「アイルランドの国!?」
「だから、アの国でバイストン・ウェル!!」
先程からエコーと。
「ドレイク様の領地、そして俺はそこの騎士見習い!!」
「騎士、どこのゲームの話よ!?」
「オーラバトラー!!」
見慣れぬ服にと身を包んだ男との問答は続き、そしてラチがあかない。
「佐藤、どうだ?」
「どうもこうも、皆川さん……」
何か、その場にいる全員が頭にとキンキンくるその感覚に対し、疎ましげにそのこうべを振りながら、話をどうにか続けようとしている。
「不法侵入に妄想癖、やっかいな少年ですよ」
「だがな、佐藤」
皆川と呼ばれた男は、佐藤という名らしき男と交代し、エコーの目の前にと座りこんだ。
「この、相手の唇と言葉が一致しない現象はなんだ?」
「さあ……」
「それに」
一つ、咳払いをしたのちに皆川は。
「外に置いてあった、よくお台場とかにあるロボットの人形……」
「カンタムですよ、ユニコンカンタム……」
「それによく似た、あのロボットはなんだ?」
そういいながら、皆川は一枚の紙をエコーの目の前にと差し出す。
「皆川さん、それは……」
「上の許可はとってある」
「よくも、まあ……」
その差し出された紙、それはショット・ウェポンが書いた実験型ドラムロの説明書だ。
「あのロボットの中に置いてあった。英語と一緒によくわからん字が書いてある」
「ショット様が書かれた、ドラムロの説明文だよ……」
「そうなのか、栄光君?」
「はいミナカワ、さん……?」
「それでいい」
何か、その皆川という男はしばらくの間、何かを考えていたようであるが、その彼の思考を遮るように。
「ミナカワさん、ドラムロを見せて下さい」
「……」
「俺と一緒に飛ばされてきたみたいですね」
「さぁてね……」
「あのドラムロを動かすキーは、俺が持っているんですよ?」
「……」
エコーが見せびらかすように、自らの懐から取り出したオーラバトラーのエンジン・キー、それを眺めながら、皆川は。
「佐藤君」
「ハッ……」
「小野寺司令に連絡だ」
――――――
ブォフ……
「良くできたオモチャだ……」
昼の光が降り注ぐ中、例によって固い石畳の上でエンジン・キーでドラムロをアイドリングさせたエコー。彼の機体の目の前には、大型の対戦車用火器をその手に持った。
「完全に、カンタムじゃねえかよ……」
ジエータイの人達が、呆れたようにそのドラムロを眺めている。
「こっち、向いてぇ!!」
そのドラムロのコクピット、それを開放させているエコーのすぐ近くを飛んでいるシルキー・マウ。彼女の姿を一目見ようと、男女問わず多くの人々が集まって来ている姿を、エコーはドラムロの内部から見下ろす。
「小野寺司令、やはり地下施設の方が良かったんじゃないですか……?」
「皆川、このロボットは」
小野寺司令のその言葉、それが放たれると共に、彼らの瞳はドラムロの肩の剣、そして。
「あきらかに、戦闘兵器だ」
「はい」
「地下で爆発でもされてみろ、よほど厄介だ……」
その指はドラムロの掌、フレイ・ボム発射用の砲門にと向いている。
「ロボットに、妖精かよ……」
「一応あの少年は話が通じています、司令」
また一つ、鳴り響くシルキー・マウへの歓声。
「宇宙人とかそういうのではないみたいですが……」
「レザーの衣服か、それでもバイクスーツではないようだが」
「はい」
彼ら「ジエータイ」がドラムロを外にと出したのは、すでに発見された時に普通の人に。
――すげー、ロボットだ――
――スマホ、スマホ!!――
撮影、それがされていた為であり、隠しきる手段が絶たれた為である。
「アメリカが、何か言ってこないかな?」
「映画用のロボットだと誤魔化せないでしょうかね、司令」
「あの偏執的なお国柄だぞ、自由の国を謳っていても……」
その言葉が聞こえたか聞こえていないか、コクピットからエコーがその身を乗りだし。
「飛んでもいいですか、ミナカワさん?」
「そんなことが出来るのか、このドラムロとやらは!?」
「もともと、その為のオーラバトラーです!!」
「ダ、ダメだ、止めろ!!」
「は、はい……」
皆川の慌てたようなその言葉に、エコーは慌ててドラムロのコンバーター出力を下げた。
バッ、バッバ……
そのドラムロの頭上を飛ぶ、待たしても見慣れぬこの「異世界」でのオーラマシン。
「あのマシンは、ミナカワさん?」
「アメリカの物だよ、栄光君」
「アメリカ?」
「そのショットとか言ったか、彼が書いていた字を母国語としている国だ」
「ヘエ……」
アメリカ、その名はショットや地上人マーベル・フローズンにと聞いたことがある。その時。
「あ、もしかしてミナカワさん……」
「なんだ、栄光君?」
「ここは、ニホンという国ですか?」
「そうだ、知らなかったのか?」
「は、はい……」
その、尻つぼみに囁くエコーの声に対して、皆川は軽くその頭を捻って見せる。
「俺のいた国、そこにシュンジという人がいまして」
「ふむ……」
「その人が、ニホンという国の人だったみたいです」
「なるほど」
コクピットから聞こえてくるエコーの大声、それに対して皆川の声もまた、大きくなってしまう。
「警察の捜査願いにでも、あるかな……?」
「バイストン・ウェル、あの方はそこに異世界転生をされたと言っておりました」
「まあ、未だに私は半信半疑ではあるが」
皆川はそう言いながら、深くため息をついてみせ。
「異世界、私は信じてみるしかないかな……」
またしても、その言葉の後にため息が一つ。
「小野寺司令!!」
「おう、なんだ?」
何か、慌てて駆け寄ってきた「ジエータイ」の隊員に、その組織で権限というものを持っている小野寺司令は。
「アメリカ軍が、そのロボットを見せろと言っております」
「来たか……」
「何か、すでにアメリカのジョーカー大統領には知らせてあるんじゃないですかね?」
「かもな……」
その女性隊員の台詞に、皆川と同じく深いため息をついた。