聖戦士ダンバイン ~コモンの聖戦士~   作:早起き三文

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第9話「ネデルの里帰り」

 

「レーテ」

「それがあなたの名前か?」

「そうだよ、何か?」

「いや……」

 

 最初、このガロウ・ランの尋問を行おうとしたのはエコーではあったが。

 

――ねえ、逃がしてくれない?――

――ゴクリ……――

 

 と、彼女が誘惑をし、それをネデルに見咎められた為に、彼ネデルが尋問係となった。

 

「ゲドを手に入れた経緯は?」

「仲間からのもらいもんさ」

「操縦は誰にならった?」

「自己流」

 

 別にガロウ・ランの情報なぞ得ても仕方がないとホリィ辺りは言っていたのだが、頓挫したエコー機ドロの回収隊がこの夜の林に着くまでには、まだ時間がかかる。

 

「質問はそれで終わり、ボウヤ?」

「僕は貴方と大して、歳は変わらないと思いますが?」

「フン……」

 

 それが為に、彼女を尋問でもしようとエコーが言い出したのだが、ベッグ隊長が見る限り。

 

「俺が、彼女の尋問を再開しましょうか?」

「ダメだ、不許可だ」

 

 どうにも、そのエコーには下心があるように見受けられた。

 

「あのガロウ・ラン、ラース・ワウに連れていくらしいってよ」

「へえ……」

 

 夕食を終えたエコーの僚機のクルー達も、特にすることがないので見張りを立てた上で、彼女を尋問する様子を実と見ている。

 

「回収隊、まだかしら……」

「無線が無事でよかったな、ホリィ」

「そうですわね、鼻の下伸ばしエコーさん」

「なんだよ、その言い方……」

 

 つまらないバカ話をして時を潰しているが、秋の夜は肌寒く、野営には不向き。ゆえに早く回収隊が来るようにと願っている彼らベッグ隊のメンバーであるが。

 

 ズゥ……

 

「お、クレーン・ドロだ」

 

 その願いは叶い、オーラマシンの回収用に利用されているクレーン・フレキシブル・アームを装備されたドロの、オーラ吸気音が聞こえてきた。

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

「父上、ただいま帰りました」

「うむ」

 

 ラース・ワウとギブン家の館を結ぶ街道のちょうど真ん中、そこからすこし外れた小山の中に「ネデル・スルタン」の実家、スルタン家の屋敷がある。

 

「ラース・ワウではよく働いているようだな」

「いや、そんな……」

「まあ、ともかく」

 

 そういいながら、ネデルの父は一つ咳き込んだ後に、彼ネデルへ風呂へ入るように勧めた。

 

「その前に、食事にしたいな……」

「おう、そうか……」

 

 どうやら、居間の食事の匂いに誘われたらしい、ネデルの腹の音が微かに鳴る。

 

「では、ささやかながら晩餐といこうか」

「はい」

 

 そのまま、彼らは廊下を歩き居間、この屋敷の主人使用人用の食事場へと向かう。

 

「父上、お体の様子は?」

 

 廊下を歩き、居間にたどり着いた彼ら、ネデルとその父はテーブルの上に並んでいる芳ばしい食事の匂いを鼻にと入れながら、軽い雑談をしている。

 

「ああ、あまり良いとは言えないな……」

「そうですか……」

 

 テーブルにつきながら、話を続けている彼らに、メイドが温かいスープを運んできてくれた。

 

「父上」

「なんだ?」

「ギブン家の噂、聞きましたか?」

「あたりまえだ……」

 

 ギブン家、このスルタン家と深いつながりがある名家の話題を出しながら、二人は運ばれてきたスープをすする。

 

「奥方が、ドレイクの手勢に殺されたらしいな」

「なぜ、ドレイク様はそのような事を……」

「解らないが、しかし……」

 

 ネデルの父はパンを口にしながら、何やら考え込んでいる様子。その様子を見つめながら、ネデルは肉料理へとその手を伸ばす。

 

「あの噂は、本当かもしれん」

「ドレイク様が、下克上を目論んでいるという噂……」

「その手始めの為に、古くからアの国の重鎮であるギブンを、攻撃した」

「そんな……」

 

 ネデルは料理を口に運ぶその手を止め、父の言葉にその言葉に実と耳を傾けている。

 

「父上、私は」

「言うな、ネデル」

 

 息子の言葉をその手で遮ったネデルの父、彼は咳き込みながらもその話続けた。

 

「ネデル」

「はい」

「お前に一か月の猶予を与える」

「は……?」

「ドレイクの元を辞せよ」

「そんな!!」

 

 ガタッ……!!

 

 椅子を蹴るように立ち上がったネデル。その行為についてお付きのメイド達がヒソヒソと小声で話をするなか、父は再びその手で息子を制する。

 

「私は、私なりに考えて……」

「わが家とギブンは、古くからの間柄だ」

「……」

「お前も、次期スルタン家当主としての自覚をもて」

 

 そう、厳しい口調で言い放ったネデルの父から、また一つ低い咳がこぼれ出た。

 

「すまないネデル、少し休む」

 

 体調が優れないのだろう、ネデルの父は息子の返事を待たずに、そのまま食事の場から立ち去っていく。

 

「僕は……」

 

 料理が冷めるのも無視、メイド達の疑惑の視線をも無視して、ネデルは呆けたようにその場に立ちすくむ。

 

「どうしたらいいんだ、エコーさんに……」

 

 そのネデルの独り言、それに答える声はこの場には存在していない。

 

「ホリィさん……」

 

 無論、その片想いの少女を呼ぶ声にもだ。

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