「ベッグ」
「おう、レーテ」
「また、ドロに乗っていいか?」
「任せる」
その騎士ベッグの言葉に親指を立てながら、ガロウ・ランの少女「レーテ」は鎮座されているドロの元へと歩いていく。
「あんなガロウ・ランを雇うなんて、ベッグ隊長はどうかしている……」
「どうしたってんだ、ホリィ?」
「だって、そう思わない、エコー?」
最近、このホリィという少女は、何かと機嫌が悪いことが多く、もはやエコーもあまり気にしていない。
「あの、彼女の高いオーラ力に惹かれたんだろう……」
「あの黒いゲド、単なる偶然よ」
「偶然でオーラバトラーは動かせるものではない……」
「……なによ、エコー」
それでも、やはり少しはこの彼女の精神状態がエコーには心配である。
「いくら、あの女に惚れてるからって」
「誰がだよ、ホリィ?」
「あんた以外にいないでしょ!!」
そう、言い捨てたきりに彼女はそのまま、食堂にと立ち去っていく。
「なんなんだよ、いったい……」
だが、エコーには今のホリィの心配をし過ぎている暇はない。昼飯が終わったら。
「ドラムロか、乗れるんだな……」
ベッグ隊長に、オーラバトラーの稽古をつけてもらう予定があるのだ。
――――――
「まだだ、エコー」
「はい、ベッグ隊長」
ショットの意見によって、ドレイク・ルフトからドラムロを授与されてから半月、騎士見習いエコーは、オーラバトラーの操縦方法を上官であるベッグにつけてもらう日々が続く。
「キックも戦法の一つ、それの間合いが遠い、ですね」
「わかっているなら、何故やらない?」
「すみません……」
「声が小さい!!」
「すみません!!」
「よし、その意気だ!!」
「はい!!」
そう、自分に発破をかけながらエコーは、再び騎士ベッグの駆るブラウーネへと飛び掛かっていく。
――――――
「騎士見習いエコーか」
「どうしたんです、ホリィさん?」
「いやな、ネデル」
ドラムロとブラウーネの模擬戦を遠目に見やりながら、軽くその息を吐きつつにぼやくホリィ。
「追い付かれちゃったな、と思ってね」
「エコーさん、騎士見習いですか……」
「あたしも、頑張っているつもりなんだけどね……」
「気にすることはありませんよ、ホリィさん」
「……」
その、微かに沈んだ表情を実と見つめていたネデルは、しばしの間無言でいたが。
「あたし、やっぱダメなのかな」
「決めた」
「え、なにネデル?」
「僕はこのまま、ドレイク様の元にいるよ」
「え?」
突然何を言い出すの、とでも言いたげな表情でネデルのおとなしめの顔を見つめるホリィ。
「何かあったの?」
「ちょっと、家の問題でね」
「へえ……」
「それに」
スゥ……
そう言いながら、ネデルはポケットからクッキー・バーをホリィへと分けてやり。
「僕にも、チャンスがあるということだ」
「何の?」
「ホリィ、君はエコーが好き?」
「ブッ!!」
突然のネデルの妙な言葉、それに対してホリィはクッキーを吐き出してしまう。
「な、なによ突然!?」
「異性として、好きかって事」
「そんなわけないでしょ!!」
だが、その彼女の耳たぶは僅かに朱にと染まっているを、ネデルは見逃さない。
「女に対する嫌がらせよ、それは」
「ごめん……」
「あいつは」
そのホリィの視線の先、そこには地上で白兵戦を繰り広げてるエコー機達の姿が見える。
「ただの幼馴染みで、いまはライバル」
「だから、僕にもチャンスがあるっていう……」
「はあ!?」
その間接的な好意の言葉に、ホリィはまさしく呆れた声を絞りだし。
「バカバカしい……」
と、吐き捨てながら立ち上がり、いずこかへ立ち去っていく。
「悪いことを、僕は……」
再び空中戦にと訓練の場所を移したエコー達、彼らの近くではレーテが「一人」でドロを浮かしている姿が見える。
「言っちゃったかな?」
その彼の先の発言、それの無神経さは、もしかしてお坊ちゃん暮らしのせいかもしれない。