「これが、オーラマシンで」
森林山脈地帯「イヌチャン・マウンテン」の上空を、ドレイク・ルフトの軍勢が飛ぶ。
「風を切る感覚か」
「いい気にならないでよ、エコーは」
「うるさいな、ホリィ」
その軍勢にと含まれる一機のドロ、オーラボムの操縦プラットホームで、エコーはドロを前方にと推し進めるように「念じる」
「ギブン家が、何でドレイク様の領地を攻めたのかな、ネデル!?」
「さあ!!」
エコーが大声を出して怒鳴ったのは、マウンテンの風が強くなり普通の声ではかき消されるからである。
「わかんねぇな……」
ギブン家、その一部隊が先のラース・ワウで行われたオーラマシン披露会で強襲を仕掛けた理由、それはいくら考えても、所詮は一兵士であるエコーには解らない。
「まあ、もっとも……」
「あたしたちが考えることじゃないでしょう、エコー!!」
「ちょっと、うるさい……!!」
そのホリィの怒鳴り声は、単に強風のせいではない様子だ。未だに機嫌が悪いらしい。
ガ、ガガッ……
「各員、こちら先頭のバラウ」
騎士ベッグ、彼が駆る戦闘機バラウからの声が、酷く性能の悪い鉱石ラジオを通してエコー達へと届く。
「ギブン家のオーラマシン部隊を確認」
「数は解るか、ベッグ殿?」
そのドラムロ、てんとう虫にも似た新鋭オーラバトラーを操る騎士バーン・バニングスの声が、ベッグからの広域無線の中にと混じった。
「ゲドとドロが主力、あとはダーナ・オシーが僅かに」
「そのダーナ・オシーには気を付けろ、皆」
ダーナ・オシー、その名はギブン家がドレイク・ルフト家から盗みとった技術で作り上げた模造オーラバトラーだということは、風の噂でエコーも聞いている。
「ギブン家にも、オーラマシンがあるのか、ネデル?」
「あるんじゃないですか、エコーさん」
「そうか」
しかし、ドラムロはもちろんゲドの発展系である「ブラウーネ」やゲドとドラムロの中間機である「ゲードラム」はないはずだ。ドレイクはそれらを他国には輸出していない。
グゥン……
先のバーン・バニングス達の声が聞こえたと同時に、女騎士が駆るバラウがドレイク軍全体の上方にと位置をする。
「おいガラリア、あぶないぞ!!」
「そのダーナ・オシーとやら、あたしが落としてやる!!」
「ちぃ!!」
忌々しげに呟くバーンを無視し、ガラリアはそのままバラウを高空にと位置させる。そのガラリア機を昼の光が明るく照らす。
バゥ!!
「ギブン家から先制攻撃!!」
自機を狙われたにも関わらず、そのドロからのフレイ・ボムを回避しつつに全軍へ警告の通信をするベッグは、まちがいなく名うての騎士の実力を見せつけている。
「みんな、いくぞ!!」
「了解!!」
そのエコーの呼び声にホリィ、ネデルが返答する傍らで。
「地上人、準備はよろしいか!!」
「ああ、やってやるよ!!」
三機のダンバイン、地上人専用機「ゲドバイン」の発展型から。
「ま、やるしかねぇか!!」
「どうすりゃいいんだよ……!!」
マーベル・フローズン達に続き、新たにバイストン・ウェルに召喚された三人の地上人、彼らの声もエコー達へと届く。
「あれが、第二の地上人達か……」
「エコー、敵がみえたわよ!!」
「ホリィ、フレイ・ボムの準備を!!」
戦闘態勢へと移行するドロ、プラットホームに立つエコーの目の先では、すでにバーン達の戦闘が始まっている様子だ。
「後列、注意!!」
そのドレイク軍の前線をすり抜けた数機のダーナ・オシー、彼らが狙いをつけたのは。
「この、くそ!!」
「善悪の区別もつかない、この分からず屋!!」
「なんだと、お前は誰だ!?」
「私はダーナ・オシーのマーベル・フローズン!!」
どうやら、三機のダンバインらしい。その内青色のダンバインが敵機ダーナ・オシーと接近戦を繰り広げてるのを確認したエコーは、ホリィ達に地上人の支援をするように要請する。
「遅いよ、ホリィ!!」
「フレイ・ボム加圧器の調子が悪いのよ!!」
「くそ!!」
その報告を聞いたエコーは、プラットホームでフレキシブル・アームを動かすように「念」じ、その念が通じたのかドロ、クラゲの触手のようなフレイ・ボム発射器から。
ザァ!!
