戦姫絶唱シンフォギア Evolution's Symphony 作:セグウェイノイズ
時間がかかったわりに前半以外本編と同じ
(ムーンサルト要素は)ないです。
来週からゼロワンが始まりますね。
個人的に大森プロデューサーは話は面白いけど挿入歌がクソザコ音量なイメージです
『やがて英雄となる者! とでも! 言っておきましょうッ!!』
「え、英雄?」
突如現れた黒き刺客。
コウモリ男────ナイトローグ。スタークよりもエコーが強く、その上低くくぐもり、聞き取りづらい声でありながら、突如ハイテンションで「やがて英雄となる者」と言い出したので面食らった。
弦十郎はそれに対して冷静な態度を崩さず、相手の出方を見ている。
『先ほどの返答に応えましょうか。確かに私はブラッドスタークの仲間……協力者です』
「なるほど。なら、捕らえん理由はないな」
『ハッ! 生身の人間がトランスチームシステム相手に何が出来るっていうんだッ!?』
数秒前までは丁寧語で話し物腰柔らかな態度で向かい合っていたローグ。弦十郎の言葉を受け、急に豹変した。
仮面がなければ道路に唾でも吐き捨てていただろう仕草も忘れない。
響からしてみれば、数十体のノイズを容易く殲滅させたスタークの仲間であるローグが言っていることは正しく思える。
それに弦十郎は生身の人間、対してローグはスーツと鎧を身に纏っている。両の拳を握り身構えている彼だが、スタークと同じ銃と短剣を両手に握っているローグと戦えるのだろうか。
突然豹変し大声で怒鳴り散らしたローグに身をすくめてしまった響だが、弦十郎の呼吸は乱れなかった。
「それがお前の本性か。だが、一つ勘違いをしているんじゃあないか?」
『勘違いィ?』
「そうだ。何もお前の相手が俺だけという事はない」
『一体全体……』
弦十郎の言っている意味がよく分かっていない様子のローグ。響もまだ分かっていない。
一瞬考え込むような仕草を見せたローグが生んだ隙を見逃さず、すばやく弦十郎の後ろでへたり込んでいた響に離れるよう指示。言われるがままにコンクリートがめくれていない所にまで走り出した。
未だ隙を見せているローグ。
思えば翼は戦闘中や先ほどのやりとりの際にこのような隙を見せることはなかった。
なにか違和感がある。しかし、その正体を悟る前に、
『ヒィッ!?』
ローグを襲ったのは水道管から雨のように噴き出る水──ではない、雨のように降り注ぐ光の剣だ。
天がこぼした涙の如き、幾千もの剣《千ノ落涙》が彼の周囲一帯に突き刺さっていく。
間一髪、光の剣がその鎧を串刺しにする直前。ローグは悲鳴と共に全速力で攻撃範囲の外にまで転がり出ていた。
「今の私は気が立っている。ただで済むとは思わない事ねッ!」
ローグのスチームブレイクにより吹き飛ばされた翼が復帰した。
恐らく光弾が直撃する直前、不意打ちに気付いた翼は脚部のブレードで防御の体勢を取っていたのだろう。弦十郎が拳一発で天ノ逆鱗を防げたのはそれにより推進力がほとんどなかったからに違いない。
そう、その時点までは思っていた。
狼狽える彼の隙を見逃さず、一気にローグとの距離を詰める。
脚部ブレードを展開し体を上下反転。逆立ちのような体制になったと同時に両脚を開く横に高速回転を始め、ローグに向かって突進する。
ブレードを用いての蹴撃、《逆羅刹》が一直線に進む。恐らく並みのノイズであれば触れただけでも両断せしめんとするその刃がローグを切り裂く直前、
【スチームブレード! アイススチーム!】
「なッ!?」
苦し紛れか、どこかを向きながら悲鳴と共に地面に突き立てたのは短剣、《スチームブレード》というらしい。
