でも妻子持ちなんだから結婚はできないけど。
第2章 揺れる血液の
星々が
「―――――――――。なるほど。このボタンを押すと刀身が出るのか」
「驚いたな、最近の剣の
ジョナサンがもう一度
ジョナサンがこの剣を手にしているのは理由がある。恩返しと言うたった一つの義理だ。
仮にも外に放り出されている自分を見つけ救ってくれたのは彼女なのだ。彼女に恩を返すことこそが紳士、淑女のあるべき姿だと彼は思い、宿所で毎日治療を受けながら彼女に恩を返す方法がないか調べていた。
「――――――――」
宿所である程度の詮索をしている内に色々なことが分かった。自分の存在した時代より200年ほど未来ということだ。そのことを知った当初は真偽を疑ったが現在は納得せざるを得なくなり落ち着いている。
結局のところ過去のイギリスから来たなどと言えば笑い者に成ることは目に見えていたため過去に戻る手が見つかるまでは『聖女』として
「よし………!」
今は彼女、アーシアの護衛に力を入れなければ。今日から彼女の護衛を任せてもらえたのだ。
未だ自分を苦しめようとする過去のことは今だけ、記憶の
自分の大きな
上着を脱いでしっかりとたたみ近くのテーブルの上に置き、ベッドの代わりに使っているソファの上に寝転がり毛布を自分の体にかけると静かに目を閉じた。
☆ ☆ ☆
コンコンコンコンとヨーロッパ流のノックの音が空気を振動させ聞いていて心地の良い音を響かせた。すると「どうぞ」と短く彼の声がしたため「失礼します」と丁寧に挨拶をして現在はジョナサンの部屋となっている部屋に入った。
今まで
自分の顔が少し曇っていたからなのか彼は
「この部屋少し
彼の言葉を弁護しながらいつも通り
だがあと10㎝ほどもないというのに一番上の包帯が取れそうにない。なぜこんな大きな棚に道具を入れているのかムッとしたが背伸びを取ろうとすると彼が心配そうに話しかけてきた。
「取れるかい?」
どうもその言葉が自分は気に入らなかったらしく「大丈夫です!」と怒り気味に返事を返した後で背伸びをして包帯に手を着けた。今でも恥ずかしく思うがなぜこんな言葉を彼にかけてしまったのか謝罪してもしきれないくらいだ。
ともかく、背伸びをして包帯に手を着けたわけだがカタリと椅子が小さく傾きバランスを崩し背から宙に投げ出された。床に落ちまいと手で受け身を取ろうとすると布の
「―――――大丈夫かい?僕が取るよ。それが僕の小さい取り柄の一つかもしれないね」
彼の声は自分の頭の上から聞こえてきた。覚えてもいない父親の声を彼の言葉と重ねながら自分の脳は状況を整理していた。
現在、彼は自分の腹周りに手をまわしている。それは私が床に叩きつけられまいと彼が自分を助けてくれたと、いうことなのだろう。そのことに小さく聞こえないような声を搾り出すと彼は小さく笑って私を床に下ろした。
「いきなり体を触ってしまって悪かったね。謝罪するよ」
彼は気まずそうに太い人差し指で額を掻いて謝罪すると棚に手を伸ばした。2m近くある彼の肩からズゥッと筋肉質な腕が伸びると一番上の段の包帯を指でつついた後でこちらに振り向いて私の反応を待っていた。
私は彼の顔を直視できずに早めにブンブンと首を縦に振ると彼の指とは思えない器用に包帯を5つほど指に挟むと棚から取り出して机の上に置いた。
彼に顔を見られるのが、むずがゆかったため急ぎ調子で手を机の上の包帯に手を伸ばすと彼の腕に重なってしまった。太陽を思わせるようなほんのりとした温かみのある彼の腕にはしっかりと血管があり、管の中を血液が回っているのだと実感させた。
「――――アーシア?――――アーシア!」
