聖戦士ダンバイン ~コモンの聖戦士~   作:早起き三文

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第24話「王の責務」

  

「結局、このゲドバインでは……」

 

 ナムワン、ベッグ隊長が指揮下の艦であり。

 

「あまり、ミの国攻めの役には立たなかったようだな」

「まあ、試作機のそのまた試作機でありますからね、シュンジ王」

「覚悟はしていたがね……」

 

 その騎士ベッグの妻、ネイリンが艦長を努めている艦の中で、リの国の国王「シュンジ・イザワ」はやや愚痴めいた声をこぼす。

 

「ドレイク殿に、示しがつかなくなった」

「それでも、リの騎団は旧式化が始まっているアルダムで、ラウからの増援を撃退をして頂きましたわ」

「ドレイク殿から買い取ったドラムロも混じっているさ、ネイリン艦長」

 

 そう、どこか哀愁に満ちた声を、ナムワンのメインブリッジの中で上げながら。

 

「やはり、ラース・ワウ製のオーラバトラーは巧く作られているよ……」

 

 彼シュンジはリの国の艦、ナムワン級からの連絡を待っている。

 

「ゲドバイン、もうすぐ自力飛行が可能になるそうです」

「ありがとう、ネイリン艦長」

 

 シュンジ王、彼がこのナムワンに着艦したのは彼の愛機「ゲドバイン」がエンジントラブルを起こした為であり、それの修理が順調であることに。

 

「また、ドレイク殿に借りが出来てしまったな……」

 

 心中はともあれ、ホッとしているシュンジである。

 

「聖戦士シュンジ王!!」

「おう、確か……」

 

 威勢が良い、しかしどこか「張り」が感じられないその声を放ったのは。

 

「ネデル殿、だったな?」

「ネデルで構いません」

「解った、ネデル」

 

 ネデル、ザーベントの修理が終わった彼が、どこかソワソワした風情でブリッジにと佇んでいる。

 

「俺に何か用か、ネデル?」

「少し、お話が……」

「うん?」

 

 その、あまり一国の王に対して適切な言葉とも思えないネデルの発言に対して。

 

「ネデル、少し下がっていなさい」

 

 ネイリン艦長が、軽く彼をたしなめた。

 

「……」

 

 その間、シュンジ王は彼、ネデルの顔を実と見つめ、そして。

 

「……似ているな」

「ハッ……?」

「いや、少し前にリの国を辞した男にだ」

 

 ポツリと、どこか遠い目をしながらそう呟く。

 

 

 

――――――

 

 

 

「シュンジ王は」

「ん……」

「ドレイク様の噂について、どう思われますか?」

 

 二人きりの食堂、そこでコーヒーを飲みながら、シュンジは彼ネデルの言葉に耳を澄ます。

 

「お噂では……」

「アの国を手中に収めようとしている、だな?」

「はい」

「どうもこうもない」

「と、申しますと……?」

 

 少し行きすぎた質問かとネデルは思ったが、それでも彼はその舌を止めない。

 

「シュンジ王は、ドレイク様の考えを肯定なさるので?」

「誘導質問、君はドレイク殿のスパイか?」

「いえ、それは……」

「どうもこうもない、と言ったのはな……」

 

 あまり旨くないコーヒーを啜りながら、シュンジ王はややに不機嫌そうにそのネデルの質問に答えてみせる。

 

「恩義としても、地理学的にもドレイク殿に肩入れしたい、というのが俺とリの国民の総意だからだ」

「恩義はガロウ・ランからの侵略の話だとは解りますが、地理学とは?」

「解らないか、ネデル君?」

 

 グ、ビィ……

 

 カップに淹れてあるコーヒーを全て飲み干してから、彼シュンジはネデルの問いに、やや疲れたような声を出した。

 

「コモン界の地図によればリの国は、ドレイク殿の領地の真下にあり」

「はい」

「いざ、ドレイク殿と戦いになったときに、ラウ等の国からの助けは期待出来ない」

「ケム、ハワの国とは……?」

「あまりリとは国交がなく、噂によればその国々にも、ドレイク殿からの密使が来ているとの噂がある」

「……」

「俺は、国王なんだ」

 

