聖戦士ダンバイン ~コモンの聖戦士~   作:早起き三文

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第13話「ギブン家基地強襲」

  

 ギブン家が劣勢になったとしても、さすがは大貴族といったところか。未だにギブン家の分家、一族郎党はドレイク・ルフトに対して徹底交戦の構えである。

 

「このドラムロって」

「なんだ、エコー?」

「確か、センコウリョウサンガタっていうんでしたよね、ベッグ隊長」

「そう、先行量産型……」

 

 騎士ガラリア機を先頭にとしたギブン家残党の補給基地、それの夜間襲撃が今回エコーたちに与えられた任務であった。

 

「バーン殿が、テストパイロットを努めていた機体だよ」

「だから、手が爪ではなくちゃんとした五指がある……」

「性能は、今の生産タイプに劣るがね」

「あの騎士ガラリアの機体と」

 

 エコーはそう言いながら、先頭のガラリアが駆るゲードラム、それにと視線を向けた。

 

「それと、このドラムロは、どちらが強いですかね?」

「どっちもどっち、じゃねえのか?」

「トッドさん……」

「少なくとも、俺達が乗るダンバインに比べればね」

 

 確かに、その地上人二人が乗るダンバインの高機動力には、ドラムロもゲードラムも、騎士ベッグの乗るブラウーネもまた、敵わない。

 

「このダンバイン、ご機嫌だぜ」

「だが、その性能を活かせなかった奴もいる……」

「ロシアンの事は忘れなって、ジャパニーズ」

「……だが」

「いや、ショウよう……」

 

 その地上人、聖戦士の称号を得ている者達の会話が時おりエコーにも聴こえてくるが。

 

「ようやく、ドラムロにも馴れてきたかな……」

 

 ドラムロを使った初の実戦、攻めこむ戦いに緊張している彼エコーは、その会話に割って入る心の余裕は無い。

 

「見えたぞ、地上人よ」

「また、一方的な戦いじゃないか、ガラリア……」

「何か言ったか、ショウ・ザマ?」

「いや……」

 

 しかし、それでもエコーはその彼、ショウ・ザマのダンバイン後方に「ホリィ・ウッド」と「ネデル・スルタン」そして他部隊からの支援クルーが乗るドロ、そして。

 

「レーテは、戦いというものについてどう思っているのかな?」

 

 ガロウ・ランの少女「レーテ」が駆る黒いゲドの姿を、その目で確認する。

 

「どうせ旧式のゲドだから、弾除けとして利用するってガラリア様は言っていたな……」

 

 その台詞、少しはガラリアにも理があるが、エコーにはどうにも納得が出来ない物であった。

 

 

 

――――――

 

 

 

 低出力であれば、偵察に出たエコー機もトッド機も、そうオーラバトラーの排気音は出ない。

 

「解体中のオーラバトラーかな、エコーとやら?」

「あれはどうでしょうかね、トッドさん?」

「気の無い返事をしちゃって、まあ……」

 

 その紺色のダンバイン、トッド機からの茶々は無視して、エコーは低空飛行で敵の状態を確かめている。

 

「まあ、俺も常にホンキってわけじゃないしな」

「トッドさんは」

「ん……」

 

 その敵ギブン家基地には解体整備中のオーラバトラーを始め、幾つかのオーラマシンがあるが、それでも一番目を惹くのが。

 

「なんだよ、言ってみなコモナー」

「何のために、聖戦士をやっているので?」

 

 オーラシップ、大型のオーラマシンとも言える空飛ぶ船であろう。

 

「そりゃ、新天地での立身出世よ」

「ハッキリ言いますね、地上人は……」

「そうすりゃ、ママにも……」

 

 カァン、カァ……

 

「しまった、気付かれたぞエコー」

「はい!!」

 

 敵基地の警報の鐘、それが鳴り響くと同時に、その基地のオーラマシンに次々とエンジンの火が入り始める。と、共に基地内のあちこちへと電灯の灯りが付き始めた。

 

「いたぞ!!」

 

 ボフゥ!!

 

「くそ、大丈夫ですか、トッドさん!?」

「大丈夫に決まってんだろ、コモナー!!」

 

 三本のアームを振りかざしたオーラボムが出鱈目にエコー達のいる林の辺りへ火を撒き散らす中、トッドのダンバインを先頭として空中退避を行う二機。

 

「まだ、発進していないフォウを狙え!!」

 

 その無線を通して伝わるガラリアの声、その声だけはわかるのだが、夜の帳のお陰で敵基地のどの辺りにいるのかはわからない。

 

「いたぞ!!」

 

 僅かなあいだ、無防備でいたエコー機ドラムロ、そしてトッド・ギネスのダンバインにと、数機のオーラバトラーが寄ってくる。

 

「くそ!!」

 

 バァ、バ……!!

 

 そのオーラバトラー隊の内、一機をオーラショット砲で貫いたトッド機ダンバインを横目に見ながら。

 

「ダーナ・オシーか!?」

 

 エコー機は、ギブン家がコピー作製をした機体「ダーナ・オシー」とその剣を切り結ぶ。

 

「くぅ!?」

 

 訓練とは訳が違う敵機の放つ殺気、それに呑まれないようにと、自らに発破をかけながらエコーは、ドラムロの手によってオーラソードを振り回す。

 

 ガッ!!

