《エコー》
ドレイク・ルフトに仕える兵士、コモンにしてはやや強いオーラ力を持つ。性格的には少し女好き。運命は彼を一兵士では終わらせない。
《ホリィ・ウッド》
エコーの幼友達で、彼にほのかな恋心を抱く。オーラ力はそれほど高くはない。が、その操縦潜在能力は高い。
《ネデル・スルタン》
ギブン家と関わりを持つ大貴族「スルタン家」の嫡男、家の反対を押しきってドレイク軍にと入る。礼節を心得ている。
《レーテ》
地下の種族「ガロウ・ラン」の少女。美しい顔立ち。コモンはおろか、地上人に匹敵するほどのオーラ力を持つ。
――――――
「この力、全ては御館様の為に!!」
演舞、朝の光に包まれるなか、一機の「巨人」に似た機械がその手足を一人の騎士により動かされ、巨大な剣を振るう。
「いいぞ、バーン……」
その騎士に「御館」と呼ばれた、よく剃髪され整えられた頭部を持つ男が、彼の居城「ラース・ワウ」からその人型と呼ぶにはややに異質な巨大な人影を満足そうに見やる。
「いいな、オーラバトラー……」
観客で沸くラース・ワウの周辺、その中にいた一人の少年兵士が、その騎士が駆る巨大機械の姿をまばたきもせずに実と見つめ、軽く嘆息をした。
「なーにやっているんだ、エコー」
「あ、すみませんベック隊長!!」
「もう、とっくに」
そういうベッグと呼ばれた騎士風の男も、その機械には興味しんしんらしいが、恐らくは己の仕事を忘れない男なのだろう。
「ドロの整備は始まってんだぜ!?」
「解りました、今行きます!!」
「あんなてんとう虫、見ている暇はないっての!!」
「確かに、御天道虫には似てますけどね、ドラムロは」
ブゥン!!
その「ドラムロ」というらしき機械の腕がまた一振りされ、剣が空を切る。
「それでも、オーラバトラーはオーラバトラーですよ、隊長」
「どうせ、ゲドの亜流だろ?」
「それに乗っていた隊長には、ドラムロが羨ましくはないかも知れませんがね!!」
「言ったな!?」
コンッ……
そう言いながら、ベッグ隊長はエコー少年の頭を軽く叩き。
「だったら、お前も手柄を立てて、オーラバトラーに乗るんだな!!」
「言われなくても!!」
「おう、そうか!?」
「いつかは、オーラバトラーに!!」
「ヨーシ、その意気だ!!」
そのまま、気勢を揚げる彼の耳を引っ張って、仕事場へと向かっていった。
――――――
オーラ・ボムとは複数人が乗り、初めて動かせる「オーラ・マシン」である。ゆえに、エコー少年と騎士ベッグの他にも何名かのクルーがいる。
「あのドラムロの隣にあったオーラバトラー、見た?」
「見ましたよ、ホリィ」
その「ドロ」のクルーの内、二人が整備兵の手伝いをしながらもヒソヒソと話をしあっている。
「なんでも、地上人という異世界から来た騎士が乗っているんですってね、ホリィさん」
「チジョービト?」
その無駄話をしている間にも他の機体、すなわち「オーラマシン」を整備している者達は手際よく、そして正確に機械を調整している。
「チジョービトってなに、ネデル?」
「だから異世界、つまり地上から召喚された人達の事……」
「へえ……」
そう呟きながら上の方を見るホリィと呼ばれた少女の視線の先には、木材や金属で作られた天井が見えるのみ。
「お前達」
ズシリとした声、騎士ベッグの声がオーラマシンの工房内で彼らの頭の上辺りからかかった時、ドロの整備をしていたホリィと。
「ハッ、騎士ベッグ!!」
「問題ありません!!」
ネデル少年、彼ら二人が敬礼をした。
「どうせ、無駄口を叩きながらの整備ですよ」
そのオーラマシンの工房、通称「機械の館」の入り口あたりから、騎士ベッグに遅れてブラブラと、ホリィとネデルの元へとやってきたエコーが、ニヤつきながらそう皮肉を言う。
「あんたはサボッていたでしょうに、エコー!!」
「新型の視察だよ、シ・サ・ツ」
「よく言う!!」
近くに置いてあるドリンクへとその手を伸ばしながら、騎士見習いの少女は顔に付いた油を雑にタオルで拭い取ろうとする。
「あんた、あたし達よりも地位が低いんだから!!」
「五十歩百歩、兵士と騎士見習いでは」
「もう!!」
その二人の声を無視し、騎士ベッグは隣のドロを整備している兵にと話しかけている。
「ガラリア殿は?」
「あの方なら、オーラバトラーに乗れるようにドレイク様の元へ直談判をしに行きましたよ」
「全く……」
「ブラウーネ、ゲドⅡに乗った快感が忘れられないのでしょう」
「そうかもな」
その話し合いをしているベッグと整備兵の横では、ネデルがもくもくと。
