戦姫絶唱シンフォギア Evolution's Symphony   作:セグウェイノイズ

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鎧武外伝完全新作とかCSM戦極ドライバーとか図鑑更新とか
鎧武が一番好きなので未だにドッキリの可能性を疑ってます


EPISODE02「狂宴のナイト・アサルト」

 フィーネ。確かに彼女はそう叫んだ。

 直ちにフィーネ本人に確認を取ろうと試みる弦十郎だが、何度呼びかけても返答がない。

 平時であれば────平時でこんなことになるべくもないが────直接彼女の研究室に乗り込むところだが、今は有事。

 朔也に内閣直通の回線を開かせるよう指示を飛ばす。わずか一回のコールで、モニターの前に彼は現れた。

 

 

 

「斯波田事務次官!」

 

〈おう。厄ネタが暴れてんのァこっちばかりじゃなさそうだぜ〉

 

 

 

 蕎麦をすすりながら何事もないように話しかけてくる彼こそは斯波田賢仁(しばたまさひと)。口調こそ乱暴だが、その気質から弦十郎と馬の合う、二課の理解者の一人だ。

 それと同時に外務省の事務次官でもある。国内でアメリカ国籍であるマリア・カデンツァヴナ・イヴが宣戦布告をしたとなれば、彼が黙っていないのも自明の理だった。

 彼の言う"厄ネタ"────歌姫マリアの宣戦布告と見てまず間違いはない。しかしそれだけではない、と彼は付け加えていた。

 

 

 

〈少し前に遡るがな。米国の聖遺物研究機関でもトラブルがあったらしい。

 なんでも今日まで解析してきたデータの殆どがオシャカになったばかりか、保管していた聖遺物までもが行方不明って話だ〉

 

「……こちらの状況と連動していると?」

 

〈まァ蕎麦に例えンなら終わりって訳はあるめェ。二八でそう言うこったろ〉

 

 

 

 態度こそ飄々としているものの、長年諸外国との駆け引きに尽力してきただけのことはある。蕎麦をすすりながらも全く油断する素振りを見せない。

 そんな彼の推測だ。同じく決断において直感にも重きを置いている弦十郎は、それに異を唱えるはずもなかった。

 

 

 

〈ブラッドスタークの件もある。確かまだ確保はしちゃいなかったよな? ……おっと〉

 

 

 

 ルナアタック事件の後、未だ姿を見せないブラッドスターク。彼についても気を配る必要がある。そう言いたかったのだろう。

 それについて議論を始める前に、モニターの先の重要参考人、マリア・カデンツァヴナ・イヴが口を開いたためうやむやになってしまったが。

 

 

 

〈我ら武装組織フィーネは各国政府に対し要求する。そうだな……差し当たっては、国土の割譲を求めようか〉

 

 

 

 要求はたった一つ。

 しかしそれが問題だ。紡がれたのは、仮に24時間以内に要求が果たされない場合は各国の首都機能がノイズによって不全となるという言葉。

 事実、輩は明らかにノイズを制御している。説得力は十分だ。

 

 

 

〈ハッ、しゃらくせェな。アイドル大統領とでも呼べばいいのかい〉

 

「一両日中の国土割譲なんて、全く現実的じゃありませんよ」

 

 

 

 呆れたように呟く朔也だが、その頬には汗が伝っている。

 確かに、いくらその要求を実行できる能力があるからといっていきなり国土割譲などという大それた要求を吹っかけることなどあるだろうか。

 それによった生じる混乱こそが奴らの狙いなのか、あるいは。

 

 

 

「急ぎ、対応に当たります」

 

〈おう。頼んだぜ〉

 

 

 

 だが、今はそれについては後回しだ。まずはカメラの向こう、ステージ上にて武装したマリア・カデンツァヴナ・イヴと相対している翼をなんとかしなければならない。

 斯波田との通信を一時中断し、代わりにライブ会場にて避難誘導を行っている慎次に連絡を試みる。

 

 

 

〈人質とされた観客たちの避難は順調です〉

 

「分かった。後は……」

 

〈翼さんですね。それは、僕の方で何とかします〉

 

「頼む」

 

 

 

 慎次が「何とかする」と言ったのだ。ならば自分はこれ以上翼が戦うことについての「懸念事項」に気を揉む必要はない。通信を切り、自身の感情を落ち着けるため腕を組む。

 この状況、打開する一手が存在()ればよいのだが。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 突如世界を敵に回し、()()()()()()()()のシンフォギアを鎧った先方。

 訊きたいことは山ほどあるのだが、今翼が取るべき手段は一つしかない。念のため忍ばせておいたギアペンダントを握る。

 後はマリアに悟られないように上手く身を隠し、こちらもギアを鎧えば後はなんとでもなるはずだ。

 

 

 

「怖い子ね。この状況にあっても私に飛びかかれる機を窺っているなんて。

 でも逸らないの。オーディエンス達はノイズからの攻撃に耐えられると思って?」

 

「ッ……!」

 

 

 

 目敏くこちらの動きを察知してきたマリア。明らかにその視線は右手の内にあるギアペンダントに向けられている。

 つまり、翼が二課所属の装者であるということは筒抜けであるということ。

 マイクを使わず、観客たちにそれを知らせるような素振りを見せないのは温情のつもりなのか。

 

 

 

「それに、ライブの模様は世界中に中継されているわよ。日本政府はシンフォギアについての情報を公開しても、その装者については秘匿したままじゃなかったかしら?

