鬼夜叉と呼ばれた男   作:CATARINA

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まぁ、そうなるな。(日向)


灼け落ちた記憶

………もの凄い濃霧だ。

ロマニ曰く、本来なら人体に極めて有害。

何故か魔力の篭った霧だそうだ。

サーヴァントならまだしも、ただの人間である私はあまり外で活動できない。

しかも____

 

「夜叉様は何処に行ったんでしょうか………」(´・ω・`)

 

何故かアイツだけが居なかった。

あの男………!

 

考えても仕方がない。

私はこの幼女を連れて少しでも霧の薄い所を探し歩いた。

…今考えればそれが失敗だったのかもしれない。

私たちの旅で、どれだけアイツに頼っていたのか。

それを痛感した。

 

「……………!」

 

端的に言おう。幼女と幼女が戦っている。

敵は分からないがおそらくはアサシン。

そしてこちらのサーヴァントもアサシン。

戦力は幸いにも__いや、残念ながら拮抗していた。

それに加えてホムンクルスやオートマタの残党。

ガンドで止めては居るが限界がある___ッ!

不味い、最初のガンドが解け………

 

その瞬間は、スローのように見えた。

巨岩のようなホムンクルスの身体。

こんなものを食らったら私はひとたまりもないだろう。

………あっけないな。

まず浮かんだのは目的を達成出来なかった事の申し訳なさ。

次に、短い人生だったという自嘲。

そして、こんな事ならあの皇帝のように自分の想いを吐露してしまえば良かった。

そんな後悔。

 

そして、来たる衝撃に目を閉じた。

 

 

 

閉じた。

 

 

 

閉じ………?

 

 

何故、衝撃が来ない?それとも衝撃すら感じずに死んだのか?

訝しんだ私はうっすらと目を開けた。

 

「時に思うのですが、貴方々ホムンクルス(デク人形)は最低限のマナーも習わぬのですかな?それとも…分かっておやりになられて?…無論、無知は罪では有りませぬ、ならば仕方ありません。…が、もし後者ならば…少々おいたが過ぎますな。」

 

そこに居たのは迫り来るホムンクルスを切り刻んだ銀髪の老人だった。

 

「……失礼、お若いレディー。無礼の程は承知の上で御座いますが、自己紹介は後で。まずはあちらのお嬢様をお助けしましょう。宜しいですかな?」

 

その動きがあまりに自然で___しかも突然の事だったので。

私はただ小さく頷く事しか出来なかった。

 

そこからの展開はあまりに劇的で、よく覚えていないが、

とにかく生き残った。その安心感でか、私は気を失ってしまった。

 

 

 

 

 

だから、きっとこれは夢なのだろう。

 

一人の男が居た。

彼は望んだ。守ることを。

力を求めたが、彼は助け合う事を学んだ。

友に助けられ、家族に助けられ。

 

 

 

その最期は壮絶な討死だったが、彼は笑い続けた。

 

一人の男が居た。

彼も家族を、友を守りたいと。

強く、もっと強くと、力を求めた。

自分だけが傷付けば。自分だけが戦えば。

求めれば求める程に力を増し、彼は戦い続けた。

 

 

 

 

しかし最期には疎まれ、友の代わりに戦火に焼け死んだ。

そして死後、着せられたズブ濡れの衣。

それは彼の身体に癒えぬ烙印を刻み付け、苦しめた。

苦悶と絶望、怨嗟と妄執の果て、それでも彼は嗤い続けた。

 

一人の男が居た。

先の二人と同じく、彼も守ることを望んだ。

しかし、彼は慎重さを持っていた。

同じ道を辿りながら、彼は長らく生き、老いていった。

そして友と自らの夢、争乱のない世を作り上げた。

 

 

 

そしてその最期は_____。

 

 

「………おや、お目覚めですかな。」

 

…………目が覚めた。

…此処は?

 

「協力者がおりましてな、僭越ながらそちらにお運び致しました。」

 

礼をしようとした所で、切られる。

 

「…その話は後ほど、後一時間程でディナーとなります故、奥様より暫し休まれるよう。と。」

 

老執事は部屋を去った。

…幾つか聞きたいことがあったのだが。

まぁ、仕方ない。

オルガマリーは先程の夢を思い出す。

 

ぼんやりとして顔が分からなかったが、あれは間違い無く長政だ。

だが、おかしい。

あの男を召喚してから、その来歴を調べ上げた。

出生、家系、人間関係に戦歴。

ありとあらゆる…いや、特に他意は無いのだが。

調べている最中にロマニが暖かい目で見てきて腹が立ったが。

それは置いといて。

しかし、何故三人も居るのか?

 

一人は私もよく知るヘラヘラしたあの男。

だが、あの二人は誰だ?

直視できない程の疵を刻み付けられ、自嘲気味に笑う白髪の男。

そして老いた銀髪の男。…浅井長政は三十半ばで戦死した筈だ。

では一体アレは誰なのか……?

 

ふと、貰った御守りに目を向ける。

…貴方はどこに居るのだろうか。

 

オルガマリーは今この場にいない男に思いを馳せるのだった。

 

 

 

 

「では、改めまして、私は『ミゼーア』と申します。どうかお見知り置きをマスター。

そしてこちらは私がお仕えする奥様、信長さまのご正妻である帰蝶さまで御座います。」

 

「お義姉様!!!」

「あらあら…ふふふ♪」

そう老人が告げると同時に幼女…もとい市が帰蝶の方に駆け出す。

帰蝶に抱き止められた市だがオルガマリーの意識はそんな所には無かった。

()()()

市が飛び込んだソレに顔が埋まってしまう程にソレは大きかった。

 

………そっと胸を撫で下ろす。

…大丈夫、少なくとも埼〇県の平均よりは有る。

そう考え、オルガマリーは目の前の現実から目を背けたのだった。




帰蝶>>>ネロ>マシュ>主人公・オルガマリー・景虎≧市ちゃん>(越えられない壁)ノッブ
何とは言いませんが。

老人の正体のヒント1。
『ミゼーア』
クラスは内緒。

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