それではどうぞぉ!
ゴーレム騎士達の動きは、二、三メートルはあろう巨体に似合わず俊敏だった。ガシャンガシャンと騒騒音を立てながら急速に迫るその姿は、装備している武器や眼光と相まってって凄まじい迫力である。
そんなゴーレム騎士達に先手をとったのは南雲だ。普段よりと半分以下の火力が出せないとはいえ、対物ライフルの数倍もの威力がある弾丸はゴーレム騎士達に一切の容赦なく浴びせられる。
ドパン! ドパン!
二丁のレールガンから放たれた弾丸はゴーレム騎士の目の部分を性格に撃ち抜き、衝撃で後方へ倒れる騎士達。それを飛び越えて後続にいる騎士達が南雲達へと迫る。南雲は包囲されないようレールガンを発砲し、隊列を乱していく。
そんな激しい銃撃を盾と大剣と仲間の体で凌ぎながら、遂に南雲の目前へと迫った数体の騎士だったが、いち早く気がついたシアが上段に構えていた大槌を遠慮容赦の一切ない全力の一撃で振り下ろす
「でぇやぁああ!!」
ドォガアアア!!
凄まじい衝撃音を響かせながら盾で防御していたゴーレム騎士をその防御ごとペシャンコに押し潰した。だが、渾身の一撃を放ったため、地面にめり込んでしまったドリュッケン。シアには次の行動に移るまでに隙が出来てしまった。それを逃すはずもなくゴーレム騎士が大剣を振りかぶるとシアを両断するべく迫り来る。
特訓の成果か、それにしっかりと反応していたシアは、柄を捻ってドリュッケンの頭の角度を調整してトリガーを引く
ドガンッ!!
そんな破裂音を響かせながら地面にめり込んでいたドリュッケンが跳ね上がった。その勢いを殺さず、その場で一回転すると、大剣を振り下ろそうと迫っていた騎士の腹部分に叩きつけた。
「りゃぁあ!!」
そのまま気合いの声と共に一気に振り抜く。直撃を受けた騎士は、体をくの字に曲げてぶっ飛んでいき、後ろから迫っていた騎士達を巻き込んで地面に叩きつけられた。騎士の胴体は、原型を止めないほどひしゃげており身動きが取れなくなっている。
「ユエがカバーしてるし大丈夫か」
危なくなったらカバーしようとゴーレムを相手にしながら横目でシアの戦闘を見ていたコウスケは、ユエが南雲の作った武器で援護に入ったのを見て、目の前の敵を斬ることに集中することにした。
まず、目の前の騎士が振り下ろしてきた大剣を刀で受け流し、そのまま斬り上げる。二つに斬り裂かれた騎士には目もくれず、続けて背後から迫っていた二人の騎士を大剣を振り下ろす前に上半身と下半身を泣き別れさせる。落ちていた大剣を拾い上げると、全力で斜め後ろに向けてぶん投げると、投げた大剣はシアの死角から接近していた騎士に当たって吹き飛んでいった。
いくら倒しても湯水のごとく湧いてくる騎士達は
「遠藤、コイツらの核なんだが━━」
「ん? あぁ、すまん今から確認する」
オスカーの住処を調べていた時に、ゴーレムは体内にある核が動力源であり弱点だと知っていたのだが……戦闘に集中していたせいか魔眼石で核の場所を探すことを忘れてしまっていた。
「……ん?」
眼帯をずらして核の場所を探したが、それらしい反応は無い、視えたのはゴーレムから発せられる微量な魔力だけだった。
「その反応だとやっぱり核は無かったか」
「やっぱり? 心当たりでもあったのか?」
「シアが最初にぶっ潰した騎士があったろ? あの残骸が無くなっててな。あそこまで潰れてたら核も一緒に潰れてる筈なのに再生してたんだよ」
「なるほど……なら核が無いコイツらは誰かに操られて動いてるってか?」
「そうなるとキリがないからな。騎士は無視して扉まで突破するぞ!」
「まぁそれが一番だな」
「……ん、わかった」
「と、突破ですかぁ? 了解です!」
南雲の合図と共に、ユエとシアが一気に踵を返し祭壇へ向かって突進する。南雲はドンナー・シュラークを連射して進行方向の騎士達を蹴散らし、俺は他の邪魔になりそうな騎士連中を斬って進む。南雲は後方から迫ってくる騎士達に向かっても手榴弾を二個投げ込んだ。背後で大爆発が起こり、衝撃波と爆風で騎士達が次々と転倒していく。
俺の斬撃と南雲の射撃によって進行方向にいた敵がいなくなり、残りもシアのドリュッケンでの体ごと大回転させて吹き飛ばし、技後の硬直したシアを狙った攻撃をユエの"破断"が飛来して切り裂いていく
余裕がある俺と南雲が殿を務め、後方から迫ってくる騎士達を足止めしている隙にシアが祭壇の前で陣取り、続いてユエが祭壇を飛び越えて扉の前へ到着した
「ユエさん! 扉は!?」
「ん……やっぱり封印されてる」
「あぅ、やっぱりですかっ!」
