ネギまとかいっこうに始まる気配がないのだが   作:おーり

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オッス!オラごk


『DANDANcocoloが轢かれてく』

 

 

「くそぉッ! 小僧ッ貴様ッ! 誰に向かってその生意気な口を利いているッ! この俺がッ! 俺がこの世界の主人公なんだッ! 金も名誉も女も世界も心躍る冒険もッ! 全部が俺のモノの筈なんだぁッ!」

 

 

 いい年を過ぎて、そこらのいや、今時の子供以上に盲目的で幼稚な戯言をボロボロと吐き出しながら、引き摺られてゆく朱雀院改めクラデュール・オ・レンジの行く末を憂う。

 何処から出てきたのか知らないが、メガロメセンブリア元老院とオスティア上層貴族との癒着の証拠が明るみになり、大規模な政財界の構造改革を信頼のおけるメンバーで開始。その中でも我々にとって獅子身中の虫でもあったクラデュールの戦中の犯罪証拠などが見つかったので、筆頭に処分の対象とさせてもらったのである。

 正直、彼みたいな小物が何をやっていようと知ったことでは無かったのだが、彼自身が特異な実力者であるということも一応の事実。あんな形をしていても“赤き翼”と相応に対抗できるのだから、搦め手で退路を断たせてもらった。

 

 より正確に言えば、アリカ様に彼の罪状を申告した上で、殿下御自身にハニートラップを敢行させていただいた。

 非常に不本意ではあったけれど。

 

 

「すいませんでしたアリカ様。姫殿下にあのような下衆に色目を使わせるなどと言う真似をさせてしまい……」

「何、気にするなクルト。それもこれも、国の未来を思えばこそ、だ。元老院の残り火に国庫を食い潰される恐れを抱くくらいならばだまし討ちの一つや二つ、妾とて容易な物よ」

 

 

 まあ、クラデュールの方がどちらかというと姫様に懸想を抱いていた思考だったからこそ引っかかったのだけれども。

 実際、演技がたどたどしくて別の意味で危機感を覚えたのは、……胸に秘めておくとしよう。もうこういう手段もそうそう使わないだろうし。

 

 

「それにしても、中々様になって来たではないか。その様子ならばオスティアの政治も任せられそうだな」

「はは、ご冗談を。僕にはあんな腹芸出来そうもありませんよ。まあ、国が良い方向へ傾くというのなら、その手伝いをするのも吝かではないのですけれどね」

「そういうところが、だ。サムライマスターの弟子と聞いていたが、師匠とは打って変わって中々に強かそうだ」

「結局のところ、正式な弟子というわけでもありませんからね。それにしたって、彼らは一体何処へ消えたのでしょう……」

 

 

 赤き翼の主要メンバーがその行方を晦ませて、一週間ほどが経った。

 謹慎がかかっている筈だから下手な陽動を図ることもないと思いたいが、影も形も消失した、ということが疑念的に頭に引っかかる。

 オスティア上層の噂では死んだとも言われているが、そんな噂通りに行ったと言ってもそうそう出来るような人材が居るわけでもないし。

 ……対抗出来そうな人物とグループが今脳裏を過ぎったけど、彼らにこそそんなことをして得られるメリットが無い。……と、思いたいのだが。

 

 

「正直、以前にも戦争煽動の嫌疑で帝国とトライピースにも狙われた彼らですし、全戦力で討伐を目指されたら本当に出来そうな人材がゴロゴロとしていますしね……」

 

 

