何も言えずに立ち尽くして見ている。必死に我慢しているのかプルプル震えている

 

 

 

 頭を下げ続けるレギンに対するカム達ハウリア族の返答は……

 

 

 

「……だが断る」

 

 

 

 という言葉と投擲されたナイフだった。

 

 

 

「うぉ!?」

 

 

 

 流石はこの場を率いているだけあって咄嗟に身をひねり躱すレギン。しかし、カムの投擲を皮切りに、一斉に矢やら石などが高速で撃ち放たれた。大斧を盾にして必死に耐え凌ぐレギン達に、ハウリア達は哄笑を上げながら心底楽しそうに攻撃を加えている。

 

 

 

「なぜだ!?」

 

 

 

 なんとか声を搾り出し、問答無用の攻撃の理由を問うレギン。

 

 

 

「なぜ? 貴様らは敵なのだ。 殺すことにそれ以上の理由が必要か? それに何より……貴様らの傲慢を打ち砕き、嬲るのは楽しいのでなぁ! ハッハッハッ!」

 

 

「━━なっ!?」

 

 

 カムの言葉通り、ハウリア達は実に楽しそうだった。

 突っ込んで首を断つだけで終わるものを、弓等の中遠距離武器を安全圏から嬲るように放ったり、小型ナイフを投擲するだけ……それをニヤつきながら行っているのだ。相手が苦しんでいるのを心から楽しんでいるように……懸念していたことだが、初めての人族、それも同胞たる亜人族を殺したことに心のタガが外れてしまったようだ。要は、完全に暴走状態ということだ。

 

 

 

 攻撃は更に激しくなり、レギン達は身を寄せ合って必死に耐えているが、もはや既に限界。致命傷を避けているというよりは避ける以前に致命傷になる攻撃がこないが満身創痍だ。次に攻められれば終わりだろう。

 

 

 

 カムが口元を歪めながらスっと腕を掲げる。ハウリア達も狂的な眼で矢を、石をつがえた。レギンは、諦めからか身体の力を抜いて目を瞑る。死ぬ覚悟をしたようだ

 

 

 南雲が仕方なくホルスターに手をかけようとしたところを手で制してとめる。

 そうこうしているうちにカムの腕が振り下ろされ、一斉に放たれる矢と石。瞬間、俺らの横でをシア(何か)が、バヒュッ! と横切った。そして━━

 

 

 

「いい加減にしなさぁ~い!!!」

 

 

 

 ズドォオオン!! 

 

 

 

 白き鉄槌が全てを吹き飛ばした

 

 

 

「は?」

 

 

 

 思わず間抜けな声を出してしまうレギン。だがそれは無理もないだろう。何せ、死を覚悟した直後、目の前に一瞬で青白い髪のウサミミ少女が現れ、槌を地面に叩きつけてクレーターを作ったのだ。しかもその際に発生した衝撃波で飛んできていた矢や石を吹き飛ばしたのだ

 

 

 登場したのは、もちろんシアである。振り下ろした槌をヤンキーのように肩に持っていき、トントンしている。たしかあの槌は南雲が作った見た目によらず相当な重量を誇っているのだが、まるで重さなど感じさせずブオンッと振り回し、ビシッとカムに向かって突きつけた。

 

 

 

「もうっ! ホントにもうっですよ! 父様も皆も、いい加減正気に戻って下さい!」

 

 

 

 そんなシアに、最初は驚愕で硬直していたカム達だが、ハッと我を取り戻すと責めるような眼差しを向けた。

 

 

 

「シア、何のつもりかは知らないが、そこを退きなさい。後ろの奴等を殺せないだろう?」

 

「いいえ、退きません。これ以上はダメです!」

 

 

 

 シアの言葉に、カム達の目が細められる。が、そこでまた新たな乱入者が数名ほどシアの両隣へと現れた。

 その乱入者とは、俺がハウリア族達が移動を始めている時に呼び止めたヤオ達だ。

 

「ええ、退くことはできませんな族長……いいえ、"深淵蠢動の闇狩鬼カームバンティス・エルファライト・ローデリア"」

 

「狂った仲間を正しき道に導くのは当然のことよ」

 

「ヤオさん、それにラナさ……というか深淵蠢動って何!?」

 

「シアだけでなく、"幻武のヤオゼリアス"、〝疾影のラナインフェリナ〟……狂った仲間とはどちらの事だ? 