力の限り、橋の土台にヒビを入れるほどの力で地面に突き刺したからか、短剣の先端には煙が立ちはじめている。
────違う。
スチームブレードの周囲を覆っていたのは、氷だ。立っていたのも煙ではなく、冷気。
それに気づいた瞬間、周囲の空気が一瞬にして凍り付き、巨大な一枚の氷の壁が出現する。
即席の氷の壁など、逆羅刹は容易く断ち切ることができる。しかしアイススチームで生成された氷は通常のそれよりさらに強固であることを翼は知らなかった。
甲高い音と共に勢いが落ちる逆羅刹。想定外の展開に動揺、動きが一瞬止まってしまい。
運悪く、その瞬間に我に返ったナイトローグが状況を把握、反撃に出た。
【スチームブレイク! バット!】
コウモリ型のエネルギー弾は自身が生み出した氷をも砕く威力で翼ガードレールにまで吹き飛ばした。
今回も直前で刀を構え防御の体勢がとれたものの、それでもエネルギー弾の衝撃は大きかった。
ガードレールに身を預け座り込む翼。立ち上がろうとするが、至近距離の攻撃を受けたこともあって未だ立ち上がれないようだ。
それを見て、ナイトローグは武器を両手に小躍り。
『アッハッハッハァ! やってやったりしてやったりィッ!!』
「────いいや、してやられたのはお前さんの方だろうよ」
『はぁ?』
突如後ろから聞こえてきた声。
不審に思い後ろを振り向く。
この時、ローグは二つの間違いを犯した。
一つ目は、翼を吹き飛ばし、戦場で油断をしてしまったこと。
そして二つ目、最大の間違いは。
赤毛の巨漢、風鳴弦十郎の存在を失念してしまっていたことだ。
視覚センサーが捕らえた赤い影。
大きく振りかぶった右腕。たかが生身の人間が放つ拳などどうということはない。
そう高を括っていた。
右腕が消えた。
コンクリートの破砕音とともに聞こえたのは空気を切る音。
それを認識した瞬間。
「ぅおおりゃああァァッ!!!」
ローグはまだめくれていなかったコンクリートを抉りながら遠くのガードレールにまで吹き飛ばされていた。
アーマーから火花が散っている。
何が起きたか分からない。
なぜガードレールにもたれているのか。急ぎ立ち上がらなければ……。
上手く力が入らない。
『あ、あれッ!?』
「当然だ、衝撃を貫通させたんだからな。しばらくは上手く力が入らんはずだ」
爆心地に立っていたのは風鳴弦十郎だった。
ありえない。生身の人間がトランスチームシステムを上回るはずがない。
そんな混乱からか、半ば無意識のうちにローグは唯一動く腕でトランスチームガンにボトルを装填する。
【スチームアタック! フルボトル! ガトリング!】
銃口から放たれたのはエネルギー弾ではなく実弾だ。
その上一度引き金を引いただけで6発もの弾丸が発射される。
それを碌な狙いも付けずに乱射。標的であるはずの弦十郎にだけでなく、背後のガードレールや電柱にまでも弾丸が命中する。
もしかすると彼の正体は、響と同じように戦闘に慣れていない人間なのかもしれない。
突然の行動、ボトルを装填したときこそ弦十郎も虚をつかれたような表情に。
しかし、それも一瞬のこと。
「わざわざ実弾に変えたのがお前の失敗だ。俺が近づくのをもう少し待っていれば、結果は変わっていたやもしれんが」
確かに弾丸は全弾弦十郎に吸い込まれたはず。
しかし当の本人は顔の前に両拳を持ってくるだけで一切傷がない。
両腕だけで弾を弾き飛ばしたというのか。
人間の皮膚にそんな硬度があるはずは……。と狼狽えたその時。
彼の両手が開かれた。
ジャララ、という金属音共に彼の両手から落ちてきたのは黒い何か────つい今しがたローグが放った弾丸だった。
『ヒィィィッ!?』
「今度は俺から征かせてもらおうかッ!」
右拳を構え、狙いをつけてローグに飛びかがる弦十郎。