 ポッ、ポウ……

 

 その時、食堂の鳩時計が夕刻を伝える音を出した。

 

「ドレイク殿の強引なやり方に疑惑があっても、協力体制は崩せない」

「ちょっと、そのおっしゃり方はシュンジ王……」

「君が間接的に本心を言ってくれたから、俺もそれに答えたまでの事」

「すみません……」

「いや、いい」

 

 夕闇が迫ってきた外の空気、窓から見える海の景色には、雨粒が見え始めている。

 

「俺は聖戦士である以前に、リの国王の道を選んだ」

「はい」

「いわば、縛られた身なんだ……」

 

 その、微かに居たたまれなくなったネデルは、どこか侘しく笑うシュンジ王から視線を逸らし。

 

「責任、か……」

 

 その若き王の背後、ナムワンの窓から見える雨にと、自身の目を泳がせた。

 

 

 

――――――

 

 

 

「シュンジ王!!」

 

 気分転換にハンガーデッキへと降りてきたシュンジ・イザワの顔を見た騎士見習いホリィは。

 

「頂いたアルダム、調子が良くなっていますよ」

「そうか、ホリィとやら」

「はい」

 

 彼、シュンジのお付きであるフェラリオと語り合うのを止め、軽く若き王にと頭を下げる。

 

「このアの国の人達、流石にアルダムを上手く改造しています」

「そうか、フィナ?」

「はい、シュンジさん」

 

 そのフェラリオ、フィナというらしい彼女は、その薄い翅から淡い燐光を振り散らしながら、シュンジ王の肩にと止まってみせた。

 

「地上人って」

 

 その光景に興味をそそられたのか、ダンバインの整備を行っていたレーテ、ガロウ・ランの少女がフィナの小さな身体をしげしげと見詰めている。

 

「フェラリオを飼う習性でもあるのか?」

「俺も、このフィナとの縁はよく解らない」

「そうなのか、シュンジ王?」

「そうさ……」

 

 そのレーテ達の会話に聞き耳を立てていたネデルにしてもフェラリオ「フィナ・エスティナ」と先程そうシュンジから彼女の事を紹介してもらったネデルの目からして見ても、一国の王が肩にフェラリオを乗っけている姿は妙な物だとは思う。

 

「このアルダムは、他の部隊の物だったんですが、シュンジ王」

「うん?」

「ぶん取っちゃいましたよ、オーラバトラーが欲しかったから!!」

「ハハ……」

 

 シュンジ王とホリィのそのやり取り、それに少しは心が救われた気がするネデル。先の話題はやはり、一国の王に対して失礼極まりないと思っていたのだ。

 

「シュンジ王達!!」

 

 その時、ハンガーデッキを開くとその手でサインを送ったベーベル整備士の指示に従い、皆がハンガー出入り口から遠ざかる。

 

 ブ、ルゥ……!!

 

 皆が搬入口から遠ざかったのを確認したベーベルは手際よくマシン用の出入り口を開き、そこから一機のバラウがハンガー内へと飛び込んで来た。

 

「シュンジ王、迎えに来ましたぜ」

「ご苦労、ザン団長」

 

 そのザンと呼ばれた老騎士と共にバラウにと乗っていたベッグ、このナムワンの責任者が、シュンジと入れ替わるようにして運搬機バラウから身軽に飛び降りる。

 

「では、俺はリのナムワンに戻ります」

「お元気で、シュンジ王……」

「うん……」

 

 そのネデルの声に一つ手を振る仕草をしながら、シュンジはバラウにと飛び乗り。

 

「おい、お前達」

「はい、ベッグ隊長」

「シュンジ王に失礼が無かっただろうな?」

 

 バラウがけたたましい羽音を立てて、雨の中にと飛び立つ姿を目にしながら、ベッグは部下達にと釘をさす。

 

「そりゃあ、もう隊長殿」

「だと、いいがな……」

 

 ガロウ・ラン、レーテのややに軽薄な返事に、騎士ベッグは微かに苦い顔をした。

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