 ……ねぇ、風鳴翼さん?」

 

 

 

 マリアはこちらを脅すように話しかけてくる。何もかも掌の上ということか。

 だが、向こうの読み違いがあるとすれば、それはきっと翼自身。あの程度の脅しで屈する防人が一体世界のどこにいようか。

 本来の意味での防人は日本にしかいないのは知っているが、精神性の話だ。

 

 

 

「甘く見ないで貰いたい。そうとでも言えば、私が鞘走るのを躊躇うとでも思ったかッ!」

 

「貴女のそう言う所、嫌いじゃないわよ。貴女のように誰もが誰かを守護る為に戦えたら……。

 世界は、もう少しまともだったかもしれないわ」

 

 

 

 マイクスタンドを再び突きつけ、あくまでも抗戦の意思を見せる。少しは動揺するか、それともまだ策があるのか……それを見極めるためだ。

 しかし、当のマリアからの反応は些か翼の予測とは異なるものだった。

 ほんの一瞬、彼女の纏う圧倒的なまでのカリスマが薄れた。国土割譲を求める国際テロリストではなく、ただ平和な村に暮らしていた娘のような。

 マリア・カデンツァヴナ・イヴ。彼女は一体何者なのか。

 

 ……一瞬でも雑念を入れてしまった自らの思考に喝を入れる。

 理由はともあれ、今の彼女は観客たちにノイズをけしかけたテロリスト。響であればまずは話し合いを試みるだろうが、今は一刻も早く観客の避難、そしてノイズの殲滅、マリアの拘束を行わなければならない。

 話はそれからでも遅くはないはず。

 

 

 

「────いや」

 

 

 

 そう。

 それらしい御託を並べてみたはいいものの、実のところ翼は単純に憤っているだけなのだ。

 というのも、

 

 

 

「何を意図しての騙りか知らぬが……」

 

「私が騙りだと?」

 

「そうだッ! ガングニールのシンフォギアは、貴様のような輩に纏えるモノではないと覚えろッ!」

 

 

 

 第三号聖遺物、ガングニール。何物をも貫き通す無双の一振り。

 そのシンフォギアを扱う資格があるのは、自らの片翼である天羽奏と、その力を受け継ぎ確固たる戦う理由を持つ立花響だけだ。

 もちろん観客たちの救助は最優先の事項だが、翼にとってはそれと同じくらい重要なことでもある。人類守護の防人と言っておきながら私情を挟む自らに辟易するも、こればかりはどうしようもない。

 

 一刻も早く観客を救助しマリアを拘束、ガングニールのギアペンダントを回収する。それが今翼ができる任務だ。

 ペンダントを握り締め、その身にシンフォギアを纏わせる聖句、聖詠を唱えようとして翼は、

 

 

 

『待ってください翼さん! 今動けば、風鳴翼がシンフォギア装者だと全世界に知られてしまいますッ!』

 

「緒川さんッ!?」

 

 

 

 寸前で、耳元に取り付けていたスタッフ連絡用のイヤホンから聞き慣れた声が割って入った。

 慎次だ。恐らく避難誘導中に回収したのだろう。

 今歌うのは止せ、と慎次は言う。確かに正論だ。だが、今最も手っ取り早いのはマリアを拘束することなのではないか。そう異を挟もうとするも、

 

 

 

「ですが、この状況で……」

 

『風鳴翼の歌は、戦いの歌ばかりではありません!

 貴女の歌は、傷ついた人を癒し、勇気づけるための歌でもあるのです』

 

 

 

 ────それを言われてしまえば、返す言葉もない。

 

 

 

「確かめたらどう? 私の言っている事が騙りなのかどうか」

 

 

 

 なおもマリアはこちらに向けて鯉口を鳴らしている。翼に歌わせる気なのだろう。

 幾度目かの膠着状態が続く。またもや先にそれを破ったのはマリアの方だった。

 

 

 

「ならば……会場のオーディエンス諸君を開放する!

