聖戦士ダンバイン ~コモンの聖戦士~   作:早起き三文

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第7話「イヌチャン・マウンテンの戦い」

「これが、オーラマシンで」

 

 森林山脈地帯「イヌチャン・マウンテン」の上空を、ドレイク・ルフトの軍勢が飛ぶ。

 

「風を切る感覚か」

「いい気にならないでよ、エコーは」

「うるさいな、ホリィ」

 

 その軍勢にと含まれる一機のドロ、オーラボムの操縦プラットホームで、エコーはドロを前方にと推し進めるように「念じる」

 

「ギブン家が、何でドレイク様の領地を攻めたのかな、ネデル!?」

「さあ!!」

 

 エコーが大声を出して怒鳴ったのは、マウンテンの風が強くなり普通の声ではかき消されるからである。

 

「わかんねぇな……」

 

 ギブン家、その一部隊が先のラース・ワウで行われたオーラマシン披露会で強襲を仕掛けた理由、それはいくら考えても、所詮は一兵士であるエコーには解らない。

 

「まあ、もっとも……」

「あたしたちが考えることじゃないでしょう、エコー!!」

「ちょっと、うるさい……!!」

 

 そのホリィの怒鳴り声は、単に強風のせいではない様子だ。未だに機嫌が悪いらしい。

 

 ガ、ガガッ……

 

「各員、こちら先頭のバラウ」

 

 騎士ベッグ、彼が駆る戦闘機バラウからの声が、酷く性能の悪い鉱石ラジオを通してエコー達へと届く。

 

「ギブン家のオーラマシン部隊を確認」

「数は解るか、ベッグ殿?」

 

 そのドラムロ、てんとう虫にも似た新鋭オーラバトラーを操る騎士バーン・バニングスの声が、ベッグからの広域無線の中にと混じった。

 

「ゲドとドロが主力、あとはダーナ・オシーが僅かに」

「そのダーナ・オシーには気を付けろ、皆」

 

 ダーナ・オシー、その名はギブン家がドレイク・ルフト家から盗みとった技術で作り上げた模造オーラバトラーだということは、風の噂でエコーも聞いている。

 

「ギブン家にも、オーラマシンがあるのか、ネデル?」

「あるんじゃないですか、エコーさん」

「そうか」

 

 しかし、ドラムロはもちろんゲドの発展系である「ブラウーネ」やゲドとドラムロの中間機である「ゲードラム」はないはずだ。ドレイクはそれらを他国には輸出していない。

 

 グゥン……

 

 先のバーン・バニングス達の声が聞こえたと同時に、女騎士が駆るバラウがドレイク軍全体の上方にと位置をする。

 

「おいガラリア、あぶないぞ!!」

「そのダーナ・オシーとやら、あたしが落としてやる!!」

「ちぃ!!」

 

 忌々しげに呟くバーンを無視し、ガラリアはそのままバラウを高空にと位置させる。そのガラリア機を昼の光が明るく照らす。

 

 バゥ!!

 

「ギブン家から先制攻撃!!」

 

 自機を狙われたにも関わらず、そのドロからのフレイ・ボムを回避しつつに全軍へ警告の通信をするベッグは、まちがいなく名うての騎士の実力を見せつけている。

 

「みんな、いくぞ!!」

「了解!!」

 

 そのエコーの呼び声にホリィ、ネデルが返答する傍らで。

 

「地上人、準備はよろしいか!!」

「ああ、やってやるよ!!」

 

 三機のダンバイン、地上人専用機「ゲドバイン」の発展型から。

 

「ま、やるしかねぇか!!」

「どうすりゃいいんだよ……!!」

 

 マーベル・フローズン達に続き、新たにバイストン・ウェルに召喚された三人の地上人、彼らの声もエコー達へと届く。

 

「あれが、第二の地上人達か……」

「エコー、敵がみえたわよ!!」

「ホリィ、フレイ・ボムの準備を!!」

 

 戦闘態勢へと移行するドロ、プラットホームに立つエコーの目の先では、すでにバーン達の戦闘が始まっている様子だ。

 

「後列、注意!!」

 

 そのドレイク軍の前線をすり抜けた数機のダーナ・オシー、彼らが狙いをつけたのは。

 

「この、くそ!!」

「善悪の区別もつかない、この分からず屋!!」

「なんだと、お前は誰だ!?」

「私はダーナ・オシーのマーベル・フローズン!!」

 

 どうやら、三機のダンバインらしい。その内青色のダンバインが敵機ダーナ・オシーと接近戦を繰り広げてるのを確認したエコーは、ホリィ達に地上人の支援をするように要請する。

 

「遅いよ、ホリィ!!」

「フレイ・ボム加圧器の調子が悪いのよ!!」

「くそ!!」

 

 その報告を聞いたエコーは、プラットホームでフレキシブル・アームを動かすように「念」じ、その念が通じたのかドロ、クラゲの触手のようなフレイ・ボム発射器から。

 

 ザァ!!

