イザベラから何やら任務を与えられていたというタバサは、
壊れた城を見て何事かとうろたえ、そこに同級生とその母他家族を見つけてうろたえ、
伯父王と従姉に謝罪された辺りで、考えることを放棄した。
烈風吹き荒れる前では、雪風も吹き飛ばされるだけだったのである。
それ以後、ジョゼフは憑きものが落ちたように穏やかになり、少しずつだが、
娘や姪と歩み寄り始めている。娘が中々素直にならないので大変らしい。
今回のガリアへの強襲は、ガリア王家とトリステイン王家、
及びヴァリエール公爵家の間でどういう始末をつけたものか、
膝を突き合わせて考えた結果、このような筋書きになった。
『魔法の失敗で記憶を失いガリアに転移したヴァリエールの令嬢が、
ガリア王に保護され、彼と親密な関係になった。
だが、彼女の行方を突き止めた過保護な父親が、娘は渡さぬ、と大暴れした。
これに対して裁きを求められた大后は、公爵に大事なものを以って、
ガリア王に対して賠償せよと命じた。かくして、令嬢は嫁に行く』
相当無茶だったが、王家と公爵家がこう発表したのだから、文句は出なかった。
ヴァリエール公爵の親馬鹿ぶりと、ガリア王のおかしさは色んな意味で有名である。
『まあ、そんなこともあるんじゃないの?』と、納得したものが大半だった。
ハルケギニアは、色んな意味で平和である。
なお、この案が決まった時、大后は少女時代のようにころころと笑い転げた。
「まあ、カリン! あなたったら、相変わらず凄まじいのね!」
「……お恥ずかしい限りです……」
その前で小さくなる烈風カリンの姿を見て、公爵はニヤニヤした。
頬に紅葉を二枚貼り付けるはめになった。
数ヵ月後。トリステイン魔法学院。
ルイズの部屋でイザベラが水煙管を吸う。
その隣で少し髪の伸びたタバサが、黙々と本を読んでいる。
ぴきぴきと、青筋を立てながらルイズが叫ぶ。
「私の部屋で煙管を吸うのはやめてって言ってるでしょう!」
ひょい、とレビテーションを唱えてそれを取り上げる。
「何だい、ケチだねえ、ルイズオバさんは」
にやり、とイザベラが笑った。
タバサは、それを聞くと本を持って窓辺に向かった。
口笛を吹けば、シルフィードが寄ってくる。
その背に乗り、窓からキュルケに声をかけた。
「逃げた方がいい。また例の禁句をイザベラが言った」
「ああ、うん。乗せてちょうだい」
窓から顔を出したキュルケは、シルフィードの背に相乗りして部屋から逃げ出す。
「だっ」
ルイズが顔を真っ赤にしている。イザベラはニヤニヤしている。
「誰が、オバさんよぉおおおおおおおお!!」
どがん、と凄まじい音が、学院を盛大に揺らした。
「……義理とはいえ、母親の妹なんだもの、叔母であることは間違いないのにね」
爆発に巻き込まれないよう、上空に退避したシルフィードの背で、
キュルケが、やれやれ、とため息をついた。
「解って、からかってる。……困った子よ、イザベラは」
本を読みながらも、タバサがそれに苦笑いで答える。
ボロボロになった部屋の中では、二人がぎゃあぎゃあとまだ言い争いをしている。
烈風が吹き荒れた後の世界は、快晴。雲一つない、平和だった。
Fin.
スーパー無茶設定投げっぱなしジャーマン。
でもパトラッシュぼくもう疲れたんだ……。
ダラダラやっても仕方ないので、ざっくりさっぱり、終わらせました。
とにかく、これで虚無と烈風は終了です。
風石? 大隆起? 知ったこっちゃねえ。
ご愛読ありがとうございました。