 ノイズに手出しはさせない、速やかにお引き取り願おうかッ!」

 

「何が狙いだ?」

 

 

 

 彼女の狙いがまるで分からない。

 わざわざ人質というそちらの有利性を投げ捨ててまで得られるものがあるとでもいうのか。

 思わず理由を尋ねてしまった翼。

 

 

 

「……このステージの主役は私。人質なんて、私の趣味じゃないわ」

 

 

 

 返ってきた返答。確かに「何が狙いか」という翼の疑問への回答であった。しかし、翼にはそれが自分に向けられて放たれた言葉のようには感じられない。

 

 

 

「……ありがとう」 

 

 

 

 何か呟いた。だが翼はまだ読唇術を会得し切れていない。

 続け重要な情報が得られることを期待して耳をすますも、それは期待できず。

 首元に、マイクスタンドが突きつけられた。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「よかった、じゃあ観客に被害は出てないんですね」

 

〈会場で検知されたアウフヴァッヘン波形は現在調査中。でも、全くのフェイクであるとは思えない〉

 

 

 

 ライブ会場へ急行中のヘリコプター。

 つい今しがたマリアがガングニールを纏いノイズを呼び出したという報を受け、クリスたちにも今までの情報を共有しているところだ。

  報告によると、マリアはペンダントを用いてギアを着装したらしい。つまり、2年前の事件で響と同じように融合症例となった訳ではないようだ。

 

 

 

「わたしの胸のガングニールが無くなった訳じゃなさそうです」 

 

〈もう一振りの撃槍、か……〉

 

「あと10分ほどで到着よ」

 

 

 

 横で自らの胸に手を当て、一体化したガングニールを確かめる響。

 それも気になるが、クリスは別のことをずっと考えている。

 輩は"フィーネ"と名乗った。つまり少なくともフィーネのことを知っている、もしかすればその組織に何らかの形でフィーネが関連している可能性は否定できない。

 恐らく弦十郎たちもそれには気付いている。ただどれだけ呼びかけても返事がないので、今は後回しにしている。そんなところだろう。

 とにかく今できることはライブ会場に急行し、翼と共にマリアを拘束すること。それまでクリスたちには到着を待つしか────。

 

 

 

「……伏せろッ!!」

 

 

 

 ────ぱりん、と。

 ヘリの窓から音がした。聞こえたのが幸運であるほど小さな音で、それが何によるものなのかクリスは半ば本能的に悟ってしまった。

 即座に響とあおいの頭を掴み、強引に伏せさせる。

 響は何が起きたのか分かっていない様子だったが、現場慣れしているのか、あおいはすぐに理解できたようだ。

 

 

 

「襲撃ッ!? こんな上空でッ!?」

 

 

 

 頭の上を何かが通り過ぎる。その直線上にあったクリスの髪が数本千切れるも、そんなことを気にしていられるほど呑気な状況ではない。

 左右の窓には、直径数センチ程の風穴が空いていた。聞くところによるとこのヘリに使われているガラスは全て防弾加工がされている。生半可な武装では傷一つつけることはできないという。

 だというのに、だ。

 そもそも空中を移動するヘリへの正確な狙撃、今思い当たる狙撃手など一人しかいない。

 

 突然、響が肩を叩いてきた。

 顔を見ると、あんぐりと口を開け目を見開きクリスを見ている。いくら狙撃を受けたといえ震えすぎな気がする。最近の響であれば身を伏せながら戦術マニュアル(アクション映画)通り索敵を始めてもおかしくないものなのだが。

 ……数秒もしない内に、響がクリスのことを見ていないことに気づく。もっと向こうを見ている。ならばあおいを見ているのか? いや違う。

 「もっと向こう」、窓の先。つまり。

 

 

 

「わわわわ……クリスちゃん、よこよこよこ!」

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()

 何せ、振り返ろうとした途端、横の扉が()()()()()()()のだから。

 扉の代わりにあったのは人型。その血に塗れた赤だけは闇に潰れることはない。

 人型は左手でヘリの縁を掴み、銃剣で武装した右手をひらひらと振っている。

 上空のヘリを狙撃し、片手で鉄扉を引き剥がせる人物。そんなことができるのは一人しかいない。

 

 

 

『よっ! 随分久しぶりだな、シンフォギア装者諸君』

 

「ブラッドスターク……ッ! こんな上空で……」

 

 

 

 ブラッドスターク。かつてルナアタック事件の折、幾度となく戦った正体不明の赤き刺客。

 少し前の────フィーネが二課へ加入した────ブリーフィングにて、フィーネは彼が米国と繋がっている可能性を示唆していた。先の米国の研究機関が襲撃を受けたという報告が正しいなら、此度の騒動も何かしらの形で米国が関わっているのかもしれない。

 

 

 

『わざわざ当たらないように狙って撃ったってのに、あんまり動くモンだから焦ったぜ。次からは気をつけてくれよ?』

 

 

 

 どの口が言っているのか。

 

 

 

「出会い頭に銃撃たぁ随分な挨拶じゃねえか、スタークッ!」

 