 我らの邪魔をし、敵対しているのはお前たちではないか」

 

 

「敵対? いえ、別にこの人達は死んでも構わないです」

 

「その通り、この"ピッー"共はどうでもいい」

 

「ええ、問題なのはこの"ピッー"共ではないわ」

 

「「「「どうでもいいのかよ!?」」」」

 

 

 てっきり助けに来てくれたのだと考えていた熊人族達は、シア達にツッコミを入れる。

 

 

「当たり前です。殺意を向けて来る相手に手心を加えるなんて心構えでは、ユエさんの特訓には耐えられません。私だって、そんな甘い考えは既に捨てました」

 

「ふむ、では何故止めたのだ?」

 

 

 カムが尋ねる。ハウリア族達も怪訝な表情だ。

 

 

「これは相当に重症だな」

 

「シア、貴女の口から教えてあげなさい」

 

「はい! お二人に代わって言わせてもらいますが、今の父様達が正気ではないからです! このまま止めなかったら戻ってこれない所まで堕ちてしまうからです!」

 

「我らが正気ではない? 堕ちてしまう?」

 

 

 

 どうやら本当に気がついていないようで、訳がわからないという表情のカムにシアは言葉を続ける。

 

 

 

「そうです! 思い出して下さい。ハジメさんやコウスケさんは一旦敵だと認識すれば容赦しませんし、問答無用で、無慈悲ですが、魔物でも人でも殺しを楽しんだことはなかったはずです! 訓練でも、敵は殺せと言われても楽しめと言っていましたか!?」

 

「い、いや、我らは楽しんでなど……」

 

「……今、父様達がどんな顔しているかわかりますか?」

 

「顔? いや、どんなと言われてもな……」

 

 

 

 シアの言葉に、周囲の仲間と顔を見合わせだすハウリア族。一呼吸置いたシアは続きを話す

 

 

 

「……まるで、私達を襲ってきた帝国兵みたいです」

 

「ッ!?」

 

 

 

 実の娘から告げられた衝撃の言葉に瞳に宿った狂気が吹き飛んだらしい、武器を落として頭を抱える。家族を奪った帝国兵(彼等)と同じといわれてしまい、耐え難いショックを受けているようだ

 

 

「シ、シア……私は……」

 

「ふぅ~、少しは落ち着いたみたいですね。よかったです。最悪、全員ぶっ飛ばさなきゃいけないかもと思っていたので」

 

 

 

 シアが大槌をフリフリと動かす。シアの指摘と、ついでに大槌の威容に動揺しているハウリア達に、シアが少し頬を緩める。

 

 

「まぁ、初めての対人戦ですし、今、気がつけたのなら、もう大丈夫ですよ! 大体、ハジメさんやコウスケさんも悪いんです! 戦える精神にするというのはわかりますが、あんなのやり過ぎですよ! それに変な二つ名? も付けて恥ずかし━━」

 

 

 

 今度は、南雲と俺に対してぷりぷりと怒り出すシア。その背後では熊人族がどさくさ紛れて逃げようとしていた。当然、逃がすわけがない

 

 

 苦無を当てて止めようかと思ってぶん投げるが、それよりも少し速く一発の銃弾が飛んでいく

 

 

 シアの背後で「ぐわっ!?」という呻き越えと崩れ落ちる音がする。そう言えば、すっかり存在を忘れていたとシアとカム達が慌てて背後を確認すると、額を抑えてのたうつレギンの姿があった。

 

 

 

「なにドサクサに紛れて逃げ出そうとしてんだ? 話が終わるまで正座でもしとけ」

 

 

 

 流石に速撃ちには勝てなかったようで南雲がレギン達に銃撃したようである。但し、何故か非致死性のゴム弾だったが。俺の苦無はレギン()が倒れてしまった事で背後の木にトンっと突き刺さった

 

 

 

 ハジメの言葉を受けても尚、逃げ出そうと油断なく周囲の様子を確認している熊人族に、ハジメは〝威圧〟を仕掛けて黙らせた。ついでに俺の"影操術"で木に吊っておく。そんな彼等を尻目に、シア達の方へ歩み寄る南雲とユエ

 

 

 

 南雲はカム達を見ると、若干、気まずそうに視線を彷徨わせ、しかし直ぐに観念したようにカム達に向き合うと謝罪の言葉を口にした。

 

