――大体出揃っているのであとは減らすだけです
なんだかもう今更ですねw
「ついに見つけたぞ、ジライヤ。まさか龍山にまで足を運んでいるとは思ってもみなかったがな」
「おー、確かデュナミスだっけ? ナニ? 完全なる世界って暇なの?」
「暇なわけがあるか! 貴様が逃げ回らなければ少なくとも一か月前には話は済んでいたわっ!」
6歳児追っかけて魔法世界中を駆けずり回ってるんだから、そう捉えられても可笑しくないと思うんだ。
あと誰が逃げていたか。お前らなんて逃げるほどの脅威もねーし。必要なことを片づけていただけだし。
赤き翼特攻部隊、いわゆる赤毛バカと筋肉馬鹿を会食の合間にお仕置きしてから一ヶ月ほど。俺と典如は世界一周旅行を敢行していた。
旅行というか、まあ典如の最終調整みたいな部分もあったのだけど。
ちなみに烏丸組&アリカ姫に粛正されたバカコンビは一ヶ月の活動禁止を姫に直接命じられていたので、例え相手が完全なる世界だとしても表立って行動を起こさない限りは迎撃に赴くことすら出来なかった。……筈だ。
そこは姫の人徳を信用するしかないのが若干不安。さすがに味方に窘められたら早々勝手なことをしたりするような奴らじゃない……と、思いたい。
あと朱雀院がそんな赤き翼を指さしてプギャーwwwと笑っていた。すげーどうでもいい。
「インリー・イード・レシェ・イドラ! 灰の精霊53柱、集い来りて敵を討て! 魔法の射手・連弾・灰の53矢!」
「水の53矢! ……って、これも駄目か! 貴様なんなんだその属性は!? どんな射手でも相殺不可とかチートすぎるぞっ!」
「キミの知ったことじゃないねっ!」
典如の“灰の射手”が水を吸って泥となり、灰の熱が即座に土・砂へと形態変化を促して、最終的に砂の射手と同等の威力となってケント、ゥム……だったか?を襲う。どこぞのレベル5みたいな砂鉄剣染みた破砕力が足元に集中、片脚を引き千切った。
雷だと互いに干渉せずに射手はまっすぐ進む(但し雷撃の方は灰の中で攪乱されて望んだ方向へ飛ばなくなる)、砂だと飲み込んで同化して襲うし、火や土も同形質なので同化する。水は今見たとおりだし、氷だと火力に負ける。ついでに言うと風の術式も“灰”を形成する上で無詠唱状態で組み込んであるので無効化するし、光や影・闇だと射手にぶつかった瞬間に拡散する。
一言で“灰”と言っても単純な属性なのではなくて、火・土・風で形成されている多重属性、というのが正解。とりあえず『単純な』魔法は。自分で言うのもなんだけど、随分とチートな仕様になったよな典如も。
……というか、アイツの口調、なんでかケントと対峙すると男っぽくなるな。……なんで?
比較的平和なこちらと違って、出会うたびに迎撃している典如なのでケントの相手をいつも任せているのだけど、顔を見たらとりあえず攻撃するような反射が身についてしまったのだろう。ちょっと後ろの方で五体を切り刻まれるケント君を遠目に見つつ、のほほんとデュナミスと対峙する。
ケント君? 吸血鬼っぽいし、そのうち再生するんじゃね?
「……会うたびに強くなっているな、彼女は」
「そりゃあしっかりと修業してるから。ケント君は、なんか最近弱くなった?」
「変化はない筈なのだがな……。というか、そこの少女は誰だ。前に会ったときはいなかっただろう」
デュナミスは俺の隣にいる、俺よりちびっこいウサギ耳帽子の幼女を指さし疑問を浮かべる。
とはいってもいっつも仮面だから表情は覗えないけど。
「秘密。誘拐じゃねーから安心しとき、お前らとは違うから」
「そんな懸念はしていな、おいちょっと待て。貴様我が組織のことをどういう風に認識しておるのだ」
どんなって、幼女誘拐犯? アスナを攫ってイタズラしたんだよな? 原作では。
……って、そういえばこっちじゃまだやってなかったか。
「すまん、ちょっと失言した」
「素直に謝られても更に不安を煽るとしか……。まあ、いい。そんなことよりも本題に入るぞ」
うん。ようやく本題か。
さて、慎重にいかなくちゃな。懐にどの程度の契約アイテムを忍ばせているかわからんけど、言葉を濁すように口にしなきゃ。
「単刀直入に言う、貴様我が組織の一員となれ」
「いーよ」
空気が、凍った。
「――なんと?」
「だから、いーよって」
おや。どーしたのかなデュナミスてば。
頭を抱えて蹲っちゃって。
「……はっ! わかった! 貴様の国で“懐に潜り込んで内側から殺す”という意味の隠語だな!? そうはさせんぞ!」
「本当にそうしてやろうか」
どんだけ外道だと思われてるんだ。
そんなやりとりをしていたら、魔法を打ち合っていた2人が、それぞれ俺とデュナミスの間に対峙したまま着地する。ドラゴンボールみたいなことするなぁ。
「し、師匠! 何を言い出してるの!?」
「どういうつもりだデュナミス! こいつらを仲間にするだと!?」
「何か、可笑しいかな」
「む、ケントゥム、貴様我が主の意向を聞いていなかったのか?」
俺としては物事をショートカット出来るから、問題は無いんだけどな。
「こいつらの目的はこの一ヶ月で大体掴めたからな。見えないところで勝手なことをされるより、見える範囲に居てもらった方がずっとやりやすいさ」
「我らの第一目標は魔法世界人だ。彼らは揃いも揃って現実世界人、倒せない以上リライトが利かない以上、今より強くなるというのならば味方に引き入れて損はあるまい」
ん? リライトが利かない? ……試したことあるのか?