『おいおい。何も戦いにきた訳じゃなし、少しは落ち着けよ』

 

「だったらどうして銃持ってるんですかッ!?」

 

 

 

 ペンダントを握り締め、いつでもギアを纏えるよう準備を整える。あおいもいつの間にか拳銃を抜き、銃口をスタークへ合わせていた。

 

 

 

『細かい事は気にするなって。お前達をライブ会場に寄越すなってクライアントがお冠でなァ。

 30分くらい妨害しろってお達しだ』

 

「……参ったわね。戦おうにもヘリじゃ足場が悪すぎる。それに、こんな閉鎖空間じゃ碌に戦えない」

 

 

 

 あおいの言う通りだ。精密機械が空を飛んでいると言っても過言ではないこのヘリで戦闘は避けたい。

 一撃の破壊力なら響が、広域殲滅力ならクリスの領分だ。しかしそんな二人がこのような場で戦うなどできるわけがない。

 装者屈指の技量を持つ翼であれば機動力を削がれようとも戦えるのかもしれないが。

 

 とにかく、「()()()()」戦えない。

 ────実のところ、この案は最初から思いついてはいた。奴が食いつく可能性が高いとは言い切れないため口にはしていない。

 だが今は一刻を争う。迷っている暇などないのだ。

 

 

 

「……あいつをヘリから引き離しゃあいいんだな?」

 

「クリスちゃん?」

 

「後で追いつく。それまであの人を頼んだからなッ!」

 

 

 

 言い残し、クリスはスタークを────()()()()()()

 それも両足で。いわゆるドロップキックの体勢になる。面食らったスタークをそのまま蹴り飛ばし外へ追い出す。

 当然、空中で勢いが殺がれる訳もなく、彼を追うようにクリスもヘリから離れていく。

 つまり、自由落下。

 

 

 

「うえええッ!? クリスちゃんッ!?」

 

 

 

 響の叫び声が遠ざかっていく。

 しばらくの間響と翼にライブ会場を任せることになるが、こちらもすぐに終わらせれば済む話だ。

 ただ問題は、スタークが乗ってくるか、その一点だけなのだが。

 

 

 

「お前の相手はあたしだッ!」

 

『いいねェ、これだから人間は面白い!

 いいだろう! 楽しませてくれた礼に、ちょっとばかり遊んでやるよッ!」

 

「雁首並べな! 風穴開けてやらぁッ!」

 

 

 

 どうやら釣れたようだ。

 なら、こちらも出し惜しみは無しで往く。クリスは今度こそペンダントを握り締め────。

 

 

 

「Killiter Ichaival tron」

 

 

 

 ギアの着装と同時に地面に降り立つ。

 周囲には何本もの樹木が立ち並んでいる。少し開けた所に着地できたが、どうやら相当深い森林を決闘の場に選んでしまったらしい。

 それでも負けてやる道理はない。最後に奴と戦った頃と比べても、クリスも多少は強くなっているはずだ。

 

 

 

〈クリスくんッ!〉

 

「オッサン?」

 

〈くれぐれも無茶はしてくれるなよッ!〉

 

「……ああ、分かってるよッ!」

 

 

 

 前を向く。スタークは銃剣をポンポンと叩きながらこちらの会話が終わるのを待っていたらしい。随分と舐められたものだ。

 こちらも遠慮なくいかせてもらう。

 

 

 

「挨拶無用のガトリングッ!!」

 

 

 

────BILLION MAIDEN────

 

 

 

 アームドギアを変形させ、砲門から無数の銃弾を放つ。

 ノイズ相手であれば即座にあの世(ゴミ箱)へ直行せしめるその10億発の弾丸は、その尽くが相殺された。

 

 

 

『俺が何の準備もしてない、なんて流石に思っちゃいなかっただろ?』

 

「チッ……!」

 

 

 

 暗がりではっきりとは視認できないが、見せびらかすように振っている銃剣のマガジン部分に何かが────小さなボトルのようなものが取り付けられているのに気がついた。

 確か、名前はフルボトル。やはりアレの力であの武器の能力が切り替わるらしい。

 

 続き薬莢を撒き散らしながらBILLION MAIDENを放つクリス。

 

 

 

「One、Two! Threeッ! 目障りだッ!!」

 

 

 

 それでも銃弾は当たらない。木の後ろを滑るように移動し、狙いが定まらない。

 あまり思い出していい気分でもないのだが、以前響と戦った際も同じような立地だった。

 当時はまだ夕暮れ時ということもあり的の姿をしっかりと目視できていたのだ。しかし今は夜。一寸先は闇という状況で、月光とマズルフラッシュのみが光源。

 的に弾を当てにくいことこの上ない。

 

 

 

『狙いがブレてるぞクリス? そんなに暗いなら照らしてやろうかッ!?』

 