が、その拳が鉄仮面を打ち抜く直前。
全力で体を捻り、その場に着地する。
弦十郎が前を見ると。
赤黒いコブラが横切っていた。恐らくあのまま動いていれば、コブラの牙に噛みつかれ数時間は動くことはできなかっただろう。
そしてコブラが通り過ぎた後には。
『やるじゃないか。今の一撃をかわすなんて』
「ブラッドスタークッ!」
現れたのは赤い蛇、ブラッドスターク。
続けて何か言わんとする弦十郎を手で制し、
『……ローグ。俺は言ったよなァ? 二課の連中とはまだ会うなって』
『フン! 私とお前の関係は対等のハズ。お前の言う事を一から十まで聞く訳が……』
【スチームブレイク! コブラ!】
ナイトローグがコブラ型のエネルギーに飲み込まれ、どこかへと飛んでいく。
逃げられたのか、ローグを倒す手助けをしてくれたのか……。
ともかく、ここでローグを捕らえることはできなくなってしまった。
『いや、悪いねェ風鳴司令! お初にお目にかかるよ』
「まさかお前に仲間がいたとはな」
『勘違いするな。奴は仲間じゃない、ただの契約相手だ。……まあいい。
ローグは俺が責任を持ってお仕置きしてやるから安心してくれ』
「それには及ばない。お前をここで拘束させてもらうからな」
『怖い怖い。だがまあ、今言った通り俺もローグを叱らなきゃならないんでね。この辺りで失礼するよ』
トランスチームガンから黒煙を噴かせる。
逃がすまいと弦十郎は震脚で地面を砕き、浮き上がった破片を蹴り飛ばす。凄まじい速度で黒煙に向かって飛んでいく。
しかしなにも聞こえない。破片は黒煙をそのまま貫通していった。
「はぁ……」
「響、最近ずっと疲れてるみたいだけど、何かあった?」
「えっ!? いやいやいや、ぜーんぜんそんなことないって! アハハ……」
「実はアニメみたく、人類を救うために悪党と日々戦っていた! とかあるんじゃない?」
あれから一ヶ月。
ナイトローグとブラッドスタークはあれから一度も姿を見せない。
一ヶ月間、三日に一度ほどのペースでノイズが発生、響と翼はその対応に日夜追われている。
果たしてノイズの発生率はこれほど高かっただろうか……。と疑問に思っていたところで、リディアンから追試としてノイズについてのレポート課題が出された。
戦う相手についてよく知ることは大切だと思う。しかし、あれからレポートとノイズ殲滅で放課後の予定がほとんど埋まってしまい、完全にフリーの日がこの一ヶ月で五日ほどしかなかった。
うら若き女子高生としてはやはり遊びたいというのが本音だ。
結局創世たちが誘ってくれたお好み焼き屋に行けたのもつい先週のことだった。
「確かに最近未来ちゃん一人でしか来ねえからなァ。代わりに創世ちゃんたちが常連になってくれて、ウチとしては助かってるけど」
「いえいえ。この喫茶店の雰囲気、個人的にナイスだと思いまして」
「確かに。異境、って感じするよね」
「イタリアっていうかスペインっていうか……」
いつの間にか創世たち三人はナシタの常連になっているらしい。
すっかり惣一と打ち解けていて、響としても嬉しい限りだ。
しかし今はそれを心から思える状態ではない。
スタークが撤退してから数分。
翼の気が立っていた理由は「響がまだ奏のようになれていないから」ではないかと考えた。
そこで帰還しようとしていた翼に対し、
「わたし、自分が全然ダメダメなのは分かってます。だから、これから一生懸命頑張って……。
次の瞬間。
響は頰に衝撃を感じると共に、地面に倒れていた。
翼に叩かれたのだ、と自覚する前に。
翼の目から涙が溢れていたことが気がかりで仕方なかった。
それからというもの、全く二人の息は合わない。