見るからに怪しい祭壇と扉、そしてミレディの性格からして何も無しで通れるなど思っていなかったので封印は想定内。だからこそ、落ち着いて封印を解くためにゴーレム騎士達を相手取ったのだ。案の定の返答に文句を垂れつつ階段を上がってきた騎士を殴り飛ばす
「封印の解除はユエに任せる。俺と遠藤、シアはユエの解除が終わるまで騎士共の進行を妨害するぞ」
如何にもな祭壇と黄色の水晶なんて物が置かれているのだから、正規の手順で封印を破る方がきっと早い。南雲は瞬時にそう判断して、戦闘では燃費の悪いユエに封印の解除役を任せてた
「ん……任せて」
ユエは、二つ返事で了承し祭壇に置かれている黄色の水晶を手に取り、背後の扉に振り返ると解除を試みている
南雲の手榴弾によって動けなくなっていた騎士達だったが、どうやら再生が終わったらしく一斉に突撃してきた。南雲がドンナー・シュラークで銃撃して数体を相手取り俺はその他の騎士を斬り伏せ、
「ハジメさ~ん。さっきみたいにドパッと殺っちゃえないんですかぁ~」
なんど殴り飛ばしてもしぶとくわらわら集まってくるゴーレム騎士達に、シアが手榴弾の使用を南雲にお願いする。
「あほう。あれはちゃんとトラップが確実にない場所を狙って投げたんだ。階段付近は、何が起こるか分からないだろうが」
「こんなにゴーレムが踏み荒らしているんですし大丈夫ですよ~」
「いや、ミレディ・ライセンのことだ。ゴーレムにだけ反応しない仕掛けとかありそうじゃないか?」
「うっ、否定できません……」
少しずつだが連携が取れてきて冷静になれたのか、雑談をかわしながらゴーレム騎士達を弾き飛ばしていくコウスケ達。無限に突撃してくる騎士達に呆れながらも、これも剣の鍛練だと思い気合いを入れて斬り込む
「でも、ちょっと嬉しいです」
「あぁ?」
「ん?」
また一体、ゴーレム騎士を叩き潰し蹴り飛ばしながら、シアがポツリとこぼした。
「ほんの少し前まで、逃げる事しか出来なかった私が、こうしてコウスケさんやハジメさんと肩を並べて戦えていることが……とても嬉しいです」
「……ホント物好きなやつだな」
「……良かったな」
「えへへ、私、この迷宮を攻略したらコウスケさんにご褒美でキスしてもらうんだ! ですぅ」
「なんで自然と死亡フラグに繋げたの!? おバカヒロイン(仮)から悲劇のヒロインにチェンジとか荷が重すぎるから止めとけって!」
「それは、『絶対に死なせないぜ愛しのマイハニー☆』という意味ですね? コウスケさんったら、もうっ!」
「あれ? 俺ってそんな戯言いったっけ……おかしいなぁ」
「最近、コイツのポジティブ思考が恐ろしくなってきたんだが……ま、遠藤がんばれ」
「ハジメさんも私とコウスケさんの関係を応援してくれているなんて……うへへ」
「あーうん、はい」
そんなやり取りをしながら騎士達の進行を防ぐこと数分。ある意味、イチャついていると見えなくもない二人の間に、ぬぅ~と影が現れた。ユエだ。
「……私とハジメが我慢してるんだがら、いちゃいちゃ禁止」
「いや、してないけど!」
「ぬふふ、そう見えました? 照れますねぇ~」
「……どうだった?」
俺とシアを交互に見たユエは不機嫌そうな眼差しを向ける。南雲に聞かれた事と、そんな状況ではないと思い直したようで得意気に任務達成を伝えてくれた。
「……開いた」
「早かったな、流石ユエ。シア、遠藤、下がれ!」
「はいっ!」
「オッケー」
ユエの言うとおり後ろを確認すると、封印が解かれて扉が開いているのが確認できたり奥は特に何も無さそうだが、俺の直感が反応はしているので嫌なトラップがあるのだろう。ユエの報告を聞いた南雲からの指示で撤退をする。最初にユエが、続いてシアが扉の向こうへと入り、いつでも閉められるように二人でスタンバる
俺が入ったのを確認した南雲は、置き土産にと手榴弾を数個放り投げると、二人は扉を閉める。ゴーレム騎士達が逃がすものかと扉の前までガシャガシャと殺到するが、手榴弾が爆発し強烈な衝撃で吹き飛ばされただろう。
部屋の中は、遠目に確認した通り何もない四角い部屋だった。てっきり、ミレディ・ライセンの部屋とまではいかなくとも、何かしらの手掛かりがあるのでは? と考えていたようで、三人は少し拍子抜けしている。
「これは、あれか? これみよがしに封印しておいて、実は何もありませんでしたっていうオチか?」
「……ありえる」
「いや、とんでもなく嫌な予感はしてるから警戒はしておいてくれ」
「ですよね……け、警戒ですぅ!」
俺の言葉にがっかりしていた三人は、武器を構えて何処からでも攻撃がきてもいいように備える
ガコン!