 そしてそれを『造り上げた』のがジライヤと呼ばれる、僕等よりも年下の少年兵だ。

 ……本当にあの子供は何者なのか。

 ゼクトさんみたいに爺口調ならば見た目が変わってないだけのそういう人物として捉えられるのだけど、そういった“歳経た”仕草が一切無いから本当に掴み処がない。

 旧世界人だという情報くらいはアリアドネーからは出ているけれど、その最初の“戦歴”に関しては容赦の無さが赤き翼とは比較にならない。

 そして何より怖いのが、人材を造り上げるという謎の施術。

 その施術を得た者たちには、殿下の魔法無効化すら効果が及ばない。

 彼らが本気を出せば、かつての戦争がアリアドネーの勝利、というわけのわからない結果で終わっていたかもしれない。そんな有り得ないifを、思わず妄想してしまうのも仕方がないのかもしれない。

 ただ、

 

 

「しかし、そういった戦いが起これば少なくとも何かの情報は出てくるはず。何も出てこないとなると、戦闘に至ったと考えるには些か早計ですね」

「うむ。まあ、昨日旧世界より戻って来たガトウや、タカミチなんかもこちらには残っているのだ。あの2人が本気で探れば、この世界で得られぬ情報など無いであろう」

 

 

 タカミチはどうでもいいが、ガトウさんには期待できる。

 彼には世界各地のゲート使用履歴を洗い直してもらっているから、もし仮に旧世界へ赤き翼が渡っていたとすれば早々に情報は得られるはずだ。

 まあ、本当にそうならば追いかける必要はない。こちらの案件が片付くまでは、大人しくしていてもらおう。

 そう思考を纏めて、何気なく空を見上げると其処には――……、

 

 

「――……は?」

 

 

 ――空全体を覆う謎の紋様が、見渡す限りいっぱいに広がっていた。

 

 

 

     ×     ×     ×     ×     ×

 

 

 

「術式の名は『崩壊紋章』。惑星全体を覆い尽くし、電子レンジのような分子運動の要領で内部を破壊しつくす。はっきり言って逃れる術は無い、最悪級の術式だ」

 

 

 師匠は語る。

 その絶望的な内容に、誰もが二の句を継げないだろう。

 

 

「基点は各地のゲート。それぞれが共鳴し合い、一部を破棄しても他の基点の共振ですぐに術式核は再生される。またゲートはその間使用不可。まさに逃げ場が無いわけだ」

 

 

 正確にはゲート使用にはその出口となる共鳴地が必要なだけで、その都合上1ヶ所のゲートが使われていると他が不可になるというだけ。

 今現在稼働中のゲートは此処『墓守り人の宮殿』だけで、だからこそ魔法世界人には逃れる選択肢なんて端からないわけである。

 

 

「『赤き翼』が発動させた術式は、あと一時間で完全発動に至る。そうなる前に被害を最小限に抑えるために、『全員』に通達する」

 

 

 コイン型の通信機を全機解放し、魔法世界中へと言葉を送る。

 傍らにはマリーさんとアスナ姫。アスナ姫の手には、『造物主の掟』という名の巨大な鍵が握られていた。

 

 

「今から移民用の魔法を発動させる。全員抵抗をせず、速やかに身を任せてほしい」

 

 

 特にアリカ姫とか。

 そう念押しする様子はないが、これを聞いているであろう姫殿下も理解していると思う。

 

 数秒後、アスナ姫の「りらいと」で『移民』は割と簡単に終了した。

 

 

 

     ×     ×     ×     ×     ×

 

 

 

「懸念はアリカ姫さんだけだったんだが、すんなり終わったなぁ」

 

 

 俺の術式も組み込んだお蔭か、魔法世界還元術式『完全なる世界(リライト)』からの撃ち漏らしはほぼいないと見ていいみたいだ。

 やっぱ術式の核に『造物主』を真っ先に埋め込んだのは正解だったか。

 ついでに魔力簒奪機構も術式内に埋め込んだから、取り込まれたナギとかラカンとかの魔力を使用しての術式補填も可能という完璧計画≪パーフェクトプラン≫。

 自分で自分を褒めてやりたい(照れ。

 

 

「すっげぇ大嘘吐きましたよね、いいんですか? 赤き翼の所為にしちゃって」

「これだけの大魔法を扱える術者を探す方が難しいからなー。戦中『千の呪文の男』とかって名乗っていたんだし、妥当な線だとみんなが納得したと思うけど」

 