理論上は『完全なリライト』は魔法世界人だけじゃなくて、メガロメセンブリアの連中にも効果がある、って原作で言っていた気がするんだけど。
……そこもそのうち折り合いつけないとダメか?
「――って、ちょっと待て。貴様、我らの目的を掴んでいる、だと?」
「ん? ああ、うんまあ。あれだろ? 魔法世界を維持する魔力が枯渇し始めたから、世界全部を消失させようっていうんだろ?」
「「「!?」」」
あれ? 典如まで驚いてる。
「……言ってなかったっけ?」
「聞いてないよ!? え!? それじゃあ仲間になってもならなくても同じじゃ……!」
「同じじゃない。利用しようとするから駄目なんだ。こういう問題はみんなで解決させないと」
「……解決法がある、っていうこと?」
「うん。まあ」
「――出鱈目だッッッ!」
ケント君が怒鳴り声を上げた。
「解決法なんてあるか! 纏まらない魔法世界を“みんなで”解決する!? 子供の戯言だ! 大体なんでお前みたいな子供がその事実を知っている!?」
「そりゃあ、各地の魔力推量とか、消失術式の痕跡とか、地殻形成の隆起飽和とか、アストラルラインの目算とか? それなりにいろいろ調べてりゃあわかるものもあるさ」
「…………っ!?」
「ついでに言うと、纏まらなくても違う枠組みの中でも“仲良く”するだけならどんな生物でも出来る。戦争の一番の理由は『貴方と私は違う』だと誰もが認めるけれど、“違う人間”なんてのは何処にだってどれだけだって存在してるんだよ。だったら“違う”程度のことは“同じ”ようなもんだ。お互いが分かり合えないということを理解すれば、“だからこそ分かり合う”のも人間の領分だもんな」
「………………は?」
なんか説教臭くなっちったな。やめやめこんなの。
というかケント君も理解しきれてないし。間抜け面晒すなよ、ワラキアもどき。
「ま、ともかくお話ししようぜ。世界を救う方法について、さ」
× × × × ×
「………………大変なことになったのじゃ……」
謹慎中、水晶を翳していたゼクトさんが青い顔でぽつりとこぼしていた。
「どうかしたんですか?」
ガトウ師匠が旧世界から帰ってくれば、きっと謹慎も解けるはず。
そんな一縷の望みを懸けながら、教えてもらった咸卦法を練習していたところでのこれだ。気にならないわけがなかった。
「タカミチ、急ぎアリカ姫に取次ぐ様、クルトに頼んでくれぬか?」
「えっ、でも、そんな急には……」
「急がなくてはならん。今知る限り、最悪のぱたーんに入ったのじゃ」
「さ、最悪?」
なんだ? ゼクトさんは一体、何を“覗いていた”んだ?
「……っ、ジライヤが、あの小僧が『完全なる世界』と手を組んだ……っ!」
「――っ!? す、すぐクルトに聞いてきますっ!」
「頼む! 儂はナギに声をかける!」
本当に最悪な展開だ! い、急がないと……!
くそ、だから仲間にならなかったのかアイツ……!
× × × × ×
「――おろ?」
「どうした?」
「いやぁ? 覗き見していた奴が消えたからさ、急がないとなーって」
多分俺のこと危険視しているナギの師匠辺りじゃねーかと思う。
ショタジジイってことで、コナンもどきな俺としては若干の親近感を覚えていたから放置していたけど。……ま、すぐにピーピングトムを再開するだろ、アイツらなら。
「つーわけで、典如。即座に決着をつけろ」
「了解師匠!」
「ケントゥム……、本当にやるのか?」
「当たり前だ。これくらいやらないと納得できるか……!」
結局納得してくれなかったケント君。言うこと聞かせたければ力ずくで、と言い出したので典如の本気で模擬戦開始。
とんでもない再生能力は既に見て知っているので、それを上回るような攻撃しなければ戦力低下には陥らない筈。なんせあっちは転生者の数が多いからなー。力の1号・技の2号だけじゃ絶対的に数が足りんよ。
「――ゆくぞっ!!!