「「「「!?」」」」
仕掛けが作動する音と共に部屋全体がガタンッと揺れ動いた。そして、コウスケ達の体に横向きのGがかかる。
「っ!? 何だ!? この部屋自体が移動してるのか!?」
「……そうみたッ!?」
「うきゃ!? あ、コウスケさん……ありがとうございます……うへへ」
南雲が推測を口にすると同時に、今度は真上からGがかかる。急激な変化に、ユエが舌を噛んだのか涙目で口を抑えてぷるぷるしている。俺は刀を地面に突き刺して体を固定すると、ついでにシアの体を反対の手で支える
部屋は、その後も何度か方向を変えて移動しているようで、約四十秒程してから慣性の法則を完全に無視するようにピタリと止まった。俺とシアは勿論のこと、南雲は途中からスパイクを地面に立てて体を固定していたので急停止による衝撃にも耐え、ユエも南雲の体に抱きついていたので問題はない。
「ふぅ~、ようやく止まったか……ユエ、大丈夫か?」
「……ん、平気」
「シア、大丈夫か?」
「大丈夫です! 逆にコウスケさんの体に抱きつけたので元気百倍ですぅ! ううっぷ」
警戒しながらも南雲はスパイクを解除して立ち上がった。俺も刀を抜いて周囲を観察するが特に変化はない。先ほどの移動を考えると、入ってきた時の扉を開ければ別の場所ということだろう。
「元気百倍じゃなくて気分の悪さMAXじゃねぇか。横になって休んでろ」
空元気だったようで今にも吐きそうな様子のシアを横にさせて、二人と一緒に周囲を確認していく。そして、やっぱり何もないようなので扉へと向かった。
「嫌な予感って部屋が掻き回された事なのか?」
「そうじゃねぇの? さて、何が出るかな?」
「……操ってたヤツ?」
「その可能性もあるな。ミレディは死んでいるはずだし……一体誰が、あのゴーレム騎士を動かしていたんだか」
「……何が出ても大丈夫。ハジメは私が守る……勿論コウスケとシアも」
「「…………」」
いつも通り場所を問わず二人はイチャイチャしだした。南雲は優しい手付きで、そっとユエの髪を撫でる。ユエも甘えるように寄り添って気持ち良さそうに目を細めている。
「……コウスケさん、前から言おうと思っていたのですが、ハジメさんとユエさんって唐突に二人だけの世界作りますよね……はっ! これを出来るようにしろっていうユエさんからの指導の一環!? 勉強になりますぅ! うっぷ」
吐き気を堪えながらも頑張ってユラユラ立ち上がり、俺に質問してきておきながらブツブツと自己完結してシアは床に沈んだ。しかしそこで終わらないのがシア、諦めきれなかったのか、手と足を使いながらコウスケの元へと近づこうとホラー映画に出てきそうな動きで這いずってくる
「……前から言おうと思っていたんだが、時々出る、お前のそのホラーチックな動きやめてもらえないか? 何ていうか、背筋が寒くなる上に夢に出てきそうなんだが」
「……シア、今の動きは減点」
「な、何てことを。少しでも傍に行きたいという乙女心を何だと、うぷ。私もユエさんみたいにナデナデされたいだけですぅ。コウスケさぁん、私を抱きしめてナデナデして下さい! うぇ、うっぷ」
「すまんが今にも吐きそうな顔で、そんなこと言われても困るんだけど……そ、そういうのはご褒美だろ? 外に出たらな」
「……ふふ」
シアが根性でコウスケ達の傍までやって来て、期待した目と青白い顔でコウスケを見上げる。コウスケはそっと、視線を逸らして扉へと向き直る。背後で「言質をとれましたぁ! うぇっぷ」という声が聞こえるが何とかスルーした。
扉の先は、ミレディの住処か、ゴーレム操者か、あるいは別の罠か……嫌な予感はしているので警戒しつつも不敵な笑みを浮かべて扉を開いた。
そこには……
「……何か見覚えないか? この部屋」
「……物凄くある。特にあの石板」
「嫌な予感ってこれかよ……」
扉を開けた先は、別の部屋に繋がっていた。その部屋は中央に石板が二つ立っており左側に通路があり、斬られた黒い矢のようなものまである……見覚えがあるはずだ。なぜなら、その部屋は
