聖戦士ダンバイン ~コモンの聖戦士~   作:早起き三文

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第16話「黒いダンバイン」

  

「ショット様もな」

「なんですか、エコー」

「いや、その……」

 

 忙しい中、ドラムロの整備を手伝ってくれるネデルへ軽く感謝の視線を送りながら、エコーは。

 

「本当に、妙な発想をする方だと思ってな」

「機械の館のオーラ測定機、レーテさんは嫌がってましたよね」

「そりゃ、得体の知れない機械だからなあ……」

 

 ショット・ウェポンが目を付けたガロウ・ラン、レーテが操る黒いダンバインにとその視線を向けた。

 

「確かに、彼女のオーラ力は高いかも知れないけどさ」

 

 そのダンバインは、以前ギブン家基地攻めの時に発見された物であり、死んだ地上人が乗っていたダンバインのパーツを再構築させたものである。

 

「ガロウ・ランがダンバイン、聖戦士専用機ですか、エコー……」

「変な話だな、ネデル」

「ええ……」

 

 しかし、ラース・ワウ郊外の空き地で慣熟飛行を行っている彼女、レーテの潜在能力はエコーとて認めざるを得ない。

 

「まるでレーテの奴、手足のごとく操ってやがる」

「それだけの、資質だということでしょう」

 

 そう言いながら、ネデルはドラムロを整備するその手を止め。

 

「すみません、エコーさん」

「何か用事があるのか、ネデル?」

「ドレイク様に、謁見しなければならないのです、今日は」

「謁見、何かしでかしたのか?」

「いえ、そうではなく……」

 

 漆黒のダンバインが悠々と空を翔ぶなか、その風下にと立つエコー達は春の昼の光にその瞳を細める。

 

「家の問題なんです」

「そうか……」

「あれ?」

 

 その時、レーテが操るダンバインが静かに、エコー機ドラムロの隣へと。

 

「エコー、ネデル」

 

 フワリと、着地する。

 

「調子はどうだ、レーテ?」

「ゲドの時もそうだったが、このオーラバトラーと言うものは」

 

 なにか、そそくさとその場から立ち去るネデルを見て、レーテは一つ舌打ちをしてから。

 

「あたしの感性に合う」

「そりゃ、良かったな……」

 

 そうエコーが答えた時、彼のその視線の先では。

 

「まだだ、ホリィ!!」

「はい!!」

「アルダムは扱いやすい機体だと思うが、ドラムロとは違うんだぞ!!」

「とは言っても、オーラバトラーがここまで扱いにくい物だとは……!!」

 

 他の部隊から借り受けたアルダム、隣国「リ」から輸入したオーラバトラーを四苦八苦しながらも、何とか乗りこなそうとしているホリィの姿がみえた。

 

 

 

――――――

 

 

 

「ネデル・スルタン、参上致しました」

「うむ……」

 

 ドレイク・ルフト、禿頭の偉丈夫であるアの国の地方領主、その彼が座る豪華な椅子の前にと、ネデルは控える。

 

「大儀である、スルタン」

「は……」

「まあ、楽にしろ」

 

 ズシリと腹にと響くドレイク・ルフトの声、気の弱い者であればその声だけで畏怖を感じてしまうだろう。

 

「今日呼んだのは、他でもない」

「……」

「貴殿の家と、ギブン家の事だ」

「はっ……」

「主の父、彼が倒れたそうだな」

「元から病気がちだった故、覚悟はしておりました」

「家督、主が継ぐのであろう?」

「そのつもりであります」

 

 そのネデルの言葉、それを吐いた時に、何か不気味な沈黙がこのラース・ワウの謁見の間を支配する。

 

「お館様……?」

「これからも、主には」

「ハッ……」

「儂に協力してほしい」

「あっ……」

 

 そう言われて、ようやくネデルは今日、何故自分がドレイクに呼ばれたかが解った。

 

「スルタン家当主、騎士ネデルよ」

 

 スルタン家、ギブン家やルフト家と肩を並べる程の家を敵に回したくないのだ、彼は。

 

「主には、騎士の称号とオーラバトラー、そして旧式ながらオーラシップを与えよう」

「……」

「もっとも、オーラシップは主の上官、騎士ベッグの指揮下にと入る事になるがな……」

 

 間を包む冷たい沈黙、それに耐えられるネデルの肝も大した物であると言える。

 

「答えは、ネデル・スルタン?」

「……決まっています」

「申せ」

「これからもこのネデル・スルタン、ドレイク・ルフト様に忠誠を誓います」

「うむ……」

 

 その答えに満足げに頷いた彼、ドレイク・ルフトは、手元にと握っていたエツ、杖にとよく似た昆虫生物へ一言二言呟くと。

 

 バァ……

 

 そのエツを手放し、その昆虫は何処かへ飛び立った。

 

「騎士ベッグ、彼の奥方ネイリンへと話を伝えた」

「承知いたしました、ドレイク様」

「これからも、よろしく頼む」

 

 そう、最後に言い残したきり、ドレイク・ルフトは宝石が散りばめられた豪勢な座席から立ち上がり、謁見の間を出ていく。

 

「……ニー」

 

 ニー、ニー・ギブンとはその名の通り、ギブン家の嫡男である。その彼と。

 

「気のいい奴だった……」

 

 戦わねばならないと考えると、彼ネデルの胸へ、何か冷たい物が零れ落ちる。

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