 

 

「あ~、まぁ、何だ、悪かったな。自分が平気だったもんで、すっかり殺人の衝撃ってのを失念してた。俺のミスだ。うん、ホントすまん」

 

 

 

 ポカンと口を開けて目を点にするシアとカム達。まさか素直に謝罪の言葉を口にするとは予想外にも程があった。

 

 

 

「ボ、ボス!? 正気ですか!? 頭打ったんじゃ!?」

 

「メディーック! メディ──ク! 重傷者一名!」

 

「ボス! しっかりして下さい!」

 

 

 

 故にこういう反応になる。青筋を浮かべ、口元をヒクヒクさせる南雲

 

 

 

 今回のことは南雲自身、自分のミスだと思っていたようで、ちゃんと謝罪をしたのだが……帰ってきた反応は正気を疑われるというものだった。南雲はキレかけるものの、グッと我慢したようだ。

 

 

 

 取り敢えずこの件は脇に置いておいて、レギンのもとへ歩み寄ると、その額にドンナーの銃口をゴリッと押し当てた。

 

 

 

「さて、潔く死ぬのと、生き恥晒しても生き残るのとどっちがいい?」

 

 

 

 南雲の言葉に、熊人族よりもむしろハウリア族が驚きの目を向ける。セリフからして場合によっては見逃してもいいと聞こえるからであろう。俺としては殺さなかった時点で何かしらあると思っていたが……ようやく合点がいった。カム達は意図に気がついていないようで、「やはり頭を……」と悲痛そうに言うので南雲の額に青筋が量産されていく。

 

 

 

 レギン(彼ら)も意外そうな表情で南雲を見返した。ハウリア族をここまで豹変させたのは間違いなく眼前の男だと確信していたので、その男が情けをかけるとは思えなかったのだろう。

 

 

 

「……我らを生かして帰すというのか? だが、無条件で返すとは思えぬ……望みはなんだ?」

 

「ああ、察しがよくて助かる 一つ、伝えてほしい事があるだけだ」

 

「伝えてほしい事だと?」

 

 

 

 見逃す条件が伝言だと知り、レギンのみならず周囲の者達が一斉にざわめきだした。「頭を殴れば未だ間に合うのでは……」「んじゃあ俺はデコピンかな~」シアに混じって俺もふざけて提案すると、カム達が賛同しはじめた。

 

 

 

 ハウリア族達にはキツイ仕置をすることを確定として、察しておきながら先程のお返しとばかりに妙な提案をし、話をややこしくしている遠藤(バカ)を殴りたい心を落ち着かせ、頑張ってスルーするハジメ。

 

 

 

「ああ、そうだ。〝貸一つ〟とだけな」

 

 

「……ッ!? それはっ!」

 

 

「で? どうする? 引き受けるか?」

 

 

 

 伝言の意味を察したようだ。〝貸一つ〟それは、襲撃者達の命を救うことの見返りに何時か借りを返せということだ。

 今回のレギンの事を含め、ジンの場合も一方的に仕掛けておいたにも関わらず返り討ちにあい、今回は命を見逃して貰うのだ。長老会議で不干渉を結んだ事になっており、伝えれば長老衆は無条件で南雲の要請に応えなければならなくなる。最悪、南雲や俺と事を構える事態になる

 

 長老会議の決定を無視した挙句、負債を背負わせる、しかも最強種と豪語しておきながら半数以上を討ち取られての帰還……南雲の言う通りまさに生き恥だ。

 

 

 流石は未来の魔王、殺さなかったのは未だに詳細が分からない七大迷宮の詳細がわからない以上、口伝で創設者の言葉が未だに残っているくらいなので用事が出来るかもしれない……という万一に備えての保険のようなものだった。

 

 だが、そこで終わらないのがハジメクオリティー、表情を歪めるレギンに追い討ちをかける。

 

 

 

「それと、あんたの部下の死の責任はあんた自身にあることもしっかり周知しておけ。ハウリアに惨敗した事実と一緒にな」

 

「ぐっう」

 

 

 己の引き起こした事で仲間の多くを無くし、長老方にも迷惑をかけようとしている始末、頭を抱えて悩むレギンに、南雲は容赦なくゴリッと銃口を押し付け、選択を迫る。

 

 

 

「五秒で決めろ。オーバーする毎に一人ずつ殺していく。〝判断は迅速に〟。基本だぞ?」

 