 

 滝のような火焔が、そのダーナ・オシー隊を怯ませる。

 

「しまった!!」

「何、燃料を使いきっているんですか、エコーさん!?」

「す、すまん!!」

 

 その、あまりにも苛烈な火焔の渦は即座に消え去り、その後エコー機の出力が大幅に低下した。

 

 バッバア……!!

 

「バカめ!!」

 

 エコーのドロの惨状を見かねたガラリアが前線から舞い戻り、周囲で陣を整えるドロからの支援を受けつつに、そのダーナ・オシー隊の隊長機へとバルカン、実弾兵器による強襲を仕掛ける、が。

 

「うわぁー!!」

 

 二機のダーナ・オシーに取り囲まれ、緑色に塗装されたダンバインが、火を吹きながらイヌチャン・マウンテンの森林にと落下する。

 

「ちぃ、地上人め!!」

 

 その姿を見つめたガラリアが軽く眉をひそめ、舌打ちする音がエコー達にも聞こえた。

 

「エコー機、右だ!!」

「何!?」

 

 後続のリの国、お情けの援軍として一機だけ派遣してくれた空色のドロから、警告の声がエコー達にと響く、が。

 

 グゥ……

 

 オーラ力(ちから)が低下したエコーでは、ただでさえ鈍重なドロの回避行動は不可能だ。先の警告を与えてくれた老騎士の支援フレイ・ボムが飛んだが、その脇をすり抜け一機のゲドがエコー機へとせまる。

 

「く、くそ!!」

「フレキシブルが、エコー!!」

「解っているよ、ホリィ!!」

 

 だが、切り離されたフレキシブル・アームが跳ね、そのゲドの体勢を崩した隙に。

 

「はっ!!」

 

 ドロ隊の直掩機であるゲードラムとブラウーネが、そのゲドを手からのフレイ・ボムの連射で退かせてくれた。

 

「た、助かる!!」

「情けないぞ、ドロ!!」

 

 その試作機のフレイ・ボム発射器は連射の負荷により故障したようであったが、そのお陰でエコー達は助かった。

 

「こちら、バーン!!」

 

 いつのまにやら雲が辺りを覆い、薄闇となったマウンテン、その宙域にバーン機ドラムロからの無線、及び信号弾が宙にと飛ぶ。

 

「ギブン家の手勢は、撤退を開始した……」

「追撃しよう、バーン!!」

「だめだ、ガラリア」

「しかし、ここで敵を討っておかないと!!」

「こちらの損害もある、地上人が一人やられた様子でもあるしな」

「……」

「撤退だ」

 

 そのバーンの声、意見を聞き微かに身体中から力が抜けるエコー。

 

「ちょっと、エコー!!」

「エコーさん、オーラ力が!!」

 

 オーラ力、それが失われそうになったエコーのドロは、危うく高度が下がりそうになる。

 

「武勲を、上げられなかった……」

「そんなこともありますよ、エコーさん」

「うん……」

 

 雨がパラパラと降り注いできたイヌチャン・マウンテンの中、エコーの力がいきなり抜けたのは、何も戦いの恐怖から解放されただけではない。悔しさもあるのだ。

 

「初オーラマシンにしては、まあまあだな……」

 

 いつのまにか近付いてきたドラムロ、微かに破損したバーン機から掛けられた声と共に。

 

「少し、実戦は早かったかな……」

 

 そのドラムロを乗せたバラウ、騎士ベッグの声が苦々しげにエコーには聴こえた。

 

「すみません、ベッグ隊長」

「いや、気にするなエコー……」

「はい……」

 

 実戦で無様な戦いを見せてしまった、そのエコーの心境を代弁するかのように。

 

 ザァ、ア……

 

 夕闇が近付いてきたイヌチャン・マウンテンにと、雨が降り注いできた。

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