聖戦士ダンバイン ~コモンの聖戦士~   作:早起き三文

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第22話「ヨミツヒラサカ」

「おや……」

 

 実験型ドラムロの試験飛行をショットに頼まれ、それの慣熟を行っているエコーは。

 

「あの建物は何だろう……?」

 

 何か、ラース・ワウからかなり離れた場所にある湖の近く、そこにある建物にと気がついた。

 

「民家、のようには見えないが……」

 

 その建物は堅硬な石造りであるようにも見えるし、それに何かあちらこちらに意味がよく解らない紋様、のような物で装飾が施されている。

 

「まあ、ちょっとした息抜きだ」

 

 少し、最近の実験動物にでもなったかのような境遇にも飽きてきた事もあり、エコーはその建物を詳しく見てみる事にした。

 

 ズゥ、ン……!!

 

 赤いドラムロが地面にと降り立ち、それのコクピットから地面へと降りるタラップ・ロープを垂らすエコー。

 

「このロープ、あんまり慣れないんだよなあ……」

 

 文句を言いながらも、そのロープを下ったエコーの目前には。

 

「やはり、変な作り物だ……」

 

 入り口らしき鉄製のドアが目を引く、謎の建物がそびえ立つ。

 

 ズゥ、ウ……

 

「おや?」

 

 てっきりドアには鍵が掛かっているかと想像していたエコーは、その厚く重いドアが静かな重音を立てて奥へと押せる事に少し驚きながらも。

 

「変な匂いだな……」

 

 その建物の内部にと立ち込める妙な空気、甘いのか何か、判断がつきづらい薫りが立ち込める空間にと。

 

「まあ、度胸だ……」

 

 その脚を踏み入れる、そのエコーの視線の先には、開いた鉄格子型のドアから続く地下への階段。そこから何か冷たい空気が上へと吹き込まれてくる。

 

「何だろう……?」

 

 建物の中は外見よりもずっと広い、テーブルや椅子、食べ物が入っている棚などもあり、生活感が微かに感じられる。

 

「しかし、人がいたようには思えないな……」

 

 何はともあれ、問題は地下へと続く階段だ。

 

「行ってみるか」

 

 僅かな恐怖感、それを覚えながらもエコーは、勇気を出して冷気漂う地下へとその脚を踏み出す。

 

 スゥ……

 

「寒い……」

 

 ドラムロ、オーラバトラーのパイロット・スーツに当たる皮鎧は、決して厚くはない。身体の動きを阻害させないためだ。

 

「それに、この階段の素材も」

 

 どこか異様、強いていうならば動物の臓物のような「足触り」を感じさせる、青白い色をした階段なのだ。

 

「……」

 

 しばらく、そのまま階段を下るエコー。しばらく下ると階段のみならず、壁すらも青白い、謎の構成物で出来はじめる。

 

「……おや?」

 

 寒さに耐えるエコーの視線の先、その先には階段が二股にと別れ、その一方から。

 

「……リ、マン」

 

 何か、祈りとも呪詛とも受け取れる声が、エコーの耳へと入る。

 

「さて、どっちに行くか……」

 

 しかし、そうは口ごもりながらもエコーの答えは決まっている。声が聴こえないもう片方の階段は。

 

「薄気味が悪すぎる……」

 

 階段、そして壁の色が青から赤にと変わり、その天井から何か妙な液体がこぼれ落ちているのを、エコーは忌避する。

 

「こっちにしよっと……」

「……ト、モア、イ」

 

 まるで自らがその「呪文」にと導かれる錯覚を覚えながら、エコーは声の方向へと向かう。

 

「誰か、いるのか……?」

「……」

 

 誰かはいる、しかしそのエコーの声には答える者はいない。その時。

 

 シィ、ア……!!

 

「うわ!?」

 

 階段の奥、そこから何か緑蒼の色をした光が、エコーの両眼を射る。

 

「……何だ、今の光は?」

 

 その光は一瞬ではあったが、どこかエコーの身体にも暖かく、優しい気を感じた。

 

「おおい!!」

 

 誰か、何かがいる。そう直感的に感じたエコーは、謎の施設内で一人だという心細さもあってか。

 

「誰か、いるのか!?」

「……」

 

 必要以上に、大声を出してしまう。

 

「……だれ?」

「……女?」

 

 その細く儚く感じる声、それは若い娘とも老婆とも受け取れる謎の、女の声。

 

「だれだ!?」

 

 ダッ……!!

 

 足元のグニャリとした感覚に辟易しながらも、駆けたエコーの視線には、蒼い光が見え始めた。そのまま走るエコー、そして。

 

「うっ……!!」

 

 突如の広い空間、周囲を巨大な半径の鉄格子にと囲まれた大きな泉の中央には。

 

「アナタは、だれ……?」

 

 薄い、何とも言えない髪の色をした、裸の若い娘が立っていた。

 

「お、俺は……」

「貴方は、地上人か?」

「ち、違う……!!」

 

 その娘の姿格好はあまり見ないようにしながら、エコーはその足を軽く滑らせるように動かし、彼女にと近付く。

 

「俺は、エコーだ」

「地上人ではないのか?」

「聖戦士、いや地上人ではない……」

 

 謎のプリズムで輝く天井、そこから降り注ぐ光がエコーとその女性、そして蒼い泉を照らす中。

 

「私は、シルキー・マウ」

 

 そう、自己紹介でもするかのように自らの頭を下げた後。

 

 ポゥ、シュ……

 

 その身を、泉へと沈ませる。

 

「お、おい!?」

 

 その様子を見たエコーは、円形の鉄格子の中で唯一鍵のような物が刺さったままに開いている部分、そこへと駆け寄り、その泉の中へ足を付けたが。

 

 ボゥ……!!

 

 泉全体がその奥深くから紅い光を発し、その激しい光がエコー少年をも包み込む。

 

「……うわ!?」

 

 光の奔流を受けたエコーはその身が宙にと浮くのを感じながら。

 

 ズゥ!!

 

 天からのプリズムと紅い光、それらに翻弄され、徐々に意識を失っていった。

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