 

 

「イーチ、ニー、サーn━━」

 

 

「わ、わかった。我らは帰還を望む!」

 

「そうかい。じゃあ、さっさと帰れ。伝言はしっかりな。もし、取立てに行ったとき惚けでもしたら……」

 

 

 

 南雲の全身から、強烈な殺意が溢れ出す。もはや物理的な圧力すら伴っていそうだ。ゴクッと生唾を飲む音がやけに鮮明に響く。

 

 

 

「その日がフェアベルゲンの最後だと思え」

 

 

 

 悪魔の……いや、魔王の所業に俺の隣にいるハウリア族から、「いつも通りのハジメさんに戻りましたね! コウスケさん!」とか「ボスが正気に戻られたぞ!」とか妙に安堵の混じった声が聞こえ、南雲の顔が物凄い事になっている。必死に耐えているようだが我慢の限界のようだ

 

 

 

 暗い表情で霧の向こうへと熊人族達が消えていき、それを見届けると……南雲はくるりとシアとハウリア族の方を向く。

 もっとも、俯いていて表情は見えない。が、カム達は狂喜に落ちしまった事の弁明をするために土下座をしていて、その雰囲気に気がついていない。シアだけが、「あれ? コウスケさん? これってヤバいやつじゃあ……いない!?」と冷や汗を流している。

 

 勿論、俺を含めた数名のハウリア族は、とばっちりを喰らわないよう瞬時に離脱している

 

 

 南雲がユラリと揺れながら顔を上げた。その表情は満面の笑みだ。だが、細められた眼の奥は全く笑っていなかった。しかも口元がヒクついている。返事がなかったボスを不審に感じたカムが顔を上げ、ようやく様子がおかしいと気づいたカムが恐る恐る声をかける

 

 

 

「ボ、ボス?」

 

「うん、ホントにな? 今回は俺の失敗だと思っているんだ。短期間である程度仕上げるためとは言え、歯止めは考えておくべきだった」

 

「い、いえ、そのような……我々が未熟で……」

 

「いやいや、いいんだよ? 俺自身が認めているんだから。だから、だからさ、素直に謝ったというのに……随分な反応だな? いや、わかってる。日頃の態度がそうさせたのだと……しかし、しかしだ……このやり場のない気持ち、発散せずにはいれないんだ……わかるだろ?」

 

「い、いえ。我らにはちょっと……」

 

 

 

 カムも「あっ、これヤバイ。キレていらっしゃる」と冷や汗を滝のように流しながら、ジリジリと後退る。ハウリアの何人かが訓練を思い出したのか、既にガクブルしながら泣きべそを掻いていた。

 

 

 

 とその時、「コウスケさんHelp!」と、シアが一瞬の隙をついて俺の下へと移動しようとしたが、(何か)に足を捕まれ、顔面から地面に激突して気絶した。

 

 

「━━よし、助けた」

 

 二つ名のことを根に持っていたので、憂さ晴らしが済んだことで満足気な顔になった俺を見て、ドンナーを構えていた南雲はチッと舌打ちをするとホルスターに戻し、両手をポキポキ鳴らすと━━怒声と共に飛び出した。

 

 

 

「取り敢えず、全員一発殴らせろ!」

 

 

 

 わぁああああ──!! 

 

 

 

 ハウリア達が蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ出す。一人も逃がさんと後を追う南雲。しばらくの間、樹海の中に悲鳴と怒号が響き渡った。

 

 

 

 後に残ったのは、地面に突っ伏して動かなくなったシアと、

 

 

 

「……何時になったら大樹に行くの?」

 

 

 

「全員殴り終わったらじゃないかな?」

 

 

「「「「「「「(Load)でよかった」」」」」」」

 

 

 蚊帳の外だったユエの疑問の言葉と俺の返事、そして一時離脱していたハウリア族が浮かべる安堵の表情だった

 

 

 

 




次はやっとで大樹かな

飛ばして旅立ちにしちゃおうかなー

あと、活動報告で色々と募集しているので、覗いてみてください


それでは次の話で会いましょう!

ではでは~

投稿と展開が遅いと思う?

  • (投稿速度)が遅い
  • (展開)が遅い
  • 待ってま~す
  • 畑山愛子先生っ!!すっきぃぃ!!
  • 園部好き!
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