聖女と波紋戦士   作:ケンシロー

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いつも通りの短編


別れと出会い

 (のど)に激痛と化した無限にも及びそうな痛みが走り、風切り音すら何も聞こえずに彼と彼女の姿が白くなり見えなくなっていく。彼女が見えなくなった瞬間に強烈な風が自分の体を包んだ。

 熱風と一緒に木材などの破片が自分に飛び散る。手に握った友が叫びながら口の牙を見せる。

 彼が何かを言っているが聞いている余裕はなさそうだ。それと同時に眠気が(まぶた)を下ろさせた。

 そして彼女と彼が自分の脳裏(のうり)から焼き切れた。

 

 

 

 首の中心。(のど)にズキリと痛みが走った。

 

 だが苦にはならずに落ちていく。宇宙(ソラ)が輝いている。

 『なぜだ?』という疑問が脳裏(のうり)を過ぎりながらチラリと輝く星を眺める。

 彼の輝きは星々の輝きにまみれて判別できない。

 

 たぶんだがこの空間を落ち終えたとき、彼の魂はプツリと肉体から完全に切り離されるのだろう。心残りでしかない。

 結局彼が行った行動は誰も評価せずに無限にある歴史のほんの一片でしかないのだろう。だがそれでも構わない。彼は自分の(おこな)った行為には納得がいくからだ。納得して逝けるのなら本望(ほんもう)だ。

 ただ嬉しさや悲しさなどの感情をごちゃ混ぜにしたような感覚が彼の周りを包んでいく。

 

 輝く星の数を数えればいつか着地できるだろうと星の数を数えるが数えきる前に数え終えた星は見えなくなり下からまた新しい星々が増えて隠していく。

 数え終わらせる時間すら彼に与えてはくれない。

 

 このまま落ち終えたとき自分は自分でいられるのか。そう考えたときだった。

 体がふわりと何かに支えられるような感覚と同時に自分の周りを温かな光が包み始めた。穏やかなライトグリーンの光を身に纏いながら明るい光が遥か下に見えた。

 彼は必死に何かに(すが)り付くように手を伸ばした。そして指先が明るい光に振れたとき自分の体は吸い込まれるように光の中に飲まれていった。

 

 

 

 第1章 星の輝きは出会いの光

 

「――――――――え」

 

 間の抜けた声が室内に広がると同時に白い天井が見えた。

 (のど)に激痛とはいかないがチクリとした痛みが走り咄嗟に手をかざしてしまった。

 

「ここは………?」

 

 疑問を抱きながら喉の傷を手で撫でた。チクリと針を刺したような痛みが再度走りゆっくりと手を離した。その時気付いたが左手に空いていた穴が埋まっていた。

 正確には『空けられた』という方が正しいがそんなことはどうでもいい。『傷』が『塞がって』いる。というのが彼には重要だった。

 

「…………治療を受けさせてくれたのか?」

 

 近くに置いてあった花瓶を見て勝手に解釈した。透明な容器に白い花と黄色い花が綺麗に飾ってあり、窓ガラスの奥から太陽の光が自分の体を明るく照らしていた。

 誰かが水を毎日()しているのだろう。その人物が自分に治療を(ほどこ)した。

 現在、自分の服装は生前の服装のボタンを1つ2つ外したラフなスタイルでベッドに寝かされていた。

 太陽の光に叩き起こされたということを火の光を浴びながら実感しながら、寝かされていたベッドから上半身を起こして足を木の板の上に足をゆっくりと乗せたときだった。廊下に繋がっているであろうドアが老朽化(ろうきゅうか)を思わせる重たい音を鳴らし開いた。

 

「あ、目が覚めましたか?」

 

 ドアの先から入ってきたのは透き通るような金髪にエメラルドのような瞳の女の子だった。両手で救急箱を持っていた。

 彼女が自分をここに連れて来たのだろうか、だが彼女の体格では100㎏近くある自分を連れてくることは不可能ではないのかと思った青年は少女に声をかけた。

 

「君が……僕をここに?」

 

 太陽の光が自分の肌に当たって温かみを感じながら少女に訪ねると少女は手に持った救急箱を近くにあった机の上に置くと気まずそうに小さく(うなづ)いた。

 

「はい、でも(わたし)一人じゃ連れてくるのが大変だったので教会の方々にお手伝いしてもらったんですけど」

「そうなのか、じゃあ君に最初に礼を言うよ。――――ありがとう」

「いえ、当然のことをしただけですから!」

 

 青年は少女の言葉を聞くとバツが悪そうに少女に一礼して礼を言った。すると少女も謙遜(けんそん)するように手をブンブンと可愛らしく振りながら青年の礼を(こと)わった。

 少女は救急箱を開けて箪笥(たんす)から包帯を救急箱に移していた。

 

「君は保険医か何かでもやってるのかい?」

 

 青年の問いに少女は中身を詰め終わった救急箱の蓋をすると青年の近くにあった椅子に腰を掛けて微笑みながら答えた。

 

「いいえ、(わたし)は教会に住み込みで働いています」

「シスターか、綺麗(きれい)な君にさぞかし似合うんだろうね」

「そんな、(わたし)はただのシスターです。(わたし)よりも綺麗(きれい)なシスターさんはたくさんいます」

 

 少女が焦るように弁解するが青年からすればさほど重要なことでもなかった。

 二人は少し話をすると少女が思い出したように青年に話しかけた。

 

「お名前を聞いてもいいですか………?」

 

 少女の言葉を聞くと青年は目の色変えずに背筋(せすじ)を伸ばして長身(ちょうしん)の体から(つら)なる座高で少女を見下ろす形になりながらも自慢の名前を少女に答えた。

 記憶の連鎖反応(れんさはんのう)が彼を自然に動かした。

 

「命を助けてくれた君に礼を込めて名乗らせてもらうよ――――――――――」

 

 青年は少しの間を空けると一息ついて誇りある(おのれ)の名前を名乗った。

 

「ジョナサン・ジョースター………皆からはジョジョって呼ばれているよ。君の名前を―――――聞いても良いかな?」

「あ、はい!アーシア・アルジェントといいます」

「良い名前だ」

「そちらも良い名前です」

 

 二人はお互いの名前を称賛(しょうさん)すると噴き出すように笑った。

 黄金の精神を生み出した青年と聖女と称えられる少女はこうして出会いを迎えた。

 

 誇りある血統の始祖に休息を与えよう。

 

 汝の未来に幸あれ。

 

 ジョナサン・ジョースター、誇りある祖よ。




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