よく晴れた青空を風を切りながら、クラゲに似たオーラマシン「ドロ」が飛行をしている。
「こちらが、マーベル様」
「はい」
「フレキシブル・アームの内部操縦桿となります」
アケロン乗車兵からオーラボム、いわば爆撃機という特性を帯びているオーラマシンの搭乗員となったエコーが、地上人「マーベル・フローズン」にと、そのドロ内部の説明をする。
「あっ……」
「あっ……」
操縦桿、それに触れるエコーの手にマーベルの柔らかい手の平が重なり。
「ご、こめんね、エコー君」
「いえ、こちらこそ……」
二人とも、微かに頬を染めながらどちらともなく謝る。
「……」
その光景を見ていたホリィ、エコーの幼馴染みは。
「いやらしい女……」
ドロを内部操縦しながら、憎々しげに呟く。
「妬いているのか、ホリィ」
「だっ、だれがですか、ベッグ隊長!!」
「ハッハ……」
機体のてっぺんのプラットフォーム、ドロのメイン操縦場からマシン内部を見下ろしながら、軽く冗談を言いつつに、騎士ベッグはエコーにと。
「地上人に操縦方法も教えてやれ、エコー」
「は、はい!!」
オーラボムの内部構造を教えるようにと、エコーに命ずる。マーベルはオーラバトラー、人型のマシンにしか乗ったことがなく、オーラボムには不慣れなのだ。
「えーとですね」
「あたしが彼女に教えるわ、エコー」
「お、おい!?」
半ば強引にマーベルの腕を引っ張り、マーベルにドロの操縦の方法を教えようとするホリィ。
「これがですね、マーベルさん!!」
「こ、声が大きいわ……」
「これが、こうなって!!」
グゥン……
その、怒りに満ちた声と共に思いっきり手前にと引いた操縦の桿によって、ドロが大きくよろめき。
「おい、ホリィ!?」
「何ですか、隊長!?」
「俺を落とす気かよ!?」
「知りません!!」
あやうくプラットホームから身を乗り出しそうになったベッグの声も無視し、ホリィは乱暴にマーベルへと操縦方法を教える。
「何を怒っているんだ、アイツは……」
その、幼馴染みエコーのボソボソとした声はホリィには届かない様子だ。
「エコーさん」
「おう、なんだよネデル?」
「もうすぐ」
その、新しくエコーの同僚となった騎士見習いの少年、ネデルの声にエコーはその首を向ける。
「機械の館ですよ」
「そうだよ、エコー!!」
ネデルのその声に重なるかのように、ベッグからも機体内部にと叫び声が飛ぶ。
「さっさと着地体勢をとらせんか、ドロに」
「隊長がどうにか出来ないので?」
「何か、ドロの反応が悪い……」
「はあ……」
ため息混じりのそのベッグ隊長の声、それをエコーはマーベルやホリィ達を見やりながら。
「ドロ、着地姿勢をとります」
操縦系統の桿を強く押し込めた。
――――――
「何あれ!?」
「凄いですね……」
ホリィ少女とネデル少年のその驚いた声、そして驚きのあまり無言のエコー達の眼下では。
「あれはオーラ・シップだよ」
騎士ベッグが解説する、そのオーラ・シップなるものが、機械の館の広場にと鎮座している。
「オーラシップ……」
「ナムワンという」
「ナムワン、ですか……」
その、エコーの唸り声に同乗していたもう一人の地上人「ゼット・ライト」が、マーベルと共にバイストン・ウェルにと飛び降りて来た男がその鼻を得意気にひくつかせながら。
「お館様とや、ドレイクはな」
「ドレイク様は?」
「俺も設計に携わった、このナムワンを王様に献上するんだとよ、エコー君」
「へえ……」
夕陽にと映えるオーラシップ「ナムワン」、その偉容は落ちゆく空の光に照らされて、特に何もしていないのにその「力」を見せつけているようだ。
「忠臣なのね、ドレイク様は」
ホリィのそのうっとりとした声とは対照的に。
「うん……」
「どうしたの、ネデル?」
「いや、なんでもないよ、ホリィ」
ネデル少年は、先程からなにかしら黙りこくっている。
「おーい、皆」
「はい、ベッグ隊長!!」
「燃料も少ない、着地するぞ!!」
「ハッ!!」
そのベッグの掛け声と共に、エコー達は持ち場へと戻り、ドロの着地準備を開始した。
――――――
「今日はありがとうね、エコー君」
「いや、マーベルさん……」
地上人「マーベル・フローズン」にその手を握られながら、そう囁かれたエコーの頬が夕陽に負けない位に紅く染まる。
「やっぱり、男の人って」
「何ですか、ホリィさん?」
「ああいう」
その、マーベルとエコーをジトリとした視線を投げ付けているホリィは、ヒソヒソ声で隣にいるネデルへと。
「女っぽい人が好きなのかな?」
「な、何で僕に訊くんですか!?」
「別に……」
返答にこまる質問を投げつける。
「どうなのさ、ネデル?」
「僕は、どっちかというと……」
「どっちかというと?」
「いや、何でもありません……!!」
そういい、その首をブンブンと振るネデルへホリィは不審な瞳を一つ向けた。
「これからも、アの国とドレイク様の為に頑張りましょう、マーベル様」
「うん……」
「マーベル様」
「あ、いや」
アの国、ドレイク、その言葉を聞いたとき、マーベルは微かに沈んだ表情を浮かべたが。
「そうね、頑張りましょう」
「はい!!」
そう言ったときの、マーベルの顔には満面の笑み、それと共に再び差し出される手を握るエコーに対して。
「いやらしい……」
ホリィはまた、その可愛い顔を歪めるのであった。