「あいてて……」
「どしたのエコー、そのタンコブは」
「いや、昨日の戦いの後、騎士ガラリア様にな」
その頭にと出来たコブを撫でながら、エコーは。
――オーラバトラーは貴様のような一兵士が乗って良い品物ではない!!――
昨日、そうガラリアによって鉄拳制裁を食らった事をホリィにと話す。
「そりゃ、災難だったわねぇ……」
「俺にだって、オーラ力が……」
ホリィに向かって愚痴をこぼしているその時、彼らの近くへ。
「偶然を自分の力と勘違いするんじゃない」
「はい、ベッグ隊長……」
「まあ、もっとも」
軍靴の足音高くやってきた騎士ベッグが、ニカとエコーに向かって微笑む。
「初めてにしてはよくやったよ、エコー」
「はあ……」
「ガラリア殿はな」
未だに基地の後片付けも済んでおらず、無駄口を叩くエコー達を近くを通った者が冷たく見るのも気にせずに。
「妬いているのさ」
「何に、ですか?」
「一兵士の分際で新鋭機、ドラムロにと乗ってしまったお前にさ」
「そうですか……」
「気位の高い方だからなあ……」
ベッグはやや愉快そうに話し、エコー少年のその細い肩を叩く。
「では、な」
「基地の戦死者簡易葬儀は、いつやるので?」
「明日の朝だ、遅れるなよ」
「はい、ベッグ隊長」
――――――
「兵士エコー!!」
「は、はい!!」
「ショット様がお呼びである!!」
雪積もるラース・ワウに帰ってきて早々に、伝令兵が偉丈にそうエコーにと告げ、去っていく。
「なんだろう……?」
「先の基地襲撃で、ドラムロを勝手に使った罰じゃないですか、エコー?」
「誰に聞いたんだよ、ネデル?」
「もっぱらの噂ですよ、身の程しらずってね」
「ちぇ……」
何か、気が重くなりながらもエコーは。
「ショット様って、あの……」
「オーラマシンを発明した地上人の事ですよ、ホリィ」
「し、知っているわよその位……」
そのホリィ達の会話を背にとしながら、兵士詰所から雪降る街路へとその足を踏み出した。
「寒い寒い、心も寒いよ……」
雪はなおも強く降り注ぎ、ショット・ウェポンが家でもある「機械の館」への道を固く閉ざす。
「何事もなければいいな……」
ブツブツと不平を言いながら歩くこと約二刻、ようやく機械の館にとたどり着くエコー。
「ショット様の部屋は二階、と……」
喧騒けたたましい館の騒音に耳を塞ぐ仕草をしながら、エコーは機械の館の二階へと続く階段を警護する兵に、自分が来たことをショットに伝えてくれと頼む。
「ショット様がお会いになるようです」
「ありがとうございます」
そのまま、ギシギシと言う階段を登りショットの居室の前へと立つエコー。
「兵士エコーです、ショット様」
「入れ」
「ハッ……」
ギィ……
重い、彫金が施された扉を開けた先には、執務机にと座るショット・ウェポンの姿。
「たしか、この方はまだ三十歳前のはず……」
ショット、外見は金髪の青年である彼が年齢不詳に見えるのは、ラース・ワウのちょっとした七不思議の一つとなっている。
「前の戦いでは、ご苦労だったな」
「いえ、お務めなので……」
「まあ、座れ」
「はい……」
「話がある」
エコーはそう答えながら、ショットがあごで示した椅子にと自身の身体を預けた。その緊張しているエコー少年に対して。
「悪い話ではない、エコーとやら……」
ショットは軽く、その白い歯を出して微笑みかけた。
「ドラムロの件、申し訳ありませんでした」
「何故、謝る?」
「身分の程をわきまえず……」
「なんだ、そんなことか」
そう言いながら、ショットは執務机の脇にと置いてあった茶菓子をエコーにと勧める。
「旨いぞ、これは」
「そんな、おそれ多い……」
「いいから、食え」
「はい……」
とはいっても、そのクラッカーによく似た菓子を目上の者がいる前で平気な顔で食べれるほど、エコーの神経は図太くはない。
「私はな、エコー君」
「はい」
「いずれ、一兵士に一台のオーラバトラーを預けたいと思っている」
「しかし、それは……」
「この私、地上人のナンセンスだと思うか?」
「いえ、その……」
しどろもどろになって、クラッカーを喉につまらせたエコーを見て、ショットはその顔を軽くしかめる。
「ホラ、水だ」
「すみません……」
「まったく……」
その、ショットが差し出してくれた水は甘い果実の香りがした。
「オーラバトラーを操れた人間とも思えん」
「あんなの、ただの偶然ですよ」
「偶然で、オーラマシンは動かせるものではない」
「ショット様」
「うん?」
「何がおっしゃりたいので?」
「決まっているじゃないか」
そのように、口ごもるようにと呟いたショットは、窓際にと立ち、降り注ぐ雪へとその視線を向ける。
「君に、一兵士に一台のオーラバトラー、それの先鞭となってほしいのだ」
「俺に、騎士のようになれと……」
「恐れ多いか?」
「はい……」
「ならば」
窓の外を見つめていたその目を、実とエコーにと向けたショットは、すでにその瞳に笑いの色を浮かべていない。
「私が、君に騎士への道を教えてやる」
――――――
「なあ、ドレイク……」
狐に包まれたような顔つきで機械の館から出ていったエコー少年。彼を二階のベランダから見下ろしながら、ショットは。
「このようにして、人の心を掴めばならんのだよ……」
その表情を動かさずに、軽くワインを飲みながら笑い声をあげる。が、その声は無論に雪の静けさによってかき消された。