彼が私の顔の前で名前を呼んでいた。
「熱でもあるのかい?顔が少し赤いようだけど……風邪薬をもらってこようか?」
彼は棚のガラス戸を閉めると私の額に手を置いた。
私は反射的に手を振り払うように顔を振ると「大丈夫です!」と叫んでいた。
「教会の前で待ってますから!」
私は逃げるように部屋を出て彼を待つことにした。彼と話をすると調子が狂う。まるで彼を父親のように感じてしまう。それに彼が私に触れると心臓が高鳴る。
呼吸が荒くなって自分が自分でなくなってしまいそうになる。
教会から出ると木に背を預けて息を大きく一度吐いた。
「――――どうしてですか……?主よ、
教会の屋根に取り付けられた十字架を見つめながら傍を飛ぶ鳥を眺めていた。
☆ ☆ ☆
ジョナサンが誰かと一緒に教会の中から出てきた。ジョナサンと男性は親しそうに会話を進めておりアーシアはその様子を眺めていた。
「あ………」
アーシアがボソリと言葉を呟いた。理由はジョナサンの服装だった。
ジョナサンは体格があまりにも大きいため誰かの衣服を貸し与えることができなかったため今まで
だが今回、彼が来ているのは周りのシスターや神父と協調性を重視した神父服を身に纏っていた。黒を主体にした衣服に十字架を首からかけており日光を反射していて眩しいくらいだった。
「ふむ、昔、この教会で共同作業の際に誰かが着て居た物が残っていて良かった。ピッタリだ。旧型で少し恥ずかしいかもしれないがそのくらい我慢してくれよ。聖女様を付け狙う
「はい!アーシアは絶対に僕が守ります!」
ジョナサンは神父の言葉にはきはきと返事をすると言葉の後で、「それに……」と言葉を付け加えた。
「この服も着心地が良いです!」
ジョナサンの言葉に神父は「お世辞はいらんよ」と笑いながら言うと胸の前で十字架を切った。それに釣られるようにアーシアとジョナサンも神父の前に立って首からかけた十字架を手に持ち目を閉じた。
「汝に幸あれ、主よ、この者達に良き加護を………」
神父の言葉に耳を傾ける
「それでは神父、行ってきます」
懐かしさを感じる馬車に乗り込んだジョナサンの言葉にアーシアも同じような言葉をかけると神父は笑顔を浮かべて彼らを見送った。
ジョナサンは馬車の手綱を引きながら手で日差しを隠しながら道先を見た。3Kmほど先に蟻ほどの大きさの民家が見えた。ジョナサンは後ろを振り向きながらアーシアに目的地を確認した。
「アーシア!あの奥にある民家が最初の目的地かい!?」
馬車の走る音がうるさかったためアーシアに聞こえるように叫ぶとアーシアは車から顔を出してジョナサンの真似をするように大声で喋る。
「はい!あの家です!」
「分かった!」
ジョナサンは返事をすると平常運転で細心の注意を払って馬車を進めていく。自分の母も馬車の事故で死んだのだ。
今は亡き父と母の血を継ぐ者として、アーシアを守る者としてこのような所で大事を起こすわけにはいかないのだ。
少し考え事をしているとアーシアが話しかけてきた。
「ジョースターさん!」
本来、ジョナサンは彼女には『ジョジョ』とニックネームで呼んでほしかったのだが彼女がそう呼ぶのだから
ジョナサンはアーシアの言葉に耳を向けながらも馬車の運転をしていた。
「その服、似合ってますよ!!」
アーシアの気遣いなのか、その言葉を聞くとジョナサンは口元に笑みを浮かべると大声で叫んだ。
「ありがとう!君のその姿も素敵だ!」
ジョナサンの言葉を聞くとアーシアは顔を茹でダコのように赤くしてジョナサンを恨めしそうに見た。ジョナサンは、口元に笑みを浮かべるだけでそれ以上アーシアをからかうことはなかった。
あと二話で仮完結です。