鬼夜叉と呼ばれた男   作:CATARINA

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(´・ω・`)


破壊者

何だありゃ。

やけに強そうな…

あ、バーサーカー二人が突撃して…やられた。

ウッソだろお前。強すぎない?

止めてくれよ…と言いながら矢を放つ。

……おいおいなんの冗談だよ。一つを手で掴み取り残り二つはそれで打ち払ったと?

 

 

…ってオイ立香ちゃん!ネロ!話が通る相手じゃねぇぞ!

ああクソッ。間に合えッ…

 

涙の星(ティアードロップ)…』

 

全力で槍を投合する。

間を阻む残存兵やワイバーンを細切れにしながら槍は突き進む。

 

軍神(フォトン)…ッ!』

 

ギリ命中!危ねぇな。

そして間に合った。

羅刹!

 

そう命じると既に接近していた長政は羅刹に乗ったまま敵サーヴァントを撥ね飛ばす。

馬から上空に飛び矢を放つ狙いは剣。

勿論弾かれるがバランスを崩す。

 

そのまま剣を踏みつけ、回し蹴りでサーヴァントを蹴り飛ばした。

よし、武器は奪っ…!?

 

一瞬の隙で槍を奪われる。

うぇい。しまったな。

 

「お嬢ちゃん。その槍返してくんないかなぁ。」

姉さんから貰った大切な槍なんだよね。

 

……今更考えたら油断してたかもな。

何せ槍の構えは素人同然。剣みたいに構えるんだもん。

そう、剣みたいに。

 

だから気づかなかったんだよね。ハハッ。

 

軍神の剣(フォトン・レイ)!!!』

 

ハァ!?宝具!?宝具ナンデ!?

 

サーヴァントはそのまま長政の横を通り過ぎ、ネロ達の方に向かう。

ああ畜生が。逃げろお前ら!

市が即座に立香とマシュを回収。…が。

 

「ネロ!所長!何してんだよ!!!」

 

タイミングが悪過ぎた。ネロの保有スキルであり、生前から体を蝕む頭痛が突如

ネロを襲う。足を一歩動かすのも苦痛なそれに抗えず、ネロは膝を着く。

一方の所長は逃げようとしたがネロを置き去りにすると気付き、急いで引き摺ろうとしていた。

 

後一秒足らず、それで二人は間違いなく死ぬ。

………そんなの許せるのか?

 

 

 

 

 

いいや、駄目だね。

 

「羅刹ゥゥゥ!!!」

「Ballllllla!!!!!!!!」

 

乗ったって間に合わない。

だから、蹴らせた。

渾身の力で羅刹は長政を蹴り飛ばした。

 

 

 

 

 

あッ……がッ……

頭が……頭が、痛い。

光が迫る。避け…避けなければ。

しかし足は動かず、立つのも苦しい。

 

……………駄目だな。

ここが余の死に場であろう。

きっとそれが天命なのだ。

 

「ちょっとアンタ!何してるの!早く、早く!」

 

……もう手遅れだ、間に合わない。

お主も早く逃げよ。これは命令である。

 

「ハァ!?バカなの!?いいから!」

 

引かれながら思う。やはり間に合わぬな。

済まぬ夜叉よ。諦めぬ心を神祖とお主から教えて貰ったが、余には無理だったようだ。

 

さらばだ、我が愛しきローマよ。異邦からの友よ。

 

……そして、二度と私に戻る事の無かった少女よ。

そのまま余は…私は光に呑まれ…

 

「誰に謝ってんだよ馬鹿野郎が。」

 

 

る事は無かった。

聞き覚えの有る声。あまりに大きな背中。

 

「夜叉………。」

あの一撃を、その身で止めたというのか。

見れば、左腕は消し飛び、右腕ももはや使い物にならないだろう。

苦しい。心が苦しい。

済まぬ。済まぬ夜叉。

余が、不甲斐ないばかりに……

 

「言えよ。」

 

え?

 

「自分でどうしようも無い時に助け合うのが友達だろうが…ほら、言えよ。」

 

…………

 

「なぁ、皇帝ってのは無理しすぎて一般教養もねえのか?

有るだろ?助けて欲しいなら一言。それだけで良いんだぜ?」

 

言って……言って良いのか?

ズタボロの姿。それに鞭打つような残酷な言葉。

 

 

 

 

でも、一つだけ。

一つだけ言って良いなら。…ならば……

 

 

 

…………助けて。

 

「ハハッ、遅せぇんだよ。だがまぁ、いいさ。

俺は元々、そういう英霊らしい。」

 

 

 

「さて、何だったっけアンタ?誰かが言ってたような…アッティラだっけか?

ほんほんほん、文明の破壊者、げに恐ろしき戦闘王!いやぁ、お会い出来て光栄!」

 

「軍神マルスの力持つまさに神の中の神!わー凄ーい!ハハッ」

 

男は軽薄に、しかし冷酷にカラカラと笑う。

「……思うんだが、神ってのはどうしてこうも人の歩みを嫌うかね。

人が進歩を望むと押さえつけようとする。なんもかんも自分の手の内に収めようとする。」

 

「で、こっからは俺の自論なんだけどな?

そんなのって_____」

笑みが消える。

 

「……気に食わねぇよな?」

 

声色も、表情も、雰囲気も全てが変わる。

激しい怒りをひっそりと燃やし、夜叉は昂る。

 

「…俺はさ、我儘なんだよ。俺は、俺の家族が、仲間が、友が、

俺以外の俺に近しい奴らが皆幸せじゃねぇと気に食わねぇ。」

 

「今お前は俺の友を二人殺しかけた。だから俺は今不愉快だ。

不愉快…いや、腹ただしいな。うん、殺したいとさえ思う。」

 

「力ある者が力を誇示し、奪い去るのは結構。それは強者の権利だ、間違いなくな。

だが、自分達だけが強いと勘違いするのは良くない。アンタらも勿論リスクは負うべきだ。」

 

笑みも、怒りも、顔から消え、ただ無に近しい感情を写した顔に

激情に鋭くなる目を貼り付け、サーヴァント…アルテラを睨み付ける。

 

「………何を言っている。話は無駄だ、破壊する…!『軍神の剣』ッ!!!」

 

「世界を破壊する?面白い。煮るなり焼くなり好きにすりゃいい。

だがな、俺の家族に手を出すってなら話が違ぇな。」

 

刺し穿つアルテラの宝具はしかし、()()()()()に呆気なく止められる。

「何……!?」

 

「図に乗るなよ神様(クソヤロウ)が…人を舐めすぎだ。

…申し遅れた。俺の名は浅井長政、人呼んで鬼夜叉。

人を喰らい、殺し尽くす。そういう化け物()らしいぜ?

いやぁ、サーヴァント万歳。無辜の怪物万歳ってね。

尤も、俺の場合は神だろうが喰い殺すがね。」

 

ハハッ。

 

 

 




ブチ切れ夜叉君その二

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