朝焼けの中、上空に二機のオーラバトラーバトラーが飛翔し、模擬戦を行う中。
「ふう……」
アの国の騎士「バーン・バニングス」は、ゲドバインの慣熟飛行をラース・ワウの郊外、機械の館付近で行っていた。
「堪えるな……」
「お疲れさまです、騎士バーン」
「ありがとう」
そう言いながら、ゲドバインから降りてきたバーンに向かってエコーは飲み物を差し出す。
「やはり、このゲドバインは我々コモンの手には余るな……」
「難しいので?」
「ブラウーネやゲドの比ではない」
ク、ピィ……
エコーから差し出された飲み物、野菜ジュースにとその口を付けながら、バーンは微かに自嘲してみせた。
「全く、あの裏切り者の地上人の女め」
「マーベル様の事で?」
「他に誰かいるか、少年?」
その言葉と共に放たれたバーンの笑い声に対して、軽く同調してみせる兵士エコー。
「オーラバトラー、俺には羨ましい限りです」
「そうか、少年」
「いつか、乗ってみたいものです」
「乗ってみるか?」
「は?」
一瞬、そのバーンの言葉が解らず、ポカンとした顔を見せるエコーに対して、バーンは明るく微笑みかける。
「このゲドバインとやらにですか?」
「そうだ」
「よろしいので?」
「許す」
「ワァ……」
そう、感嘆の声をあげながらエコーはゲドバインのコクピットにと続くハシゴにと、その視線を向けた。
「エコー、昇ります」
「おう……」
スゥ、ス……
「身軽だな、少年」
「どうも……」
「いや、良いことだ」
どうでもいい事を誉められた彼、エコーの上空では、ゲドⅡブラウーネと見慣れぬオーラバトラーの模擬戦が未だに続く。
「ガラリアも、ブラウーネでなかなかやるな」
「エコー、コクピットの前です」
「よし、入れ」
「ハッ!!」
そのまま身軽にゲドバイン内部へと入り込むエコー、機体内へと入り込んだその彼の視線の先には、見慣れぬ計器類が所狭しと詰め込まれている。
「ドロやアケロンと、似ているようで違う……」
「エンジン・キーを回してみろ」
「エンジン?」
「手元にある、銀色の鍵だ」
コクピットの座席に座り込むエコーは、バーンに言われるがままにその鍵を探す。
「これだな……」
錠、家などに付けるそれによく似たその鍵を、エコーはおっかなびっくりにと回転させた。
ギィ、イ……!!
その瞬間にオーラバトラー、それの推進装置であるオーラコンバーターから、奇怪な音が立ち上った、その時。
「う、うわ……!?」
そのコンバーター起動と共に、突如としてエコー少年は自身の身体からゲッソリと力が抜け落ちるのを感じる。
「コンバーターを止めろ!!」
「と、止めると言っても!!」
コクピットを開放させていたままの為に内部の様子を確認出来ていたバーンから、そう指示がエコーにと飛ぶ。
「ど、どうやって!?」
「キーを逆回転させろ!!」
「キー!?」
「鍵だ!!」
「はい!!」
グゥン……
慌てたエコーがその手を滑らせながら、エンジン・キーを回した途端に。
「ふう……」
嘘のように身体が軽くなり、緊張がほぐれる。
「降りてこい、少年……」
「はい……」
「ゆっくりな」
優しく声をかけてくれるバーンの指示に従い、疲れた顔でゲドバインから降りるエコー。
「どうだった、オーラバトラーは?」
「どうもこうも……」
バーンが差し出してくれるドリンクの入った水筒へと口を付けながら、エコーはその唇を尖らす。
「よく、こんな物に騎士様達は乗れますね」
「まあ、このゲドバインは」
「ん?」
「特別製だからな」
「はあ……」
そういいつつに、バーンはよく晴れた空を見上げ。
「バーン様も、ガラリア様も凄いものだ……」
「ブラウーネはこのゲドバインよりは易しい」
「そうなので?」
「ああ、それに」
模擬戦を続けているガラリア機とその対戦相手を見つめている。
「ゲードラムなら、お前にも乗れるかもしれんな」
「ゲードラム、ガラリア様のお相手で?」
「ああ、あの赤い機体だ」
ガンッ!!
そのゲードラム、丸っこい人型の機体が、ガラリア機ブラウーネの持つ模擬刀をまともに受け、大きく揺らぐ。
「新型、ドラムロの実験機だよ、ゲードラムは」
「ドラムロ?」
「おっと……」
どうやら、その名は極秘の扱いであったらしい。バーンのその顔に微かな狼狽の色が浮かぶ。
「今のは他言無用だぞ、いいな?」
「は、はい!!」
「よし、よし……」
そのまま、一つため息をついたのちに。
「少し、私は別の仕事に入る」
「あ、水筒……」
「口止め料だよ、くれてやる」
「あ、ありがとうございます!!」
エコーの返事に対して、バーンはその背を向けたままに手を振り、機械の館にとその脚を伸ばしていった。
――――――
「この力、全てはお館様の為に!!」
(でも、やっぱり……)
その、バーンの乗ったドラムロが舞わせる剣舞を見つめながら、エコーは。
「俺は、オーラバトラーに乗りたいな……」
憧憬の目で、その人型のオーラマシンを見つめている。