「そういえば、翡翠って人間だったの?」
一緒に過ごすようになって一ヶ月。
私は素朴な質問を口にした。
『―――俺の話、聞きたい?』
少し間を開けて、翡翠は話し始めた。
▲▽▲▽▲
俺、前世は人間...普通の大学生だったんだけど。
その時さ、彼女がいてね。
すごくかわいかったんだ。俺はそんな彼女が好きで。
彼女も俺のこと、好きでいてくれて。
でもその彼女...
あれ、おかしいな...
俺、なんで覚えてないんだろ...
あんなに好きだったのに...
▲▽▲▽▲
翡翠はぼろぼろ涙を流しながら話してくれた。
「つらかったんだね、翡翠」
『うん...寂しかった』
「そういうときにはね...ほら、よしよし」
私は翡翠の頭を優しく撫でてやった。
『ごめん...』
「翡翠が謝ることじゃないよ。
変なこと聞いちゃってごめんね」
ぎゅっと抱きしめると、
翡翠は私の肩に顔をうずめて泣いた。
▲▽▲▽▲
次の日。
≪~♪≫
「電話だ」
男友達からの電話だった。
塾が同じで、今年はクラスも同じの奴だ。
男子の中では仲もいい方で、
話しやすいのでよく冗談を言い合ったりしている。
塾の宿題を聞いてきただけだったのに
雑談までしていたら電話が長引いた。
▲▽▲▽▲
『瑠璃、さっきの奴って誰?』
「ああ、友達だよ」
『男子だよね?』
「まーね」
翡翠の目がいつもと明らかに違う。
「...どうしたの?翡翠」
『瑠璃は俺だけ見ててよ』
翡翠は静かに言った。
『瑠璃は俺の事、好きだよね?』
「当たり前じゃん、今更そんなこと...」
『俺は』
『俺はまた大切な人を失いたくないんだっ!』
そう言いきると、翡翠はハッとした。
『思い出した』
▲▽▲▽▲
俺の彼女、自殺しちゃったんだ。
家庭環境に耐えられないとかで
精神的にやられてたんだ。
で、自殺する前に俺に言ったんだ。
<○○くんは私の分まで幸せになって>
俺、立ち直れなくて彼女のあと追って死んだ。
約束破っちゃったよ。
彼女が苦しんでる間、俺は何にもできなかった。
全部が怖くてさ。
彼女が死んでから、空っぽになっちゃって。
好きな人がいなくなるってこういうことなんだ
って思ったよ。
もっと二人で思い出作ったりしとけば
よかったな、とか後悔しかなくて。
俺は彼女を幸せにできなかった。
瑠璃もさ、そいつといて幸せなんだったら
それでいいよ。
俺は瑠璃に幸せになってほしい。
自分勝手押し付けてごめんな。
わがままだけど、お願い聞いてくれねぇかな。
俺に、翡翠に瑠璃を独り占めさせてくれよ...
▲▽▲▽▲
「...いいよ、翡翠なら」
翡翠は私の返事を聞いて
すぐに抱きしめてくれた。
苦しいほどに。