むしろ日に日に悪化している。
翼は自らが放った技で響を巻き込むこととなっても気にする素振りを見せない。
響も戦うとは言ったものの、ノイズの攻撃から逃げ惑っているばかりで、ほとんどノイズを倒せていない。
そして未だ発現しないアームドギア。
奏の代わりになるというのなら、まずは彼女と同じ槍を発現させなければいけないというのに。
「……ちゃん、響ちゃん!」
「はえっ?」
「ったく、やっと気づいたのかよ。もう三人とも帰っちまったぞ」
「えっ!?」
考えている内に、いつのまにか一時間が経過していた。
時刻は5時半。そろそろ寮に戻らないと門限に間に合うか分からなくなってしまう。
隣を見ると心配そうな顔をした未来が。どうやら響の意識が浮上するのを待っていてくれたようだ。
「もう、本当に大丈夫なの?」
「へいき、へっちゃらだって! 惣一おじさんもそう思うでしょ?」
「なーんか隠してる気もしなくはないんだが……まあ、俺も未来ちゃんも、響ちゃんが嘘ついてるのバレてるからな?」
「なんで分かったの!?」
「ほら」
引っかかってしまった。
頭を抱える。
しかし、今日もこれから定例となったブリーフィングがある。
また未来に詳細を黙って行くこととなってしまうが、それでも行かない訳にはいかない。
その旨を話すと、
「夜間外出とか門限はわたしがなんとかするけれど……こっちの方はなんとかしてよね」
そういい、鞄の中から携帯を出し動画を見せてきた。
流れ星の動画だ。
それを見せてきたということは、あの約束のことだろう。
「一緒に流れ星見ようって約束したの覚えてる?」
「なんとかするから。だから、ごめんね」
「近々見れる流れ星ってェと……しし座流星群か?」
「はい。天体に詳しいんですね、惣一さん。ちょっと意外でした」
「いい趣味してんだろ? ……ま、バイト先の子に教えてもらっただけなんだけど」
「遅くなりました!」
「では、全員揃った所で仲良しミーティングを始めましょ」
翼を見ると、壁にもたれかかりこちらを見向きもしない。
響が弦十郎たちが座っているソファに腰掛けると同時に、中央のモニターの表示が変わる。
この辺りの地図のようだ。
その数秒後、そこかしこに赤い点が映り、瞬く間に画面が赤く染め上げられる。
これをどう思う、と弦十郎に意見を求められる。しかし赤い点の意味が分からない響にとっては、
「いっぱいですね」
としか言えない。
「ハハッ、全くその通りだ。これは、ここ一ヶ月にわたるノイズの発生地点だ」
その返答を予想していたのか、弦十郎は笑って解説する。
この赤い点全てがそれだというのなら、この一ヶ月の忙しさにも頷けるものだ。
ただ一つ気になることがある。現在纏めているノイズについてのレポート課題で、ある調査によるとノイズの発生率はごく小さいものだというのを見かけた。
だというのにこの発生率はなんなのか。
「この発生件数は、どこの誰がみても明らかに異常事態。
とすると、そこに何らかの作為が働いていると考えるべきでしょうね」
「中心点はここ、私立リディアン音楽院高等科。我々の真上です。
サクリストD……《デュランダル》を狙って何らかがこの地に向けられている証左となります」
デュランダル。
完全聖遺物と呼ばれているそれは、二課本部の最深部に保管されているらしい。
それを狙ってノイズを操っている存在がいる、と彼らは考えているようだ。
ノイズを使役することなどできるものなのか、聞いてみようと思ったが、レポート課題に書く内容を理解するのにも精一杯だというのにそこからさらに踏み入った話をされると訳が分からなくなる。
だから別のことを尋ねた。
「あの人……ブラッドスタークについて、教えてもらいたいです」
