ネギまとかいっこうに始まる気配がないのだが   作:おーり

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プロローグ的な84.5時間目+α


『カゲロウデイz・・・?』

 ――世界がコマ送りに動いているようだった。

 

 鈍い音がして、押し退けられた感触も、競り負けていた勝負の行方も、全てがどうでもよくなった。

 私は、不死殺しの剣技でつけられる『治らない傷』を上手くかわし、その上で相手を殺さずに行動不能にすればそれで片はついたのだ。

 稚気を出したのが間違いだった。

 あの子にとって、私がどれだけの存在かを、よりにもよって私自身が把握しきれていなかった。

 

 あの子は、烏丸そらは、私が追い詰められた瞬間に目の前に飛び出して、私の代わりに首を刎ねられた。

 

 咄嗟の判断だったのだろう。

 自分でも動いたことが信じられないかのような、そんな虚を突いたかのような死に顔だった。

 それを確認できていたのに、私は自らに力なく圧し掛かってくる彼の死に体を抱き止める。

 刎ね飛ばされた首から濁流のように噴き出る血流を止めることも出来ずに、ただ呆然と事態を受け止めることだけしかできなかった。

 

 

 

『・・・・・・っ!!』

『え・・・・・・、そ、そら・・・・・・?』

 

 

 

 呆然とした頭の何処かで、遠くの風景のように周囲の状況を把握する。

 誰も彼もが、彼が死んだことに捕らえられて、動くことができないようだった。

 それは襲撃者の魔法教師2人も同じであったのだが、その中でもいち早くに動いたのはまさかの長谷川千雨だった。

 

 

 

『行くぞ、神楽坂。呆然としてんな、来い』

『や、やだ、うそだよ、だって、こんな、そんなことあるわけない、うそ・・・・・・』

『“これ”を起こさないために動くんだ! あたしらが今から動けばこれを回避できる! だから逃げるぞ! 早くだっ!』

『・・・・・・っ!』

 

 

 

 ああ、そうか。

 長谷川は『出来ること』をやたらと早くに把握する能力に長けている。

 自分が動く中で何とかできる、その可能性を見つけるのに一番早くに判断できるものが、まさか非日常に慣れていないはずの彼女であったことに誰もが驚くべきであろう。

 

 長谷川は呆然と『そら』を見続けることしかできない神楽坂と桜咲の手を取り、踵を返して私の邸内へと戻ってゆく。

 連れ帰ったネギ先生も準備が済んでいるであろうから、移動場所は何処からでも構わない、ということか。

 

 

 

『っ、葛葉、お前、なんていうことを・・・・・・!』

『わ、私はただ、エヴァンジェリンに対抗できる手段を・・・・・・!』

『それでも、だ。麻帆良が一番問題視されている『武力の所持』で身内に被害が出た・・・・・・。

 これではもう、どうすることもできないぞ。学園長でも、片付けられる範疇を超えているだろ・・・・・・』

 

 

 

 追いかけようとして逃げた先を見、逃げ場が無いことに安心でもしたのか、神多良木と葛葉の会話が平坦に交わされる。

 

 そんなことより、こいつらは今何と言った?

 そらのことを、身内、と言ったか?

 

 殺されたことよりも、そこに私の感情が逆撫でされた。

 普段は私の袂に在るからこそおざなりな扱いを強いていたというのに、今更身内扱いか?

 その理由もわかる。

 そらと私は現在世間的に麻帆良の『被害者』だ、それを内側へ引き込むことで麻帆良に当たる風当たりを緩和しようという『正義の魔法使い』の考えそうな浅知恵であろうこともわかる。

 

 だからこそ、そこに『攻撃』してきたこいつらの対応に一番腹が立った。

 

 

 

「――いただきます」

 

『とにかく学園長に報告す・・・・・・、おい、エヴァンジェリン・・・・・・? 何をしている・・・・・・!?』

『え、なっ・・・・・・!?』

 

 

 

 切り離された首へと貌を埋めて、滴る血流をごくごくと飲み干す。

 ――ああ、美味い。

 こんなに美味いモノは初めて飲んだ。

 考えてみれば、そらから血液を対価に要求したことがなかったのは、やはり家族であったからなのかもしれない。

 私にしては珍しいと、自分自身でもそう思う。

 家族であったから特別な感情を抱けていたのか、特別な感情を抱いていたから家族として迎え入れたのか。

 今となっては、最早どちらでもよかった。

 

 

 

「ぷ、ふぁ・・・・・・、美味かったぞ、そら」

 

 

 

 愛おしく、化け物の愛情をたっぷりに込めた、自分でも驚くほどの優しい声で彼の死に体を撫で付ける。

 最後にこの別れができるだけでも、私はもう充分だった。

 

 

 

『・・・・・・、エヴァンジェリン、その、なんと言っていいのか・・・・・・』

 

「――だから、もう要らない」

 

 

 

 声をかけてくるものがどちらか、などとも、もうどうでもいいことだった。

 

 

 

『――っ!? なんだ、その魔法陣は・・・・・・!?』

『そ、それよりもエヴァンジェリンの魔力が・・・・・・!?』

 

 

 

 彼の血液を取り込んだことで、彼の技術も取り込めた。

 自身にかかる封印の解呪も、一緒に取り込んだ正体不明のエネルギーを介することで難なく解く。

 そうして最初に私が行ったことは、彼の最も最高の僕を召喚する術式であった。

 

 

 

「もう、こんな世界は要らない。全て焼き尽くせ

 ――ハチリュウ」

 

 

 

     ×   ×   ×   ×   ×

 

 

 

「………………あれっ?」

 

 

 

 目が覚めたところは知らない天井で。

 えっ、台詞をいうべきだったって? いやいや、そらさんはそんな易々とテンプレに乗るオリ主ではございませんのでね。

 

 ………………つうか、見たことあるぞこの風景。

 

 

 

「おお主人公よ、しんでしまうとはなさけない」

 

 

 

 そんな声をかけてくる方向へと顔を向ければ、そこにいたのは転生前に顔をあわせたお姉さんであった。

 断じて神とは呼びたくない、人格的に難の在りそうな高位観察者である。

 

 って、ちょっとまって、俺死んだの!?