 

 

 いきなり木の陰から飛び出してきた。だがこれは好機。わざわざ飛び出してきたスタークを撃ち落とすべくクリスはアームドギアを構え、

 

 

 

【スチームアタック! フルボトル! ライト!】

 

「んだとッ!?」

 

 

 

 とっさに目を瞑り、耳を塞ぐ。閃光弾だ。

 あと数瞬防御が遅れていれば、まず間違いなく視力と聴力が潰されていた。忌々しいが、バルベルデでの経験が役に立ったということだろう。

 

 だが、奴はもう一枚上手だった。

 腹部に鈍痛。

 近くの木に背中からぶつかり、咳き込む。

 立ち上がらないうちに、クリスを照らしていた月明かりが暗くなる。

 空を見上げる。

 影の正体はスタークだった。いや、正確にはスタークの放った銃撃。

 

 

 

「……おわあああッ!?」

 

 

 

 雨のように降りそそぐ弾丸がクリスの眉間、全身を撃ち抜き蜂の巣にする────直前、地面を転がり無理矢理その場を離脱する。

 

 

 

『やるじゃねェか。今のは何発か食らわせられると思ったんだが』

 

 

 

 銃剣をくるくると回しながらクリスが立ち上がるのを待つスターク。

 この数十秒間の戦いで、クリスは一発も奴に銃弾を叩きこめられていない。それどころか一撃食らってしまった。

 攻撃が多彩すぎるのだ。弾丸の属性を変化させるフルボトル。

 二課も一つ回収はしたものの、未だその構成成分を分析できないでいる。

 

 

 

「せめて一発でも弾をぶち込めりゃあ、また違うってのに……」

 

 

 

 攻撃の多彩さに加え、スターク自身の身体能力も桁外れだ。

 ここを突破する手段が今の内に見つかればいいのだが……と、考えあぐねるクリスの耳に通信が入ってきた。

 弦十郎が策でも思いついたのかもしれない。

 

 

 

「どうしたオッサン? 何か対策でも……」

 

〈クリス〉

 

「…………」

 

 

 

 話しかけてきたのは弦十郎ではなかった。クリスの持つ苦々しい記憶、その半分を担う女性。

 こうして声を聞くのは数ヶ月ぶりだが、脳裏にこびり付いたその声だけは決して忘れることはない。

 

 

 

〈今から指示を出す。貴女はその通りに動いてちょうだい〉

 

「フィーネッ!!」

 

〈了子くんッ!?〉〈了子さんッ!?〉

 

 

 

 ここでのフィーネの登場は司令室にとっても完全に予想外だったようで、そちらでもそれなりに騒ぎが起きたそうだ。

 だが今のクリスにはそんな喧騒など耳に入ってこない。

 

 

 

「なんでお前が……」

 

〈私の言うことを聞くのは貴女の得意な……いえ、一度も聞いてくれなかったわね。

 苦手分野だったのかしら。そうだとすれば無理に聞く必要はないわ〉

 

 

 

 相変わらず人の神経を逆撫でするのが得意な女だ。今の言葉でクリスの頭は煮え切った。

 だが、それも事実。ネフシュタンを鎧い二課と敵対していた頃、クリスはただ必死だった。

 結果、一度も命令を完遂できなかった上、利用されるだけされて捨てられた。彼女が自分を見ていないということくらい、薄々勘付いていたというのに。

 

 だから、今は止しておく。

 いずれ決着をつけなければいけない相手、それでも今はその時ではない。

 ────そも、自分にそんな資格があるのかすら確信がないのだから。

 

 

 

「……ハッ。言ってくれるッ! 仕方ねえ、あたしは何をすればいい?」

 

〈いい子ねクリス〉

 

 

 

 その思考を表に見せないことが、精一杯の抵抗だった。威勢の良い態度を取り繕う。

 あの金色の瞳が眼前にあれば、また話は変わってくるかもしれないが。

 そんな逡巡を知ってか知らずか、フィーネは無感情に状況を分析し始めた。

 

 

 

〈……シンフォギア・システムがブラッドスタークに劣っている点は二つ。

 まず、奴は遠近からの攻撃に対応できる武装を備えている。シンフォギアは核となる聖遺物がある以上、アームドギアもある程度はその聖遺物の概念に縛られる〉

 

 

 

 天羽々斬ならば刀剣、イチイバルなら弓────を拡大解釈した銃火器────のように、アームドギアは様々な形態へと、時には質量法則すら無視して変化できる。

 しかし天羽々斬はどうあってもイチイバルの弓にはならないし、逆もまた然り。

 対してブラッドスタークはどうか。攻撃の威力こそアームドギアの足元にも及ばないものの、遠近両方に対応できる武器を所持している。

 

 

 