 

 典如が胡乱な目で見てくる。

 アスナとマリーはリライトの核となる『造物主の掟』を抱え、一足早くに現実世界へと転移してもらっている。

 現在、世界は『墓守り人の宮殿』を遺した状態で粒子化の一途を辿り、回収出来る限りまで『完全なる世界』の中へと収納させている。

 ゲートを通じて旧世界改め現実世界へとその粒子の波は延々と続き、マリーは術式を完遂させるためのアスナの護衛役だ。しっかりと現実世界でも生きられる肉体を補填しておいたし、出先は原作通りなら世界樹の真下。今頃世界樹自体の発光現象が地上じゃ起こっているだろうから、近衛近右衛門も地下にまでは目が向けられない筈。万が一地下まで来たら恐らく胴と首が泣き別れになってしまうので、出来れば遭遇していませんように、とだけ祈っておく。

 

 

「惑星まで壊す必要性が感じられませんが……」

「立つ鳥跡を濁さず、ってね。後顧の憂いは断っておくに限るでしょーに」

 

 

 ちなみにゲートが核になっている、というのも嘘。

 正確には俺が一ヶ月の間に世界中を渡り歩いて、地中深くにボーリングの応用で凍結術式を埋め込んだのである。

 あ、発動まであと一時間を切っているって言うのは本当。

 いっそ火星がなくなれば、この先色々面倒くさいフラグを立てなくっても済むような気がしたんだー。

 テラフォーミングとか、移住計画とか……うっ、頭が……!

 

 

「――お?」

「はい?」

 

 

 ――気づく。

 可視可能なまでに暴濁と奔流する魔力の渦中に、飛び込んで来た何者かの気配。

 可能性としちゃ想定していたけど、どうやら生き残りがいたらしい。

 

 

「典如、一足早くに現実世界へ行ってくれ。後は当初の予定通りだから、俺が戻れなくっても計画は完遂するように」

「えっ、師匠は?」

「俺は――」

 

 

 言いかけたところで、宮殿に穴をあけて飛び込んでくるのは、スーツ姿のヒゲ眼鏡なダンディさん。

 どう見てもガトウ・神楽・ヴァンデンバーグさん、その人である。

 ポケットに手を突っ込んで、咸卦法なのか覇気だかオーラだかを身に纏う某スーパーな野菜人の如く、臨戦態勢ばっちりなおっさんと目が合った。

 

 

「――あの人を鎮めてからいかにゃならんらしい」

 

「――元に、戻せ……ッ!」

 

 

 わーお、むっちゃ怒ってるわ、おっさんてば。

 ……なんで此処まで怒り心頭来てんでしょーね?

 

 

 





~ハニトラ
 正義の為、と銘打っているけど、やっていることは今週号のマガジン巻頭の新連載と同レベル。やられる方からしてみれば胸糞以外の何物でもないので、良い子は真似すんな

~崩壊紋章
 元ネタはスターオーシャンセカンド
 ちなみに作者は最終戦手前でボスのリミッターを外してしまい、二進も三進もいかないまま今に至る
 手も足も出なかった苦い思ひ出

~造物主
 なんか静かだと思ったら組み込まれていたんかーい
 さらっと語られる衝撃の真実。しかし作中じゃ誰にも気づかれない、という不遇

~火星
 誰かが言った、誰もが思った。無くてもいいんじゃね?と
 此処でUQフラグを根こそぎ根絶しておくのが烏丸クオリティ。ちなみに有給自体はそらくんまったく認識してません。だってそれを知る前に転生している人だし

~ガトウさん
 烏丸製リライトなので魔法世界に馴染んでいない現実世界人は回収不可
 具体的に言うならば肉体の新陳代謝の都合上の問題



短いけど此処まで
次回、最終決戦

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