「剣の腕だって、あたしに敵わないくせに!!」
「なにおう、ホリィ!!」
「呼び捨てにするか、一兵士!!」
整備をしている傍ら、二人の少年少女が無意味なケンカを繰り広げていた。
――――――
オーラマシンという戦闘兵器がこのバイストン・ウェル界にもたらされたのは約五年前、いわゆる地上人である「ショット・ウェポン」という男の手によってだ。
当時、このバイストン・ウェル界内「コモン世界」には地下世界「ポップ・レッス」からの侵略者達、ガロウ・ランの手により、様々な場所で戦の火の手が上がっていた。
「つい昨日のように思い出せるわ、エコー」
「そうだな……」
この場にいる彼らも駆り出されたその戦役、この「アの国ドレイク・ルフト領」を主戦場としたその戦いでは、周辺諸国もその戦禍にみまわれ、特に隣の「リの国」では甚大な被害が出たと言われている。
ク、ビィ……
「でも、そのリの国には伝説の聖戦士、地上人様が降り立って、救われたらしいな」
「詳しいな、エコー」
「そりゃもう、ベッグ隊長」
そう言いつつに、飲み物を飲んでいたエコーは他の三人にもジュースと軽食を運んでやった。
「あたし、今の今まで知らなかったな、リの国の事は」
「無知は罪だぞ、ホリィ」
「すみません、騎士ベッグ」
可愛らしくその舌をペロリと出して、甘えた声を出すホリィを横目に見ながら、エコー少年は。
「あの人、元気かな……?」
「あの人ってなんですか、エコーさん?」
「あの裏切り者の地上人、マーベル様さ、ネデル」
「ああ、あの以前、昔にラース・ワウから出ていった……」
ここで話は、約一年から二年前にとさかのぼる。
――――――
ドゥ、ン……
「な、何だあ!?」
「イタタタ……」
明るい林の木陰で眠っていたエコー少年のちょうど胸の上辺りに、突如にそこにとまたがるようにして。
「あ、ごめんなさい!!」
栗色の、長い髪をした美しい女性が座っていた。
「本当に、ごめんなさい!!」
ズ、リィ……
その女性はそのまま横にでも除けばいいものを、そのままズリズリとその股の辺りをエコー少年の頭の上にまで持ってきたのだから、たまらない。
「ここは、どこなの……?」
「お、女の人の匂い……」
そのままエコー少年の薄青色の髪の辺りで立ち上がった女性は、そのままキョロキョロと辺りのラース・ワウ郊外の林を見渡す。
「あいて……」
「ん?」
その女性とは別に近くから聞こえてくる男の声、ややに野太い声をしたその男も。
「ど、どこなんだよここは……?」
女性と同じ問いをその舌へと乗せる。
「ねえ、あなた?」
「は、はい……」
「ここは、どこなの?」
「ラース・ワウです」
「ラース・ワウ?」
スゥ……
エコー少年が立ち上がると同時に、その女性がひざまずくような姿勢になったために、今度はエコーが女性を見下ろすような形となった。
「そんな州、聞いたこともないわ」
「で、ですからここはアの国、ドレイク様の領地、ラース・ワウ……」
「だから、そこはどこだのって……」
その女性が不満げに、そのやや厚い唇を尖らせた、その時。
「地上人!!」
パクァ、ラ……
ラース・ワウの騎兵隊の一隊が林を駆け、エコー少年達の元へとやってくる。
「地上人であるな!?」
「だ、だれだよあんた達!?」
少し、その騎馬の駆ける音に怯えたような男の質問に、その騎兵隊の隊長は。
「何か、たちの悪い冗談かよ!?」
「私はバーン・バニングス、アの国の騎士である」
「アの国、騎士ィ?」
「どうかこちらへ、地上の方々」
騎士、バーン・バニングスはそう言いながら、自身とその隣の女騎兵の背へと乗るように二人の「地上人」を促した。
「馬には乗れるか、地上人達よ?」
「マーベル、マーベル・フローズンです」
「解った、マーベル殿は馬には?」
「私はなんとか……」
その女性の隣へとやってきた男は軽く頭を振った。どうやら彼は馬に乗れないようだ。
「しっかりと、私の腰に手を」
「お、おう……」
女性騎兵には「地上人マーベル・フローズン」が、バーン・バニングスの馬には男性が掴まり、そのまま馬の踵を返そうとする騎兵達。
「少年」
「は、はい何でしょう、騎士様……」
「この事は他言無用だぞ、いいな?」
バーン・バニングス、彼は一方的にそうエコー少年にと告げながら。
「城へ帰るぞ、皆」
そのまま、地上人を乗せたままに遠くに見える「ラース・ワウ」へと騎兵達を引き連れて行った。
「何なんだよ、一体……」
そのエコー少年の疑問に答える声は、小鳥のさえずりのみ。