「そっか、この頃出撃ばかりでロクにそんな機会なかったものね」
了子が同意する。
朔也に指示を出すと、目の前のモニターに映像が流れはじめる。
夜の市街地だろうか、薄暗いその場所に立っているのは見覚えのある赤みがかった人影が。
次第にピントが合ってくる。
やはりというか、人影の正体はブラッドスタークだった。
「最初に断っておくけど、私達の持っている情報と、響ちゃんが持っている情報にそう大差はないの」
「せいぜい、遭遇回数くらいだな」
「最初にブラッドスタークが現れたのは二年前……ノイズを倒し終えた翼ちゃんと奏ちゃんの前に急に現れた」
「あの時からナイトローグのような協力者がいたのか定かではないが、何らかの手段を用いて、こちらからの観測をジャミングしてきた。
この映像はその後再び現れた時のものだ。ジャミングはされていなかった」
二人の話によると、時折ノイズとの戦いに協力したこともあったらしく、その時から黒い拳銃と短剣を武器として使っていたようだ。
なるほど、確かに今の話では初遭遇の時期程度しか新たに知り得た情報はなかった。
「あっ、でも一つ気になる点があるのよね」
「気になる、ですか?」
「ええ。翼ちゃんの話だと、二年前ブラッドスタークはノイズを倒せなかったみたいなの」
「だが前回、響くんの前に現れた時にはノイズの位相差障壁を無効化し、有効なインパクトを与えられていた」
それは初耳だ。
スタークが響に群がるノイズを当たり前のように倒していたので、以前からノイズを倒せるものとばかり思っていた。
そうではないということは、二年間でなにかがあったのか。
しかし、そこでふと以前のスタークの言葉を思い出した。
────このスーツと武器にはある聖遺物の欠片が搭載されててな
スタークの言っていた「ある聖遺物」というのが関係しているかもしれない。
了子にそれを伝えると、少しの黙考の後、飛ぶように司令室を出て行った。
弦十郎にも心当たりがあるようで、オペレーターたちに指令を出している。
「どうだった? 時間過ぎてたけどレポート受け取ってもらえたの?」
「今回だけは特別だって! 流れ星見られそうだ!」
「響はここで待ってて。教室から鞄取ってきてあげる」
「いいよそんなのー!」
「響が頑張ったから、そのご褒美!」
担任からは「壮絶に字が汚い」と言われたが、なんとか課題を提出することができた。
多少未来に手伝ってもらったものの、それでもよくやったと自分を褒めてやりたい。
努力の甲斐あって今夜のこと座流星群を見ることができる。
響の鞄を取りに行ってくれた未来。元陸上部であったからか、もう姿が見えなくなった。
突然アラーム音が鳴った。
響の個人用の携帯ではない。この一ヶ月、否応無く耳に入るこの無機質な音……。
ジャケットの右ポケットが振動している。
つまり。
「……はい」
〈響、あなた……〉
「ごめん、急な用事が入っちゃった。
今晩の流れ星、一緒に見れないかも……」
〈また、大事な用?〉
「……うん」
〈……分かった。部屋の鍵開けておくから、あまり遅くならないで〉
未来には黙って現場へ向かった。
当然未来から電話がかかってきた。かといって「ノイズを倒しに行く」などとはとても言えない。
急な用事という、この一ヶ月で何度も使った言い訳をする。
一緒に流れ星を見るという約束よりも大切なことなどないはずなのに。
それでも未来は何も質さず響を送り出してくれた。
リディアンからそう離れていない地下鉄の駅、その入り口。
通信機から弦十郎の声が聞こえてくる。
〈小型の中に、一回り大きな反応が見られる。間もなく翼も到着する、それまで持ち堪えるんだ。くれぐれも無茶はするな〉
