真ん中どうしようか。
パチパチパチ……
卵が焼き上がり、塩コショウで炒めた肉が薄らと焦げ目をつけ、同時に多種多様な野菜をベースに煮込んだスープがその香りで周りにいる者の食欲を駆り立てる。
立香は微睡みの中で非常に美味しそうで巨大な肉を追いかけていた。
………つかまえた。
昨晩は何だかんだ殆ど食事を取れなかった立香は堪らず齧り付く。
……あれ?……硬い。
それは見た目に反してとても硬かった。
固く、頑強で、よく鍛えられたような____。
「………起きろ
ふぇ?
恐る恐る目を開けてみると齧り付いたのは肉では無く___
ソルジャー01と呼ばれたサーヴァントであった。
『さてと、人も揃った所だ。一応自己紹介といこうか、新人。』
自己紹介?
あ、このお味噌汁おいし。
………ああ、お腹いっぱい食べられる幸せよ。
「ソルジャー05…こーるねーむだとウォッカ…よろよろ~」
「………おい、朝っぱらから呑んでんじゃねぇぞ。」
「?………これ…ワインだよ……?」
「………………次。」
「はい!ソルジャー04!コールネームはイェーガーです!宜しくお願いします、新人さん!」
「……皆お前みたいならなぁ…次。」
「ん?ああ、俺か。ソルジャー03,オーガだ。ま、適当に呼んでくれや。」
「そして私こそがソルジャー02!コールネームは…」
「煩いぞ〇ッチ。」「そうだそうだ。」
「ビッ〇じゃ有りませんから!私が許すのは先輩だけですから!」
「うっわ嬉しくねぇ…」「ドンマイです隊長。」
「私を厄ネタ扱いするの止めて貰えますか!?」
「…ソルジャー01,コールは……覚えて無い。ネームレスとでも呼べ。」
俺にはそれ以外何も無い。生憎と記憶が朽ちてるモンでな、しかも他四人よりよっぽどな。
「やっぱし父上にしか見えねえ…!?」
「ん~顔は似てるような似てないような……?」
父上って……人違いだろうに。そもそも何を基準に判断するんだ。
「えーと、カクカクシカジカ…」
シカクイムーブ…成程な。
まぁ、確実に人違いだろうよ。
確かに俺に記憶は残ってないが…この装備を見る限り死んだのは少なくとも21世紀らしい。
お前らの親…浅井長政だったか?
ソイツは戦国時代の生まれなんだろ?だったら違うな。
そもそも、見たところお前らは16か17そこらと見た。
で、俺は少なくとも25を超えたか超えてないか。
まさか10歳そこらで子供が居る訳も無し…ハハハッ。
「「あっ…(察し)」」
ん?
マツ「………(長政が11歳の時の子供)」タケ「………(長政が9歳の時の子供)」
で?お前らはここを出て聖杯とやらを探す、と。
成程成程…だがなぁ、それをやろうとするとあのBBA怒るぞ?多分。
「あら?誰がBBAなのかしら?」
これはこれはマダム・ブラヴァツキー。
今日も今日とてご機嫌麗しゅうございます。
で、ご相談なんですが。
俺達もこの新人に着いて行こうと…あ、ダメですかそうですか。
「そもそもミスター・ソルジャー?ここの管理は貴方達に一任してるの。
それをほっぽりだすんじゃ契約不成立だと思わない?」
契約…契約ねぇ。
「エレナさん、そんな事言ったってウチのメンバーは大体傭兵上がり。
契約をちゃんと守る保証は無いと言いませんでしたかね?」
「だとしてもサーヴァントである以上、契約には従ってもらうわよ。」
一触即発。
しかし、それを良しとしない者が居た。
「まぁまぁ、落ち着いてくれミセス・エレナ…」
そう英語で伝えながら01は
『各員、外骨格を展開。無い者は目を瞑れ。』
「………此方としてもそちらと争う気は無くてな…」
一瞬、エレナが敵意を逸らした僅かな時間を狙って仕掛ける。
顔が触れる程の近距離にて食らったエレナは堪らず屈み込む。
『撤収だ……総員
『『『『了解。』』』』
「………汚い…」
「やっぱし似てる…」
兵士たちは困惑する立香達をそれぞれ抱え、離脱したのだった。
…………よし、着いたぞルーキー。
どうした、そんな顔して。
さっきのが汚いと思うか?
戦場にルールなんて無いんだよ。
生き残った者だけが正しい。それが…
「カッコイイ!」
………は?
「凄い!昔やったゲームのキャラそっくり!」
………この鎧か。良いモンじゃねぇぞ。
コイツは俺たちにとって存在を固定する根幹だが…
こんな首輪、何の役にも立たん、タダの呪いさ。
少しきな臭くなってきたなぁ、と。