鬼夜叉と呼ばれた男   作:CATARINA

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人権鯖を並べた宝具の発射が轟音と共に敵陣を吹き飛ばすのが好きだ
空中高く放り上げられたバルバトスが御仏パワーでバラバラになった時など心が踊る
低レア鯖の操る宝具の効果が強敵を撃破するのが好きだ
悲鳴を上げて倒れる魔神柱を更に宝具でなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった

《続く?》


地母神

地母神ティアマトが居ると聞いてきたんだがね。

 

蛇の髪に、石化の魔眼。

反英雄としても抜きん出た怪物性。

どうみたってティアマトには見えないんだが?

俺知ってるぞ、コイツはメドゥ………

 

言葉を続ける前に魔眼の光線が長政を射抜く。

危ねぇな……流石にそれ食らったらマズいんだけども。

 

上着一枚を代わり身に退避したのか、上裸になりながら続ける。

 

否、否。違うな。

哀れなる女神メドゥーサ!

出来損ないの神メドゥーサ様!

違う、違うよなお前!

どうだった?実の姉の味ってのはよ!

狂気の果て、真に怪物となったお前をそれでも信じた姉妹。

それを貪り喰い殺して、悦に浸ったんだよなぁ、お前。

故に、お前をこう呼んでやろう、恐ろしきゴルゴーン!

数多の英雄を屠り名を轟かせた果てにテセウスに首を絶たれた怪物。

実に哀れで!滑稽じゃあないかハハハハハハハハッ!!!

 

『…………本当に性格悪いですね……』

「というか笑い方とかお主の教えが悪いんじゃろこれ。」

『割と搦め手とかは元々素質の塊みたいな感じでしたが?』

 

 

 

『我が忌まわしきその名を、口にするなァ!』

「待たれよティアマト神!」

 

魔眼の光線を遮る言葉に照射を止め、声の方向に向き直るゴルゴーン。

瞬間、蛇髪の一体が硬直し、欠け落ちた。

 

惜しいな、バレちまったか。

 

長政が構えていたのは倒れたウルク兵の持った盾。

いつの間に磨いていたのか鏡面の如く煌めき、その身を石とされながら光線を跳ね返したのだ。

 

鏡の盾、石化、斬首。

このプロセスはアンタの弱点だ、ゴルゴーン。

どうにも変えようが無い死因という弱点。

死に様が語られちまうんだから神代の人間は不便だな。

容赦なく使わせて貰う。

 

 

担いだ弓を下しざまに射撃、若干低い弾速は弾頭の重さに比例する為。

石化の魔眼で迎撃される直前で起爆するように弄っといた、中身は……お楽しみって事で。

そんなに必死に見つめられちゃ矢だって照れちゃうぜ。

 

瞬間、光が辺りを白く染めて視界を奪う。

 

若干離れたエンキドゥでさえ顔を顰める眩さで一番間近に食らったらゴルゴーンは特に酷い。

突如奪われた視覚と爆音に飛ばされた聴覚、防御を封じられた状態でその目に矢を撃ち込まれる。

完全に、少なくとも目の傷を再生するまでの数分は視覚と魔眼を完全に封じられた。

 

十文字槍の鎌部分を鱗に引っ掛け、回転しながら削り登る。

勿論エンキドゥにも邪魔されるが、こっちは一人じゃないのさ。

 

神性に強力な特攻を誇る魔王の射撃はエンキドゥに十分なダメージを与え、

毘沙門天の背刺突は足を止めるに足り得る攻撃だった。

 

 

 

 

 

ゴルゴーンの頭を足蹴にして跳躍、遥か高みから堕ちた神を見下す。

 

『真名解放。我が主毘沙門天に代わって、

然るに我が友第六天魔王の名の元に。

我は堕落した悪神を討たんぞ。』

 

頭を垂れた神を断罪を待つ罪人が如く。

言わば夜叉とは処刑人、悪を断つ必要悪。

 

変形した双腕は二人の友への献身。

その名は三千世界にて恐怖の象徴。

 

『さぁ貴公、罪を受け入れ給えよ。

煉獄に償罪し、醜く命乞いした後に……地獄に堕ちろ。』

 

空中で大太刀を抜き払い、大振りに振り下ろす。

硬質な鱗を削ぎ、肉を切り裂いて骨を断つ。

確かな手応えを感じたが、切り落とす直前で姿が掻き消える。

 

惜しい、霊体化か。

 

振り返って何処かに敵影は無いか探そうとして_____腕を絡め取られた。

鎖、異常な程に強靭、しかも力が抜ける。引き千切るのは無理。

残った左腕は太刀を振り上げ、断とうとした体勢のまま縛られた。

同時に地に引き落とされ、地にめり込みつつ這い蹲る。

 

なんだこりゃ……何だって態々腕を……神殺しの類いか?