バオル・イシシス・アシュタラス! 冥府の爪もて地獄の番犬! 聳える門へ叩き付けろ王の錫杖! 暗く暗く深く深く、穴の底より這い出よ! 暗澹たるラッパが鳴り響くとき、汝の暴虐を祖に占めさん! 這い出ろ、渓谷の魔獣ども!」
おお、オリジナル召喚術?
ケルべラス渓谷の魔獣召喚とか、面白いことするなー。その数、20数体ってところか。
うーん、“もっと早くに”仲間にしておけば良かった。
「魔法の効かない魔獣どもだ、倒せるものなら倒して見せろ!」
「――いいのかい?」
「………………へ?」
「エーミッタム、『赤目嵐』」
ごきり、と隣の幼女から骨と肉のひしゃげる音が響いた。
きちんと連れて行け、と言わんばかりに典如の方へと放り投げる。ボールの様に飛んでいった『そいつ』は、空中で質量を見る見る増やし、典如の前へと着地したときには、数多の魔獣が混合した形容のし難い不定形となって、対峙するケント君&魔獣の群れを威圧していた。
「………………おい。なんだ、あれは……?」
「『赤目嵐』、典如の従者でね。肉体はケルべラス渓谷で“収穫”した生きた魔獣数百体分になっている。乱獲禁止されているわけじゃないし、いいよな?別に」
正確に何体収穫したのか忘れちゃったんだよな。
「いや、そこは構わないが、いやそうでなくて! ……生きた魔獣?」
「死体だと盾役としては不十分だ。命を多めにストックさせるから、ああやって主を守る盾になることが出来る」
要するに、死徒ネロ・カオスか吸血鬼アーカードの本気モードを再現したみたいな感じ?
雪房や鋒吹丸より赤目嵐の方が相性良かったんだが、元々あーやって肉体を形成して活動する怨霊だった可能性が微レ存。
実際あの身体になってから、赤目嵐は口数がめっきり減ってしまった。一応典如の命令は聞いているけど、肉体を作ることを本能的に求めているような節がややある。
今も“新しい肉体の補充”が目の前に来ているのが、我慢できない様子だ。
「赤目嵐、食べちゃっていいよ」
『――ッ! ルォォオオオオオオオオッ!』
「なっ、なんだそれはぁっ!?」
あ、ケント君が逃げ出した。
まあ一目散に目前の魔獣に齧り付いたのだから、まかり間違って食われないようにするのは当然だろうけども。
おーおー、肩や足から延びる口が噛みついて同化するし。
……まだ召喚出来るんなら、もっと補充させておきたいんだけどなぁ……?
『――クゥル、クゥ、ゴ、ゴチソウサマデシタ』
「はい、よくできました」
――駄目っぽい。腰を抜かして身動きが取れないご様子だし。
一応、俺が言っておくかね。
「――で? 納得できた?」
「………………オマエラの方がずっと悪の秘密結社じゃないのか……っ?」
絞り出したような声は、実に失礼な物言いであった。
余計な御世話だよ。
~インリー・イード・レシェ・イドラ
典如始動キー。前回触れられなかったけど、知ってる人居らんのかな
元ネタヒントはホーンテッドな交差点
~バオル・イシシス・アシュタラス
ケントゥム始動キー。アーウェルンクスシリーズもどきなので作ってみた(適当)
~貴様ッ、見ているなッ!?
ネギマジ読んだ方には既に既知かと存じますが、遠視の魔法の類は逆探知可能ってそら言ってた
ぶっちゃけこの子の人生経験ってそこらの転生者より割かし濃いから
努力と成長に裏打ちされた経験の前に、神様から適当に特典貰って活用している程度のチートオリ主が勝てるのかと問われるとまず間違いなく無理かと。って感想で突っ込まれたことにちょっと反論してみる
いや、チートを上回るチートで対抗しているだけだ、って言われたのが元だけどね?そもそも言うほどチートでないよこの子。スタンドは特典でないし、そもそも普段からそれほど使わんし。魔法を撃つのにだってそれなりに時間も距離もかかるし
そんなそらだけどきちんと弱点はありますよ?そこを突っ込まれる前に戦局覆せるだけの経験があるからマジ無双に見えるだけですから
ってこの先の暗礁に乗り上げそうな展開を先に口ずさんで主人公情報を補填してみる
次回、ついに赤き翼と決着か…?
ついでに言うとこの世界線の神様って特典一つしか与えられないし、性能的には多分下層
まあ多く与えられたら上等かと問われると、二次創作系は大体杜撰としか言いようがなry