リプで来たサーヴァントが二人一組で摸擬戦するSS   作:warlus

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3戦目 アンメアVS呪腕のハサン

黒塗りの短刀が、闇を潜り抜けて喉元に迫る。

「アン!そっちだよ!」

「わかってますわ」

二人で背を合わせるようにしていたアンとメアリー。

アンが声を発すると同時に、メアリーは銃で迫りくる短刀を叩き落とした。

周囲の立ち並ぶ木々が、風に吹かれてさわさわと音を立てる。

そしてその音よりも静かに、風よりも形無く、木々の間を飛び交う影があった。

シミュレーションルームの環境設定は毎回ランダムで設定される。もちろんそれが片方に優位に働くこともあれば、不利に働くこともある。

今回はその中でも、アンとメアリーにって思い切り不運に天秤が傾いたといえた。

場所は草木が生い茂る密林。時刻は深夜。

陰に潜むアサシンが活動をするには、絶好の環境であった。

戦いが始まって即座に闇に溶け込んだ呪腕のハサンは、それきり姿を見せることなく、ひたすらに暗部からの奇襲をアンとメアリーに仕掛け続けていた。

「まだなんとか対応できてはいるけど」

前方斜め右から飛んできた短刀をはじきながらアンが言う。

「これではキリがありませんわね」

ふと前を横切った白い陰に、牽制の銃弾を撃ち込みながらメアリーが続ける。

すでに開始から10分の時が経過しているが、いまだに二人は防戦一方で影すらつかめていない。

来たものを追い返すだけで手いっぱいだ。

「うーん、僕らのガラじゃないよね。これって」

アンが不満げにつぶやく。

「ええ、そうですね。海賊が守りの一手に徹するなんて、船長に笑われてしまいますわ」

「あいつに笑われるのだけはやだなあ…」

「まったく同感です」

アンとメアリーは話しながら、頭の中にひげ面長身の男の姿を思い浮かべてため息をつく。

「ここは癪ですが、あの男ならどうするか考えてみましょうか」

「そうだね…たぶんあいつなら思いっきり暴れるんじゃないかな。こんなのつまらないって」

「享楽的ですわね」

「海賊だからね」

「んで、短刀ですこんと頭を射抜かれて終わりでしょ」

「それはどうでしょう?あの男ですから、頭を射抜かれてもしばらく暴れまわりそうですわ」

「うわっ、それはありそうだなあ。ゴキブリ並みの生命力だからね…ん、そうか」

「どうしましたの、メアリー?」

何か思いついたた様子のメアリーに、アンが声をかける。

するとメアリーは、普段のテンションの低さからは考えられない笑みを浮かべた。

それは、子供のような無邪気さと、悪党の邪悪さの両方を内包しており、つまりはまったくもって海賊らしい笑みであった。

 

 

呪腕のハサンは自分が優位な環境に身を置きながらも、やりづらさを感じていた。

二人組という存在が、呪腕に攻撃をためらわせている。

ただの二人の組み合わせであれば、両者の隙が露呈した一瞬をついてナイフでのどを裂くこともできる。呪腕にとってみればその程度のことは造作もないことであった。

だが、あの二人はまるで二つの体を共有しているかのように、完璧なコンビネーションを保ち続けている。何の合図もなしにお互いが相手の隙をカバーして、一瞬たりともこちらに付け込む隙を与えてくれない。

合間合間をみて短刀を投げたり、射線を横切って攪乱したりもしているが、それで相手が摩耗したり揺らいだりする様子もない。

下手に飛び込もうものなら、あっと言う間に立場が逆転してこちらが狩られてしまうだろう。

「さて、どうしたものか…」

呪腕はそよぐ風よりも小さな声で一言つぶやいて、彼女たちを観察する。

今は彼女たちも小声で会話をしているらしく、目線こそ鋭いものの、動きを止まっている。

まあ、現状を維持しているからといって、木々に囲まれている限りこちらの優位が揺らぐわけでもない。もう少しこのまま彼女たちを観察して…

呪腕がそう考えていた時だった。

「ヨーーーホーーーー!!!」

アンが突然大きな声で叫びだしたのだ。

「さあさ海賊たちのお通りだ!」

併せてメアリーもリズミカルに叫ぶ。

「俺たちゃ海賊、略奪者!上陸したお宝は俺らのもんだ!」

二人はリズムに合わせて叫びながら、突如それまで完璧だった連携を崩し、銃に弾を込め照準を合わせだした。

その先にあるものは、

「ま、まさか!」

「「そこのけそこのけ全てをもらうぞ!」」

あわてる呪腕をよそに、二人は揚々と歌い上げながら銃を放つ。

周囲に密接する木々に向けて。

通常、銃弾で木を倒すことは不可能に等しい。しかし、ここに揃うははサーヴァント。

逸話をもとに昇華された宝具を持ち合わせている英霊だ。

メアリー・リードとアン・ボニー。二人のコンビネーションという逸話の宝具をもってすれば、2丁の銃で木を倒すという不可能さえも可能にする。

「ヨーホー!」「ヨーホー!」

二人は揚々と歌いながら、周囲の木を端からなぎ倒していく。

先までの守りの姿勢はどこへ行ったのか。呪腕が投擲する短刀も致命に至るもの以外は一切構うことなく、手傷を負いながら次々に周囲を開けた土地へと変えていく。

「多少の手傷がなんだっていうんだ」

「相手に有利な状況だって、略奪しやりますわ!」

「「だって僕(私)達は海賊なんだから!!」」

 

やがて5分後には、血だらけながらもニカっと笑って銃を構えるアンとメアリーと、そしてすっかり開かれた大地で、呆れたように両手を挙げて降参する呪腕のハサンがいた。

 

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