滝のような火焔が、そのダーナ・オシー隊を怯ませる。
「しまった!!」
「何、燃料を使いきっているんですか、エコーさん!?」
「す、すまん!!」
その、あまりにも苛烈な火焔の渦は即座に消え去り、その後エコー機の出力が大幅に低下した。
バッバア……!!
「バカめ!!」
エコーのドロの惨状を見かねたガラリアが前線から舞い戻り、周囲で陣を整えるドロからの支援を受けつつに、そのダーナ・オシー隊の隊長機へとバルカン、実弾兵器による強襲を仕掛ける、が。
「うわぁー!!」
二機のダーナ・オシーに取り囲まれ、緑色に塗装されたダンバインが、火を吹きながらイヌチャン・マウンテンの森林にと落下する。
「ちぃ、地上人め!!」
その姿を見つめたガラリアが軽く眉をひそめ、舌打ちする音がエコー達にも聞こえた。
「エコー機、右だ!!」
「何!?」
後続のリの国、お情けの援軍として一機だけ派遣してくれた空色のドロから、警告の声がエコー達にと響く、が。
グゥ……
オーラ力(ちから)が低下したエコーでは、ただでさえ鈍重なドロの回避行動は不可能だ。先の警告を与えてくれた老騎士の支援フレイ・ボムが飛んだが、その脇をすり抜け一機のゲドがエコー機へとせまる。
「く、くそ!!」
「フレキシブルが、エコー!!」
「解っているよ、ホリィ!!」
だが、切り離されたフレキシブル・アームが跳ね、そのゲドの体勢を崩した隙に。
「はっ!!」
ドロ隊の直掩機であるゲードラムとブラウーネが、そのゲドを手からのフレイ・ボムの連射で退かせてくれた。
「た、助かる!!」
「情けないぞ、ドロ!!」
その試作機のフレイ・ボム発射器は連射の負荷により故障したようであったが、そのお陰でエコー達は助かった。
「こちら、バーン!!」
いつのまにやら雲が辺りを覆い、薄闇となったマウンテン、その宙域にバーン機ドラムロからの無線、及び信号弾が宙にと飛ぶ。
「ギブン家の手勢は、撤退を開始した……」
「追撃しよう、バーン!!」
「だめだ、ガラリア」
「しかし、ここで敵を討っておかないと!!」
「こちらの損害もある、地上人が一人やられた様子でもあるしな」
「……」
「撤退だ」
そのバーンの声、意見を聞き微かに身体中から力が抜けるエコー。
「ちょっと、エコー!!」
「エコーさん、オーラ力が!!」
オーラ力、それが失われそうになったエコーのドロは、危うく高度が下がりそうになる。
「武勲を、上げられなかった……」
「そんなこともありますよ、エコーさん」
「うん……」
雨がパラパラと降り注いできたイヌチャン・マウンテンの中、エコーの力がいきなり抜けたのは、何も戦いの恐怖から解放されただけではない。悔しさもあるのだ。
「初オーラマシンにしては、まあまあだな……」
いつのまにか近付いてきたドラムロ、微かに破損したバーン機から掛けられた声と共に。
「少し、実戦は早かったかな……」
そのドラムロを乗せたバラウ、騎士ベッグの声が苦々しげにエコーには聴こえた。
「すみません、ベッグ隊長」
「いや、気にするなエコー……」
「はい……」
実戦で無様な戦いを見せてしまった、そのエコーの心境を代弁するかのように。
ザァ、ア……
夕闇が近付いてきたイヌチャン・マウンテンにと、雨が降り注いできた。