聖戦士ダンバイン ~コモンの聖戦士~   作:早起き三文

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第17話「聖戦士達との戦い」

  

「やはり、ドラムロやゲードラムの補修物資では、アルダムは直せんか」

「どちらかというと、ゲドの構造に似ているからね……」

「ならば故障中のブラウーネ、ゲドⅡから共食い整備が出来ないか?」

「やってみます、騎士ベッグ」

 

 その整備士ベーベルの言葉に、騎士ベッグは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。

 

「しかし、その事はネイリン艦長に伝えなくてはなりません、騎士ベッグ」

「ああ、頼む」

 

 そうなれば、このナムワンでの稼働可能な機体はドラムロ、ダンバイン、そして。

 

「ザーベントな、慣れたかネデル?」

「オーラ増幅器とやらのお陰で、何とか乗れそうです」

「訓練と同じ、そう思えば良い」

「はい、隊長」

 

 ネデルにとあてがわれたザーベントしかない。後のアルダム、それとベッグ隊長のブラウーネは使えない。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ドロの奴も、修理不能として破棄してしまいましたしね」

「もともと継ぎ接ぎだらけだったのだ、仕方がないよ、ネデル」

「そうですね、隊長」

 

 あとは非武装のバラウがあるが、それは戦力として埒外だ。

 

 ガッ、ガガ……

 

「こちらメイン・ブリッジ」

 

 内線放送で聴こえるネイリン艦長、騎士ベッグの妻でもある彼女の声が、ハンガーデッキのエコー達、彼らの耳へと伝わる。

 

「ゼラーナ、空中停泊をしたまま、動く気配なし」

「……ゼラーナ」

 

 ドラムロ内のエコーが呟いたゼラーナと言う名の艦、それはギブン家残党の中でも最強と呼び名の高い遊撃部隊の事であり。

 

「どこからか、彼らは支援を受けているとは思うのだが……」

「コモンの世界はややこしいな、エコー」

「うるさい、レーテ」

 

 噂によれば、ドレイク・ルフトの元から離反した聖戦士、すなわちマーベル・フローズンも所属していると言われている。

 

「不明艦ゼラーナより!!」

「どうした!?」

「オーラバトラーが一機、発進しております、艦長!!」

 

 そのナムワンのクルーが上げた声により、一気にハンガー内へ緊張の色が疾った。

 

「ダンバイン、いや……」

「どうにか、機種は確認出来るか?」

「すみません、無理です艦長」

「やむを得んな……」

 

 雨の林という現象の中、昼だというのに夜間のようになお暗く、強烈な豪雨が降り注ぐこの状況下では、視認による確認は困難だとはネイリン艦長にも解る。

 

「……ら、ゼラーナのマーベル……」

「無差別通信か……」

「そこの、……ワン、停船しなさい……」

 

 その特異な現象は無線機にも影響が出ているらしい。しかし。

 

「マーベル様、か……」

「仕方がない、エコー」

「やりますか、隊長?」

「うむ……」

 

 だが、いくら不利な状況といえども、何もせずに退却することは言い訳にも出来ず、相手がそれを許してくれるとは思えない。

 

「……物資を頂戴したい、さすれば貴艦の生命は保証しま……」

「エコー、ドラムロ」

 

 ザァア……!!

 

 ハンガーのオーラマシン出撃用ドアを開くと、そこはまさに雨の森、その轟音のみが鳴り響く闇夜の空間に恐怖感を覚えながらも。

 

「出ます!!」

「ダンバイン、発進準備完了!!」

 

 その黒いダンバインにと乗るレーテの声を尻目に、雨降る中へとドラムロを飛び立たせる。

 

「……戦の意思ありと見なします!!」

「マーベル様!!」

「……の声は!!」

 

 雨の中、先にとゼラーナから発進した機体はどうやらダーナ・オシータイプであるらしい。その事に複雑な表情を浮かべているエコー。

 

「……コー!!」

「ダンバイン、いるかと思ったが……」

 

 最悪のケース、ラース・ワウでシュンジ王が逃がしたダンバイン、ショウ・ザマ機がゼラーナに合流しているとの噂があった為、その覚悟をしていたのだ。

 

「しかし、ダンバインではなくても!!」

「ドレイクに与するなら、エコー!!」

 

 ボゥ!!

 

 その鮮明にとなってきたマーベル・フローズンの声、それに呼応してそのダーナ・オシーからフレイ・ボムが発射された、が。

 

「あなたも敵!!」

 

 ザァ……!!

 

 降り注ぐ大雨により、その火力は遮られ、エコー機もまたフレイ・ボムによって反撃を試みたが、その火球も雨の林によってかき消される。

 

「敵ならば、落とします!!」

「そう、言葉だけで戦いが出来るものか!!」

 

 その挑発的とも受け取れるマーベルの声に、エコーは自分が素人に毛が生えただけのオーラバトラー乗りだということも忘れ、怒鳴り返す。

 

「攻める!!」

 

 エコーの気迫に満ちた声と同時に放たれたドラムロの火球、それもまた雨によって遮られ、嫌も応もなく二機は接近戦を強いられる。

 

 ピシィ……!!