〈そして二つ。いくらシンフォギアを着装し身体能力を向上させたとしても、そもそものスペックが桁違い。肉弾戦に持ち込めばまず確実に敗北する〉

 

 

 

 アームドギアに加え、本人のポテンシャルが問題だとフィーネは語る。

 近距離の破壊力では随一である響の一撃を受ければ、スタークは簡単に沈むだろう。最もそれは()()()()の話。

 要は「当たらなければどうということはない」という奴だ。

 

 

 

〈……そして、シンフォギア装者が奴に勝っている点。ない訳ではない〉

 

「そいつを早く言いやがれってんだッ!」

 

 

 

 スタークの方を睨みつけながら声を荒げる。

今ここで攻めあぐねている間にもいつ追撃が飛んでくるともしれない、そう頭をよぎるが、それは杞憂に終わった。視界にスタークが入った瞬間、愕然とする。

 攻撃の準備でもしているのかと思ったが、現実はどうだ。

 屈伸、伸脚、アキレス腱。よりにもよって奴は、敵の目の前、それも作戦を打ち合わせているというタイミングでストレッチを始めていた。

 

 

 

「……お前」

 

『まだ作戦会議中だろ? 構わず続けてくれよ。作戦を聞いちまうのもつまらねえしな』

 

〈確かにブラッドスタークは無数の戦法を持つ。だが、それを行う際には必ずほんの一刹那、しかして絶対的な隙が存在する〉

 

 

 

 前方にはその余裕からか、ご丁寧にもこちらの会話が終わるのを待つブラッドスタークが。

 両耳からはそれを全く意に介さず引き続き分析を続けるフィーネの声が。

 的確にクリスの神経を逆撫でしてくる二人。正直狙ってやってるだろお前らと叫びたくなるのをぐっとこらえ、平常を装いフィーネの言葉に続く。

 

 

 

「……ボトルを入れる隙か」

 

 

 

 確かに盲点だった。

 フルボトルの力を用いて銃弾の属性を変化させるスターク。今回の戦闘でも既に二度攻撃を放っていた。

 幸か不幸か、スタークはこちらの話を聞かないようにしているらしい。なら少しくらい落ち着いて頭を回しても構わないだろう。

 

 これまでの戦闘を思い出すと、スタークが武器にボトルを装填するタイミングはこちらに大きな隙が生まれた際、またはこちらの攻撃を避けた際に限られている。

 ボトルの装填という絶対的な隙を奴は悟られないように立ち回っていたのだ。

 ならばそのタイミングを見逃さず一気に畳み掛ければいい────それがフィーネの策。

 

 今まで隙を見せなかった相手の隙を突け、となんでもないように言ってくるフィーネ。随分と無茶なオーダーだ。

 

 

 

〈1秒にも満たないほんの僅かな時間。だがシンフォギアのアームドギアであれば、その壁を打ち破れる〉

 

〈でも、そんなに上手くいくものですか?〉

 

〈もちろんこれはその場凌ぎの策に過ぎない。二度目は通りが悪くなる上に、仮に奴が今以上の動きを見せたとすればこちらの敗北は必至。

 どうするかは貴女の自由よ、クリス〉

 

 

 

 本当に腹が立つ。

 未だクリスを操れるつもりでいるだろうフィーネに。

 そして。

 あの日、割り切ったはずなのに。信頼しないと心に決めたはずなのに。

 心のほんの片端で、まだ奴から離れたくないと啼くクリス自身にも。

 

 フィーネの策に伸るか反るか。心は決まった。

 ゆっくりと、力強く地面を踏みしめる。

 その様子を見て会議が終わったと捉えたのか、スタークはストレッチをやめた。

 

 

 

『ん、終わったのか?』

 

「ああ。わざわざ待っててくれたお陰でなッ!」 

 

 

 

────MEGA DETH PARTY────

 

 

 

 即座にミサイルを発射する。作戦、開始だ。

 

 

 

『いきなりブッ放すつもりかよ!』

 

「撃鉄に込めた思い、あったけえ絆の為」

 

 

 

 絆という我ながらガラではない台詞を口ずさむ。だが、嫌悪感などどこにあろうか。

 着弾。爆炎がスタークのいた地面を抉るも、この程度で奴が倒れるはずがないのはよく理解っている。

 故にスタークがどう動くかも想定済みだ。

 

 爆煙を突っ切って何かが飛び出してくる。スタークで間違いない。

 地面を滑走しながら攻撃範囲から離脱するスターク。相変わらずの機動力だ。()()()()()()()()()

 

 

 

『何だとォ!?』

 

 

 

 スタークが停止し、銃口をこちらに向けようとしたその刹那。

 ()()()()()()()()()()()ミサイルが、今まさに着弾しようとする最中だった。

 続き、爆発。

 またもや爆煙を突っ切りながらスタークが飛び出してくる。何度やっても結果は同じだ。

 爆発、離脱、爆発、離脱。

 そんな応酬が幾度となく続き、やがてスタークが違う行動を始めた。ならば、ここが勝負所。

 

