聖戦士ダンバイン ~コモンの聖戦士~   作:早起き三文

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第20話「機体実験」

  

「ドラムロとダンバインの修理の事な」

「すみません、ベッグ隊長……」

「さんざん、ショット様に嫌みを言われたよ」

 

 戦いでの損傷とはいえ、その二機とザーベントを含めた修繕、それを依頼したときによほど彼、騎士ベッグは文句を言われたのであろう。彼が普段、部下には言わない言葉を言う。

 

「まあ俺もな、エコー」

「隊長はドレイク様にも、叱責を受けたと……」

「ナムワン、それに積まれていたオーラマシン用の補修物資を奪われたからな」

「全く、聖戦士達め……」

 

 だが、その聖戦士によって命を救われたエコー、彼のその口調には力が無い。

 

「ところで、ベッグ隊長」

「何だ、エコー?」

「ドレイク様、いや騎士バーン様が率いる軍勢がミの国を攻めたって話は、本当ですか?」

「ああ……」

 

 その、ややに憂鬱そうに答えたベッグの言葉、そこから彼の心境を読み取るのは、若輩であるエコーには難しい。

 

「いよいよ、本格的な戦争が始まるな」

「確か、ミの国はその隣国、ラウと繋がりがあるとか……」

「スキャンダルの話だな?」

「ハハ……」

 

 ミの国とラウの国のスキャンダルとは。

 

――何でも昔、ラウの国王様の一人娘が、ミの国の王様の元へと駆け落ちしたらしいわよ――

 

 その手のゴシップが好きなホリィ、彼女が話していた事がある。

 

「エコー」

「はい、隊長」

「ショット様がな」

「はい」

「少し、お前を借り受けたいとおっしゃっていた」

「へえ……」

 

 借り受けたいというのはよく解らない話ではあるが、おそらくは。

 

「大方、オーラマシンのテストをやれという意味でしょうか?」

「へえー!?」

「な、なんですか隊長!?」

 

 突然、ニヤついた笑みを浮かべ始めたベッグ隊長の顔、それを見たエコーは、僅かに脚を半歩引く。

 

「変な顔をして……」

「いや、お前は自分がテストパイロットに選ばれる程、偉くなったと思った訳だ!!」

「い、いやそんなつもりじゃ……!!」

 

 だが、その彼ベッグ隊長の口調には嫌みの色が無い所をみると。

 

「頑張れよ、テストパイロット!!」

 

 彼、エコーを祝福している、のかもしれない。

 

 

 

――――――

 

 

 

「どうだ、エコー!!」

「どうもこうも、ショット様!!」

 

 蒸し暑い、夏が近づいてきた陽気の日、コクピットを開放して試験機へと乗っているエコー、彼の生身の身体には強い風が吹き付ける分いいのだが、それでも。

 

「オーラ関係機器が、滅茶苦茶な変動をします!!」

「それでいいんだ、それで!!」

 

 いくらシートベルトで身体を包んであるとはいえ、不安定な機体を操る身としては不安な事この上ない。

 

「ゼットが考案した、オーラ変換器だそうだからな!!」

「せめて、無線を付ければ!!」

「不許可だ、データが乱れる!!」

「全く!!」

 

 機械の館、そのベランダから怒鳴るショット・ウェポンの声に、エコーは試験用の黄色にと塗装された実験型ドラムロ、それを操縦しながら愚痴の声を上げる。

 

「こんなもの、使い道があるんですかね!?」

「お前の壊したオーラバトラー、ドラムロを直すのに、ドレイクの許可を得るのに大変だったんだぞ!!」

「すみませんね、全く……!!」

 

 グゥン……!!

 

 そう、叫びながらもエコーはショットに頼まれた曲芸飛行をやってのけるが、またしてもオーラ関係のメーターが激しくぶれ始めた。

 

「怖いもんだ、この機体は!!」

「もうすぐだ、もうすぐ新型オーラ増幅器のデータ採取が終わる!!」

「だと、いいんですが!!」

 

 曲芸飛行の次はスピード測定だ。その機体がグンと加速するたびに風がエコーの身体を強く押す。

 

「汗が乾くよりも、新しい冷や汗が先に出る!!」

 

 そのまま、エコー機はラース・ワウ郊外の森上空へとたどり着き、その勢いを生かしたまま急旋回をする。

 

「うわ、わ!?」

 

 オーラノズルの急激な出力低下、それをどうにか微調整をしつつ、実験型ドラムロはそのままショットの元へと機体を戻させる。だが。

 

「ちくしょう!!」

「おい何処へ行く、エコー!!」

「機体が止まりません!!」

 

 ビュウ、ウ……

 

 その悲鳴にも似たエコーの声を表すように、ドラムロはさらにそのスピードをアップさせ、そのままラース・ワウ上空を通り過ぎていく。

 

「何をしている、そこのオーラバトラー!!」

「止まら止まら止まらないんですよ!!」

 

 黄色の疾風、それがラース・ワウの見張りの尖塔を掠め飛び、そのまま。

 

 ズ、ンゥン!!

 

 森へと突っ込み、機体を強制的にストップさせてしまった。

 

 

 

――――――

 

 

 

「あいてて、傷に染みます……」

「動かないで、エコー」

 

 せっかく怪我が治ったばかりなのに、またしても負傷をしてしまった彼エコーを、ショット配下の青い髪をした女性が手当てをしてくれる。

 

「これでよし、と……」

「ご苦労だった、ミュージィ」

 

 笑いながらショットが言ったその言葉、それは。

 

「私に言ってくださいよ、ショット様……」

「すまんすまん、エコー……」

 

 確かにエコーのいう通り、実験に付き合ってくれた彼にこそ言うべきであろう。

 

「また、ホリィ達にと笑われてしまう……」

「たしか、お前の部隊はミの国攻めに加わっているんだったな?」

「ええ」

「ザーベント、良い実戦データが取れるといいが……」

「別にそれの本格タイプであるビランビーとやらがあるのなら、もういいでしょう?」

「試作タイプには、試作なりの良いところがあってだな……」

 

 そのあからさまな技術者気質のショットの言葉に、エコーはその口の端を歪めつつ、微かに苦笑してみせた。

 

「少しはその実験機に乗る、ネデルの事も心配してくださいよ……」

 

 エコーのその皮肉めいた言葉、それに対してショットの部下であるミュージィという女性が軽く笑う。

 

「ザーベントはドラムロの成分を含んでいるよ、エコー」

「だから、安心だと?」

「その通り」

「あまり、信用できる話ではありませんね、実に」

「そうかい?」

 

 そう、ショットは言ったきり機械の館の医務室から出ていこうとその背をエコーにとむけながら。

 

「ミュージィ、手当てが充分なら、しばらく一人にしてやれ」

「まあ、大して大きな怪我でもないことですし、ショット様……」

「少し、気分を落ち着かせた方が良い」

 

 ショットのその言葉は、ややに神経がささくれ始めたエコーにとっては、ありがたい事とも言える。

 

「ふう……」

 

 ショットとミュージィという女性も医務室から出ていき、一人ベッドに残されたエコーが考える事は。

 

「ホリィ達は、今頃どうなっているかな……?」

 

 ミの国攻めにと参戦しているはずの、仲間達の事である。

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