「反対です!!」
「そう怒るな、ホリィ」
「だって、エコーは一兵士でしょう!?」
その怒気に満ちたホリィの声に、その場にいた騎士ベッグ揮下の兵、エコーとネデルがその顔を見合わせる。
「エコーが、ドロのメイン・パイロットだなんて!!」
「傷つくな、ホリィ……」
「何か言った、エコー!?」
「なんでもないよ」
その、ヒステリックに叫ぶホリィ・ウッドに対して。
「オーラ測定機では、彼がお前達の中で一番オーラ力が高かった」
「……」
騎士ベッグは彼女を落ち着かせるように、穏やかに語りかけた。
「……ベッグ隊長はどうするおつもりで?」
「今度のギブン家攻めにな、バーン殿から」
「アの国、一番の騎士様ですか……」
よほど、身分が下のエコーにマシンを「先取り」されたのが悔しかったのであろう、普段は言わぬ皮肉をホリィはその口にする。
「バラウ、ウィングキャリバーでしたっけ?」
「運搬機兼支援機、オーラマシンの一種ですよ、エコー」
小声で繰り出されるエコーとネデルの言葉がその耳にと入ったのか、ベッグは深くその頭を頷かせた。
「バーン殿の、直々の依頼なんだ」
「露払いをしろと?」
「偵察も兼ねてな」
「フーン……」
話と時間が経ち、少しはホリィの活火山も収まってきたようだ、だがその彼女は冷たい視線を。
「フン……」
一つ、エコーへと投げつけたきりに、何処かへいってしまった。
「気にするな、エコー」
「はい、隊長……」
「彼女の反応は、自然な事だ」
「ですけどね……」
ハァア……
最近、我ながらため息が多いなと思いながらも、エコーの口からはまたしてもため息一つ。
――――――
「全く、もう……!!」
ダァン!!
ビールの入った木製のジョッキを酒場のテーブルに叩きつけながら、ホリィは見事に。
「何であたしが、アイツに踏まれないといけないわけ!?」
「荒れてるねえ、嬢ちゃん……」
「なんでなのよ、答えなさいよ!!」
酔客のもたらす厄介事を金髪の男、対面する客へと与えている。
「あたしはアイツよりもがんばって、騎士見習いになったのよ!!」
「はいはい……」
「剣の腕も、あたしの方が上なのに!?」
「けどな、嬢ちゃん……」
「何よ!?」
「まあまあ、落ち着けって」
自身も酒をチビチビと口へ運びながら、その男はホリィをなだめすかす。
「なっちまったもんは、しかたがなきだろ?」
「これは夢よ……」
「現実逃避したって、どうにもならねぇ……」
そのまま、豆を食べながら悪酔いしてきたホリィの肩へとその手を置いてやる金髪の男。
「自分のやるべき事をやるだけさね……」
「……」
「違うかい、嬢ちゃん?」
「……違わない」
「だろ?」
フラァ……
足元がおぼつかないが、ちゃんと金を支払い酒場から出ていくホリィに向かって。
「がんばれよ、嬢ちゃん」
「うん、ありがとう……」
その、彼女の背に向かって声をかけてやる男。
「がんばれよ、か……」
ホリィが酒場から出ていったのち、その自分が吐いた言葉にやや自嘲げな笑みを浮かべながら、彼は。
「俺も、右も左も解らねぇんだ」
かなり酔いが廻ったな、そう感じながらも、男は追加のビールを注文する。
「いつも以上に、慎重にいかねぇとな」
「あ、いたぞ!!」
「ん?」
舌を舐めながら、そう自分を納得させるかのように呟いた彼に駆け寄る男が二人。
「なんだ、ジャパニーズにロシアンかよ……」
「バーンがさがしていたぞ!!」
「ちっ……」
その騎士の名に、一つ舌打ちをしてから男は席を立ち、店の主人に銀粒を差し出す。
「まともに酒も飲めやしない……」
「俺達はこの世界の客人なんだぜ、トッド」
「わかってるって、ロシアン……」
グゥ……
「おっと……」
「すまねぇな、ショウ」
「飲み過ぎだ、トッド」
「ジャパニーズには、俺の気持ちは解らねぇよ……」
そう呟きながら、トッドと呼ばれた青年は二人の男に抱えられつつ、酒場を後にした。