聖戦士ダンバイン ~コモンの聖戦士~   作:早起き三文

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第15話「墓参り」

  

「レーテな」

「なんだ、エコー?」

「ガロウ・ランにも」

 

 明るい光に照らされた小高い丘。それの上にと立つエコーの両親達の墓の墓前には花束が手向けられている。

 

「親っているのか?」

「産みの親はいるに決まっている」

「では……」

「育ての親という、概念は薄い」

 

 何処か寂しげに答えたレーテ、ガロウ・ランの少女の髪が、暖かくなってきた気候のそよ風にと、微かになびく。

 

「そうか……」

「親というのは、どういうもんなんだ」

「ガロウ・ランに殺された」

「フン……」

「それ以上は、あまり言いたくない」

「なぜ?」

「良い想い出ほど、失った時の痛みが増すからな」

「ハイハイ……」

 

 なにか、その彼エコーの答えが彼女の気にと触ったようだ。そのまま暫し無言で過ごす二人。

 

「なあ」

「なんだよ、エコー?」

「お前、好きな奴とかいるか?」

「はあ?」

 

 その無遠慮なエコーの質問に、レーテはまさしく「呆れた」といった表情を見せる。

 

「いるわけないさ」

「そ、そうか?」

「でも、強いて言えば」

「言えば?」

「あのネデルとかいうお坊ちゃん、なかなか……」

「そ、そうなのか」

「そう」

 

 その言葉を最後に、再び沈黙が二人の間にと訪れた。

 

「エコー」

「おう、ホリィ」

 

 その僅かな間の後、ホリィとネデルが丘の下手から駆け上がってくる。

 

「弁当な?」

「ベッグ隊長が買ってくるって」

「へえ……」

 

 五人分、その弁当を持ってくるのは大変だろうと、エコーの頭にあまり意味の無い疑問と心配が生まれ。

 

「手伝ってくれば良かったのに、ネデル」

「ベッグ隊長が、別にいいって言ってました」

「そ、そう?」

 

 ネデルへと、ややに強い口調で言葉を放ってしまう。

 

「墓参りか……」

 

 そう呟き、ホリィはちらりとレーテへと、何か複雑な感情が混じった視線を向ける。

 

「お前のお袋さん達の墓も、その内に參らないとな、ホリィ」

「うん……」

 

 その言葉を吐いた後、エコーから放たれた視線にもまた、レーテは動じた様子は無い。

 

「おーい、お前達!!」

 

 その時、丘の麓の方から。

 

「弁当、買ってきたぞ!!」

「はい、ベッグ隊長!!」

 

 騎士ベッグ、エコー達の上官がその手を振りながら、丘の下手へと来るような仕草をしてみせる。

 

「行こうぜ、レーテ」

「ああ……」

 

 そのエコーの掛け声と共に、彼らの仲間は墓の前から立ち去り、ベッグ隊長の元へと向かった。

 

 

 

――――――

 

 

 

「このチッタ、旨いねえ……」

「ネデルが選んでくれたんだぞ」

「へえ……」

 

 チッタという小麦で作った団子を口に含んだレーテは、そのベッグの言葉に。

 

「いいねえ、いいねえ……」

「な、なんですかレーテさん?」

「フフ……」

 

 ネデル、その彼女の言い方に困惑する彼にと、微かにすり寄っていく。

 

「全く……」

 

 そのレーテにホリィは魚のフライを食べながら、呆れ顔であるし。

 

「……」

 

 干した果物を口に含んでいるエコーに至っては、何か不機嫌な顔をしている。

 

「旨いな、このナゲナのフライは」

 

 騎士ベッグ、彼はこの場の微妙な雰囲気に気が付いているのかいないのか、我関せずといった風情で弁当箱にフォークを突き刺す。

 

「ほ、ほらあの噂を聞いたか?」

「なんだよ、エコー……?」

「ギブン家の当主が戦死したって話さ、レーテ」

「そんなこと、あたしが知るもんか……」

 

 その素っ気ないレーテの返事、しかしエコーはそれにもめげず。

 

「ねえ、ネデル……」

「そ、それとミの国がさ!!」

「なんだよ、全く……」

「つながってたと、ホントかな!?」

「うるさい奴だ……」

 

 レーテの気を自分に引こうと必死だ、その必死さにホリィが忍び笑いを漏らした。

 

「風の噂では、そう聞いているな……」

 

 その疑問の答えには、先程から黙々と弁当を食べていた騎士ベッグ、中年の隊長が答えてくれる。

 

「ミの国、がねえ……」

 

 そのレーテに辟易しているネデルのぼやきも無理はない。ミの国と言えば、アの国とは比べ物にならないくらいの小国であるからだ。

 

「本当に、戦争が始まるんですかね?」

「私が知るもんか、ネデル」

「ですよね、隊長……」

 

 何か、休暇をとっての墓参りだというのに、この場の空気が天候に似合わず重くなってしまう。

 

「さ、さあみんな!!」

「なんだよホリィ、急に……」

「お弁当が冷めちゃうわよ、ね!!」

 

 その空気を吹き飛ばそうと、エコーの隣でランチボックス、ショット・ウェポンがオーラマシン発明の副産物で、いつでも食べ物が暖められる器具を指差しながら、ホリィは叫ぶ。

 

「まあ、そうですよね」

「そうそう」

 

 ホリィのその言葉、それにネデルとレーテも賛同をし。

 

「ほら、ネデルあーん」

「だから、止めてくださいよレーテさん!!」

 

 ベッグ隊長がネデル達のやり取りに苦笑しながら、弁当をがっつき始めた。

 

「おい、俺たちも食べようぜ」

「ええ、エコー」

 

 その隊長の姿を見たエコーとホリィ、彼らも冷めない内に弁当を食べる事にしたようだ。

 

 

 

――――――

 

 

 

「ねえ、エコーさん」

「なあに、ネデル?」

「エコーさんはなぜ」

 

 エコーの生まれ故郷の近くの街でとった宿、そこで男部屋と女部屋に別れながら、休息をとるエコー達。

 

「ドレイク様の軍に入ったんですか?」

「徴兵さ」

「嫌々ですか」

「いんや……」

 

 その時レーテ、彼女から風呂が空いたとの言葉がエコー達にと伝わる。

 

「今は、ドレイク様に忠誠を誓っている」

「忠誠を誓う理由は?」

「ガロウ・ランを駆逐してくれた恩もあるし、それに……」

 

 風呂にと入る準備をしながら、エコーはその自身の額に指を付け、どこか昔を思い出すような仕草をしてみせた。

 

「俺の少し前に死んだバアちゃんも、ドレイク様とショット様がもたらした技術革新のお陰で、一時期病気から快方した」

「恩人、ですか……」

 

 その言葉にエコーは頷き、そのまま部屋から出ようとする。

 

「エコー」

「ホリィ、風呂は出たのか?」

「ええ」

 

 その風呂上がりの格好、薄着のホリィからは微かに石鹸の薫りが漂う。

 

「ネデル、行こうぜ」

「はい」

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