 

 その互いの機体が剣を合わせた時、エコーは雨の林の雷鳴が鳴り響く中で。

 

「……ちら、……ザマ機、敵のダン……を相手する」

「エコー、敵にもあたしと同じ……バインが」

 

 途切れ途切れではあるが、ハッキリとした声量で吐き出された通信、それによって大まかな状況を知ることが出来た。

 

「よそ見を、エコー!!」

「おっと!!」

 

 しかしエコーはそのダーナ・オシーの斬撃、曲刀から繰り出されたその一撃を受け止める位にはオーラバトラーに慣れ始めた様子だ。

 

「……らネデル機ザーベント、ダンバ……にレーテさんと共に当たる!!」

「ネデル、そしてレーテか!?」

 

 二機がかり、それならば相手が聖戦士であろうと負けはしまいと、エコーは気休めにも似た感情で己を納得させる。

 

「死ぬなよ、ネデル!!」

「くっ、戦いの最中で他人の心配を!!」

 

 ダーナ・オシーの二撃目、それをエコーはいわゆる「後の先」を取る事に成功し、ドラムロの剣がダーナ・オシーの装甲を不快な音をたてて、滑った。

 

「出来るほど、あなたは強いの!?」

「そんなわけないでしょ、マーベル様!!」

 

 その自らを卑下するかのように聞こえる台詞。それを逆に証明するかのように。

 

「さ、さすがに地上人!!」

 

 マーベル機ダーナ・オシーからの連続攻撃、それに対してエコーはすぐさま、防戦一方になったしまう。

 

「同じダンバイン、機体性能は一緒のはずなのに!!」

「何故、僕のザーベントの剣を見切れる!?」

 

 二機がかりのレーテとネデル達、しかし彼らはショウ機ダンバインにと相当な苦戦をしていることが無線を通してエコー達には伝わる。

 

 グィン……!!

 

 その戦局の様子を「確かめてしまった」エコーの隙をつき、ダーナ・オシーがいったん距離をおいて、豪雨が森を隠れ蓑にしながら、腰からミサイル・ランチャーを取り出す。

 

「くそ!!」

 

 そのランチャーから発射されたミサイル群が雷の光に隠れエコーには見えず、その内数発がドラムロの左腕にと命中した。しかし。

 

「う、うわ!!」

「落ちなさい、エコー君!!」

 

 そのミサイルはどうやら牽制であったらしい。急速接近を仕掛けてきたマーベル機の剣が、緑蒼の光を放つ。

 

「ハァ!!」

 

 曲剣による強烈な一閃、それがドラムロの後頭部辺りへと命中し。

 

「う、うわぁー!?」

 

 その、あたかも頭部と連結しているかのようなオーラコンバーター、それの基部にと強烈な熱を送り、ドラムロのコントロールが不能となる。

 

「バカな子……」

 

 ドラムロが沈黙をし、雨の林の下部へと落ち行く姿を横目に見つめながら、マーベルはショウ機ダンバインの戦いを見守る。

 

「私が、加勢するまでもないわね……」

 

 雨に煙る戦場ではあるが、そのマーベルの観察眼は鋭く、確かに。

 

「お、落ちる……!!」

「レーテさん!!」

 

 今ちょうど、レーテの黒いダンバインがコクピットにとクローアーム、ワイヤーで射出する格闘兵器を撃ち込まれ、エコー機と同じく雨降る森へと落下していく。

 

「くっ、よくも地上人はエコーさんとレーテさんを……!!」

「降伏しろ、新型」

「……おのれ!!」

 

 怒りに燃えるネデルではあるが、その彼のザーベントとて、剣を持つ片腕を先ほど。

 

――必殺、オーラ斬りだぁ!!――

 

 と、いう敵機ダンバインの内部から聴こえてきた幼い少女の声と共に、燐の光に輝く剣によって半ば切断されたばかりだ。

 

「……こちら、ナムワンの責任者、騎士ベッグ」

 

 ブォン……

 

 雨の林の中、一機だけナムワンに配備されていたバラウ、オーラバトラー運搬機にと乗ったベッグ隊長が、そのまま戦場を突き抜け、ゼラーナにと接近する。

 

「降伏する、何が望みだ?」

「こちら、ゼラーナ艦長ニー・ギブン、貴艦の補修物資を頂きたい」

「了解した」

 

 そのニー・ギブンという青年らしき男の声、それには。

 

「ひさしぶりだな、ニー……」

「……その声、ネデルか?」

「酷いことをするものだ、昔の友に向かって」

「昔の、友か……」

 

 スルタン家のネデルには無論、聞き覚えがある声である。

 

「良い認識をしているじゃないか、ネデル」

「僕は哀しいよ、ニー」

「だが、ここは戦場だ」

「お前のやり口は、ガロウ・ランじゃないか……」

「遊撃部隊とはな、ネデル……」

 

 ショウのダンバインとマーベルのダーナ・オシー、二機に先導されながら、ゼラーナはナムワン、エコー達の部隊が集う母艦へと接舷するために近寄ってきた。

 

「こういうことをするのが、常だ」

 

 そのニー・ギブンの冷徹とも受け取れる声、その声は雨の林がもたらす冷気にと影響を受けた物か、それとも彼等の覚悟がもたらす物かは、ネデル達には解らない。

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