「では……」
コンッ……
儀礼の為として作られた、女性用の板金鎧を身に纏ったホリィのその細い肩、それをバーン・バニングスは刃の付いていない剣で軽く叩く。
「本来ならドレイク様にしか、ナイト・ストライクは許されないのだが」
「はい、騎士バーン」
「ホリィ・ウッド、貴公を騎士として認める」
ブル・ベガー内部にと応急的にしつらえた騎士叙勲室、その中でホリィはバーン、アの国一の騎士として謳われる男により、騎士としての有り様を教わる。
「皮肉をいうようだが、ホリィ・ウッド」
「ハッ……」
「やはり、貴公の騎士叙勲はオーラバトラー乗りを増やすための、単なる肩書きとしての意味合いが強い」
その言葉はホリィの心に刺さる物であるが、確かに自分の実力が騎士、オーラバトラー乗りとして高い水準を満たしているとは思えない。
「だが、騎士の名を手に入れたからには、今以上の精進をしてほしい」
「かしこまりました、騎士バーン!!」
あくまでも、オーラバトラー操縦者イコール騎士としての図式、それをお偉方が「規律」として守る為の、彼女の騎士叙勲なのだ。
「でも、これでアイツに大きな顔はさせないぞ……」
しかし、それでも何だかんだいって、騎士となった事は満更ではないホリィである。
――――――
「まあ、とりあえずは……」
自分達の艦「ナムワン」にと帰還した騎士ホリィを、レーテを始めとした。
「おめでとう、ホリィ」
「ありがとう、レーテ」
クルー、そしてパイロット達が、拍手を持って祝福する。
「ここに、エコーの奴がいないのは残念だけど」
「今ごろ、ショット様に良いように使われてるのではないですか、ホリィさん?」
「そうねぇ……」
エコー、彼女ホリィの幼馴染みが今、どのような境遇にあるのかは解らないが、騎士叙勲を受けた自分としては自慢したい相手ではあるし。
「アイツにも、拍手をしてもらいたかったな……」
少し、寂しさを覚えてしまうホリィ。
「でも、この時期に騎士叙勲とは」
「何ですか、ベッグ隊長?」
「いや、例のドレイク様がいよいよ……」
その、騎士長ベッグの言葉、それが意味する所はあまり。
「ちょっと、あなた……」
「すまんすまん、ネイリン」
この喜ばしい、祝いの場で言うような事ではない。
「さ、さあみんな!!」
その場に流れた微妙な空気を吹き飛ばそうと、ネデルが実家から取り寄せた珍しい食べ物、それを材料として作った料理の事を皆にと話し。
「冷めない内に、食べましょう!!」
「そうだね、うん」
ネデルの気を使ってか、レーテもまた彼にと同意する。
「でも、やっぱり」
「何ですか、ホリィさん?」
「エコーの奴にも、食わせてやりたかったな」
そのホリィのどこか未練がましい声に、その場にいたナムワンのメンバーが苦く笑った。
――――――
「ここは……?」
見慣れぬ夜の土地、あちらこちらにラース・ワウの名物である「電灯」が点いた柱が立ち上る床に、エコーは座り込んでいる。
「大丈夫ですか?」
「ん……?」
その妙にでこぼこした、それでいて滑らかとも言える地面にと佇むエコーに、一人の小妖精「フェラリオ」が声をかけてきた。
「君は、確か……」
「シルキー・マウです、ええと」
「エコーだ」
「はい、エコーさん」
そのフェラリオの翅から散らばる燐光、それが闇夜の世界をややに明るく照らす。
「お怪我は……?」
「いや、ないが……」
それでも、自らが座りこんでいる石畳らしき物、それの尻に当たる不快感はなんとも言えない。
「どこの国だ、アの国ではない……?」
「オーラが」
「何だ、シルキー・マウ?」
「大気に含まれるオーラが、希薄です」
そのシルキー・マウの言葉、それが意味する所はエコーには解らず。
「まるで、バイストン・ウェルではないみたいです……」
ただ、シルキー・マウの言葉を耳にと入れているのみ。
キィ……
「何だね、君は?」
その時、石畳にと座り込むエコーの目の前に、見慣れぬオーラマシンが悲鳴のような音を立てて止まり、中から一人の男が出てきた。
「ここは、一般人は立ち入り禁止だが?」
「な、何だと言われても……」
「とにかく」
そう、男は一つ咳払いをした後に彼エコーにとマシンの中へ入るように促す。そのマシンの中にはもう一人、人がいるような様子だ。
「事情を聴きたい、車に入りたまえ」
「あ、あんたは誰だよ!?」
「ここが自衛隊の基地であることは、君も解って入ったのだろう?」
「ジエータイ?」
聞き慣れぬその言葉、その意味をエコーは男にと訊ねようとした、その時。
リィ、ン……
「な、なんだ!?」
フェラリオ、光輝くシルキー・マウを見た男は。
「ど、どこのオモチャ、いやドローンだ!?」
「どうした、香川?」
「皆川さん、妖精が……!!」
「はあ?」
マシンの中にいるもう一人の男に叫びながら、何か激しく動揺をしている様子である。