聖戦士ダンバイン ~コモンの聖戦士~   作:早起き三文

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第11話「ショットの目」

「あいてて……」

「どしたのエコー、そのタンコブは」

「いや、昨日の戦いの後、騎士ガラリア様にな」

 

 その頭にと出来たコブを撫でながら、エコーは。

 

――オーラバトラーは貴様のような一兵士が乗って良い品物ではない!!――

 

 昨日、そうガラリアによって鉄拳制裁を食らった事をホリィにと話す。

 

「そりゃ、災難だったわねぇ……」

「俺にだって、オーラ力が……」

 

 ホリィに向かって愚痴をこぼしているその時、彼らの近くへ。

 

「偶然を自分の力と勘違いするんじゃない」

「はい、ベッグ隊長……」

「まあ、もっとも」

 

 軍靴の足音高くやってきた騎士ベッグが、ニカとエコーに向かって微笑む。

 

「初めてにしてはよくやったよ、エコー」

「はあ……」

「ガラリア殿はな」

 

 未だに基地の後片付けも済んでおらず、無駄口を叩くエコー達を近くを通った者が冷たく見るのも気にせずに。

 

「妬いているのさ」

「何に、ですか?」

「一兵士の分際で新鋭機、ドラムロにと乗ってしまったお前にさ」

「そうですか……」

「気位の高い方だからなあ……」

 

 ベッグはやや愉快そうに話し、エコー少年のその細い肩を叩く。

 

「では、な」

「基地の戦死者簡易葬儀は、いつやるので?」

「明日の朝だ、遅れるなよ」

「はい、ベッグ隊長」

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

「兵士エコー!!」

「は、はい!!」

「ショット様がお呼びである!!」

 

 雪積もるラース・ワウに帰ってきて早々に、伝令兵が偉丈にそうエコーにと告げ、去っていく。

 

「なんだろう……?」

「先の基地襲撃で、ドラムロを勝手に使った罰じゃないですか、エコー?」

「誰に聞いたんだよ、ネデル?」

「もっぱらの噂ですよ、身の程しらずってね」

「ちぇ……」

 

 何か、気が重くなりながらもエコーは。

 

「ショット様って、あの……」

「オーラマシンを発明した地上人の事ですよ、ホリィ」

「し、知っているわよその位……」

 

 そのホリィ達の会話を背にとしながら、兵士詰所から雪降る街路へとその足を踏み出した。

 

「寒い寒い、心も寒いよ……」

 

 雪はなおも強く降り注ぎ、ショット・ウェポンが家でもある「機械の館」への道を固く閉ざす。

 

「何事もなければいいな……」

 

 ブツブツと不平を言いながら歩くこと約二刻、ようやく機械の館にとたどり着くエコー。

 

「ショット様の部屋は二階、と……」

 

 喧騒けたたましい館の騒音に耳を塞ぐ仕草をしながら、エコーは機械の館の二階へと続く階段を警護する兵に、自分が来たことをショットに伝えてくれと頼む。

 

「ショット様がお会いになるようです」

「ありがとうございます」

 

 そのまま、ギシギシと言う階段を登りショットの居室の前へと立つエコー。

 

「兵士エコーです、ショット様」

「入れ」

「ハッ……」

 

 ギィ……

 

 重い、彫金が施された扉を開けた先には、執務机にと座るショット・ウェポンの姿。

 

「たしか、この方はまだ三十歳前のはず……」

 

 ショット、外見は金髪の青年である彼が年齢不詳に見えるのは、ラース・ワウのちょっとした七不思議の一つとなっている。

 

「前の戦いでは、ご苦労だったな」

「いえ、お務めなので……」

「まあ、座れ」

「はい……」

「話がある」

 

 エコーはそう答えながら、ショットがあごで示した椅子にと自身の身体を預けた。その緊張しているエコー少年に対して。

 

「悪い話ではない、エコーとやら……」

 

 ショットは軽く、その白い歯を出して微笑みかけた。

 

「ドラムロの件、申し訳ありませんでした」

「何故、謝る?」

「身分の程をわきまえず……」

「なんだ、そんなことか」

 

 そう言いながら、ショットは執務机の脇にと置いてあった茶菓子をエコーにと勧める。

 

「旨いぞ、これは」

「そんな、おそれ多い……」

「いいから、食え」

「はい……」

 

 とはいっても、そのクラッカーによく似た菓子を目上の者がいる前で平気な顔で食べれるほど、エコーの神経は図太くはない。

 

「私はな、エコー君」

「はい」

「いずれ、一兵士に一台のオーラバトラーを預けたいと思っている」

「しかし、それは……」

「この私、地上人のナンセンスだと思うか?」

「いえ、その……」

 

 しどろもどろになって、クラッカーを喉につまらせたエコーを見て、ショットはその顔を軽くしかめる。

 

「ホラ、水だ」

「すみません……」

「まったく……」

 

 その、ショットが差し出してくれた水は甘い果実の香りがした。

 

「オーラバトラーを操れた人間とも思えん」

「あんなの、ただの偶然ですよ」

「偶然で、オーラマシンは動かせるものではない」

「ショット様」

「うん?」

「何がおっしゃりたいので?」

「決まっているじゃないか」

 

 そのように、口ごもるようにと呟いたショットは、窓際にと立ち、降り注ぐ雪へとその視線を向ける。

 

「君に、一兵士に一台のオーラバトラー、それの先鞭となってほしいのだ」

「俺に、騎士のようになれと……」

「恐れ多いか?」

「はい……」

「ならば」

 

 窓の外を見つめていたその目を、実とエコーにと向けたショットは、すでにその瞳に笑いの色を浮かべていない。

 

「私が、君に騎士への道を教えてやる」

 

 

 

――――――

 

 

 

「なあ、ドレイク……」

 

 狐に包まれたような顔つきで機械の館から出ていったエコー少年。彼を二階のベランダから見下ろしながら、ショットは。

 

「このようにして、人の心を掴めばならんのだよ……」

 

 その表情を動かさずに、軽くワインを飲みながら笑い声をあげる。が、その声は無論に雪の静けさによってかき消された。

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