 

辛うじて首を横に向けると同様に縛られた景虎。

そして意識を失って雁字搦めになった信長。

この二人でさえキングゥを止めるには足らない、それ程までに地力が違う。

ゴルゴーンやケツァルコアトルとは違う、キングゥは神霊そのもの。

 

神殺しの魔王を脅威と感じたか、真っ先に仕留めたらしい。

起き上がろうにも鎖が肉に食いこんでぴくりとも動かない。

 

そんな俺を足蹴にキングゥは嘲罵を始める、良いぞ。

もっとだ、もっと油断しろ。

 

『………確かにまぁ、この魔王の力は脅威だ。敬意を表して……魔獣を産む苗床にでもしてやろう。』

 

見えなかろうが音と勘で分かる、今だ。

鎖が食い込む、食い込むなんて遠慮せずにもっと食え。

力任せに無理矢理起き上がる。脚の筋力は腕の数倍らしい、なら余裕だろ。

 

絡んだ鎖は腕に深く食い込み……肉を割いて骨を割り……そのまま腕を断ち切った。

全く躊躇いなく自らの腕を千切り捨てるという狂気、これぞ狂戦士の矜恃。

時同じくして回転しながら落下してきた太刀を咥え、身体ごと振り抜く。

大雑把かつ本来有り得ぬ斬り方故に致命傷を与えられずとも刃は神霊の腕を撥ね飛ばした。

更に返す太刀、漸く反応したキングゥに霊核を貫かれながらも逆の腕を切り落とす。

 

そこで足元から崩れ落ちる、元々相手の心臓を狙った攻撃で、それが外れたならば即ち。

この時点で逆転は不可能である、そう決定づけられた様な物だった。

薄れ行く意識の中、驚愕したキングゥの怒声と泣くような景虎の声を耳に入れながら視界は閉ざされた。

 

 

 

 

 

 


 

「おお ゆうしゃよ!しんでしまう とはなさけない! 救済コーナー夜叉道場行っくよー!」

『どうかお黙り下さいませ、我らが彼に干渉出来る時間も内容も限られて居ます故に。』

「と言ってもどう考えたって負けた理由も分かってないぜ、コイツ。」

『………まさか。気付かぬ筈がありますまい。彼も鬼夜叉と呼ばれた男ならば。』

 

『故に、貴公よ。どうか忘るる事なかれ、逃げ続ける日々を終えぬ事には何事も成せぬぞ?』

 


 

 

 

眩さに目を細めながら起き上がる。

西日の角度からして二刻程倒れて居たらしい。

そう思い当たった瞬間横から押し倒された。

 

『■■■!?■■■■■!!!』

 

分かった、分かったから。

離してくれ姉さん。

 

『よかった……また、置いて行かれたのかと、夜叉君………』

 

まさか、そう易々と死んでらんないよ。

さっき切った腕落ちてたら拾ってくんないか、養分不足だ。

 

拾い上げたキングゥの腕を景虎が放ると空中で器用に咥え、噛み砕く。

右腕を喰らえば右腕が、左腕を喰らえば左腕が再生する。

二、三度手を握り直して感覚を確かめると指笛を吹く。

吹き終わるか終わらぬかの早きに彼の愛馬である羅刹が風を割いて走り寄ると、

久方振りに見た景虎(毘沙門天)の姿により一層の加速を持って喜びを表す。

一切加速を止めずに走る羅刹に長政は景虎を抱えて飛び乗る。

 

『うお!?久しいですね羅刹………ちょっと大きくなりました?』

「さーて、どうしたモンかねぇ。本気出しても奴さんの首を落とせる気がしねぇ。」

『………珍しく随分と冷静ですね?昔なら狂った様に暴れてたでしょうに。』

「勝てなきゃ守れない以上、突撃一辺倒とは行かない事もあるさ。

だけどまぁそんなに心配しなくて良いさ、こう見えても………

 

 

 

 

 

______________今、結構頭に来てる


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