聖戦士ダンバイン ~コモンの聖戦士~   作:早起き三文

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第18話「邂逅(前編)」

  

――お母さん!!――

――だめだ、ホリィ!!――

 

 あちこちで燃え盛る家々、それに踊る人影達は各々武器を携えた蛮族たち。

 

――もう、すでに殺されている――

――ゲヘ、エィ――

 

 その異様な姿をした悪魔、彼らが茫然自失としているホリィの元へと近付く姿を目にしたエコーは。

 

――はぁ!!――

 

 ビュ、ウ……

 

 ためらわずにその蛮族、ガロウ・ランに向かって弩を射掛ける。

 

――ホリィ……――

 

 そのガロウ・ランの喉に矢が突き刺さり、エコーはその「敵」が息絶えた事も確かめず、少女の手を引く。

 

――ガロウ・ラン……――

 

 すでにその頭を斧で叩き割られたホリィの母、その亡骸の姿が。

 

――ガロウ・ラン――

 

 数日前に殺された、エコーの両親たちの姿を思い出させる。

 

――ガロウ・ラン!!――

 

 その先ほど仕留めた蛮族、ガロウ・ランの姿がエコーの目の前で歪み、そして。

 

「ガロウ・ラン!!」

「うわ!?」

 

 覚醒した彼、エコーは目の前の少女、レーテへと掴みかかる。

 

「な、なによ!?」

「あ……」

 

 ザァ、ア……!!

 

 降り注ぐ豪雨、それが地面と木々を叩く音が、エコーの耳へと飛び込む。

 

「す、すまないレーテ」

「もう、乱暴だね……」

「すま……」

 

 そう、言いかけた時にエコーの身体のあちこちが。

 

「い、てぇ……!!」

 

 悲鳴、それをあげた。

 

「まだ、安静にしていた方が良い」

「レーテ、ここは洞窟……?」

 

 首を振り、ぐるりと視線を巡らすエコーの目にと入ったのは、茶色い土の肌壁とその入り口の外にと降り注ぐ、滝のような雨。

 

「なんだとは思うが……?」

「恐らくは、誰かが掘ったのだと思う、この洞窟は」

「ここまで運んでくれたのか、お前が?」

「重かったよ、エコー……」

 

 そう言いながら、微かに微笑むレーテにもあちこちにかすり傷が見られる。

 

「すまないな、レーテ」

 

 だが、レーテはそのエコーの礼にはすぐに返事はせず、実と通信機をいじっている様子だ。

 

「ダンバインの通信機か、それは?」

「そうだけど、ほとんど壊れている」

「俺のドラムロのは?」

「そちらはすでに試した」

 

 そう言いながら、レーテは洞窟の隅にと置かれている鉱石ラジオを指差し、その首を微かに振った。

 

「これは完全にオシャカだ」

「まいったな……」

「なにより、この雨だ」

 

 豪雨、雨の林の幕の中では、ナムワンの仲間がエコー達を見つけるのは至難の技であろう。

 

「運に期待するしかない、エコー」

「そうだな……」

 

 そう、彼エコーが思ったとたんに傷が再び痛み始める。特に左脚が痛む。

 

「骨にまで、僅かに来たかもしれない……」

「当て木、してみるか?」

「いや、骨折ほどではないと思うが……」

 

 ややに心配そうなレーテの視線を気にしながら、エコーは彼女にと安心させるように微笑んでみせる。

 

「な、なあレーテ」

「何、エコー?」

「お前さ、好きな奴とかいるのか?」

「何を突然……」

 

 その唐突なエコーの問いに、レーテは皮肉めいた表情を彼にと浮かべて見せた。

 

「一人、いるな」

「誰だよ、それは?」

「お前なあ……」

「息抜きさ、ほんのね」

「怖いのか、この状況が?」

「少し」

「正直だな、エコー」

 

 一つため息をついた後、彼女レーテは外の様子を確かめるため、洞窟の入り口にと脚を運ぶ。

 

「やっぱり、雨……」

 

 リィン……

 

 その時、彼女の耳にどこからか。

 

「何だ……?」

 

 鈴の音とも何とも言えない、涼やかな音色が響く。

 

――あ、いたいた――

「な、何だ!?」

――マーベル、エコーとやらがいたよ――

 

 リィ、ン……

 

 再度の鈴の音、それと共に一つの光が洞窟内に入り込み。

 

「あんた、エコーっていうんでしょ!?」

「な、何だ!?」

 

 妖精、それの姿を形取る。

 

「まさか、フェラリオ……」

「そのまさか、よ!!」

 

 フェラリオ、それはこの世界「バイストン・ウェル」のコモン界に時おり姿を顕す妖精のような者であり。

 

「あたしは、チャム・ファウ!!」

 

 コモンの者に幸運、または不運を呼び込む者として言い伝えられている存在である。

 

「マーベルが、あんたの事を心配しててねぇ……」

「マーベル様が……」

「この、果報者!!」

 

 そう言いながら、けたたましく笑う小妖精の声に軽い不快感を感じるエコーの耳へと、続けてレーテの声が飛び込む。

 

「エコー、誰かがこっちへ来るよ!!」

「マーベル、それにショウだなぁ!!」

 

 フェラリオ、チャム・ファウのその言葉、それにエコーはギョっとした顔をする。

 

「俺達は、捕虜になるのか……」

「捕虜にしないで下さいと、頼んで見たらぁ?」

「バカにするな、フェラリオ!!」

 

 己の想像に軽い苛立ちを感じてしまったエコーは、傷の痛みも忘れてチャムとかいうフェラリオにそう、怒鳴ってしまう。

 

「その様子だと、エコー君」

「ちょっと、誰よあんた!?」

「大丈夫みたいね」

 

 その凛とした女性の声と共に聴こえてくるレーテの慌てた声、それを聞いたエコーは。

 

「レーテ、いいから通して!!」

「でも、エコー……」

「大丈夫さ、多分……」

 

 コッ……

 

 軽い足音、それと共にエコーの元へとやってきたのは。

 

「お久しぶり、エコー君」

「お久しぶりです、マーベル様」

 

 マーベル・フローズン、彼エコーが初めて会った地上人ともう二人。

 

「直接、顔を会わせるのは」

 

 レーテ、エコーの仲間である彼女と共に洞窟へと入ってきたのは一人の青年、その彼の声には聞き覚えがある。

 

「初めて、かな?」

「地上人、ショウ・ザマ……」

「俺の名前を、覚えていてくれたか」

 

 肩にチャム、フェラリオを乗せた青年は、そう言いつつに微笑みながら、エコーのその手を軽く取った。

 

「俺は、敵ですよ……」

「だが、あのガロウ・ランの彼女と同じく、良きオーラ力を感じる」

「そりゃ、どうも……」

 

 一応、そのエコーの言葉は皮肉のつもりではあったが。

 

「今は一時休戦としないか、エコー?」

「こいつ今、嫌みを言ったよ、ショウ!!」

 

 フェラリオ、チャム・ファウにしか通じなかったようだ。

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