「矢部総理から」
「はい」
「そのドラムロを、アメリカに引き渡せとの要請が出ている」
「ハッ……」
その官房長官からの連絡は、そのまま自衛隊を「下り」
「小野寺さん?」
「皆川くん、ドラムロの件であるが……」
自衛隊基地、小野寺司令にと命が下りた。
――――――
「エコーくん」
「はい」
「君には、アメリカに行ってほしい」
ズゥ……
皆川から出されたお茶を飲みながら、その言葉に対してエコーはしばしの間、無言である。
「アメリカ、ショット様やマーベル様の故郷ですよね?」
「広くて、いい国だよ」
「俺も、マーベル様のような方を産んだ国は好きになれそうです」
「最近、ジョーカー大統領のせいで、色々と揺れている国だがね」
「ジョーカー、大統領?」
「王様の事だ」
「ああ……!!」
何か、その皆川の言い方に好意を感じたのか、エコーは茶菓子をくわえながら嬉しそうな声を上げた。
「あなたは、人に優しい人ですね、皆川さん」
「そうかな?」
「俺、いや私に色々と気を使ってくれる」
その言葉、それは紛れもなくエコーの本心であったのだが。
「参ったな……」
どうも皆川は、好意的な世辞と受け取ってしまったようだ。
「私達は、君をアメリカに売ろうとしているんだよ?」
「私はニホンに住めないので?」
「第一、国籍がない……」
何か、呆れ顔でそう皆川が言いはなった時。
ドンゥ!!
「何だ!?」
「失礼します、皆川三尉!!」
何か慌てたように、一人の自衛隊員がエコー達のいる客室へと飛び込んできた。
「オーラバトラーが、もう一機東京の上空に!!」
「なんだって!?」
その言葉を聞いたとき、エコーの袖にと掴まっていたシルキー・マウが。
「エコーさん……」
その袖に掴まる力を、グッと強めた。
――――――
「何だ、この石の塔の集まりは!?」
新鋭のオーラバトラーを駆るガラリア・ニャムヒー。アの国ドレイク家に仕える騎士の内ではエコーの先輩にと当たる彼女は。
「このような所で、人が住めるのか!?」
その石の塔のありさま、それに苛立ちの声を上げている。
バゥウ……!!
「また、地上とやらのウィングキャリバーか!?」
その戦闘機、先程出会ったときはなんとか回避に専念できたが、今度は数が多い。それに。
「いつまでも、私はコソコソと逃げ回る訳にはいかんのだよ!!」
見る人が見ればそれはF15イーグル戦闘機であると解るその機体は、しかし先の戦闘と同じく。
「くそ、ミサイルのロックオンが人形に出来ない!!」
オーラバトラーが生体パーツを多用しているのが原因か、メイン・ウェポンであるミサイルの発射が出来ずにいる。その相手の戦闘機が作った「隙」に。
「くらえ!!」
ガラリア機は、その手に備え付けられた大型オーラバトラー用火器であるオーラ・ランチャーを撃ち放つ。
バフォウ!!
「な、何!?」
その相手パイロットの絶命の声なぞは聴こえない、その余裕が無いほどに。
「ち、地上界ではオーラバトラーが強くなるのか……?」
オーラランチャーの余波、それが巻き起こした凄まじい街中の破壊に、ガラリアはコクピット内で戦慄する。
「ガラリア、ガラリア・ニャムヒー!!」
その動揺が強いガラリアに向かって、飛来する青いオーラバトラーが、彼女の機体を羽交い締めにしようと試みる姿が。
――――――
「ショウ・ザマのダンバインと、謎の新型オーラバトラーだ……」
テレビの前でその画像を見つめている、エコーと皆川を始めとする自衛隊員達の前で繰り広げられていた。
「君の乗るドラムロも」
そう言いながら、エコーを見つめる皆川の視線は厳しい。
「ここまで凄い兵器なのか?」
「そんなわけないでしょ!!」
「しかし、これじゃ核兵器だ!!」
「カ、カクヘイキがなんだか知りませんが……!!」
核兵器、その言葉を聞いたときに何か、ゾワッとした感覚にエコーは戸惑いながらも。
「こんなの、ドラムロにもダンバインにも出来るものじゃない……」
身にとしがみつく、シルキーの頭を撫でながらもエコーのその言葉は尻つぼみとなる。
ガ、チャ……
「皆川三尉」
その時客室のドアが開き、この基地の司令が。
「アメリカの連中が、あのドラムロを強引に持っていった」
「な、なんですって!?」
「やることが、アメリカだという意味だ」
「しかし、このドラムロはエコー君の……」
そう言って皆川はエコーの方を振り向いたが。
「……」
エコーはシルキー・マウと共に「テレビ」と説明を受けた物体を眺め、その画像にと。
「何だ、この恐ろしい感覚は……?」
「エコーさん……」
「大丈夫だ、シルキー」
食い入るように、その視線を向けているのみ。
「単なる、疲れさ……」
「エコー君……」
その言葉には、シルキー・マウよりも皆川三尉の方が心配そうな目を向けている。
「皆川さん」
「はい、エコー君」
「あの青いオーラバトラーは俺の知り合いです」
「ピンク色の方もか」
「解りませんが、ただ……」
そう言いながら、エコーは自らの眉間を軽く押さえて見せた。
「何か、知り合いのような気がします」
「予感、か……」
「何かを、感じるんです」
「……」
その言葉、それにこの場で沈黙している自衛隊員達、そして同じくその翅を震わせながら黙っているシルキーが。
「何か、アの国だけが世界ではないという」
強い口調に満ちたそのエコーの言葉に、何かに押されたように身を固まらせる。