リプで来たサーヴァントが二人一組で摸擬戦するSS 作:warlus
「こういうのは、僕じゃなくてお竜さんの役目なんだけどねえ」
パリッとした着こなしの背広を着た男が、困ったようにはにかむ。
「まあ、随分としおらしい方ですね。それじゃあ、奥さんに頭が上がらないんじゃありません?」
男の言葉に、狐の耳を頭に生やした巫女姿の女はコロコロと鈴を転がすように笑い声をあげた。
両者の距離はお互いの声を届かせるには少し遠いかという距離。玉藻の前と坂本龍馬の戦いは、まるで井戸端会議をするかのような和やかな雰囲気から始まった。
「いやいや、僕とお竜さんはそういう仲じゃないよ。でもまあ、そうだね。殴り合えばお竜さんは僕のことなんて一発でのしてしまえるのに、彼女はいつも僕の意思を優先させてくれる。
ありがたくて頭が上がらないというなら、その通りなのかな」
「あらま、それはまたお熱いことで。私、少し嫉妬してしまいそうです」
「ははっ、あの傾国の美姫に嫉妬されるなんて、光栄に思っていいのかな」
坂本龍馬は、あくまでやわらかい笑みを保ったままゆっくりと歩いていく。
「それじゃ、ここはひとつのろけ勝負ということで、僕の勝ちにさせてもらってもいいかい?」
2歩3歩と解決の握手を交わそうと坂本龍馬が近づく。そして、4歩目が地についた瞬間だった。
「それはまた別問題です☆」
龍馬の足もとから突如、炎が噴き出した。
玉藻の得意とする呪術の一つ、呪相・炎天。先の会話の間に、玉藻の前はこっそりと地面に仕込んでいたのである。
柱のように燃え盛る炎は、周囲にあるものをたちまちに呑み込んでいく。
「んー、せっかくのイケ魂にこんなことをするのも申し訳ないのですが、これも弱肉強食の勝負の世界。運が悪かったと諦めてくださいね」
燃え盛る火の柱を眺めながら、玉藻はいけしゃあしゃあと口にする。この時点で勝負は決着したと玉藻は確信していた。
坂本龍馬は先に自分で言っていたように、抜群に高い身体能力を有しているわけではない。炎に呑み込まれれば燃えるし、体が焼ければ動けなくなるのだ。
ならば、この炎天に呑み込まれた時点で、すでに勝負は決まったようなものであった。
「いや、こちらこそ、だましていたのは同じだよ」
だが、その玉藻の独り言に応える声があった。
炎が焼き尽くした後の煙から、坂本龍馬が飛び出てくる。
驚いて固まっている玉藻に一気に距離を詰めると、腰元の刀を引き抜き、大振りの大上段。
玉藻の前は驚きながらも、とっさに浮遊している八咫の鏡で坂本龍馬の刀を受け止める。
「ちょっとお!どうして貴方無事なんです!?」
つばぜり合いをしながら、玉藻は疑問を投げる。
「どうしても何も、最初から当たってないだけさ。貴女の視線の動きで、会話をしながらも何かを仕掛けていたのは見えていたからね。なら、引っかかるふりをして急いで後退すれば、何とかよけられる…よっと!」
坂本龍馬は答えながら、ぐっと力を込め、八咫の鏡をかちあげる。
そして、玉藻が2歩3歩と後ずさりするのに併せて前進。畳み掛けるようにして刀を振るう。
玉藻も何とか八咫の鏡で応戦を試みるが、振り回すように扱う鏡と、戦用に扱いが洗練された剣術では、明らかに分が悪い。
一歩、また一歩と龍馬は玉藻の手数を奪っていく。
「貴方優しい顔してバリバリの武闘派ですね!?」
「おや、確かに普段はお竜さんの役回りだといったけれど、僕が刀を振るえないとは一言も言ってないよ?」
「やる気十分じゃないですか!!」
龍馬はひたすら玉藻に密着し、ほとんど被さるような形で切りかかる。こうなってしまうと、玉藻が得意とする呪術による範囲攻撃がほとんど封じられてしまう上に、札をとる隙さえ奪われてしまう。
やがて、のけぞるようにして後退していた玉藻が、足を引っ掛けて「ぎゃふん」と声を上げて転倒する。
龍馬がその玉藻にかぶさるようにして腰から抜いた銃口を突きつけると、玉藻はやってられないとばかりにもろ手を挙げるのだった。
「これがイケ魂のすることですかっ!?」
「いやーごめんね。僕も本来なら女性にこんな手荒い真似をするつもりはないんだけどね」
「ただ、模擬戦をする前に、お竜さんにがんばれって言われちゃったからね。少しはいいところを見せないと」
「うわーん完敗じゃないですかー!!」