 

 

「────イ・イ・子・はッ! ネンネしていなァッ!!」

 

 

 

────QUEEN'S INFERNO────

 

 

 

 スタークがボトルを装填するより前にアームドギアは変形を終えていた。

 クロスボウに番えられた光矢を放つ。吸い込まれるように真紅の光矢はスタークの左手に直撃し、見事ボトルを手から弾くことに成功する。

 スタークの手から離れ宙に打ち上がるフルボトル。この機を逃すまいと、弾幕の密度をさらに上げる。

 

 

 

「さあ、スーパー懺悔タイムッ! 地獄の底で閻魔様に土下座してこォいッ!!」

 

 

 

 命中した敵の一切を地獄へと直葬する無数の光矢、《QUEEN'S INFERNO》。

 普段であればスタークはその場から離脱しカウンターを行ってくるのだろう。だが今の奴はそれができない。

 

 これこそがフィーネの策から着想を得た、クリスの策。フィーネはフルボトルを装填する隙を狙えと指示してきたが、そこから先はクリスに丸投げだった。

 だからクリスは自身の攻撃が避けられるのを防ぐため、()()()()()()()()()()()()()()。ミサイルの着弾位置を調整し、スタークが狙った場所に立つように仕向けたのだ。

 そして今奴のいる場所の周囲。事前にM()E()G()A() ()D()E()T()H() ()P()A()R()T()Y()()()()()()()()。これで奴に避けるという選択肢はなくなる。煙幕を使って逃げられるよりも前に仕留められるはず。

 

 

 

『流石に()()()()()押し切られるかッ!』

 

 

 

 迎撃しか選択肢のなくなったスターク。流石と言うべきか、即座にスチームブレードを呼び出し的確にQUEEN'S INFERNOを叩き落としている。

 これは想定外ではあった。だがそれも時間の問題だ。目に見えて理解るほど、被弾の頻度が増していくのが見て取れる。そして、四方から迫るミサイルが着弾、爆発。

 

 爆煙がこちらにまで押し寄せてくる。攻撃の威力を高めすぎたからかもしれない。

 お陰で前がよく見えない────。

 

 

 

「逃がすかァッ!」

 

 

 

 気づいたときには、クリスは地面を蹴っていた。

 爆煙の到達予測地点くらい計算できる。伊達にクリスも射撃を得意としている訳ではない。

 ここまで煙が寄ってくるのは明らかにおかしい。つまり、ブラッドスタークがまた一枚噛んでいるに違いないということだ。地面を撃つでもしたのだろう。

 このままだとスタークに逃げられてしまう。

 これは明らかにこちらを誘う罠。とはいえ逃がすわけにもいかない。あえて罠に乗った方が万倍マシだ。

 

 クリスはもう後悔しないと決めている。今の自分には守護るべき人々、帰るべき場所がはっきり見えているから。

 彼らのためにクリスは、

 

 

 

「もう……逃げなァァァァいッ!!」

 

 

 

 一気呵成に、爆煙の中心へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 マリアの振るうマイクスタンドを紙一重のところで避ける翼。いくら聖遺物の力で強化された身体能力だとしても、なんの仕掛けもない棒ならいくらでも避けようはある。

 奴の得物がマイクスタンドだけであれば、の話ではあるが。

 

 

 

「観客は皆退去した。もう被害者が出る事もない」

 

 

 

 問題はマリアがギアを着装すると同時に出現した黒いマントにある。

 当初は飾り以外の使い道などないと高を括っていたのだが、あれは正しく「武装」だった。

 マリアの意思に応じて機動する、まさに第三の腕といっても差し支えないほどの精密さ。

 時に身を隠す障壁となり、時に敵を刺し貫く槍と化す。実際それで翼のマイクスタンドは両断された。

 

 今も無手ながら辛うじて攻撃を捌き続けているものの、それも時間の問題だ。マリアが未だ見せていないアームドギアを開帳すればすぐに勝負はついてしまうだろう。

 

 

 

「それでも私と戦う事が出来ないのであれば……それは貴女の保身のため」

 

「ッ……!」

 

「貴女は、その程度の覚悟しか出来ていないのかしらッ!?」

 

 

 

 会場中のカメラというカメラがこちらにレンズを向けている。

 とにかく、シンフォギアを纏う瞬間を映されなければ良いのだ。つまりステージ裏に移動すればやり用はある。

 だから翼は、先程から攻撃を捌きながらゆっくりと後退している。マリアに勘付かれないよう、ゆっくりと。

 

 チャンスは一度、勝負は一瞬。

 焦らず、じっくりとその期を待ち続け。

 ようやくその時が訪れた。

 

 

 