「最初の部屋……みたいですね?」
やっとで復活したらしいシアが、思っていても口に出したくなかった事を言ってしまう。だが、確かに、シアの言う通り最初に入ったウザイ文が彫り込まれた石板のある部屋だった。よく似た部屋ではない。それは、扉を開いて数秒後に元の部屋の床に浮き出た文字が証明していた。
〝ねぇ、今、どんな気持ち? 〟
〝苦労して進んだのに、行き着いた先がスタート地点と知った時って、どんな気持ち? 〟
〝し~か~も~二回目だよね☆キャピッ"
"ねぇ、ねぇ、どんな気持ち? 二回も同じ目にあった時ってどんな気持ちなの? ねぇ、ねぇ〟
「「「「……」」」」
コウスケ達の顔から表情がストンと抜け落ちる。能面という言葉がピッタリと当てはまる表情だ。四人とも、微動だにせず無言で文字を見つめている。すると、更に文字が浮き出始めた。
〝あっ、言い忘れてたけど、この迷宮は一定時間ごとに変化します〟
〝いつでも、新鮮な気持ちで迷宮を楽しんでもらおうというミレディちゃんの心遣いです! ビシッ〟
〝嬉しい? 嬉しいよね? お礼なんていいよぉ! 好きでやってるだけだからぁ! 〟
〝ちなみに、常に変化するのでマッピングは無駄です〟
〝ひょっとして作っちゃったの? 苦労しちゃったぁ? ざ~んねん! 全て無駄なのでしたぁ~プギャァー〟
「は、ははは」
「フフフフ」
「フヒ、フヒヒヒ」
「クククッ……えひゃひゃひゃッ! いいね。いいね。最ッ高だねェ! いいセンスしてやがんじゃねぇかよミレディ・ライセンのクソッタレがよォ!」
「え、あの……コウスケさん!?」
「……コウスケ?」
「え、遠藤……てか遠藤か? 深淵卿の方なのか?」
シアはあれだが、流石のハジメとユエの二人も頭にキているのか、壊れたような笑い声を響かせる。だが、それ以上に頭にキテる男がいた。最初に振り出しに戻ってしまったのは自分のせいであり、二度も同じ目に遭った原因である自分とミレディに対して三人以上にぶちギレた様子のコウスケだ。普段言わないような事を叫び散らしている
凄まじく興奮している人が傍にいると、逆に冷静になれるということがある。ハジメとユエ、シアの現在の心理状態はまさにそんな感じで、狂ったように笑いながら時々「ミレディぶち殺す」とか、血走った目をして青筋まで浮かべているコウスケ
シアは「え、コウスケさんですよね!? 大丈夫なんですかぁ!?」と、驚きつつも心配の声を上げ
ユエは普段から考えられないコウスケに若干戸惑いながらも心配している
ハジメはハジメで、遠藤なのか……はたまた深淵卿が出てきたのだろうか……と、ほんの少しだけ心配になりつつも妙なことを気にしている
しばらくして再び迷宮攻略に乗り出したコウスケ達。ギロチントラップや大玉が転がってきたり等の危険なトラップから金たらい、トリモチ、変な匂いのする液体ぶっかけetcなどの地味なトラップまで、様々なラインナップのトラップを文字通り斬り進んで行くコウスケを先頭にした三人は「遠藤(コウスケ)を怒らせないようにしよう」と心に決めてコウスケの後に続いて行った
すいませんが未完作品とさせていただきます
あらすじに理由が書いてあります。本当にすいません
リメイクを書きましたので、良ければそちらの方をお願い致します
今はまだライセンで気が早いとは思うけど……聞いておきます。ぶっちゃけ、この作品でのティオのご主人様は誰がいい?
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南雲
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遠藤
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ティオから変態要素を消して遠藤