 

 待て待て。状況を整理しよう。

 確か、ネギ君だけでも戻してやって時間軸の再改変をやらせるべきだって相談して決めたんだったよな。

 ちうたんとか明日菜とかは居続けてもむしろ改変された時間軸の方が平穏な生活が送れそうだから、ってことで俺と残るほうを選択していたけど。

 一緒に帰るのは雪広とかの仮契約をした娘ら、ってことで決定されて、ネギ君を回収するために機動力のある長瀬とせっちゃんを往復転移で向かわせて。

 運動部四人娘は一緒に戻るらしかったけど、このかとせっちゃんは残留、バカンフーに長瀬が麻帆良祭最終日に戻る。

 ……あれ? それを決定してから……、どうしたのだっけ?

 

 

 

「覚えていない部分を解説すると、捕まった薬味少年の暴露でロリ吸血鬼の邸宅にみんながいることが判明。それを捜索に来たヒゲグラ先生とアラサー未満先生との交戦に入って、キミはロリ吸血鬼ちゃんを助けるために犠牲になりました、とさ」

「解説どもー……。

 ――ってはぁ!? 俺そんな死に方したの!?」

「おうよ。命を張って家族を守るとか、人としては最高の死に様じゃね?」

「残された方の気持ちを微塵も考えちゃいねぇじゃねえですかやーだー!」

 

 

 

 うわぁ、エヴァ姉絶対怒っていそう……。

 まあ、死んだらもう会えないのだろうから、今更どうこうできる話でも無いけど……。

 

 ………………会えない、よな?

 実はこの転生神お姉さんが安心院さんだったとかっていうオチは無いよな?

 正直ありえそうで怖いのだが。

 

 

 

「まあご安心しなよ、人生は一回限りだからね!」

「転生者に送る言葉じゃないですね」

 

 

 

 どうあれ、あの世界線にはもう戻る必要性はないらしい。

 名残惜しいけど、死んだのだから仕方ないよね。

 

 

 

「それじゃあ俺はもう行きますので。むしろ逝きますので」

 

 

 

 いい加減に涅槃というものを見てみたい。

 

 

 

「おおっとぉ、まさかこの場においてキミを見送るためだけに私が来たと思っているのかい?」

 

「――ですよねー……」

 

 

 

 なんなんだよ、二度目の転生?

 勘弁してよ。もういいよ、オリ主は。

 

 

 

「正確には転生じゃなくってさ、トリップをやってあげようかなぁって」

「ああ、もう一回幼少期を過ごさなくてすむのならまあまだマシ、なのかな……?」

「はっはっは、いい具合に目が濁っているなぁー」

 

 

 

 濁りもするよ。

 二次創作は全体的に迷走するんだからいい加減の程よいところで止めておこうぜ、ってみんな思ってるんじゃないかな。

 というか俺自身を使うことに何か理由でもあるわけ?

 

 

 

「そこはほら、やはり経験をしっかりと積んだキミという個体をそのまま失うには惜しいからだよ。

 ――あとはそうだなぁ、私が個人的にその世界線が嫌いだからかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 転生の理由が自己ちゅー過ぎるのですがそれは。

 

 と、思ったときには森の中にいた。

 うーわぁー、仕事速ーい。

 

 鬱蒼と茂った樹海にも似た山中にて、格好はシャツに適当なズボンという普段の格好でもない私服。

 ――トリップの仕方が適当にもほどがある!?

 しかも所持品がどうやら何一つ無いという、いわゆるアイテムレスな状況。

 山中でコレは流石に困惑するしかないのですがお姉さま。

 

 

 

『――い! おい! そこでなにをしている!?』

『さてはメガロの傭兵か!? 大人しくしろ!』

 

 

 

 項垂れているとかかる声に顔を向ければ、武装した西洋の兵士らしき甲冑集団がぞろぞろとやってくる。

 彼らの領土でもあるとか、そういう話だろうか。

 それにしたってこの数はおかしいのでは。

 

 ひょっとして転生早々に厄介事?

 勘弁してよ、もう。

 

 

 




~烏丸そら
 転生者
 プリティベルに出てくる某はいよるこんとんさんみたいに開発のほうに性能が傾いている少年
 魔法も扱えるが一応はスタンド使い
 オリジナルなスタンド『インストールドット』を成長させた『インストールドットダイバー』を扱い、言葉使いの一例『体言使い』と名乗る
 容姿は白髪に色黒で何処ぞの贋作者みたい。お陰で踏み台転生者と間違われる
 実は今まで始動キーを欠片も口にしたことが無い似非魔法使い
 仮契約はこの時点で1人のみだが、それが表沙汰になることは最早無い

~ハチリュウ
 そらの作成した精霊だかホムンクルスだか良く分からない使い魔
 姿は八首の炎の龍
 あらゆる魔法や熱を吸収して推進力などのエネルギーに換え、命令をするものがいなければ延々と暴れ続ける
 はっきり言って最後の手段過ぎる召喚獣


シリアスなんていらねえんだよ!
とばかりにネギマジから放逐されたそらくん
番外編の始まりです
初見の方は『ネギまとかちょっと真面目に妄想してみた』を一通り読んでからどうぞ
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