「……分かってます。わたしは、わたしが出来ることをやるだけですッ!」
「Balwisyal Nescell gungnir tron」
構内へと飛び込む。
ノイズはすでに入口間近の階段にまで侵攻していた。
響に向かって突っ込んでくる小型ノイズ。いきなりの攻撃に思わず、目をつぶり腕を突き出してしまう。
結果は一ヶ月前と同じく、ノイズの消滅だった。
何体かノイズを倒すと、階段の下に他の個体とは異なるノイズを発見。
多くは形容しがたい形状であるノイズだが、その個体は後部に球状のなにかが引っ付いていて、響はどこかブドウのような印象を受けた。
いきなり後ろを向いてホームへと駆け出していくブドウノイズ。
その姿を追いかける響だったが、ホーム内にまで追いかけたところでブドウノイズが急停止した。自身についている球状の物体をもぎとり投擲、響の頭上に当たった瞬間それが爆発。
瓦礫が響の全身を覆い、それを確認するとブドウノイズは再び逃走を始めた。
しかし。
まだ音楽は止まっていない。
「……見たかった」
瓦礫の山から何かが飛び出す。
「流れ星、見たかったァァァッ!!」
ブドウノイズを追いかけようとしたとき、また後部の物体をもぎとり投げつけてくる。
それが瞬く間にノイズへと変化、響の行く手を阻む。
その姿を認識した瞬間。
響の心が黒い”何か”に支配された。
すぐ側にあった壁を殴る。
「あんたたちが……」
響の姿をした、黒い何かがノイズに向かって飛び出していく。
「誰かの約束を侵しッ!」
二つに引きちぎり。
「嘘のない言葉を」
中心部を殴り抜き。
「争いのない世界をッ!」
踏みつぶし。
「何でもない日常をッ! 剥奪するというのならッ!」
壁に叩き付ける。
ブドウノイズを殴り飛ばそうとしたその時、球状の爆弾を大量に投げつけてくる。
防御の体勢を取り、爆発を凌ぐ。
「あっ、待ちなさい!」
爆煙が晴れたときには、既に響の姿は元に戻っていた。
ホームの天井を爆破し外へ逃走していくブドウノイズの姿を追い、上を見上げる。
雲一つない夜天だ。
今頃未来は一人で流れ星を見ているのだろうか。次はいつ見られるのか、それが気になる。
ノイズを追おうと足に力を込めたそのとき。
「流れ星……?」
青い流星が落ちる。
流星からは音楽が流れてくる。
その音楽は響の歌よりも強く、美しく。
今まで手こずっていたブドウノイズを一刀両断。
地上に到達すると、すでに着陸した流星────防人、風鳴翼が。
刀を通常の大きさにまで戻し、刀の刃文を見つめている。
合流したというのに、こちらを一切見ようとしない。
だが、響にも伝えたいことがある。
「私だって、守りたいものがあるんですッ! だからッ!」
その言葉にも翼は反応せず、ただ冷徹に刀を見つめる。
視線は刃文から刃先、そして切っ先へ。
このままではまた、いつかと同じ展開になってしまう。
それでも、今回ばかりは退く気はない。
「だからぁ? んでどうすんだよ?」
その声は翼のものでも、もちろん響のものでもない。
翼も一瞬虚を突かれた様子で、声の聞こえた方に刀を構える。
声の主が近づいてくる。
全身を覆う白いスーツとアーマー、そこに取り付けられている桃色の棘のついた鞭。
目元を半透明の青緑色のバイザーが覆っているが、辛うじてそこから鋭い目を確認できる。
彼女の持つ銀髪もあり、全身が白く染まっている。
響には妙な恰好をした少女だな、という程度しか思わなかった。
ふと翼の方を見ると。
「……
先程の無反応が嘘のように目を見開き、響のことなど眼中にない様子だった。
言い表すならば、戦慄。
そんな表情を、彼女はしていた。
1期と2期の前半は原作とあまり変わりません