 

「しまった!!」

「終わりだ、ドラムロ!!」

 

 敵の剣、僅かに湾曲した曲刀がドラムロの右肩部を強く打ちつけ、そこに内蔵されているフレイ・ボムの燃料タンクから「燃える水」が辺りへと散る。

 

「だが、ダーナ・オシー!!」

 

 その時、エコーは咄嗟の判断でドラムロを敵機に体当たりをさせ。

 

「う、うわ!?」

 

 敵機ダーナ・オシーが破損し、怯んだ隙に残った左肩、そこから繋がる左手からフレイ・ボムをゼロ距離射撃を行おうとする。だが。

 

「後ろだ、エコー!!」

「レーテ!?」

 

 いつの間にか手負いのダーナ・オシーとは別に後ろに回り込んだギブン家のゲド、その機体がドラムロの機体構造上、もっとも脆弱なコンバーター基部を破壊しようとする。

 

「はあ!!」

 

 そのレーテの掛け声、それと共に黒いゲドの剣から。

 

「蒼い光……!?」

「ボサとしてない、エコー!!」

「す、すまん!!」

 

 謎の蒼い燐光を発している剣を携えたレーテ機ゲドの斬撃が、エコーの背後にと回り込んだゲドを一刀両断にする。

 

「た、助かったよレーテ!!」

 

 もう一機の、手負いのダーナ・オシーもトッドのダンバインによって止めをさされ、微かに緊張がほぐれた、その時。

 

 ボゥウ!!

 

「オーラ・シップ砲!?」

 

 きらびやかに艦の各部から点滅光を発しているナムワン、オーラシップから放たれた光の柱オーラキャノン砲が、ドレイク勢のドロ一機を蒸発させた。

 

「ホリィ機、ホリィではない……」

 

 そう思いたい、そう信じたいと願うエコーの目前、基地上空には。

 

「ナムワン、二隻確認!!」

「二隻もいるのか……!!」

 

 おそらくはショウ・ザマとかいう地上人の声であろう、彼が苦々しげに呟く声が通信機を通して微かにエコーの耳へと入る。

 

「だが、俺の狙いは!!」

 

 浮上をしてきたフォウと謎のオーラボムの部隊をエコーは、他のマシン達と共に迎え撃とうとし、ベッグ隊長に通信を入れようとしたが。

 

「隊長、ベッグ隊長!!」

 

 だが、その無線機からはベッグ機ブラウーネの返事はない。

 

「ベッグ隊長……」

 

 ただ単に、戦闘に集中しているか、無線の故障だ、最悪のケースを頭から逃し、エコーは。

 

 バゥ、ハッア!!

 

 こちらにと、ミサイルとバルカン攻撃を仕掛けてきているフォウ部隊の相手を独自にする。

 

「引き際かもしれんが……」

 

 エコー機は油が漏れだし、直撃弾を食らえば誘爆する恐れがある。しかしそれでも。

 

「俺は、オーラバトラーのパイロットだ……!!」

 

 そのまま、左手に剣を持ち換えフォウの尻をその剣で突く。もはやフレイ・ボムは使えない。

 

「エコー、後ろ!!」

「まぁたかよ、レーテ!!」

「あたしがお前のケツの心配なぞするか!!」

 

 しかし、そうは言いながらも。

 

 ファサア……

 

 謎の燐光、それを発しながらその三本のフレキシブル・アームを持つオーラボムを、エコー機の背後のその敵機をまるでバターのように切り伏せるレーテ機。

 

「な、なんだってんだ、クソ!!」

 

 脱出用の飛行器具「シュット」を使い、落ち行くオーラボムから離脱するクルーが、その黒いゲド、レーテ機にと戦慄する。

 

「フォウの一波が通り過ぎた……」

 

 その僅かな時間、エコーには戦局を見渡す余裕が出来る。見れば一隻のナムワンに。

 

「ガラリア様と、あれはベッグ隊長の機体だ」

 

 そのゲードラムとブラウーネを筆頭とするマシン達は、ナムワンに何度も剣と射撃の連打を加え、ついに。

 

「ウワー!!」

「ナムワンが落ちたぞ!!」

 

 轟音をたてながら、基地地表の暗い地面へと沈み行くナムワン。それを見た敵機達が。

 

「全軍、バルガの砦に撤退するぞ!!」

 

 広域無線を発した深紅のダーナ・オシー、それの号令と共に残りのナムワン、そして敵のオーラマシンは。

 

「逃げるのか!?」

 

 いつの間にかその腕がもげているダンバイン、トッド機の罵声も無視し、一直線に撤退を始めた。

 

「クゥ……!?」

 

 戦果を上げたい、その気持ちはあるが、何やら得体の知れない疲れがエコーの身を包む。

 

「ゲドバインの時と同じく、オーラ力が消耗しているのか……」

 

 その疲れきったエコーが見つめる先、そこには。

 

「ホリィ達も、消耗している……」

 

 ドロのプラットホームにと立つホリィ、彼女の機体もあちこちに損傷を受け、アームが二本消失している。

 

「でも、それでも」

 

 彼女達が生きていて良かったと、彼騎士見習いエコーは思った。

 

 

 

――――――

 

 

 

「ダンバインの解体パーツだと?」

「ああ」

 

 騎士ガラリアからの問いに、ベッグはややに疲弊した表情を浮かべながらそう答える。

 

「おおかた、イヌチャン・マウンテンで戦死した地上人の奴だと思うが」

「そうか……」

 

 そう、ガラリアはベッグに答えながら。

 

 グ、ビィ……

 

 女丈夫は、腰の酒袋にとその口を付け始めた。

 

「しかし、なんだな」

「なんだ、ガラリア殿?」

「貴殿の部下、エコーとか言ったか」

「アイツがどうかしたか?」

「気に入らないね」

 

 恐らくはその、未だにドラムロの事を引きずっているガラリアの言い分に、ベッグは苦笑するしかない。

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