「ッ、衣装をッ……!?」

 

 

 

 デザイナーには申し訳ないが、ライブ衣装の一部を引きちぎる。それを翻すと、マリアからは衣装により翼の姿が見えなくなった。

 当然、マントの形状を槍状にし阻害物を穿つマリア。そしてその貌が一瞬、困惑に染まる。

 翼の狙いはそこにあった。

 

 転がるようにステージ裏に飛び込む翼。ここまでくれば、後は歌うだけ。そう確信し、ギアペンダントを取り出して口を開き────。

 

 

 

「貴女はまだ、ステージから下りる事は許されない」

 

「────ッ!?」

 

 

 

 瞬間、大きく飛び上がる。再びステージ上へ躍り出てしまった形になるが、あのままでは死んでいた。

 

 聖詠を紡ごうとしたその時、翼の脳裏に濃密なイメージが湧いた。苦悶の声を上げながら地に伏せっている自身の姿、平時と異なる点はただ一つ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 着地までの間に、ステージ裏に刺さった槍を確認する。いや、あれは槍ではない。

 マイクスタンドだ。それを槍だと思わせるほど、その攻撃は的確だった。

 

 

 

「言ったでしょう? このステージの主役は私だと」

 

 

 

 こちらは落下中、あちらは十全。体勢的には明らかにマリアの方に分があるというのに、こちらを目で追う以外は何もしない。

 真意が読み取れない相手だが、何もしてこないのなら勝手に動かせてもらうまで。着地と同時に地面を転がり、響たちが駆けつけるまで時間を稼ごうと試みる翼。

 

 だがここで、さらなる不幸が翼に襲いかかった。

 

 

 

「私も似たような衣装を着ていた。なら、ヒールがそれほどまでに激しい動きは想定していない事くらい予想がつく」

 

 

 

 着地の瞬間、バランスが崩れる。

 毒でも盛られたか、そう過ぎるもすぐにそれを否定する。()()()()()()()のだ。

 この数分間の攻防で、翼の踏み込みは戦闘用のそれに移行していた。いくら強度が高いと言えどもそう何度も耐えられる負担ではなかったのだろう。

 

 当然、その隙をマリアが見逃すはずもなく。

 強い衝撃と共に身体がくの字に折れ曲がり、再び翼の身体は宙を舞った。最も今回の着地先は観客席────ノイズの群れの真っ只中であるが。

 

 地上に溢れかえるノイズの姿は地獄変を思わせる。今から翼はこの中に堕とされる訳だが、憂いはない。

 それどころか、いっそ清々しい気分だ。

 

 

 

「……成程、確かにお前の言う通りだ。私が戦わない理由は保身の為。そう言われては返す刀も見当たらない」

 

「…………」

 

「ここからは私も全の力を以って征かせて貰う。故に────」

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 ノイズの群れに落ちていく風鳴翼、というショッキングな映像は、会場に残されたカメラを通して全世界に中継されていた。

 当然視聴者の中には響たち二課も含まれている。あとほんの数秒で翼は塵と化してしまう……そう多くの者は思うだろう。

 しかし抵抗する様子のない彼女の姿から、ここで“歌う"つもりであることは明らかだ。シンフォギアの着装、それ即ち、

 

 

 

「翼さんは、歌を捨てるつもりでッ……!」

 

 

 

 一般には秘匿されている「風鳴翼はシンフォギア装者である」という情報。それが公になれば、まず翼の自由は拘束されるらしい。アーティスト活動など以ての外、とも聞く。

 翼は歌うのが好きだ。亡き片翼の意思を継ぎ今も活動を行っている。それができなくなる。そこまでの覚悟で、彼女は戦場の歌を歌うのだ。

 

 画面越しで表情は計り知れないが、その口が開かれているのは判別できた。思わず目を瞑るのも数秒、翼の覚悟を見届けなければならないと目を開け────。

 

 

 

「エェーッ!? なんで消えちゃうの!?」

 

 

 

 暗い画面に映っていた、茫然とした表情の響と目が合った。

 思わずバンバンとモニターを叩く。反応しないのでモニターを壊す勢いで殴ろうとしたその刹那、妙な顔をするあおいに気がついた。

 

 

 

「あおいさんどうしたんです?」

 

「現場からの中継が遮断された……?」

 

〈ッ、そうか! って事は……!〉

 

 

 

 通信機越しから朔也の大声と、満足げに弦十郎が鼻を鳴らす音が聞こえてくる。

 

 

 

「えっ? ……えっ?」

 

 

 

 どうやら事を理解できていないのは響一人のようだ。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

(決別だ……歌女であった私に)

 

 

 

 歌女であった今までの自分に別れを告げ、叫ぶ。

 

 

 

 

 

「────聴くがいい、防人の歌をッ!!」

 

 




次回「戦場に竜巻くスパーブソング」
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